成歩堂 龍一…黒 | |
綾里 千尋…赤 | |
綾里 真宵…青 | |
綾里 春美…黄緑 | |
御剣 怜侍…茶 | |
狩魔 冥…水 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
ゴドー検事…薄橙 | |
裁判長…緑 | |
裁判官…黄 | |
矢張 政志…紺 | |
天龍斎 エリス…桃 | |
毘忌尼…橙 | |
葉桜院 あやめ…藤 | |
美柳 ちなみ…紫 |
御: |
‥‥事件現場は、野獣のひそむ ジャングルと同じ。 そこへおもむく狩人は、まず、 弾薬の補給をしなければならない。 ”情報”という名の弾薬を。 ‥‥すべては、そこからだ。
|
あ: |
私‥‥夜に出歩くのは、 あまり好きではないんです。 それに、あの晩は‥‥ |
御: | なんだろうか? |
あ: |
い、いえ‥‥べつに。 つ、つまらないことです。 |
御: |
やはり‥‥ゆうべは、何か特別な コトがあったようですね。 |
あ: | うううう‥‥。 |
御: |
(どうやら‥‥この錠を 解除するほか、ないようだな) |
あ: |
それが、弁護士さまの バッジですか‥‥ |
御: |
‥‥まあ、これは 成歩堂のものなのですが。 |
あ: | そうなのですか‥‥? |
御: | 私自身は、検事なのです。 |
あ: |
まあ‥‥! 検事さまがなぜ、 そのようなバッジをエリに‥‥? |
御: |
なんとなく、その。 ‥‥なりゆきで。 |
御: | この掛け軸に描かれた女性は‥‥? |
あ: |
詳しくは存じませんが‥‥ 倉院流霊媒道の家元さま ‥‥だそうです。 |
御: | い、イエモト‥‥? |
あ: |
舞子さま。”偉大な霊媒師” ‥‥そう聞いております。 消息を絶ってから、もう 15年以上たつ、とか‥‥。 |
御: |
‥‥‥‥‥‥‥‥ 霊媒‥‥など‥‥、 できるわけがない。 |
あ: | 御剣さま‥‥? |
御: |
私は知っているのです。 ‥‥彼らがインチキであることを! |
あ: | ‥‥‥? |
御: |
(もちろん、彼女は知るまい‥‥ 17年前‥‥この私自身が、 ”家元”に会っていることなど) |
あ: |
‥‥<<退魔のずきん>>と 呼ばれるものです。 ゆうべ‥‥成歩堂さんに さしあげました。 |
御: |
今日、病室をたずねたら、 コイツをかぶっていました。 |
あ: |
悪霊から身を守る、修験者にとって とてもダイジなものです。 |
御: | そんなものを、なぜ‥‥彼に? |
あ: |
‥‥私‥‥感じていました。 ゆうべ、何かが‥‥ 何か、取りかえしのつかない ことが起こる、って‥‥。 成歩堂さんが、それに巻きこまれて ほしくなかったのです。 |
御: |
(これ以上ないほど冷たい急流に 巻きこまれたようだが‥‥ それは言わないほうが いいだろう‥‥) |
あ: |
‥‥私は反対したのです。 雑誌の取材なんて。 恐れていたとおり‥‥ このようなヒゲキが起こりました。 |
御: |
それならば‥‥取材など、 断ればよかったのでは‥‥? |
あ: |
住職さまは‥‥意外に 目立ちたがり屋さま、ですの。 |
御: |
(たしかに‥‥異常に うれしそうだな‥‥) |
あ: |
‥‥成歩堂さん‥‥ おカゼのぐあいは、いかがですか? |
御: |
とにかく、熱がヒドい。 とてもコンランしています。 殺人事件に、奥の院に 閉じこめられた、真宵くん‥‥ そして、あなたのコトで、 かなり苦しんでいるようでした。 |
あ: | ‥‥そうですか‥‥ |
御: |
まあ‥‥彼が回復したら、 バトンをわたすつもりです。 |
あ: |
いいえ‥‥ きっと、成歩堂さんは、 引き受けてくださらないでしょう。 こんな、私の弁護など‥‥ |
あ: |
‥‥申しわけありません。 私、葉桜院から あまり出ませんので。 世間のこと、よく存じませんの。 |
留置所 面会室 | |
御: |
(どうやら‥‥あやめさんは 取り調べ中のようだ) それにしても‥‥ なつかしいな、ここは。 |
糸: |
そういえば、御剣検事も ブチ込まれたッスねー、ここに。 ちなみに、自分は 入ったコト、ないッス! |
御: |
(アタリマエだろう‥‥) だが‥‥ ここに入ると、食事代は かからないが、な。 |
糸: |
‥‥ッス! ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ |
