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ねぼけるなゆき・リアリズム


 キッチンにはすでに秋子さんと真琴がいた。
 名雪がいないこともふくめて、いつもと変わらない朝だ。
 俺と真琴が黙々と朝食をとっていると、寝ぼけ眼の名雪がふわふわとキッチンに入ってきた。
「おはようございまふぁ〜」
「遅いぞなゆうおぁっ!」
 俺の叫び声に名雪の方を向いた真琴が口からトーストを噴出す。
 散乱するパン屑。
 汚い奴め。だが今はそれどころではない。
「うにゅ?」
「な、名雪、何だそれは!?」
 名雪は大きな蛙を抱いていた。全長はゆうに40cmを超えている。だらりと伸びた足をふくめれば、その倍だ。
 一瞬、それがリアルなぬいぐるみであると思った俺の前でそいつは、

「げこ」

 と一声鳴いた。
「ごらいあすがえる」
「名前を聞いてんじゃなくて」
「せかいさいだいだよ」
 真琴はすでにキッチンの隅まで退避している。
 常識的な反応だ。よもや俺が真琴に対して常識的だなどという感想を持つ日がこようとは。
「にしアフリカげんさんだよ」
 ……完全に寝ぼけてんな、名雪。
「ごらいあすがえるは、ここ」
 そう言って自分の隣の席にどすっと馬鹿でかい蛙を置く名雪。
「くー」
 それで安心したのか、自分の席についた名雪はそのまま寝てしまった。
「げこ」

「家族が増えて嬉しいわ」

 言うことはそれだけですか、秋子さん。

「げこ」



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