自分の名はシロー。 シロー・ムラサメである。国籍はスィーズランドということになっている。
自分を拾い、育て上げた「幽鬼のミーヒルビス」の異名をとる養父がスィーズランドに居たためにそういうことになった。
が、ドルファンに来てからはしきりに「東洋人」と言われるため、スィーズランド生まれというのはそろそろ撤回しようと思っている。
まあいい。
ヴァルファバラハリアン最強の八騎将「雷鳴のギルバート」とは自分のことだ。
愛刀「村雨」で数々の勇将たちを数限りなく屠ってきた。 …既に引退したが。
自分の後釜についたのはガキらしい(しかも弱い)。
ヴァルファを抜けた理由はまあ、ありきたりだが嫌気が差したからだ。 養父には悪いが思想的についていけなかった。だからといってドルファンについた訳ではないが。
……。
正直に言うと食っていく金がなかったのだ。
文無しで辿り着いたのがドルファンだった。
相棒であるピコは此処で傭兵やって荒稼ぎしようと自分に提案した。それに乗ったまでの話である。
付け加えればドルファンの最前列部隊にいればヤツの情報もすこしは手に入る。
ヤツというのは…、ま、いい。
それよりだ。自分は今、シーエアー地区にある兵舎にいるのだが、実を言うと3日前から何も口に入れていなかった。
「クッ、飢餓状態がこうも長引くとは…。ピコ、自分は死ぬかもしれん」
「だーじょうぶ、そんなこっちゃキミは死なないわよ」
「…」
死ぬ。 というか死なぬはずが無い。
ピコは自分を何だと思っているのか。
「キミは斬っても刺しても煮ても焼いても凍らせても潰しても砕いてもぜぇ〜ったい死なない、あたしが保障するよっ!」
「…んな保障いらん」
どこから来る確信だ。自分はフツーの人間だぞ。
「そう思ってんのはキミだけだって」
「自分の考えてることを読むのは止めろ!」
「はーいはいはーい」
「ぬう…」
ふざけている場合ではない。
実際問題かなり危険な状態だ。目はかすんでるし、しわがれた声しか出ない。体も思うように動かせなかった。
自分はこのまま死ぬのだろうか…。
コン、コンコン
死を限りなく身近に感じた時(戦場にいる時よりもだ…)、 特徴的なノックが部屋に鳴り響いた…。
続きます。
主人公とハンドルがかぶってるのは好きなネーミングだからです。 他意はありません。