御: |
よからぬコトは考えぬ コトだ、刑事‥‥。 |
糸: |
‥‥ちょっぴり、 考えちまったッス。 |
御: |
(とにかく‥‥また あとで来てみるか‥‥) |
糸: |
あれ! なんで御剣検事が それをエリにつけてるッスか? |
御: | ‥‥そんなにフシギだろうか。 |
糸: |
そりゃそッス! 検事が弁護士バッジを つけてるということは‥‥ 刑事がコロシのライセンスを 持ってるようなものッスからねー。 |
御: |
(そこまで不吉なシロモノに 見えるのか‥‥コイツは) |
御: |
キミなら、これを 見たことがあるだろうか‥‥? |
糸: |
お。ありがたいッス。 ちょうどハラがへってたッス。 ‥‥ぱく。 |
御: | なな、ナニをする! 刑事ッ! |
糸: |
ぎゃあ! ‥‥ハラもちのいいキャンデーに 見えちまったッス。 最近、ミョーにハラがへって しょうがないッス。 |
御: |
(むううう‥‥少し給料を 下げすぎてしまったか‥‥?) |
糸: |
事件が起こると、かならず ノコノコ出てくるッス。 ‥‥ときどき、自分は こう思うことがあるッス。 『ジツは、すべての事件の 元凶は、コイツかも』‥‥と! |
御: |
(この刑事は、気づいて いるのだろうか‥‥ そのコトバ、そのまま キミ自身に当てはまるコトを) |
御: |
1年前よりも、引きしまった カオつきになったようだな。 |
糸: | そ、そッスか? やっぱり! |
御: |
いや‥‥ ”引きしまった”というより、 ”やつれた”という感じか。 |
糸: |
そ、そッスか。‥‥やっぱり。 なにぶん自分は、給料が うなだれてるッスから‥‥ どうしても、メシの レパートリーに制限があるッス。 素うどんに素スパゲッティ、 素カレーに素スシに素みそしる‥‥ |
御: |
たしか1年前は、ソーメンが 大好物だったはずだが‥‥? |
糸: | ‥‥さすがに、あきたッス。 |
糸: |
天流斎 エリス先生の お弟子さんだそうッス。 |
御: | ‥‥そうか。 |
糸: | 似顔絵、描いてもらったッス。 |
御: | ‥‥よかった。 |
糸: | でも。50円、とられたッス。 |
御: | ‥‥キノドクに。 |
糸: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ なんか、気のないそぶりッスね、 御剣検事。 |
御: |
‥‥そのオトコのことは、 あまり語りたくない。 |
糸: |
どうにも、ヒミツの多い 被害者ッス。 本名はおろか、今までの 経歴も、完全に不明ッス。 |
御: |
どうも、妙だな‥‥。 身分を知られたくないのなら、 なぜ、作家になったのだろうか。 |
糸: |
きっと、あれッスね。 こんなに売れっ子になるとは 思わなかったッスよ。 |
御: |
彼女には‥‥どこかで 会ったことがあるような気がする。 前科‥‥などは、ないのだろうか? |
糸: |
いや、それはないッス。 指紋を照合してみたッスが‥‥ 一致するデータはなかったッス。 |
御: |
そうか‥‥ (‥‥もう少しで 思い出せそうなのだが‥‥) |
糸: |
まあ、御剣検事は プレイボーイッスからねえ。 ムカシ、ポイ捨てした ガールフレンドのひとり、とか。 |
御: |
けけ、刑事! いったい、 どこからそんなハナシを? |
糸: |
いや、なんとなく。 自分のイメージッス。 |
御: |
(‥‥わわ、私は そんなふうに見えるのか‥‥?) |
糸: |
ゆうべ、葉桜院の境内で 事件を目撃したッス。 かなり、決定的な犯行場面を 見ちゃっているッス! |
御: |
というと‥‥明日の裁判では、 証人として‥‥? |
糸: |
もちろんッス! あのオバサンは、信頼できるッス! もお、勝ったも同然ッスね! ‥‥‥‥‥‥‥‥‥あ。 ‥‥じ、自分は! 自分だけは、 いつも御剣検事のミカタッスから! いやあ、かなりの ピンチッスよ、これは! |
御: |
(成歩堂が冷や汗まみれに なるのも、わかる気がする‥‥) |
御: |
私のもとへは、研修中の検事の 情報が入ってくるのだが‥‥ こんなオトコ、見たことも 聞いたこともないな。 |
糸: |
‥‥とにかく、 ナゾに包まれてるッス。 ハヤテのように現れて、 コーヒー飲んで去ってゆくッス。 |
御: | ううむ‥‥気楽なオトコだな‥‥ |
