「リナちゃんは乙女ちゃんなの、初めてだから優しくしてね☆愛のローリングサンダー
ブラックガウリイっっ!生殺し、身もだえ編一人でいっちゃイヤ」のはなし。
   〜その2〜


 さて前回つまり原作1巻では、10日あまりかけて得たのが己の認識の甘さのみという情けない男に徹したガウリイ=ガブリエフ。2巻ではどんなマヌケっぷりを披露してくれるのか楽しみにしてる読者も世界に3人くらいはいるかもしれない。何せご協力いただいたS女史、繰倉来女史両名に感想をうかがったところ、2人ともまるで示し合わせたかのように「続き〜〜!」と異口同音におっしゃり、筆者は非常に驚いている。

 話を元に戻そう。前回は物語の中盤辺りから始まったこのおちょくりだが、今回はなんと序盤から見事なネタが出てきてしまった。すでにガウリイ、初登場のキザなカッコつけが見る影もないぞ君ってやつは。

 今度の話は食堂のケンカで幕を開けた。普段ならば「食堂の客 その1」という名もない役で終わるところをちゃっかり出番増やしていったランツくんがこの原因である。彼がリナのおしりをさわり、トレイの角で頭なぐられたのがこの第1回緊急食堂大武道会の発端となったのだ。
 ここでリナは、面倒事を避けテーブルの下でとっておいた料理をつついていた。途中からしか見ていなかったガウリイは、このテーブルの下でリナから事情説明を受ける。

 「あいつ、あたしにコナかけてきて、あげくにおしりまでさわったのよっ! おしりまでっ! しかも”タダでっ”!」
 「……じゃあ、料金を払えばさわってもいいのか?」

 リナがイエスといえば、金払ってさわるつもりだったのか。まったくこれでは、おさわりバーに通うエロオヤジと大差ない。
 もっとも仮にリナがOKサインを出したとしても、手持ちだけで、家屋敷使用人を買い一生遊んでくらせるほどのおつりが来るくらい財産をもっているリナのことだ。ガウリイがいくら馬車馬のよーに働きボロキレのよーになったところで、傭兵業ごときでは一生かかっても払いきれない額を呈示されるのは目に見えている。

 となればおそらく、ガウリイがリナのマネをして盗賊襲って金品をまきあげようとする(笑)のは想像に難くない。アトラスシティ近辺の盗賊のみなさんは大変である。ドラまただけでなく、下半身仁王立ち男(下品だな表現が)の相手までしなければならないというのだから。まあ今の時点では、ガウリイはリナのその習慣を知らないので、どうしたかはわからないが。

 だが盗賊のみなさんには幸運なことにそのような展開にはならず、リナはぷりぷりランツにさわられたことを怒りまくっている。

 「しかし、あと少しがまんしてりゃあよかったんだ。そうすりゃあオレが代わりに、もっと穏便にはり倒してやったのに」

 確かに彼にまかせれば、他の無関係な食堂の方々はなにごともなく本日の食事を終えることができただろう。だが、ランツ自身はどうなるか、幸いにしてそれを語る時間はもうない。
 嘘である(一度やってみたかった)。ランツはどうなるか、はっきり言って考えたくはないというのが正直なところだ。まさかいくらなんでも生きながら皮をはぐ等、悪シュミな拷問まがいのことはやらんだろうが、自分より先にリナのおしりにさわったことに対する、真っ黒に染まった、後ろにジョーズのテーマでも流したら似合いそうな怒りと、リナのすぐそばにいながらふれることもできないストレスを一身にあびたランツが、なかなか血生臭い姿を披露してくれるのは、火を見るより明らかだ。少なくとも、リナにどつかれた今回の場合のように、”見るも無残なご面相”ですむわきゃないのはまず間違いない。

 後にリナ達を捜していたためロッドの虐殺劇から一命をとりとめ、(2巻の話なのに後ネタの3巻の話を引っぱってきて申し訳ない。筆者が未熟と笑ってくれ)コピーレゾ事件の時サイラーグに来ていたにもかかわらず奇跡的に生きのびた(リナ達と会わなかったら、観光に来ていた彼はサイラーグごとオダブツだったはずだ)ランツのラッキーボーイ(ボーイって年じゃないけど)としての幸運は、まずここから始まっていたといえよう。






 その後、タリムのボディーガードを引きうけ、デイミア邸へと潜入したリナとガウリイ。罠にかかり、その身はみごと水の中へとまっさかさま。
 じつはリナは、泳ぎがあまりうまくない。いやもちろん泳ぐことはできようが、どーもふいに水へ落ちるとそれほど器用に対処できないようである。

 この状態がガウリイには、今回最大の天国と地獄であった。

 水におちて気がつくと、リナがまったく動かない。気を失ったと判断し、彼女を抱えて泳ぎだす。とりあえずなんとか落ちつけそうな場所まで運び、リナをそこへ横たえた。しかし、明かりがなくてどんな状態なのかわからない。幸いにも、リナは間もなく目を覚ました。

 「光よ!」

 リナの唱えたライティングの光が、あたりを照らしだす。

 (――――こっ、これはあああぁぁぁぁ!!?)

