「リナちゃんは乙女ちゃんなの、初めてだから優しくしてね☆愛のローリングサンダー
ブラックガウリイっっ!生殺し、身もだえ編一人でいっちゃイヤ」のはなし。
   〜その4〜


 とゆーわけで、やって来ましたセイルーン。2人っきりの障害(ひどすぎ)となるシルフィールともここでお別れ、また2人きりでリナと旅ができるのだ! やったぜオレ! とガウリイが喜び勇むもつかの間、再びここで彼らは厄介ごとにまきこまれる身となる。

 今度の事件の依頼主はセイルーンの第1王位継承者。”セイルーンのおうぢさま”とリナが一目惚れ、そしてリナは玉の輿、という事態は完全否定できて安心したものの、やはりこの騒動が片づくまでは、2人っきりになれなさそうだと野生のカンが告げている。ガウリイはむくれた。
 しかしその機嫌の悪さも、王宮に忍びこむために使う、自分とリナの黒装束(誰が用意したんだ?)を見ると同時にふっとんだ。

 (こっ、これはっっ………! もしかしなくても、嬉しはずかしペアルック!!?)

 もしかしなくても全然違うと思うのだが、恋に狂った男にそんな理屈は通用しない。
 かくて彼らは、セイルーン王宮へと乗りこんだ。いやはや、今回も先が思いやられる。







 最初のうちこそリナといー感じにペアルック(だから違う)できて浮かれていたガウリイだったが、悪いなガウリイ、これは生殺しの話なのである。そうそうおいしい思いができるというわけにはいかない。
 クロフェルさんの部屋に忍びこみ、用件を果たして、こっそり出ていこうとした時。彼らの侵入がバレてしまった。

 大急ぎで、入った場所と同じところから脱出を試みる。階段をかけ上がる時、普段はマントで隠れているリナのおしりが目の前でプリプリとふられてるという非常においしい光景を目の当たりにし、ガウリイの目がそれに釘づけになり鼻血たらしてた、なんてこともあったりするが、まあそれもご愛敬。

 そしてリナがガウリイを『抱いて』、浮遊(レビテーション)の術で宙に浮かびあがった!

 (おっしゃあぁあぁ、いーーー展開っっ!!)

 出会って間もない頃、ケガした彼女を運ぶためだというのにお姫さまだっこを嫌がるほどウブなリナが、唯一自分から抱きついてくれる数少ない機会がコレ。
 柔らかい身体が自らしがみついてくるという、まさに無上の喜びである。

 やはりオレの方からいくのが基本だが、たまにはリナからも来て欲しい。お互いきちんと積極的に意志表示してこその愛の営みなんだっ!
 ベッドの中でも時々はリナの方からしてほしいよな♪たぶん恥ずかしがってなかなかしてくれないだろうが、焦らしに焦らしたらやってくれるかもしれん。いやいや、もしかして、気分がのったらオレが頼まなくっても……

 まだリナの愛を確かめてもいないのに、全く気の早い男だ。

 そして、リナに抱かれているという至福の時は、あっとゆー間に終わりを告げた。

 「ちっ!」

 なんと空中に敵が出現。ガウリイは二重の意味で舌打ちした。

 (この……こんの、おジャマ虫があああぁぁぁ!!)

 …失礼。彼にはひとつの意味しかなかったようだ。

 リナ公認の貴重なべたべたタイムを中断された彼の怒りは深い。これ以降、急速にカンヅェルに対する憎しみや嫌悪が、逆恨みまじりで増していったのは、もはや言うまでもないであろう。
 しかも最終戦でのリナへのいたぶり。これだけ見れば、カンヅェルへの怒りは増すばかりだが、カンヅェルがリナを攻撃した際、そのおかげ(?)でなんと「悶えながら服をビリビリにされるリナ」を見られたのだ。いやまったく、世の中何が起こるかわからない。

 ガウリイのカンヅェルに対する感情がどんなものだったか。まあ怒りがほとんどだったのは確実だろうが、ほんのちょっとの感謝があったかどうかは、さすがに筆者の想像を超える。








 この後彼らは、フィルさんと共に王宮へ向かう。表向きは第1王位継承者の客人である2人、とーぜん泊まる部屋を個別にもらうくらいの待遇は受ける。

 (ちぇ…リナと一緒じゃないのか…)

 当たり前だ。表向きはともかく実質護衛として来てる2人組を、同じ部屋に入れるほど城の人間もバカじゃない。そんなことしたら、魔法一発で戦力は全滅ではないか。
 その危険を思いつかないほど真っ先に、”若い男女とくればひとつ部屋”なんて考えるのは、おせっかいなおばちゃんか熱烈なガウリナファンだけである。

 しかしそこは悲しい男の性、隣の部屋にいるリナの気配をチラチラうかがっていると。

 (―――!)

 物音と、かすかに感じる増えた気配。敵襲だ。
 急いで剣をひっ掴み、リナの部屋の扉をたたく。

 「リナ! どうした!?」
 「――ガウリイ!」

 返事をするリナの声は、かなりせっぱつまっている。非常事態に間違いない。
 カギのかかっているドアを斬り、なんとか部屋へ飛びこむ。

 「なっ、何だっ!?」

 部屋に入ってガウリイは驚いた。そこに予想していたリナと敵の戦闘シーンはなく、ただ真っ黒な闇がわだかまるだけ―――

 (オレの、オレのパジャマ姿リナはどこだっっ!?)

