その女の子は、制服を着ているところを見ると高校生だろうか。
長年のものによる自然な日焼けだろう、褐色の肌が実に良く似合っていて、さらさらな髪をショートにまとめているのが健康な感じを受ける。
一体―――彼女は何を見つめているのだろう?
その女の子は、決して人の通りが少なくない道の真ん中で立ち止まり、じっと、じっと何かを待っているかのように空を見上げていた。
空は、午後から出てきた灰色の厚い雲に覆われ、今にも雨が落ちてきそうな様子だったが、これと言って特に変った様子は無い。
いや、この寒さを考えると雪になるかも知れないな……
ここ最近の冷え込みはそう思わせるのに十分な寒さで、道ゆく人の服装を見てもそれが伺える。
俺はそんな寒さも気にせずに、どんよりと曇った空を見上げ続けている女の子が、妙に気にかかってしょうがなかった……
そして、もう一度その女の子の方へ目を向けようとした。
すると、思ったとおり、空からはちらほらと白いものが舞い降りて来る。
この辺も、昔は積もる位に降った雪だったのに―――俺は近頃あまり見る事が出来ない雪に、少々新鮮な感じを覚えていた。
そうか……やっぱり彼女はこれを待っていたのかも知れない。
そう思い、俺は再び彼女の方へ目を向けると、一瞬だったが彼女の瞳と出逢った気がした。
「おい、信号青だぜ!」
「あ、ああっ」
いつのまにか信号が青に変っていたらしく、友達が立ち止まったままの俺を見て不思議そうな顔をしている。
「おっ、雪が降ってきたぜ。寒いから早く帰ろうぜ」
「そうだな……」
俺はそう答えながらも、もう一度だけ振り返って見たのだが、そこには既に、女の子の姿は無かった
あの時、一瞬だけ出逢った彼女の瞳には、天使の羽根が写っていた―――そんな気がした。
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