唐突ですが、私が目標とする恋愛小説家は、鮮やかな色使いで有名な「わたせせいぞう」氏です(一時ニュースステーションのオープニングを飾っていたのは有名)
え?「わたせせいぞう」さんは小説家では無いだろうって?
ごもっとも。
しかし、そんな事は些細なこと。
小説も漫画も物語が大事であって媒体は関係なし。
わたせ氏の代表作と言えば「ハートカクテル」などがありますが、素敵(ATSの最上級の讃辞の表現)な話ばかりで、センスの固まりと言う他はなし。
例えば、登場する車・カクテル・草花・煙草……等々、知識の豊富さと、その小物達の使い方が絶妙な世界を形成しています。
そう、チョコレートを作中に登場させるとしましょう。
小説の中で表現するならば、「ビターの利いた大人のチョコレート――」とか「銀紙に包まれた板チョコは、程良い甘さのホワイトチョコレートだった」などと書くかも知れない。
しかし、ちょっとこだわりを見せれば、「俺のポケットの中には、いつもの様にリンツの板チョコが入っている」(リンツ−外国の有名なチョコ)と書く。
ATS本人はリンツのチョコレートなど食べたこともありませんが、甘いだの苦いだの書く必要もなく、そのチョコレートが素敵な小道具に変身する瞬間です。
とは言ったものの、こんな事はどうでも良いと言う人が多いのも事実で、逆に、もっと良い表現を書かれる方も多いかもしれません。
しかし、チョコレートの名前がリンツであることに、センスを感じる人も多いのでは無いでしょうか?
どうして主人公(とは限らないが)は、こだわりを見せてリンツのチョコレートを購入しているのだろうか?と言った風に、想像力を働かせたくなるのは、やはりリンツだからだと思う。
そして、わたせ氏の漫画の中で出てくる小道具には、氏のこだわりが多く出てくるのです(注・チョコレートの話はATSのたとえ話です)
さて、だいぶ話しがそれましたが、そんなわたせ氏の作品の中に「菜(さい)」という、一風変わった作品があります。
これは、富田耕平と菜夫妻の日常生活を描いた何とものんびりした作品なのですが、実を言えば、この作品に出逢わなければ私はONE SCENE STORYを書くことは無かったかも知れません。
本は、講談社のモーニングKCDXと言う雑誌で連載されていた?(雑誌自体は読んだことが無いです)全編カラーの大きな漫画です。一冊1000円で12巻完結
この、菜(おしとやかで一昔前の女性という感がある)と、耕平(女性にだらしが無いように見えて、大事なところはキチンとある)の普通の生活を描いただけの漫画が、何故にATSにONEを書くきっかけになったのか?
それを説明するのは大変難しいです。
しかし、もしもATSが書いたONE SCENE STORYを読んで、何かを感じられる方ならば、この「菜」という漫画は絶対にお薦めです。
わたせ氏の漫画には、ONEのコンセプトでもあるちょっとした幸せの形が、センスと共にあるのです。
そう、この「菜」という漫画の中には、色々な季節の華が登場したり、現代人が忘れ去ろうとしている「暮らし」「季節」「暖かみ」があるのです。
ハッキリ言って、とてもではありませんが、今のATSにはこの様な素敵な作品を書くことなどはできません。
わたせ氏の経験や知識など、ATSがひっくり返ってもおよびが付かないのと一緒です。
しかし、ATSもそれに悲観ばかりはしていません。
若いならば、若いなりの作品を書けば良いわけで――そんな訳でONE SCENE STORYはつづいているのです。
でも、最終的な目標の一つには、この「菜」や「ハートカクテル」がある事は、疑いようもない事実です。
一度、立ち読み――は怒られるかもしれませんが、読んでいただければその良さが分かると思います。
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