 この非常時に、何を考えているのだろうこの男は。

 まあ確かに、しょっちゅう盗賊いぢめに行くリナのところへ夜訪ねても、ムダ足になることが少なくない。しかもリナは寝る直前まで着替えないから、それこそ夜ばいくらいしか彼から起こせる行動はないだろう。

 そんな中、やっと巡ってきたチャンスだったのに。
 彼は落胆の色を隠しきれないまま、リナのそばへ向かった。

 「ぶじか? リナ」



 腕をつかみ、声をかけるとなんと、なんとリナは『黙ったままでガウリイの胸に顔をうずめる』!



 (リリリリリリ、リナァァァァ!!?)

 ガウリイ君、すでに頭はパニック状態。
 そりゃあ確かにこれまでも、リナが抱きついてきてくれたことはあった。しかしそれには必ず理由があり、運搬か戦闘中かのどちらかだった。

 こんな、ケガして怯える小鳥のような、「怖かったの、ガウリイ…」とゆー囁きを期待してもいいような、おいしいシチュエーションの時は一度もないっっっ!!

 涙声でこわかったと、もしくはオレが来て安心したと、リナが言ったらオレは優しく「大丈夫だ」と言ってやろう。その声でリナは身体の緊張を完全にとき、オレに全てを預けるのだぁっ! まだ警戒中だから、最後まではいけないだろうが、おやすみのチュウくらいはもぎとってやるぜ今この場でえええ!!!

 しかし、彼の妄想に反して、リナは何も言ってこない。

 「……おい、リナ、ほんとうにだいじょうぶか?」

 お前の声を聞かせてくれ、リナっっっ!!

 けれどこの時、リナの喉はズーマによって潰されており、声は出なかった。
 ガウリイがカンヅェルの時と同じく、逆恨みも含めズーマに激しく怒りを覚えたのは想像に難くない。その証拠に、ガウリイはこの後もズーマと戦闘の時は必ず一騎打ちをすることとなる。







 やがてリナが虫に襲われ、リナが狙われているとわかりガウリイはしごとの中止を訴えたが、リナは考えた結果そうしなかった。前向きな彼女の姿勢はガウリイの好きなリナの姿であるが、やはり心配で仕方ない。
 特にズーマは絶対リナに相手をさせず、リナを守るナイト役に徹してきた。

 心臓に悪すぎたカンヅェルとの戦いも終わり、全ては大団円。今、リナはベッドの上で、カンヅェル戦で傷ついた身体の大事をとるため休んでいる。

 ベッドの上というだけで、リナの仕草ひとつひとつが、オレを誘っているようにしか見えないっ! ああもう、傷は完治してるんだから、押し倒してやろうかちょうどベッドの上だし!! 今回は珍しく、オレも最後まで活躍したんだ、これっくらいのご褒美はあってもバチ当たんないっっ!!

 生殺しが続いて飢えた男は見境がない。ベッドはベッドでも、ここは病院のベッドだ。そーゆーシチュエーションは、男性向エロ本かあだるとおんりーの同人誌でないと許されない。

 じゃれあい夫婦漫才ができるほどリナも回復し、カンヅェル戦で味わった絶望の分だけ、彼は幸せをかみしめていた。これでまた、苦難の道ではあるが”目指せリナ=インバース獲得ツアー”リナと2人きりの旅の日々が始まる!!

 はずだった。

 「ということで、あなたたちについて行きますから。よろしく」

 『病室のベッドに横たわるリナと2人きり』をジャマしていて、ガウリイがひそかに恨みがましい視線を送っていたのにも気づかないアメリアの口から突然とび出た、予想外の同行宣言。

 冗談じゃない。ここだけじゃなく、これからもジャマする気か!? オレとリナの2人っきりの愛の旅路はどうなる!?

 ガウリイは心の中で、必死にアメリアを説得しようとしているリナを応援した。
 が、しかし。アメリアは一向に意見をくつがえそうとしない。

 「……説得は無理みたいだぞ……」

 『目を点にして』、ガウリイはその事実を認めた。いや、認めざるをえなかった。すでに諦めることに慣れきった男は、何がどうなら諦めねばならないのか、よく知っていたのである。
 かくして、またもやガウリイは、「リナと2人っきりの、チャンスを狙え! 目指すはクリーンヒットの旅」に失敗するのだった。これまで2人きりの道中でもなかなか進展しなかったのに、プラスαがいては進むものも進まない。彼は1人心の中で、恒例となった濁流のような涙を流すのであった。


   ブラックサンダーガウリイごーごーっっ♪
   リナちんを汚すぅ、その日のために、日夜闘い続けるお〜と〜こおお〜♪♪
   ごーごーごーごーっっ♪♪♪






 リナはズーマが退散した後、ガウリイの胸に顔をうずめていた。彼と背中合わせになって構えるでも、もっと視界のいい場所に移るでもなく、だ。
 これは、もしズーマがまだいたとしたら大変な行為だ。視界が悪くて逃げることもできず、ガウリイの腕の中で足手まといになってしまう。
 にもかかわらずこのような行動をとったのは、喉を潰されて魔法が使えないのにズーマという強敵がすぐ近くにいるという恐怖から、ガウリイなら守ってくれるという信頼の顕れだろう。

 これがいつ、恋心に発展するのか。ガウリイだけでなくガウリナファンをもヤキモキさせるのんき娘・リナの道中の先は長い。




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