セイバーの踏み込んでの一撃を、かろうじて払う。それだけで両腕が痺れたっていうのに容赦なく第二撃が胴を薙いだ。
「ぐ、ふっ!」
激痛に意識がふっ飛びそうになるのを必死で堪える。セイバーは攻撃の手を休めていない。胸元に衝きこまれる竹刀を無理矢理腕で払う。竹刀を構えなおすのに連撃が一瞬止むと油断したのがまずかった。
「──がっ!?」
セイバーの肘が、鳩尾にめり込んだ。呼吸ができない。たまらず膝をついた。
「最後は油断しましたね、シロウ。敵が武器のみで戦いを挑むとは限りません」
「ああ……身にしみた」
ようやく呼吸ができるようになって、喘ぐようにそう応える。今のはかなり効いた。
「では、今日はここまでにしましょうか」
セイバーに手を貸してもらって起きる。ううむ、セイバーの方が圧倒的に強いとはいえ、情けない。よろよろとしながら居間へ向った。
「飲み物をもってきましょう。シロウは少し休んでいてください」
あんまり気分が悪そうにしてたのが気になったのか、珍しくセイバーがそう提案してきた。お言葉に甘えて、セイバーを見送る。
「シロウ、この瓶に入っているのは飲み物でしょうか」
瓶? いくらセイバーでも醤油は持ってこないだろうし。
──ああ、そういや藤ねぇがなんか御歳暮の余りとか言って持って来たのがあったな、そう言えば。確かフルーツジュースだったっけ。
「ああ、それ頼む。冷えてないだろうけど、まあいいや」
「わかりました」
そう言いつつセイバーがお盆に乗せて来たのは水だった。俺の所に1つ、次いで自分用に1つ置いて座る。
はてな?
「セイバー?」
「何か?」
まぁ、いいか。喉が渇いてるから水でもありがたい。あおるように飲み干して──
「ぶー!?」
日本酒だった。げほげほむせる。ああ、そういや朝ちょっと料理に使ってそのままだった。
「慌てすぎです」
「いや、そういう問題じゃなくて……」
言葉が止まる。セイバーのコップは既に空だった。すくっと立ち上がる。
「あー、セイバー?」
「いえ、大変美味しかったので、もう一杯」
酔った様子はないのだが、どこか変だ。って、瓶ごと持ってきやがった。
どっぷどっぷと自分のコップになみなみと注ぐ。
「……セイバーさん?」
「あ、申し訳ありません。気付きませんでした」
そう謝りつつ、少しだけ減っていた俺のコップを一杯にした。
「いや、あの」
「……私が差し出した物が飲めないと?」
うわー。
目が据わってるー。
くいっとあおる。豪快に一気飲みだ。どっぷどっぷと三杯目。
くいっ どっぷどっぷ。四杯目。
「おーい」
恐い。
「シロウ、何故飲まないのですか。大体シロウは私の忠告を一切聞かない。ちょっとそこに座ってください」
「いや、座ってますが……」
「聞いているのですかシロウ」
だんっ と勢いよく一升瓶をたたきつける。
「……聞いています」
「前々から思っていたのですがそもそも貴方はマスターとしての自覚が足りなさ過ぎるいえそれだけではない私は確かに貴方のサーヴァントだしかし貴方よりも戦い慣れしている訳でこと戦闘においては私の助言が勝つ為に必要不可欠だというのに貴方ときたらいつもいつも自分勝手に行動してそれをフォローする私の身にもなってほしい聞いていますかシロウ」
「聞いてマース……」
うう、最悪だ。説教癖かよ。
くいっ どっぷどっぷ。五杯目。アホみたいなペ−スだ。
「シロウも飲みなさい」
「いや、俺はちょっと」
「飲みなさい」
「……」
「飲みなさい」
「……はい」
遠坂ー、助けてー。くいっ どっぷどっぷ。六杯目。
「前々から思っていたのですがそもそも貴方はマスターとしての自覚が足りなさ過ぎるいえそれだけではない私は確かに貴方のサーヴァントだしかし貴方よりも戦い慣れしている訳でこと戦闘においては私の助言が勝つ為に必要不可欠だというのに貴方ときたらいつもいつも自分勝手に行動してそれをフォローする私の身にもなってほしい聞いていますかシロウ」
「聞いてますけどねー」
さっきと同じ事言ってるしなー。くいっ どっぷどっぷ。七杯目。
「前々から思っていたのですがそもそも貴方はマスターとしての自覚が足りなさ過ぎるいえそれだけではない私は確かに貴方のサーヴァントだしかし貴方よりも戦い慣れしている訳でこと戦闘においては私の助言が勝つ為に必要不可欠だというのに貴方ときたらいつもいつも自分勝手に行動してそれをフォローする私の身にもなってほしい聞いていますかシロウ」以下、遠坂に止められるまでエンドレス。