「使うなセイバーっ!」絶対の危機に風王の結界を解いたセイバーを、令呪が止めた。
アーチャーを失い、遠坂はバーサーカーに捕われ、だが、それだけは止めなければならなかった。使えばセイバーが消える。「な──どうして、もうこれしかないではないですか、シロウ……!」
セイバーはしかし、剣を開放しただけで膝をついた。今のセイバーじゃあの剣は使えない。
ならば、俺がお前の使える剣を用意してやる!──剣を想像し創造せよ。
誰にも負けないモノを作れ。
最強のイメージを想え。
全てを、自分さえも騙しうる最高の模造品を──!難しい筈はない。
不可能な事でもない。
元よりこの身は、
ただそれだけに特化した魔術回路──!
虎竹刀ができました。
「………………………………」
「………………………………」
「………………………………」
「………………………………」痛い! みんなの視線が痛い!?
「お、おおおおおおおっ!」
視線に耐えられないっ
できちゃったモノは仕方ないじゃないか! ああもうヤケクソだこの、とりあえず遠坂ー!
俺ではなく、剣っつーか竹刀そのものに意思があるのか。
虎竹刀はバーサーカーの肘を突いた。
あたると痺れるあそこだ。秘孔だ秘孔。たまらず遠坂を落とすバーサーカー。嘘、効いたよおい。やってみるものだ。
つーか、普段からこんな卑怯技を使ってるのか藤ねぇ。
突いた衝撃で竹刀が折れる。
それはあり得ない。いや、いきなり虎竹刀が出てくるあたりであり得ないがとりあえずあり得ない。
「■■■■■■■■■■」
今度こそ俺を両断せんと剛剣が振るわれる。
だが、そんな事は関係ない。今度こそ成功させないとやばい。色々な意味でやばい。
「──投影、開始」
精神を引き絞る。
挑むべきは自分自身。ただ一つの狂いも妥協も許されない。「ぎ──くう、う、あああ、あ──」、
創造の理念を鑑定し、
基本となる骨子を想定し、
構成された材質を複製し、
製作に及ぶ技術を模倣し、
成長に至る経験に共感し、
蓄積された年月を再現し、
あらゆる行程を凌駕し尽くし────
ここに、幻想を結び剣と成す────!
虎竹刀、完成。