さて前回つまり原作1巻では、10日あまりかけて得たのが己の認識の甘さのみという情けない男に徹したガウリイ=ガブリエフ。2巻ではどんなマヌケっぷりを披露してくれるのか楽しみにしてる読者も世界に3人くらいはいるかもしれない。何せご協力いただいたS女史、繰倉来女史両名に感想をうかがったところ、2人ともまるで示し合わせたかのように「続き〜〜!」と異口同音におっしゃり、筆者は非常に驚いている。 話を元に戻そう。前回は物語の中盤辺りから始まったこのおちょくりだが、今回はなんと序盤から見事なネタが出てきてしまった。すでにガウリイ、初登場のキザなカッコつけが見る影もないぞ君ってやつは。
今度の話は食堂のケンカで幕を開けた。普段ならば「食堂の客 その1」という名もない役で終わるところをちゃっかり出番増やしていったランツくんがこの原因である。彼がリナのおしりをさわり、トレイの角で頭なぐられたのがこの第1回緊急食堂大武道会の発端となったのだ。
「あいつ、あたしにコナかけてきて、あげくにおしりまでさわったのよっ! おしりまでっ! しかも”タダでっ”!」
リナがイエスといえば、金払ってさわるつもりだったのか。まったくこれでは、おさわりバーに通うエロオヤジと大差ない。 となればおそらく、ガウリイがリナのマネをして盗賊襲って金品をまきあげようとする(笑)のは想像に難くない。アトラスシティ近辺の盗賊のみなさんは大変である。ドラまただけでなく、下半身仁王立ち男(下品だな表現が)の相手までしなければならないというのだから。まあ今の時点では、ガウリイはリナのその習慣を知らないので、どうしたかはわからないが。 だが盗賊のみなさんには幸運なことにそのような展開にはならず、リナはぷりぷりランツにさわられたことを怒りまくっている。 「しかし、あと少しがまんしてりゃあよかったんだ。そうすりゃあオレが代わりに、もっと穏便にはり倒してやったのに」
確かに彼にまかせれば、他の無関係な食堂の方々はなにごともなく本日の食事を終えることができただろう。だが、ランツ自身はどうなるか、幸いにしてそれを語る時間はもうない。 後にリナ達を捜していたためロッドの虐殺劇から一命をとりとめ、(2巻の話なのに後ネタの3巻の話を引っぱってきて申し訳ない。筆者が未熟と笑ってくれ)コピーレゾ事件の時サイラーグに来ていたにもかかわらず奇跡的に生きのびた(リナ達と会わなかったら、観光に来ていた彼はサイラーグごとオダブツだったはずだ)ランツのラッキーボーイ(ボーイって年じゃないけど)としての幸運は、まずここから始まっていたといえよう。
この状態がガウリイには、今回最大の天国と地獄であった。 水におちて気がつくと、リナがまったく動かない。気を失ったと判断し、彼女を抱えて泳ぎだす。とりあえずなんとか落ちつけそうな場所まで運び、リナをそこへ横たえた。しかし、明かりがなくてどんな状態なのかわからない。幸いにも、リナは間もなく目を覚ました。 「光よ!」 リナの唱えたライティングの光が、あたりを照らしだす。 (――――こっ、これはあああぁぁぁぁ!!?)
