二章「虚名の終焉」


「さて、君たちの悪行の数々は聞かせてもらった」

「悪行てのはなんだよ、悪行ってのは」

私の言葉にかみついたのは巨漢ジョン、これで十五歳だそうだ。

どうやら自覚はないらしい。これははっきりと言ってやらなければなるまい。

「神父襲撃」

「う……」

リイノの顔が引きつる。

「焼き肉パーティー襲撃」

「あう……」

今うめいたのはマリア、教会の娘だそうだ。

「失敗したことばっかり……」

今度はレベッカが反論する。内容に反して不満そうな口調ではない、極めて平板な声だ。考えてみれば彼女の声をきいたのはこれが初めてだ。

「成功したことなどあったのか?」

「………」

レベッカは沈黙する。

「お前達、学校の成績は惨澹たるありさまだそうだな。安心しろ明日から私が責任をもって指導してやろう」

 

謁見の間。

ここはむしろ昔よりきらびやかになったようだ。聖騎士の名を先王から授けられた時に来たきりだが、昔はこのような成金趣味ではなかった。

「………でありますので、近頃の貴国のご高名を聞きおよび聖騎士の名は私には過ぎたものと感じました。それゆえ聖騎士の名をお返しすることをお許し下さい」

ワルガキどもに課題を押し付け閉じ込めた後、私は一路王宮へと向かった。

ジョージ王との謁見は驚くほど簡単にできた。聖騎士の名はこの国ではまだまだ重いようだ。

「いいよ、そんなに重荷だったとは知らなかった。あのお方も罪なことをなされる」

暗君、愚王などとさんざんな評判を聞いていたがジョージ王は一見なかなかの好青年に見えた。だが評判は決して間違いではないだろう。

言葉の端々に軽侮がみてとれる上に、どうやら私の言葉の裏が読めないらしい。

この男は自分の国の評判をしらないのか?

「じゃいいよ、帰って」

「それでは失礼します」

私はもう関心がなくなったらしいジョージ王と、凄まじい目つきで睨んでいる重臣たちに背を向けその場をあとにした。

 

「…………………甘かったか」

みごとに逃げられてしまった。

「しょせん嬢ちゃんぼっちゃんだと思っていたが意外に思いきりがいい」

四人を閉じ込めていた部屋にはまったく手付かずの課題が散乱しており、カーテンでつくられたロープが窓から垂れている。

「ふっ、だが逃げられると思うなよ」

私は窓から飛び降り追跡を開始した。


後書き

 

雹磨「さて、あとがきだ」

リイノ「ちょっとちょっと、いきなり何?」

雹磨「うむ、作者が前回の後書きを読み返して悶絶してな、我々が代りをすることになった」

リイノ「まあ、たしかにあれはひどかってけど、今更?」

雹磨「まあそう言うな。まず設定の変更だが私はやはりゲームの主人公と同一人物で、ティピのことは忘れている事になった」

リイノ「まあ、そうしないとただでさえ薄い原作とのかかわりが皆無なるからね」

雹磨「あとは、この作品のイメージだが。参考にしたのは、小説板イース、バハムートラグーン、西風の狂詩曲、だそうだ」

リイノ「毎回ふられる主人公、ヒロインにふられる主人公、しょっぱなに婚約者に見限られる主人公、なんか偏ってるねえ」

雹磨「そうだな、その上作者は西風の狂詩曲をやっていない」リイノ「あ!西風の狂詩曲っていえば……」雹磨「ん?どうした?」

リイノ「なっ、何でもないよ!読者のみなさん、これからも応援よろしくお願いします」

注「西風の狂詩曲のエンディングの一つに婚約者(その娘)エンドがあります」


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