猫のぬいぐるみが落ちていた。それを見つめる鋭い眼差し。
芝村舞である。彼女は迷っていた。
どうやったらさりげなく持って帰れるか?無視するという選択肢は、発見した時点ですでに破棄されていた。
葛藤する舞の前で、そのぬいぐるみが動き出した。どうやらモーター内臓らしい。
よちよちと歩き回った後、
「にゃー」「……はっ」
気が付いた時には既にぬいぐるみを抱いていた。
しかし、手に入れたはいいとして、どうしよう?
自分の部屋に置いておくのも似合わないし。……そうだ、厚志の部屋に置いておこう。あの部屋ならがちん
「え?」
周囲には鉄の檻。慌ててあたりを見渡してみると、先ほどの舞の位置から死角になるところ、校舎に隠れるように士翼号が体育座りをしていた。
その士翼号が、手に持っていた檻を落としたのである。人類最強兵器、すこぶるかっこ悪い。
事態を把握できない舞。その目の前で、士翼号のコクピットハッチが開く。
「あはっ 作戦成功」
厚志だった。
「あ、厚志!? 何なのだこれは!」
怒る舞を無視して、厚志は通信機を取り出す。
『俺だ』
「あ、準竜師、速水です。捕獲に成功しました」
『よくやった。約束通りそいつは貴様にくれてやる』
「なッ!? 約束って何だ!? 私は知らないぞ!」真っ赤になって怒鳴る舞を、面白そうに見下ろす厚志。
「なんか怒ってますが」
『たわけ、捕まる方が悪い。ところで、どうやって捕まえた? 一筋縄では行かないはずだが』
「言うなーッ! 言うなーッ!」
「まぁ、それは。彼女にもプライドはありますし」
『命令だ』
「じゃ、しかたないですね」
「簡単にくつがえすなーッ!!」
「実は、猫の……」
「わーッ! やめろーッ!」