暗かった時には見えなかったものが、まざまざとガウリイの目にとびこんできた。それはなんとも目に痛い、濡れネズミのリナの姿である。髪が濡れて額や首筋にはりつき、それがめちゃくちゃ色っぽいのだが、それよりガウリイの狼部分を『ていていていっっ!』とゆーほど刺激したものが別にあった。
いくら上にローブとマントを羽織っているとはいえ、故意に隠さなければ服の白い部分は見えないはずがない。チラチラと見える肌に、ガウリイの目は完全に釘づけ状態だ。ときどき見える服ごしの肌。見えるか見えないか微妙な胸。さすがにびっちょりぬれてても、胸の一番肝心かなめな部分はしっかりローブの下である。それでもリナが身動きするたび、ローブも揺れて何度も何度も惜しいとこまで見え隠れするのだ。 ああもう少し、あとちょっとというとこで。いやだがしかし、見えたが最後、理性をおさえ続けていられる自信はない。でもここでリナに服がスケてるなんて言ったら、竜破斬(ドラグ・スレイブ)確実じゃないか! ここは黙って見守るしかないっ! それにこんなチャンスはめったにないぞお!! はっ!? そういや、オレの服も濡れてるんじゃなかったか!? マズイ、下半身の状態がリナに丸わかりになってしまう!! たえろ、たえるんだオレの●★@∇〜〜〜!!!!(ホントにいーのか、このシリーズ表にこのままあげといて)
「……あなたね、人の話、聞いてるの?」
聞いちゃいない。
「とりあえず、この服をなんとかしなくちゃなァ……」 ああ、やっぱり気づいていない。リナもなんと罪な女であろうか。もっとも筆者はげったげったとえびらたたいて笑い転げているが。 ここで理性に余裕が出たのか、はたまた鬱屈された欲望の仕返しか、ガウリイはとんでもねえセリフを口にした。 「パターン通り、服を脱いで、体で暖めあうか!」
とことんまでオヤジセンスの冗談である。こんなことを言おうものなら、セクハラで訴えられて100万ドルとられても、文句言えないではないか。マニキュアの色をほめる程度でセクハラになるという考え方には賛同しかねるが、このセリフは人に聞けば十中八九、セクハラおやじと言われてもしかたがない。 運よくリナは、ガウリイがそのムッツリスケベであることには気づかなかった。まあ本気で言ったからこそリナの呪文詠唱に慌てたわけだし、この場はこれでよしとしよう。
ほのかな明かりに照らされる水に濡れた躰。先程と同じく、布が肌にはりついてスケている。しかも相手は意識がない。おまけに上は人がいるけど、そいつはちょっとキ●(ピー)ガイだ。それ以外には誰もいない。じつはこの時、ハルシフォムがプールの中にいたのだが、さすがにそこまでは気づかえない。 さあ、彼の忍耐がためされる時間がやってきた(笑)
もちろん今のうちならば、何をやってもリナが知りうることはない。ああだけど、リナとのふぁーすとたーいむがこんな、溺れた彼女にちょっかいかける形でいいのか!? 意識のない相手に手を出す、それほどオレは飢えてるとゆーのか!?(そのとーりじゃねーか) (そーいやさっき…) この部屋に落ちる時、自分一人だけ助からんというよーな冗談をとばしたリナにしがみついたときのことを思いだす。 ―――こらっ! 変なところを…… 変なところ!? それではさっきさわったあの柔らかいムニッとしたのは「変なところ」だったのか!? どこだいったい、胸か!? わき腹か!? それとも大ヒット(おいおい)か!!? うおおぉぉぉ、こんなに真実を知りたいと強く強く思ったことがこれまでにあっただろうかいやない!! この手で確かめたいと思う男心を誰に止めることができるとゆーのだ!! ああっ!! だが、だがしかし、今のリナに手を出してしまったらあぁぁぁぁ………!!!
苦悩するガウリイを哀れに思ったのか、ここで運命の女神は一石を投じた。ガウリイは、リナの呼吸がやけに静かなことに気がついたのだ。 そう。ここでリナに人工呼吸、すなわち口うつしで空気を送るのはきわめて合法、天もそれを認めてる! すばらしき太陽、ありがとう世界、これぞまさしくハレルーーーーヤ!!! さあいざゆかん、未開のキス……もとい人工呼吸の大地へ―――!!!
だが、『人命救助』をたてに欲望を燃やす男に未来はない。いや、この世界の『運命の女神』という存在がもしもL様だったとしたら、予想通りの結末というべきか。 「う……」
リナのまぶたがわずかに動き、続いて顔をしかめた。 こんな反応する以上、すぐにリナは目を覚ますだろう。というか、むしろまたもや鼻なぞつまんで口ふさいだら、いや鼻は置いといてキスでもしようものなら、間違いなく目をさますってことだな!? オレがいったい何をしたというんだああああぁぁぁぁぁ…………! ガウリイの声にならない雄叫びがうるさかったとでもいうようなタイミングで、リナは目をさましたのだった。 「しかし、人工呼吸までしてやったってぇのに、その言い草はないだろう」
なんと寂しい男だろうか。自分が運命にからかわれたことにいじけ、ほんとにあったように言うことで己の願望がかなった気になろうとは。 なお、この後、水中で呼吸できる魔法の存在をすっかり忘れていたリナを水にほうり込むとき、二度あることは三度あれとばかりに喜々としてガウリイはリナを抱きあげたことをつけ足しておく。おそらくはこの機会を虎視眈々と狙っていたのだろうが、そううまく事が運ぶわけはない。さすがに3度もリナが気絶するわけはなく、ガウリイの心は彼らの身体よりもびしょぬれになるほど涙を流すのであった。
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