そこはパルメという小さな山あいの村。
日が地平線にかかるころ、二人の少女が宿を出てきた。それぞれの手に無骨な木刀を持って。
宿の裏手に人気がないのを確認し、双方向かい合って木刀を構える。
カンッ。
「腰が甘いわ。それでは大岩一つ斬ることはできないわよ…」
「そんなもん斬らなくていいですっ。っていうか、求めるレベルが高すぎますっ」
「あなたね。大岩一つ斬れなくて、「剣で大根の輪切り」「剣でコピー本の編集」「剣でブラックバス釣り」更には「奥義・剣で一徹返し」ができると思ってるの?呆れたわ…」
ソフィアは考え込む。相変わらず、押しに弱い。
「だ、大根の輪切りぐらいなら…」
「やってみせて」
ライズはポケットから丸々と肥えた立派な大根を取り出した。
「…って、どこにしまってあったんですかっ」
「ポケットだけど?」
「…もういいです…」
「はい、剣」
「うわあっ。ぬ、抜き身でポケットにしまわないでくださいっ」
「注文が多いわね。さっさとしたら?話が進まないわ」
「だったら常識的な行動をとってくださいよ…もう…そんなだから某*波とか言われるんですよ……」
ぶつぶつ言いながらも、素直に大根を切りはじめるソフィア。普段母親の手伝いをよくやっているためか、手際はよい。剣は長いのでやや扱いにくそうではあるが。
輪切りになった大根をライズはつまみあげつぶやく。
「うすいところと厚いところがあるわ。なってないわね…」
「お姑さんみたいなこと言わないでくださいっ」
「あ、こんなところにまだホコリが」
「ノらないでくださいっ」
「ゴホゴホ、いつも済まないわね……迷惑ばかりかけて……」
「お父っあん、それは言わない約束でしょ?」
「あら、あなたの父親は病弱じゃなくて、ただの飲んだくれでは?」
「きつ…」
「真実とは常にシピアなものよ」
「だいたいあなたは、一ヶ月年下のくせになんでそうヒネてるんですかっ」
「1ヶ月なんてそうたいした差ではないわ」
「もやしが2回も作れますっ。はつかねずみなら成人しますっ」
「…そう言われると差があるような気がしてきたわ…」
ライズもややごまかされやすい。
「そうでしょう?だからこれからは仲よく、年相応の会話を」
「わかったわ、ソフィアお姉様」
「うっ!」
「どうなさったの、ソフィアお姉様」
「さ、さ、寒いです…なんか、すっごく……ううう」
ソフィアは自分を抱きしめる格好でがたがた震えている。
ものすごく気の毒である。
「あら、目下の者に丁寧に話す必要などありませんわ、ソフィアお姉様」
楽しそうである。
「す、すみません。ごめんなさい。私が悪かったですっ」
「わかればいいのよ」
素に戻って言い放つ。
「うう、「もっとソフィアに優しくしたれよライズ」とか感想掲示板で言われてませんでしたかぁ…?人の話聞く気あります?」
「私の行く手を阻むつもりなら、まずは剣で戦って勝つことね」
「…いちいち、物騒なんですよね」
「文句あるの?」
「いっぱいあるんですけど」
「そう…さあ、練習を始めるわよ」
「シカトかいっ!」
ライズは「問答無用」とばかりにソフィアを睨む。
「やるの?やらないの?」
「…やります…いえ、やらせていただきます…」
こうして少女たちの戦いの日々は暮れていく…。
後書き
パロです。ライズがソフィアをいじめております(^^;)
いやー苦労するわソフィア。パーティ内唯一の常識人だもんね。
はつかねずみが成体になるのは生後45〜52日間です。
正確には「性成熟する(20日間)」ですが、ソフィアに「性成熟」と言わせるのはなんかいやだったので表現を変えてあります。
それにしても、こっちのほうがみつナイRに本当の意味で近いな(笑)。ライズが(^^;