何気なくつけていたラジオから流れてくる歌声。ただのBGMに過ぎなかったそれにいつしか心を奪われている。
しかし、肝心なところは聞き逃していて、歌手の名前も曲のタイトルも結局分からずじまい。
いつしかどんな曲だったのかも忘れてしまい、漠然とした感動と悔しさだけが残っている。
そんな経験はないだろうか?
運が良ければ、偶然その曲に再会することもあるだろう。その点、私はとても幸運だった。
なにしろ、たった一枚のCDに昔聞いたあの曲たちのほとんど全てがつまっていたのだから。
たった一人の人間が歌っていたのだから。新居昭乃という人の作る歌は(こういう言い方をするのを、ご本人はいやがっているのだが)、一言でいってしまうとメルヘンであると思う。
ただそれは、夢や希望にあふれた光の世界を描いているという訳ではない。昔々の童話のような、夢や希望と等価に絶望や残酷さが描写されている、生きていることの縮図の世界なのだ。
そして、影が濃ければ濃いほど、光もまた強く輝くことを教えてくれる。
だから新居昭乃という人の歌は、夢や希望だけを声高に歌い上げる曲にはない静かでやさしい深さがある。
だから、彼女の歌が好きだ。
もっとも、こんなものは後から無理やりこじつけたもので、一番最初に彼女の歌を聞いたときの心が震えるような感動は、私のつたない文章では到底伝えることができないのかもしれない。
それでも。
この想いの一片だけでも。
これを読むことで、新しい感動を見つけてもらえることができたならば。
本当に久しぶりに愛の深度を更新するにあたって、この場所をつくった理由をふと思い出した。
新居昭乃さんの公式HPはこちらアルバム収録曲の試聴もできます。
またFM Nack5(79.5MHz)において、毎週日曜23:30〜24:30に放送中の『VIRTUAL ADVENTURE EAST』の中に、昭乃さんのコーナー『新居昭乃のViridian house』があります。聞ける方はぜひどうぞ。