汝その名はスイートポテト(原作すぺしゃる第21巻)



カーズ・ブリンガー ※ナーガ 登場
ストーリー

 領主(ロード)が魔族に狙われ、病に倒れ命が危ない。そんな事件の解決を依頼されたリナは、 マディック親衛隊長に案内され、魔族とおぼしき声の聞こえる夜の森へ行く。しかし、そこに現れた声は リナにはイヤというほど馴染みの深い――単なる(?)ナーガの高笑いだった。魔族の仕業ではないと 知って脱力する兵士たち。だが、リナはそこに、ロード暗殺のにおいを嗅ぎ取る。
 改めて、ロード呪殺を目論む犯人の発見と阻止を依頼され、それを受けるリナ。ロードの肉親は、今は 弟が一人いるだけだと聞くと、リナはすぐにその弟が黒幕だと断じた。そしてそれは、大正解だったので ある。
 根性のないロードの弟は、問いつめると簡単にすべてを白状した。気晴らしにお忍びで町の酒場に行って いたこと。そこで一人の呪術士を知り合ったこと。軽い気持ちで、兄を呪い殺すためのハンカチを渡した こと。ロードを救うには、ソリスと名乗った呪術士を見つけ出し、術を中止させなければならない。
 さっそく、リナたちはソリスの捜索を開始した。そう大きくないベルミックの町で、ソリスの足取りは わりとすぐに見つかる。なんとか森の奥にある、ソリスの家に行くことはできたが、しかしソリスはそこ にはいなかった。おそらく他の場所で呪術を行っているのだろう。リナの見立てでは、そう遠くへ行っては いないはずなのだが、場所までは特定できない。悩む一同に、それまでろくに役に立っていなかった ナーガが、当たり前のように言い放つ。「地下墓所(カタコンベ)は捜したでしょうね?」と。なぜそんな ところを捜すのか、一同が首をかしげると、ナーガはやはり常識という口調で、こんなのは呪術の基礎知識 だと言った。ナーガは子供の頃、母親から呪術の基礎知識を習っていたのだ。ナーガの持っていた基礎知識 を聞き、リナはソリスが城の脱出用地下通路にいる可能性を思いつく。
 ロードの部屋を調べると、やはり先代によってふさがれてはいたものの、先代がこの城に来る前に作られ ていた隠し通路が発見された。地下通路を、ハムを焼くにおい頼りに駆けてゆくと、やがて現れたのは儀式 の魔法陣と呪術士ソリス。リナはソリスが逃げ出す前にさっさと吹っ飛ばして縛り上げる。するとソリスは 観念して、この事件の裏を語りはじめた。
 実はソリスは、今のロードの父親が、この地方のロードに任命される以前のロードと、遠い遠い縁続き だったらしい。だから世が世なら、自分がロードのはずだった、と。しかし、現ロードの父親が国王に、 前のロードの悪事を告発、その権力と手を組んでいたソリスの父親も商売に失敗して夜逃げ、そして彼は 働かないで遊んで暮らすという将来展望が破られたため、その復讐のつもりだったのだと言う。そんな 身勝手な動機は軽く聞き流し、リナたちは魔法陣を破壊して術を解き、ソリスはマディック親衛隊長に 引き渡して、事件は解決したのだった。


ここがポイント

 ナーガの扱いが、ちょっと不満点。最初の、魔族にも間違えられるほど面妖な笑い声、とゆーのはいい んだけど、あとはやたら常識人に見えました。ナーガが常識人に見える!?そんなこと、あってはならん のぢゃないか!!(力説)リナでもすぐには気づかない点を指摘するとこといい、やたら頭の良さを発揮。 いかんなあ、時を経て、だんだん常識人になってきたんじゃないか(笑)もう若くないぞ!(殴)そして、 ナーガの謎の特技がまたひとつ明らかに。ナーガは、「母親から子供の頃に習った」とか 言っておりましたが、そうするとアメリアも、子供の頃に習ったんでしょうか。まー王族として、こんな 風に呪術をかけられる可能性が、皆無とは言えないからねえ……。
 ゲストキャラの性格も、飛び出て特徴的なのがいなかったせいで、ちょっと話としてのインパクトは弱め だと思います。ソリスみたいな奴も、何度か出てきたとゆーか、あんましいぢりやすいキャラじゃないし。 たまにある、次回を期待するためのインターバル、ってところでしょうか、今回の話。



