第1話「告白の後先」


 船室に戻って最初に聞こえたのはピコの声だった。

「どうしたの?ふらっと出ちゃって」

「たまにはそんな気分の時もあるのさ」

 そう、本当にそんな気分だった。傭兵の悲しい所の一つに戦争が終わると用済みと言うのがある。確かに彼シロウも良く解っているし慣れてもいる。だてに長年傭兵をやってはいない。しかし今回は違っていた…。

「ねえねえ」

「ん?」

「あの約束どうするの?」

「と言うと?」

「病気を克服したら迎えに行くとかなんとか言ってたけど?」

「ああ、あれね。ってお前まさか!」

 ある意味解っていたのだがやはりピコに見られていたらしい。

 確かに波止場であんなことやってりゃあ見られて当然だ最も見ていたのはピコだけでは無いだろうが

 とてつもなく大きな後悔の念にかられながら「全く…」と言うのが精一杯だった。
 

数日後。

結局、我々はとりあえず近くの国に送られただけだった。最も、全員を希望通りの所に送るのは時間的に無理があったのだろう。急遽可決された法律だから仕方がないだろうけど。

「で、どうするの?」

「とりあえず、生活ができる用意をしておかないとな」

 一応、金はあったので宿を取ってから仕事と家を探した。仕事はすぐに見つかったが、家は結局見つからず、宿に戻ることになった。

 夕食も済ませ、宿で考えごとをしていると、

「シロー何考えてるのー?」

「ん?ああ、あの約束のことだが」

 恐らく、セーラの運命はほぼ決まっているだろう。多分、あのまま一生病気と付き合うことになるだろう。そして人形のように、何もなく、ただ過ぎていくだけの日々を送ることになるだろう。

「迎えに行けると思う?」

「多分無理だろうな」

 ついでに考えると、今や自分と彼女の間にはかなり高い壁がいくつもある。排斥法のことはもちろんのこと、考えればキリがないくらいだ。実現しようものなら、奇跡を通り越して神の意志としか言い様が無いほどだった。

「じゃあなんであんなこと言ったの?」

「あの性格からして間違いなく自殺しかねんものがあったからだ。それにセーラには少しでも生きる希望を持って欲しかったからだ」

 それが一人の人間として、そして彼女を愛した男としての最後のやさしさだった。


後書き

 

はっきりと言いましょう。マジでキツイです。

と言うのも、新社会人である私が夜中にこんなの書いていると、だんだんと生活のリズムが崩れていくのが実感できます。

しかしこれを書いているのは 結構楽しい物があります(もちろんお話作りも)。だからこそ続けられるのです。

あと、このお話は続きがあるので楽しみにしてくださいねー。


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