『日常の中の』
モーニングスターを自動操縦モードに切り替えるとサミィは自室の浴槽にお湯を張った。
いつもはシャワーで済ませるのだが、時にはゆったりとつかりたくなる。
とくに今回もハードな任務で疲れきっているためにそれはなおさらだ。
「うん、いい湯加減。」
湯加減を確かめると、上機嫌で鼻歌など歌いながら会社支給のスーツを脱ぎ早速つかる。
「ふ―――」
湯船の中体を伸ばすと自然口から溜息が漏れる。
久しぶりのゆっくりとした時間をサミィはしばらく味わっていた。
ビ―――――――
艦内にブザー音が鳴り響いた。
通信が入ったようだ。
直ぐに湯船から上がりサミィがタオルに手をかけた時点でその音は鳴り止んだ。
モーニングスターのもう一人の乗員――イーザーが出たようだ。
サミィはしばし考え、タオルで水気をふき取った。
またあの社長が何か大変な依頼を受けたのかもしれない。
そう思うと気が重かったが行かない訳にはいかない。
しかし、そこで艦内の雰囲気が変わった。それは普通の人ならばきづかない様な微細な変化だが、普通の人よりも優れた感覚を持ちこのモーニングスターで寝起きをしているサミィにははっきりとわかった。
戦闘?
サミィはガウンを羽織るとブリッジへ急いだ。
「イーザー!?」
「サミィ、宇宙海賊だ。
要求がのめないと言ったら攻撃を仕掛けてきた。」
「そう。」
宇宙海賊程度ならば問題は無い。はっきりいってこのモーニングスターの敵ではない。装備課の人間が優秀だがかなりの趣味人でとんでもない装備がなされていたりする。
イーザーの指がパネルの上を華麗に滑り、敵の攻撃をかわし反撃する。
どうやら向こうは引き際が良いらしく戦力差を知って早々に逃げていく。
「サミィ、早く着替えたほうがいい。」
モニター類から目を離し、チラリとサミィを見やったイーザーが言う。
「あっ。」
サミィは自分の今の格好を思い出し少し焦った。
「髪も乾かしたほうがいい。
入浴後に体を冷やすと体調を崩す恐れがある。」
そんなサミィとは対照的にイーザーは淡々と続ける。
「・・・そだね。」
(もうちょっと別の反応があってもいいと思うんだけど。)
内心少しがっかりしたような、腹立たしいような気分でサミィは思った。
(・・・どんな反応してほしいんだろ?)
ふと浮かんだ疑問に答えは出ないが、この不器用な相棒が自分のことを心配してくれたことはわかっている。
髪もろくに拭いていないために雫が垂れてきそうだ。
「じゃあ、あと頼んだわね。」
サミィはブリッジを後にした。
敵艦が去ったことを確かめ、改めて安全の確認をしイーザーは手動から自動に操縦を切り替えた。
ふと、自分の脈拍数が平常よりもわずかに、ほんの少し上昇していることに気付く。体温も。
「?」
自分の体調の変化の原因が思い当たらず、小首を傾げるイーザーの姿がモーニングスターのブリッジ内に見られた。
〜fin〜 |