彼女は、精神的外傷─トラウマ、その悲しい記憶を引きずり今まで生きて…いや、存在し続けてきた…。
アンにはかつて、アルビア皇国の海軍将校ヴァイルという恋人がいた。
2人が出会ったのは、ドルファンとアルビアとの海事安保条約が締結された約70年前。
その年の7月、ドルファン港に停泊していたアルビア軍船の乗員であったヴァイルが、
波止場でチンピラに絡まれていたアンを助けたのが始まり。
それから約1年後。アンはヴァイルに求婚され、これを快諾した。
2人はアルビアへと向かったが、彼女らを乗せた船はエドワーズ島沖でハリケーンに巻き込まれてしまう…。
多くの犠牲者を出したこの海難事故の犠牲者の中にはヴァイルもいた…。
この事件後、アンの名前は戸籍から消えている。
しかし、アンは彼女にとって無意味な「止まった時」の中で存在し続けている…。