糸: |
なんか最近、検事局では コーヒーが大流行中ッス。 |
糸: |
‥‥しょせん自分は、 イッピキの刑事ふぜいッスから。 あんまりムズカシイことは わからねッス! |
御: |
‥‥イバるな! |
御: |
あやめさんを助けるためには、 情報が必要なのだ。 |
矢: |
で、でも! オレのコトは カンケイねえだろ! 25才にもなって定職もなく、 ブラブラしてる絵描きくずれだぜ! |
御: |
(‥‥そう思うのならば シゴトを探せ!) |
矢: |
そ、そんな目で見るなよ。 トモダチじゃねえか! |
御: |
‥‥トモダチなら、かくしゴトを しないでもらいたいな。 |
矢: |
ま。それはホレ。なんだな。 アレよ、アレ。‥‥わかるだろ? |
御: |
(‥‥わからん‥‥) |
矢: |
‥‥そういえばオマエ、 ムカシ、言ってたっけなァ。 『大きくなったら、ボクは弁護士に なるのだよ』‥‥とかなんとか。 |
御: | む‥‥ムカシの話だ。 |
矢: |
いいじゃねえか。1日だけでも 弁護士になれるんだからさ。 御剣! オレのあやめちゃん、 守ってやってくれよな。 |
御: |
‥‥‥‥‥‥‥‥ (こ、これだから‥‥古い友人は ヤッカイなのだ‥‥) |
矢: |
いいヤツだった‥‥ かもしれねえよな。 そう。今になってみりゃ、 みんないい思い出さ。 |
御: |
だから、このオトコは まだ死んでいないッ! |
矢: |
ま。オレはヤツの イノチの恩人なワケだケドな。 |
御: | ‥‥どういうことだ? |
矢: |
オレのすばやい通報で、 成歩堂はブジ、助かったワケよ。 なんと言っても、オレ。 元・ガードマンだし。プロの。 |
御: |
(たしかに‥‥私のところにも すぐ、電話がかかってきた‥‥ このオトコ、人をつかうのが ウマいのかもしれないな。 自分では、まったく動こうと しないのがハラ立たしいが‥‥) |
矢: |
あ。オレのコト、矢張って 呼ぶなよな。 |
御: | なんだと‥‥? |
矢: |
今のオレは、身もココロも 天流斎 マシスくんだから。 |
御: |
‥‥‥‥‥‥‥‥ じゃあ、他のハナシを 聞かせてもらおうか、矢張。 |
矢: |
マシスくん、て呼べぇぇッ! さもないと、オマエのこと‥‥ 天流斎 ミツルくん、て呼ぶぞお! |
矢: |
‥‥信じられねえよ。 あんな、いいひとを‥‥ しかも! その罪を、 あやめちゃんに着せようなんて! 御剣! たのんだぜ! オレ、応援してるから! |
御: |
もう少し、マシな 手助けはできないのか? |
矢: |
‥‥えー。そうなァ‥‥ じゃあ、アレだ。 オマエの似顔絵、描いてやるわ。 |
御: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ せっかくだ。‥‥おねがいする。 |
御: |
どうも‥‥彼女は、何かを かくしているようなのだが‥‥ |
矢: |
そうなァ‥‥。彼女、 恥ずかしがり屋さんだからなァ。 |
御: |
‥‥そういうモンダイでは ないと思うが。 |
矢: |
テレくさいんだろ。 オレ、よーくリカイできるわ。 ‥‥‥‥うん、そうよなァ。 あるよなー、そういうコトって。 |
御: |
勝手にリカイして、 勝手にナットクするな! |
矢: |
‥‥でも、その恥じらいがまた、 たまんないワケよ。わかるだろ? |
御: |
(ヒトの話を聞かぬオトコだ ‥‥あいかわらず) |
矢: |
オレなー。どうもそのヒト、 ニガテなんだよなー。 なんかさ。カアちゃん、 思い出すんだよなあ。 |
御: |
‥‥‥‥‥‥ いいか、矢張。 |
矢: | ナニよ。 |
御: |
キサマがどう思っているかを 聞いているのではない。 事件に関して、知ってることを 話してもらいたいな。 |
矢: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ それはオマエ、ちょっと 高望みがすぎるんじゃねえか? 25才にもなって定職もなく、 ブラブラしてる絵描きくずれだぜ! ハッハッハッハッ! |
御: |
(‥‥ほんの少し、コイツを うらやましく思ってしまった) |
矢: |
いやー、オレ。 こう見えてもゲージュツカだろ? もっとこう、ニオいたつような モチーフを見せてくれねえと。 |
御: |
(‥‥見もしない‥‥) |