急性肝炎記


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08-27
 朝起きようとすると、全身に鈍い痛みと倦怠感。とても仕事どころではなくて、休んでかかりつけの医者へ。とりあえず採血検尿ののち、肝臓機能の低下と診断され点滴を受ける。血液検査の結果は明日になるためこの日は帰宅。
 深夜、痙攣のような発作と死ぬような吐き気に襲われ、家族の車で市民病院の夜間受付へ。
 しかし、そこでは特に異常は認められずと診断され、発作押さえの薬を処方され帰宅。

08-28
 やはり動けず、休んで再びかかりつけの医者へ逝く。別室で再び点滴を受けようとしていたとき、看護婦が昨日の血液検査の緊急FAXを持って慌てて飛んできて開口一番「ohkaさん、死んじゃう死んじゃう。入院入院」
 いくら顔なじみとはいえ、看護婦が「死んじゃう」とか言っていいのかと思いつつ、医師に話を聞くと、肝臓機能が異常で、一刻を争う状態なので即埼玉医大へ緊急搬送するように連絡をつけたとのこと。そのまま着の身着のまま毛呂山へ運ばれるところだったが、頼み込んで5分だけ家に寄る。小松屋のBBSはimodeでも扱えるので、未対応のBBSに「緊急入院する」とだけ書き、GBAとポケモンルビーを引っつかむ。どんなになにがあろうが、ゲームと一緒なら俺は大丈夫。急ぎPCを落とし扇風機も止め、そのまま埼玉医大へ。
 医者からFAXが届いており、埼玉医大では比較的スムーズに入院措置が取られる。内臓器科肝臓管轄下の病室は空きがあるのが個室しかなく、目の届かないところには置けないとのことでその個室へ叩き込まれる。
 両腕に点滴やら色々刺され、足の甲からは採血され、管だらけになる。
 夕方、メールで連絡していたのでkiiがくる。(今のkiiの住処から埼玉医大は歩いて5分なのだ)
早速GBA用ゲームを持ってきてくれる。
 実はこのとき家族とkiiが会って、少しばかり話をしたらしい。俺は寝てて知らなかったのだが、家族は医者から「このまま意識混濁が進んで戻らなかったら、覚悟していてください」位のことを言われていたらしい。そのせいか、家族の表情は相当にアレだったようだ。

08-29(多分)
 なんだかんだ水曜から今日までずっとおかしかったせいで曜日の感覚が非常にあいまい。
 個室にはテレビがあるのだが、せこいことにこれが有料。しかもカード式なんだが、1000円で1000ポイントで、その1000ポイントで800分視聴可能という煮え切らなさ。とはいえテレビが見られるのは助かる。この日は雷雨だった(と思う)ので、その関連ニュースが多いような。

 さて、このときの俺の容態を、血液検査の結果から追ってみる。

採取日時 8月28日 8月29日 9月1日 基準値
AST(GOT) 3386 1254 80 10-40 代表的な肝機能の指標。肝細胞障害で血中に逸脱するが、骨格筋、心筋、赤血球などの破壊でも上昇をみる。
ALT(GPT) 3080 1882 590 5-45 肝細胞の破壊に伴い血中に逸脱する酵素。AST(GOT)よりも肝に特異性が高く、肝炎の病勢指標に用いられる。
LDH 642 231 142 0.3-11.44 肝臓のミトコンドリアに含まれる酵素。M-GOTより半減期が長く、肝疾患のモニターに有用。
ALP 265 254 243 100-325 肝・胆道疾患をはじめとする各種病態で上昇を示す酵素。
ガンマGTP 466 412 314 80 肝・胆道系障害のスクリーニングに用いられる検査。肝ミクロゾームでの薬物代謝に関与する酵素で、胆汁うっ滞や、アルコール性、薬剤性肝障害で上昇する。
CHE 2938 2797 肝疾患におけるアミノ酸代謝異常の重症度を判定する検査。
フィッシャー比を簡便に測定するもので、肝性脳症で低値に。
T-BIL 4.7 3.7 1.9 0.2-1.1 ヘモグロビンやポルフィリン体の分解産物。総ビリルビンとその分画は、肝疾患の診断、黄疸の鑑別などに重要な検査。
D-BIL 3.8 3 1.5 0-0.5 肝でグルクロン酸抱合を受けたビリルビン。総ビリルビンとともに、肝疾患の診断、黄疸の鑑別などに重要な検査。
TP 5.9 5.5 5.6 6.7-8.3 栄養状態と肝・腎機能の指標。肝硬変やネフローゼによる低蛋白血症で低下し、脱水や多発性骨髄腫で上昇。
ALB 3.6 3.2 3.3 3.8-5.3 肝臓で合成される水溶性の蛋白質。血中の主たる輸送体蛋白だが、栄養状態の悪化や肝障害の程度を反映して低下する。
CRP 0.88 1.14 0.63 0.5 代表的な急性相反応物質。炎症性疾患や体内組織の崩壊がある場合に血中で増加し、炎症マーカーとして用いられる。
PT-% 27 51 119 75 血液が固まるまでの時間、肝機能に障害が生じると血液が固まりにくくなる。