 暗かった時には見えなかったものが、まざまざとガウリイの目にとびこんできた。それはなんとも目に痛い、濡れネズミのリナの姿である。髪が濡れて額や首筋にはりつき、それがめちゃくちゃ色っぽいのだが、それよりガウリイの狼部分を『ていていていっっ!』とゆーほど刺激したものが別にあった。
 彼女が今着ている上着を思いだしてみてほしい。”この街で新しくあつらえた、ミルク色の貫頭衣”である(P15参照)。つまり白系。ここまで言えば懸命な読者のみなさんならばおわかりいただけると思うのだが………



 白い服は、ぬれるとスケる。           よく見つけたね



 (リナァァァァァ!!! そっ、それを隠してくれえええぇぇぇぇ!!!!)

 いくら上にローブとマントを羽織っているとはいえ、故意に隠さなければ服の白い部分は見えないはずがない。チラチラと見える肌に、ガウリイの目は完全に釘づけ状態だ。ときどき見える服ごしの肌。見えるか見えないか微妙な胸。さすがにびっちょりぬれてても、胸の一番肝心かなめな部分はしっかりローブの下である。それでもリナが身動きするたび、ローブも揺れて何度も何度も惜しいとこまで見え隠れするのだ。

 ああもう少し、あとちょっとというとこで。いやだがしかし、見えたが最後、理性をおさえ続けていられる自信はない。でもここでリナに服がスケてるなんて言ったら、竜破斬(ドラグ・スレイブ)確実じゃないか! ここは黙って見守るしかないっ! それにこんなチャンスはめったにないぞお!! はっ!? そういや、オレの服も濡れてるんじゃなかったか!? マズイ、下半身の状態がリナに丸わかりになってしまう!! たえろ、たえるんだオレの●★@∇〜〜〜!!!!(ホントにいーのか、このシリーズ表にこのままあげといて)

 「……あなたね、人の話、聞いてるの?」
 「――なんで?」

 聞いちゃいない。
 ぜんっっぜんまったくカケラも聞いちゃいない。そんな余裕はとうの昔に光のかなたへ消え失せた。心の動揺をおさえ、リナに気取られないようにするので精一杯なのだ。案外キャパシティの小さい男である。
 しかし彼は頑張った。まさに紙一重で、ガウリイの理性は勝利をおさめたのだ。

 「とりあえず、この服をなんとかしなくちゃなァ……」
 「まあね。このままじゃあ風邪ひいちゃいそうだし……」

 ああ、やっぱり気づいていない。リナもなんと罪な女であろうか。もっとも筆者はげったげったとえびらたたいて笑い転げているが。

 ここで理性に余裕が出たのか、はたまた鬱屈された欲望の仕返しか、ガウリイはとんでもねえセリフを口にした。

 「パターン通り、服を脱いで、体で暖めあうか!」

 とことんまでオヤジセンスの冗談である。こんなことを言おうものなら、セクハラで訴えられて100万ドルとられても、文句言えないではないか。マニキュアの色をほめる程度でセクハラになるという考え方には賛同しかねるが、このセリフは人に聞けば十中八九、セクハラおやじと言われてもしかたがない。
 とはいえ、オヤジと呼ばれるのはこれを冗談で言うヤツである。いくら白くて透けた服を見せつけられた直後とはいえ、欲望の解消じゃといわんばかりにおそらく半ば本気でこんなセリフを吐く男、人それをムッツリスケベと呼ぶ。

 運よくリナは、ガウリイがそのムッツリスケベであることには気づかなかった。まあ本気で言ったからこそリナの呪文詠唱に慌てたわけだし、この場はこれでよしとしよう。






 も一度濡れるのがイヤという理由で水の中へ落とされたお返しに、ガウリイはリナを水の中へ引きずりこんだ。まるでカッパのような所業だが、彼はカッパでもないのに水へ落としたリナを溺れさせてしまったんである。
 しかしとーぜん、これはガウリイには予想外の結果だった。急いでリナを引っぱりあげる。だがこの時、一回目とはまるで状況が違っていた。みなさんもお気づきであろう。リナの「明かり(ライティング)」がいまだ有効ということだ。