汝その名はスイートポテト ※ナーガ 不参加
ストーリー

 おいしいケーキを求め、キュリアン・タウンにある、ジョージのケーキショップにやって来たリナ。 しかし、店は休業中。事情を聞くと、旬の素材である栗を、誰かに盗まれてしまったかららしい。近日中に 収穫できるスイートポテトまで盗まれたら、さらに休業は長引いてしまう。リナはおいしいケーキを食べる ため、パティシエのジョージに力を貸すことにした。
 夜の山中で、スイートポテトを見張るリナたち。やがて畑から、恐ろしげな悲鳴が響く!それは品種改良 され、引っこ抜かれると叫ぶようになってしまったジョージのスイートポテトの声だった。リナたちが 駆けつけると、犯人はサルのようなキメラ。キメラたちはバレたとわかると、あっという間に姿を消して しまった。
 翌日、リナたちはキメラの追跡を始める。落ち葉の積もった森の中で、捜索は難航したが、ジョージが 死後数日の目玉のような物体を発見した。それは、先に盗まれた、ジョージの品種改良した栗。つまりこの 近くに、キメラたちとそれを操る魔道士がいるはず。
 近くにあった遺跡に入ると、中には一人の魔道士が、彼らを待ちかまえていた。なんとそれは、ジョージ の父親のギニスであるという。ギニスは息子が選んだ道が正しいかどうか確かめるため、試練として栗や スイートポテトを盗んだのだ。ちなみに、ジョージのケーキの味を判断基準にしなかったのは、甘いものが 嫌いなため。
 試練として、例のサルのようなキメラをけしかけるギニス。なんとしてもジョージのケーキが食べたい リナは、ジョージの代理として勝負を受ける。たいした苦もなくキメラは倒され、しかしギニスは次の試練 を繰り出してきた。それはジョージの栗を使って作ったキメラ。傷つけずに倒せれば、栗は彼の手に戻る が、攻撃呪文で吹き飛ばせば栗は台無し。だがジョージは余裕の表情で、懐から小ビンを取り出す。中に 入っていた液体肥料のにおいを感じ取り、栗は勝手に動きだし、キメラはバラバラになってしまった。
 さらに新しい試練を出そうとするギニスを見て、リナは『単にジョージを魔道士にしたくて、無理難題を 押しつけてるだけ』と見抜いた。真相を見抜かれ、ギニスは逃亡。リナは再び邪魔が入らないよう、ギニス を捕らえようとするが、リナの代わりにジョージのオリジナルの呪文が、見事にギニスを捕らえる。確かに ジョージは、素晴らしい魔法の才能があったのだった。
 目玉栗や叫び芋を使って、かくてケーキは完成した。しかし、材料を知っているだけに、どうにも口に 入れる勇気が出ないリナ。そこで、まずはギニスに食べてもらい、ジョージの腕を知ってもらおうと言い くるめ、ギニスに毒味をさせる。食べるまでは大騒ぎをしていたギニスだったが、一口食べると態度が 一変。最後には全種類を食べて、ジョージの道を認めてしまった。それを目の当たりにしたリナも、ケーキ を一口。あまりにも幸せに導いてくれる、最高に美味なケーキに、言葉を失う。ジョージの言葉に甘えて、 リナは本気でケーキ食べ放題をする。……もしかして、ジョージのケーキショップが閉まっていたら、 それはリナのせいかもしれない……。


ここがポイント

 今回のピカイチは、目玉栗と叫び芋。なにをどう考えても、動物っぽいものと混ぜ合わせなければ、 こんな蠢く栗やイモはできないはずなんですが……リナでなくても気になるって、これは。
 というか、どのようにしてこのような非植物っぽいものと掛け合わせたのか、個人的には非常に気になる ところだったりします。キメラ作りの技術だったら可能なような気もするけど、キメラの形質って遺伝 しないらしーし。だとすると、あれ栗もイモも、全部キメラ??確かに、タネイモや接ぎ木で増やしたイモ や栗は、植物学的に元の品種の形質を保っているものなのですが(だから優良品種を増やすときは、体細胞 増殖をさせるのです)。
 そして、味と香り『だけ』をとことんまで追求したジョージ。その結果、栗やイモの見た目がどんなに なっても気にしないジョージ。はっきりいって、かなりの大物だと思います。そして、あの目玉栗や叫び芋 は、どうやれば皿に乗るまでに普通の外見を取り戻せるのでしょう。あれがジョージの腕のなせる技なの ですか。断られるでしょーけど、厨房をぜひとも見せていただきたいものです。
 食通グルメのリナがあれだけ絶賛するケーキ。一度食してみたいものです。きっとミスター味っ子だった ら、口の中からビカビカ光線出してしまいそーです。……でもその際は、できるだけ元の食材は見ない方向 で……。



