わたしにはきになるひとがいます
わたしにはきにかかるひとがいます
わたしには・・・・・だいすきなひとがいますやさしいひとです
とてもやさしいひとです
しんぱいになるほどやさしいひとですでもつよいひとです
いつもわらっていられるつよいひとです
そして
ひだまりのようにあたたかなひとですそのひとにはおとうとがいます
おとうとにはかのじょがいます
かのじょとのことを かれのちちおやは いいかおをしてないそうです
いえがらがつりあわない それがりゆうだそうです
そのことでよくけんかをするらしいですおとうとですらこれです
ましてやあのひとは ちょうなんで いえのあととりになるひとです
つりあういえがらと おとこのこをうめるじょうぶなからだをもつおんなのひとを
ひつようとするひとですわたしのおやは さらりーまんです
つきのものは さいごにいつきたかもうおぼえてません
つりあういえがらもない こどもをうめるからだもあるかあやしい
そんなわたしがもしこのおもいをつたえたら
もし つたえてしまったら・・・・・・・・・たぶん こまらせてしまうでしょう
ずっといっしょにいたくて そのひとのそばにいたくてしかたなくなりそうで
どんなにいっしょにいても たりなくなりそうで
でも それは・・・ゆるされないわがままだからわたしには あのひとがあまりにもまぶしすぎるのです
すがたをいつわり いままでひとをあざけることでしか じぶんをまもれなかったわたしには
ひだまりのように やさしく つよいあのひとが あまりにも
そんなわたしには あのひとを・・・すきになるしかくなど ないにきまってるんです
だから・・・・・・あのひとをこまらせたくありません
あのひとをかなしませたくありません
あのひとは わたしにえがおをくれました
やすらかなきもちをくれました
わすれていた『おいしいきもち』をおもいださせてくれました
だから わたしのわがままで あのひとのほほえみをくもらせたくありません
このおもいは むねのなかにしまっておくのです
ずっと ずうっと おはかのなかまでもっていこうとおもいます
この いちどだけのわがままをしたら・・・
時計は午前二時半。俗に『丑三つ時』と呼ばれている時間。
こんな時間に起きてるのは夜間営業の方か泥棒、もしくはネットに精を出す人くらいだろう。
普通の人ならまず眠っているこの時間。
気づかないことを前提としてのたった一度の『わがまま』を実行するにはちょうどいい。
部屋の明かりを消し、窓を開ける。暖かくなってきたとはいえ、夜風はまだまだ冷たい。
目を閉じ、意識を集中させる。思いを文字に紡ぎだす。
QINDの秘技、『デンパ・メール』。任意の人物に意思を伝える技。
ただしその文面はすべてカタカナのため、人によっては不気味がるものもいるらしい。
その秘技を発動させるべく、暗闇の中で一人、彼女は精神を統一させていた。
ごめんなさい。身の程知らずだってわかってます。だからこの一回だけ、一回だけ許してください。
これを送ったら、二度とこんなことはしませんから。
あなたが、家柄がつりあい、健康な子宮をもつ女性に心から愛されますように、
あなたが大切に思う人たちの幸せの確立がほんの少し上がりますように。
アナタガスキデス
・・・・・・これでいい。おそらく寝ているあの人は気づかない。
もしも気づいて目が覚めたとしても、『変な夢』で片付け、すぐに忘れるだろう。さようなら。次に目が覚めたらいつもの『エキストラ』に戻りますから・・・・・・。
翌日、彼女はその長い髪をばっさりと切った。
そして、いつもの仲間のからかいにも哀しげな笑みを浮かべるだけだった、という…。だいじょうぶ・・・・・なれているから・・・・・・
いつものように するだけだもの・・・・・・・・