風杜鈴音は大正時代の女流作家で、本名を望月妙子という。
私の好きな小説家の一人だ。風鈴と言う私のHNも彼女の名前からいただいたのだし、このHPのタイトルにしても、彼女の著作の題名からの引用だ。
もっとも、正直なところ彼女の作品を私はほとんど読んだことが無い。祖父の遺品を整理している時に見つけた『月の雑音』と『扉』だけだ。出版社も聞いたこともないものだし、本人も有名ではなかった(ほとんどの方がはじめて聞く名前だと思う)。
古本屋を何軒巡っても、唯の一冊も見つけることがなかった。
元々は華族の家柄だったのが、かたくるしい生活に嫌気がさして家出したらしい。そのせいか、彼女の文章からは非常に強い自由へのあこがれが感じられる。
そして、狂気。
それはさりげなく文章のいたるところに潜んでいて、不意に読者の心に囁きかける。
向こう側から手招きするのだ。艶やかな笑みを浮かべて。
彼女の作品のタイトルに月の文字が多いのもあながち無関係ではないだろう。
『月の雑音』のヒロインである峰岸ゆかり嬢の言葉が印象に残る。「あら、あなた様が此方側にいないという保証は何処にも無いのでしょう?」
彼女はそう言って、冷たい月光を身体に浴びながら哄うのだ。