外伝・刃の先に見えるもの
ストーリー

 時はまだ、ガウリイがリナと出会う前の話。クルシダ村に立ち寄ったガウリイは、己の持つ光の剣を 見ているうちに、剣への恨みから衝動的に、剣を投げ捨てそうになる。その時、声をかけてきたのは 一人の男。黒髪の美形は、おせっかいだと言いながら口を挟んできたが、結局ガウリイは剣を捨て 損なう。
 その日の夕方、宿の食堂で再び黒髪はガウリイへと寄ってきた。あんまり露骨に悩んでいたので、つい 声をかけてしまったという。そこへ、クルシダ村の村長が、話を聞いてほしいとやって来た。だが、村長 の登場と同時に運ばれてきた食事は、なんと毒入り。狙われているとわかった2人は食堂を飛び出すが、 外では村中の男達が、2人を倒そうと集まっていた。
 山へ逃げ込み、山狩りに来た男を捕まえて事情を聞こうとするガウリイと黒髪。すると、男は事情を 話しかけたとたん、突然破裂してしまう。それであらかた事情を察した黒髪は、ガウリイともども村へ 戻った。
 この事件には黒幕がいる。そう指摘した黒髪の言葉に応じ、魔族が姿を現す。この村では魔族が村人を 脅迫し、村人を恐怖で縛り付け、旅人を殺させていたのだった。黒髪とガウリイは魔族と戦い、圧倒的な 力で勝利。村長は感謝するが、黒髪はそれを突き放す。仕方なかったとはいえ、魔族に抵抗もせず旅人を 殺し、あまつさえその所持金まで分け合っていた村人に、たしかに同情の余地はなかった。よその町の 役人にきっちり言っておくから、とぼけるなと釘をさし、黒髪とガウリイは村を立ち去る。
 その後。ガウリイは、黒髪の男に言われたことを思い返していた。この忌まわしいだけの光の剣でも、 これを使って何かができるかもしれない。そんなある日、森の中の道で、一人の少女が盗賊たちに 囲まれているのに行き会った。男の言葉を噛みしめながら、ガウリイは手助けするべく、一歩を 踏み出す。
 それは、大きな物語の始まり。リナとガウリイの旅への、序章(プロローグ)。


ここがポイント

 初めに断っておきますと、個人的な趣味に走ってタイヘン申しわけない。やはりここの見所と言えば、 なにを差し置いてもリナのとーちゃんでしょう。実際に、彼がリナの父と、明記してあるわけでは ありませんが、ガウリイの言うとおり「包丁一本で雷撃竜を倒せる」娘なんて、まずいないってば。 あの郷里のねーちゃん以外。
 リナの家族は、ねーちゃんのスゴさがぽつりぽつりとリナの口から語られるだけで、容姿・性格・その 他諸々は、長い間ナゾのひとつでした。それでも、ねーちゃんはまだ想像する手がかりがあるけど、 とーちゃんかーちゃんは大体、ファンが好き勝手な想像するのが普通。しかしまさか、ここまでグレイト なおとーさまで、しかもリナがガウリイと出会う前に、一度ガウリイと会っている、なんて想像を、 原作者以外の誰がしたでしょうか。美形。若作り。ちょっと口調が乱暴。性根がリナとよく似てる。 ガウリイにちょっかいかける。愛妻家で子煩悩(しつこくなく、あくまで言葉の端々に愛情たっぷり)。 しかもガウリイがリナと出会うきっかけを作ったのが、リナのとーちゃん。父娘二代で、「ロコツに 悩んでますって風」なガウリイを、日溜まりで眠りすぎて溶けちゃったクラゲ(言い過ぎ?)にして しまったとは、なんともガウリナ好きにはたまらなすぎる設定ではないですか。もうツボすぎます。 ギャ〜〜〜♪♪♪
 最後の方で、なんだかガウリイの本性が、少し垣間見えた人も多いかと。いや、本編1巻書いてる時、 原作者にそのつもりが全くなかったのはわかっています。わかってるんですけど……。この短編が、本編 1巻に続くのか、と思うとねえ。魔道士姿の少女が、盗賊に囲まれている。けれど脅えている様子は ない、ってわかってたってことは……。「いい女だったらコナかけようと思った」って言うのは大ウソ なんですね?しかも、「魚屋かウェイトレスかと思った」ってゆーのは、ホントに冗談だったんですね? つまり、あなたのボケの数々のうち、いくつかは同じよーに大ウソか冗談なんですか?本編15巻で、 「リナの郷里」と言わずに「リナの実家」と言ったのは、やっぱりワナですか?
 どんな考えがあってこの話が書かれたのかはわかりません。しかし、ガウリナファンにとっては、 これほど嬉しいガウリイ外伝が、他に思いついたでしょうか。諸手をあげてよろこびます、ありがとう 神坂先生。こんな美味しすぎる話を書いてくれて♪♪♪



