シマクサマウスの繁殖


1996年9月から展示を目的としてシマクサマウスの群の飼育を開始しました。飼育には市販の衣装ケース(73×40×33)を使用しました。中の蒸れを防ぐためにふたの一部を切り取り、網にしてあります。
しかし、この衣装ケースは高さが33cmと低かったため捕獲の際に何度か逃げられることがありました。その後は、水槽(60×30×39)を利用しました。
隠れ家として文鳥用の巣箱を2つ入れました。巣材には、オガクズと乾草を入れました。乾草を巣箱に引き込みかなり細かくして巣にしていました。巣の中は、あまり汚さないので管理の面では楽でした。夏には、ダニの発生が心配なので乾草を、新聞紙に変えましたが、やはり細かく裂き、特に問題はありませんでした。
群の構成は、1ペアと亜成獣8頭の計10頭です。この群の中で成獣の♀に1996年9月から1997年2月の間5回の繁殖がありました。
特に、群の中で闘争などは見られませんでしたが、過密による繁殖の抑制が心配だったので、1〜2ヶ月齢の亜成獣を別ケージに分けていきました。しかし、常に群を維持するため必ず1腹分の頭数は残しました。その結果、多いときには16頭の群であっても、繁殖は可能でした。5回の繁殖のうち、出産間隔の最短は22日でしたので、妊娠期間21日といわれている事から、出産後すぐに交尾していると思われます。
 
仔は1度に3頭〜6頭生れました。生れた日にすでに縞模様があります。
シマクサマウスの子、0日齢
0日齢:すでに縞模様がある。

3日齢で毛が生えそろい、7〜8日齢で目が開きます。そして14日齢で固形飼料を
採食し始めました。この縞模様ですが、後日出産直前に死亡した♀を解剖したところ
胎児の段階で縞があることが判りました。
成長はゆっくりで4〜5ヶ月かけて成獣の大きさになりました。
野生下のシマクサマウスの繁殖シーズンは、年2回の雨期(4〜6月、9〜12月)に当たります。しかし飼育下では、ほぼ1年中繁殖が見られました。
また、野生下では♂の性成熟は2ヶ月半、♀は5ヶ月となっています。しかし飼育下では、4ヶ月齢の♀が繁殖しているので、♀に関しては3ヶ月で性成熟に達するものと思われます。
群内の繁殖は、1ペアとその仔で形成された群では、仔が亜成獣のうちは3〜4回の繁殖が可能と思われます。しかし、亜成獣のみで群を形成した場合3ヶ月齢を過ぎると、♀の発情に伴い♂同士の闘争が目立つようになりました。繁殖は確認されても、仔が育たないこともありました。現在飼育中の、A群では水槽(60×45×39)を使い、中には巣箱を2つ入れました。繁殖した時はすべて、8〜10ヶ月齢の成獣であり♂5♀4と群形成当初より頭数が少なくなったのも良かったと思われます。この群は現在♂3♀2仔5の計10頭になっています。
B群は、12月の段階でまだ5〜6ヶ月齢の個体ばかりです。4ヶ月齢で繁殖する個体もいましたが、普通、最初の繁殖は5〜9ヶ月齢と言われているので、今後の様子を見たいと思います。
C群は、1頭だけ9ヶ月齢の♀がいたので、おそらくこの♀が繁殖したものと思います。1月に2頭闘争により死亡していますが、これは、出産した♀によりやられたものと思われます。♀によっては繁殖後仔を守るためにか、気が荒くなり♂を殺してしまうことが数回ありました。その後仔も行方不明になっています。群の頭数や展示中だったので、その環境に原因があるのではないかと思います。
 
今回の繁殖でわかったことは
1.群の形態でも繁殖が可能なこと
2.胎児の段階で縞ができていること
3.1年を通して繁殖が可能なこと
4.♀が3ヶ月齢で性成熟に達するということなどです。
まだ、飼育年数が少ないので、これからの群での繁殖を観察していきたいと思います。
ネズミ類の展示場所
ネズミ類の展示場所

 
展示の面では、ケージ(60×45×39)の大きさで家族群なら16頭以上、成獣なら10頭前後の群飼育が可能です。そのため、多数をみせられること。薄暮または夜間に活発に行動するといわれるわりには、日中もよく動くこと。そして、高いところでじっとしていることが多いこと。など、展示に向いている動物だと思います。
 



1998年、第102回関東東北ブロックより