「ボクがボクであるために」(A5,28P)  .
  「キミがキミであるために」(A5,24P)  .

2004.5.3 2冊同時発行





 平和な日常の中、ひそかに忍び寄る悪魔のワナ。
 そして破られる、平穏な世界。
 愛し合う二人を、かつてない障害が襲う!
 戸惑いの声と切なる嘆き。その心を慰めるものは。
 ヒトは、己の一部が己あらざる存在になったとき、己を保持できるのか。
 それまでの絆は。想いは。どこへ行ってしまうのか。
 個のアイデンティティに問いを降らせる、衝撃の作品が今ここに!!
 (※予告はフィクションです)




 ――もしもあたしが、ある日死体になっちゃったら、どうする?
 こんな問いかけを、ガウリイにしてみる。決して考えたくない仮定。でもあり得ないことじゃない。
 きっと、彼は笑ってこう言うだろう。
 ――お前は、必ずオレが守るから。死体になんて、絶対ならないよ。
 ――じゃあ、もしもあたしが、あなたをキライになったら?
 おそらく彼は、やっぱり笑ってこう言うのだ。
 ――そんなこと、もっとあり得ない。
 悔しいけど、それは真実。だから、あたしも黙りこむしかない。
 ――――じゃあ。
 もしもあたしが……○○○になったとしたら――――?



 もっともそれならそれで、あたしとガウリイだけが焼きトウモロコシをほおばればいい話だ。あたしはすでに屋台の前にいるガウリイ目がけ、走りだし――
 ざばっっ!!
「きゃあっ、ごめんなさーーい」
 何をされたか気づいたのは、横から謝罪があがるのと同時だった。
 あんまり悪びれてなさそうな声が、なおあたしの怒りを誘う。
 一気に体温が下がり、前髪からしたたった、水の滴が目の前をよぎる。
 そう。このねーちゃん、あたしに水をぶっかけやがったのだ。
「こぉら!! どこ見て水かけ――――、!?」
 叫びかけて、思わず言葉を飲み込んだ。
 今、耳に届いたのは。
 ……聞いたこともない、声。誰の、声?

「ボクがボクであるために」本文より




「リナ、危ない!」
 ざばばっっ!
「……へ?」
 あたしの口から、吐息のような、間のぬけた声がもれた。
 水音。後ろにいるガウリイの、長い金髪から垂れる水滴。さっきまで、彼の隣を歩いていたのに、一瞬にしてガウリイの前に来ている位置関係。あたしの腰をつかんでいるガウリイの手。状況から、何が起こったかはすぐにわかった。
 ガウリイがあたしをかばって、あたしにかかるところだった水を、かわりにかぶってしまったのだ。
「あっ、ごめんなさ〜い」
 そして、聞こえてきた、悪びれてない謝罪の声。
 既視感(デジャ・ヴュ)。……たしか前にも、こんなことがあったような気がする。
 水が飛んできたであろう方向を、ギロリッ! とにらみつける。そこには予想通りの人物がいた。
 今回は、変装してもムダなことを悟っているのか、ふてぶてしくも元の姿のままである。
 あたしはそいつの胸ぐらを、思いっきり掴みあげた。
 黒い神官服が多少崩れたぐらいでは、そいつのニコニコ笑顔は崩れやしない。



 道行く人が次々と振り返る。
 そんな状況は、もはやあたしにとって、慣れっことなっていた。
 数年前までは、ものすごいカッコウの自称あたしのライバル実質金魚のフンだった女魔道士を見るために、老若男女問わず。昨日までは、美形である自称あたしの保護者実質半ヒモ男に見とれて、女の子たちが。
 しかし、今のように、振り返る人のほとんどが男、というのは、考えてみれば初めてである。
 その原因は、やはりあたしの自称保護者、けれど今はどこから見てもカンペキに女のガウリイ。

「キミがキミであるために」本文より




(↓カンタンな内容の紹介です。多少ネタバレですが、雰囲気を掴みたい方はどうぞ)
 難しいことは言わず、つまりは『オトコになったリナ』と『オンナになった ガウリイ』というお話です。それぞれ単体。同時に性別逆転とか、人格交換とかはよく見るのですが、 単体ってあんまり見ないなあ、と思ったので挑戦。
 上の文句では、なんかイロイロ書いてますが、結局はギャグです。肩の力をぬいて、カル〜ク読んで みてください☆

 イベント売りは、2004/5/3の、スーパーコミックシティ(有明ビックサイト)にて。おそらく単価は、 各200円程度かと。
 通販ですが、現時点では受け付けておりません。もしご希望の方がおられましたら、イベント終了後、 なんとか余力を見つけて受け付けてみたいと思いますので、どうぞお待ちくださいませ。
 (どぉぉぉしても、間違いなく来られない、という方で、「取り置いといて欲しい!!」という方は メールをください。その場合、キャンセルはご勘弁くださいね。……つっても、どーーせ余ることは目に 見えているのですが……)



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