「ドルファン、我が愛しき大地」

作者:Odd Eye


「ドルファンは美しいわね」

 彼女がポツリと呟く。

 口調はそっけなく、その瞳には何の感慨も見えないが、彼女が船中で最も複雑な感情を抱いているのは分かっている。

 返事はしない。

 潮風が吹く。

 彼女の振りほどいた髪が頬を撫でる。その心地よい感触に身を任せていた。

 出航してから、もうどれくらい経っただろうか。

 あたりを見渡してみても、見えるのは海と雲ばかり。海は静かに凪いでいる。空は青く澄んでいる。

 自分の内面とは関係なく、穏やかな天候にふと苛立ちを覚える。

 そんな、自分の変化にふと気づき自嘲する。

 

 (やれやれ、らしくない)

 12の時に剣を手にして10年以上。その間に傭兵として5つの国を放浪した。

 背中をまかせられる戦友や、恋人といえる女性もいた。

 契約が切れ、彼らと別れ、その地に背を向けることも割り切ることができた。

 自分にとっては今回もそんな慣れることはできないが、特別ではない一幕になるはずであった。

 いつもと違うのは隣に彼女がいることだろう。

 だが、それとて自分にとってこの国を特別に感じる理由にはならないだろう。

 認めなくてはならない。自分がどうしようもなくこの国に惹かれていることに。

 ドルファンは決して自分のような外国人には住みやすい国ではない。だが、確かにこの国を愛していたのだ。

 自分の故郷にさえ感じなかったことだ。

 たとえ、彼女と出会わなくても自分はこの国に惹かれたであろう。

 それは、別の状況で彼女とあっても彼女に惹かれるであろうことと同じだ。

 「この国に残りたい」それこそ自分の本心である気がした。

 

「ドルファンは美しいわね」

彼女は今度はこちらを見据え、はっきりと言う。

それに対し、素直に「ああ」と肯定する。

「そう」

彼女はいつものように視線をそらしながら答える。

だが、口調に最初会ったころのような淡白さはなく、やさしい感じがした。

そしておもむろに大声で叫ぶ。

「待っていろ、ドルファン。俺は、俺達は必ずここに帰ってくる!」

隣で彼女は微笑んだ。

それは、はじめてみる彼女の微笑だった。

序章 完


後書き

 

はじめまして、Odd Eyeと申します。

初めて小説を書きました。インターネットは始めたばかりでまだアドレスもありません。

このページは適当に検索をしていて発見しました。

初めてづくしで至らない所が多いと思いますが、なにとぞ温かい目で見やってください。

この小説については、書いているうちに説明ばかりのものとなってしましましたが、

次回からはもっと簡潔になっていく予定です。

ちなみにどれくらいで終わるかは未定です。

そもそも、物語はまだ始まってもいませんので(笑)。

さて、主人公は東洋人傭兵(名称未定)とライズとの話として考えています。

次回は数年後を舞台に再びドルファンに戻ってくることを予定しております。

拙い文章ですが目ぐらいは通してやってください。 

よろしくお願いいたします。


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