 ほのかな明かりに照らされる水に濡れた躰。先程と同じく、布が肌にはりついてスケている。しかも相手は意識がない。おまけに上は人がいるけど、そいつはちょっとキ●(ピー)ガイだ。それ以外には誰もいない。じつはこの時、ハルシフォムがプールの中にいたのだが、さすがにそこまでは気づかえない。

 さあ、彼の忍耐がためされる時間がやってきた(笑)

 もちろん今のうちならば、何をやってもリナが知りうることはない。ああだけど、リナとのふぁーすとたーいむがこんな、溺れた彼女にちょっかいかける形でいいのか!? 意識のない相手に手を出す、それほどオレは飢えてるとゆーのか!?(そのとーりじゃねーか)
 あああ、だがっっ、さっきも言ったがこんなチャンスはめったにない!! ちくしょうふれてみたい! んっ、ふれる!?

 (そーいやさっき…)

 この部屋に落ちる時、自分一人だけ助からんというよーな冗談をとばしたリナにしがみついたときのことを思いだす。

 ―――こらっ! 変なところを……

 変なところ!?

 それではさっきさわったあの柔らかいムニッとしたのは「変なところ」だったのか!? どこだいったい、胸か!? わき腹か!? それとも大ヒット(おいおい)か!!? うおおぉぉぉ、こんなに真実を知りたいと強く強く思ったことがこれまでにあっただろうかいやない!! この手で確かめたいと思う男心を誰に止めることができるとゆーのだ!! ああっ!! だが、だがしかし、今のリナに手を出してしまったらあぁぁぁぁ………!!!

 苦悩するガウリイを哀れに思ったのか、ここで運命の女神は一石を投じた。ガウリイは、リナの呼吸がやけに静かなことに気がついたのだ。
 もし万一呼吸が止まってしまえば、もちろんリナは死んでしまうだろう。応急処置が必要である。

 そう。ここでリナに人工呼吸、すなわち口うつしで空気を送るのはきわめて合法、天もそれを認めてる! すばらしき太陽、ありがとう世界、これぞまさしくハレルーーーーヤ!!! さあいざゆかん、未開のキス……もとい人工呼吸の大地へ―――!!!

 だが、『人命救助』をたてに欲望を燃やす男に未来はない。いや、この世界の『運命の女神』という存在がもしもL様だったとしたら、予想通りの結末というべきか。
 律儀にも本当に人工呼吸をしようとガウリイがリナの鼻をつまんだ(鼻から空気がもれてしまうので、本番の人工呼吸では相手の鼻をつまんでふさぐ)その時。

 「う……」

 リナのまぶたがわずかに動き、続いて顔をしかめた。
 ガウリイ思わずリナを再び横たえ、ジーコのようなポーズでひたすら悩む。

 こんな反応する以上、すぐにリナは目を覚ますだろう。というか、むしろまたもや鼻なぞつまんで口ふさいだら、いや鼻は置いといてキスでもしようものなら、間違いなく目をさますってことだな!?

 オレがいったい何をしたというんだああああぁぁぁぁぁ…………!

 ガウリイの声にならない雄叫びがうるさかったとでもいうようなタイミングで、リナは目をさましたのだった。

 「しかし、人工呼吸までしてやったってぇのに、その言い草はないだろう」

 なんと寂しい男だろうか。自分が運命にからかわれたことにいじけ、ほんとにあったように言うことで己の願望がかなった気になろうとは。
 こんなセリフにも赤くなるリナのウブさを再認識し、ガウリイは胸中で大きなため息をつくのだった。

 なお、この後、水中で呼吸できる魔法の存在をすっかり忘れていたリナを水にほうり込むとき、二度あることは三度あれとばかりに喜々としてガウリイはリナを抱きあげたことをつけ足しておく。おそらくはこの機会を虎視眈々と狙っていたのだろうが、そううまく事が運ぶわけはない。さすがに3度もリナが気絶するわけはなく、ガウリイの心は彼らの身体よりもびしょぬれになるほど涙を流すのであった。


   ブラックサンダーガウリイごーごーっっ♪
   リナちんを汚すぅ、その日のために、日夜闘い続けるお〜と〜こおお〜♪♪
   ごーごーごーごーっっ♪♪♪







 ハルシフォムの屋敷へ忍びこむ際に一人で行こうとしたリナを当然ガウリイは心配した。本気なので心配していると口に出すのを照れるガウリイと、冗談なので「あたしに惚れたな」と真顔で言えてるリナがやけに対照的だ。
 しかしリナとて、箸にも棒にもひっかからない相手にこんな冗談を言うとは思えない。これがたった一筋の、ガウリイの光明ということか。
 酒と泪と男と女。本来の演歌とはだいぶ違うが、これが今回のテーマだったといえる。




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