 これが数値的な俺の容態だそうだ。いちばんやばいのはPTの値で、これが50を下回ったままで意識混濁がおきるようだと劇症肝炎で、こうなると治癒はしないので肝移植しかなく、ドナーが居なかったら死亡確定。
 この日、医師と家族とを交えて話をし、以上のような内容をきかされる。気分は良くないな。この日から右腕の点滴を外してもらえる。通常の点滴と注射は左手のみになり、ようやく立って歩けるようになった。注射といっても、いちいち針は刺さず、点滴の途中にあるコネクタに針の無い注射筒を挿して薬液を注入する。これがまた一回に500cc以上色々入れるので、薬液のせいで左腕の温度が下がって冷たい。

08-30(多分)
 このような入院状態でも0600に目が覚めるのは不思議な話だ。起きてさっそくテレビをつけると番組が違う、っていうか今日土曜日か。 日々、注射と採血とが繰り返されるので曜日の感覚が無くなるな。びっち見てみるも見て。
 朝ドクターが来て、話をする。とりあえずすぐ死ぬかどうかという状況からは脱したのだが、だからといってすることもなく。 看護人たちの隙を見て院内の売店へ逝ってみる。何しろろくに読む本もなく、GBAやる以外は暇なのだ。
 この売店の場所というのがまた曲者で、埼玉医大そのものが、がけっぷちに建て増しを繰り返したダンジョンになっており、俺の居る内臓器系南館病棟8Fからは、一旦1Fに降りてから半地下通路をとおりまた5番館の1Fに上がらないといけない。点滴カートを持ってのこのこ歩く。
 売店についてみる。うわー、これ売店ていうか山屋だよ山屋(注※いわゆる田舎コンビニ。乾物やらゼリー状のお菓子やらカップ麺やらちり紙やら洗剤やらが売ってる田舎の店。ohka的には祖母の家の近所にあった山屋に見える)。本を買いに行ったのだが買う本もほとんどなく、泣きながら今日の料理とレタスクラブを購入して戻る。
 夕方家族が来ている時に(毎日来ている)kiiが来る。頼んでおいたアルカディアと、追加のGBAソフトがやってくる。ていうかこれ入院中にやりきれないよ。
 種見る。痔悪化がどんどんかっこよくなるなぁ。しかもなんだか、遺作と出会ってブルーなところに愛しのミリィがたずねて来たっぽいし。

08-31(多分)
 寝るのが早いせいか起きるのも未だ0600時。日曜は見る番組がわりと早朝からあるのが助かる。普段ならなーじゃまで見たら出かけちゃうのだが、流石にそうもいかない。
 結局俺の症状としては、投薬と時間以外になす術もなく、ただひたすらに大量の薬を投与し肝臓が持ち直すのを待つばかり。
 たとえばだけど、かさぶたの後とかひきつれがずっと残るのあるよな。あれって皮膚とかの代謝があってもずっとそのままなんだけど、あれと同じようなのが肝臓に出来ると、肝臓自体は100日弱で全部組織が入れ替わる臓器なんだけど、その悪い部分だけは代わらず残っちゃう。面倒な話だ。んで俺の場合も、とりあえずは持ち直してるけどなにかおかしいとそれがのこるかもしんない。これは時間がたたないとわかんないから、どうしようもない。
 ponkenがくる。おみやげは模型誌とめがみまがじん。ていうかなんですかこのめがみまがじんとか言う本は。中身の半分もわかんないですよ。いまはこういう本が売れてるの?

09-01(多分)
 普通の日は、朝起きてメシ喰ったあとはゲームとテレビくらいしかすることもなく、つまらないワイドショー系は見ないので、必然的にニュースやはなまるまーけっとばかり見ることになる。
 ドクター曰く、とりあえずは病状も回復しつつあり、多少数値が不安な点が(ALTが下がらない)あるが、遠からず退院できそうな話を聞く。
 ようやく左手の点滴も外してもらえる。看護人が針を引き抜くと、銀色の筈の針の色が何故か真っ白で俺的にギョッとする。なんで白?
 お昼。飯を食う。病院食は結構パンの日もあり、そのわりにはおかずの類がマッチしていないのが多くて閉口する。特別な制限がかかっていないので、恐らく一番普通の食事が出ているものと思われるが、たとえばある日は、メシ、菜っ葉と桜海老のおひたし、野菜の煮物、切り身一切れ。塩分7gという枠内ゆえに味が薄いし飲むものはお湯かお茶。体にはいいだろうがわびしい。

09-02(多分)
 退院の見通しが立つ。金曜まで平気だったら土曜で出られそう。
 ひたすら安静にしてすごす。
 家族は毎日きてくれる。

09-03-05
 退院まで休む日々。俺的にはもう平気な気がするのだが、予断は許さないらしい。とはいえ、医師も驚くほどの速度で回復しつつあり、このまま何も無ければ土曜で退院か。

09-06
 遂に退院。あまり多くも無い荷物をまとめ、午前中で病室からおさらばする。

 この日の夜は、家族で一緒にごはんを食べにいきました。