スイートポテトU ※ナーガ 不参加
ストーリー

 雷の鳴る中、一人の男が、リナのいる食堂に飛び込んでくる。それはなんと、数日前に別れた、 パティシエのジョージだった。ジョージは、このままでは村が滅びてしまうから、力を貸してほしいとリナ に頼みこんでくる。
 話を聞くと、なんでも、ジョージの品種改良したイモが、封印を破って逃げ出したらしい。そのイモは 生きていない植物すべてを、つまり木造建築などを栄養として摂取する能力を持っているという。それは 確かにシャレにならない。リナは、またもジョージの店でケーキ食べ放題の約束を取り付け、ジョージと 二人イモ討伐に向かうのだった。
 ジョージの話では、近くに廃村があるという。木造建築の家々が捨てられており、おそらくイモはそこに 隠れているだろうというのだ。村へ向かう途中、リナたちは同じ村へ、山中訓練に向かう兵士たちと 出会う。同行して村へ到着したリナたちだったが、夜中にトイレに出た兵士が何者かに襲われて身ぐるみ はがれ、全裸で発見された。このときになってようやく、リナは逃げ出したイモが食すのは死んだ植物、 つまり衣類も含まれることに気づく。
 兵士たちに本当のことを話すと、隊長は協力を申し出てくれた。作戦としては、兵士たちがサポートを して、リナの火炎系の呪文で熱処理をすることに。そのため、男なら一生に一度は見てみたい、『触手 っぽいものに襲われる女の子』の光景を見ることが叶わず、男泣きにむせぶ兵士たち。時間をムダにせず、 一同はイモ討伐を開始することにした。
 捜索を始めてほどなく、イモは見つかり、リナの呪文で焼き芋にされた。だが、それとは別にジョージが 服を食われてしまう。その事実が示すのは、イモはすでに増えてしまったということ。しかし、単純に 増えたのではなく、スイートポテトクイーンとも言うべき最初の一匹から、ツルを伸ばして増えている はず。ならば最初の一匹を見つければいい。標的を最初の一匹に変更し、リナたちは再び探索を開始した。
 やがて一同は、村の共同貯蔵庫を発見する。おそらくクイーンはここにいるはずだ。中に入ってみると、 そこはイモの巣。ひとまず目に見えるところから片づけるべく、リナが呪文をぶつけると、その断末魔を 聞いて、人の二倍はあろうかというクイーンが姿を現した。クイーンは知能も発達しており、捕らえた兵士 たちを盾にして、リナを容易に近づけない。そのとき、リナにひとつの妙案が走った。リナはジョージに 足止めを頼み、その場から走り去る。
 精一杯がんばったジョージだったが、どうしても限界は来る。ジョージが身ぐるみはがれそうになった 時、特製ゴーレムの中に入ったリナが戻ってきた。ゴーレムの鎧を着ているような形で、リナはクイーンに 戦いを挑む。人をはるかに超える力のゴーレムの進行を止めるため、クイーンの意識がゴーレムに向いた その隙を逃さず、リナは呪文でクイーンを焼き尽くした。
 いくらか残っていた子イモも退治し、やっと事件は一段落。しかし、どうやらジョージはまだ、危険な 失敗作を隠し持っているらしい。リナと兵士たちは、ジョージのところに押しかけて、危険物を廃棄した 後に、ジョージのおごりでおいしいものを食べるのだと勝手に決めて、出発するのだった。


ここがポイント

 なにはなくても、イモ。今回の見所は、これに尽きます。
 人の想像をはるかに超えたイモ。これをイモと呼んでいいのか。いやダメだろう。ていうか、誰がこれを イモだと思うだろう。
 前の話もそうなのですが、ほぼ自由意志で蠢く植物を、すでに『植物』とは呼ばないですよねえ、普通。 さらに言うならば、「死んだ植物を栄養として摂取する」という行動は、本当のところ、植物の生命活動の 一環ではないのです。正確には、死んだ動植物は菌類や微生物に分解され、それを植物が吸収するのです ね。死んだ植物を栄養源にする以上、ヤツはすでに植物とすら言えなさげ。もうモンスター以外の何者でも ないです。
 そして、そのイモで妄想する男たち。わたしゃ男でないので、「一度は見てみたい触手っぽいものに 襲われる女の子」の感覚はよくわかりませんが、リナ限定なら見てみたい個人的に(こらこらこら)。 ていうかもしかして、隊長が協力を申し出た理由のうち何割かは、触手っぽいものに襲われる女の子を 見たいってのがあったんじゃあ……?(汗)それはともかく、こういうエッチっぽいネタが出たのって、 考えてみれば久しぶりです。最後に出たの、本編3巻の冒頭しか思い出せません。スレイヤーズは、リナの 露出度の低さに見られるように、非常に艶っぽいネタの少ない話ですが、だからこそ時おりこういうネタが 出ると新鮮に映るのかも。とはいえ、リナ、貞操の危機に遭ってませんけどね(笑)
 兵士に「よけいな想像」されて、顔が赤くなってるリナがグゥです。夜のオカズにはされてないことを 祈ります……。