成歩堂 龍一…黒 | |
綾里 千尋…赤 | |
綾里 真宵…青 | |
綾里 春美…黄緑 | |
御剣 怜侍…茶 | |
狩魔 冥…水 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
ゴドー検事…薄橙 | |
裁判長…緑 | |
裁判官…黄 | |
矢張 政志…紺 | |
天龍斎 エリス…桃 | |
毘忌尼…橙 | |
葉桜院 あやめ…藤 | |
美柳 ちなみ…紫 |
毘: |
『あの晩、オバサンは<<奥の院>>で 修験者さまの修行を手伝ってたの。』(証言1) 『でも‥‥こう見えて、オバサン。 コシが悪いのよ。暴力的なまでに。』(証言2) 『だからね。あやめにアトを任せて、 葉桜院に帰ってきたワケ。』(証言3) 『奥の院って、おフロがないから。 オバサン、ゆっくりあったまって。』(証言4) 『さて、戻ろうか‥‥ってときに! みみ、見ちゃったのよ!』(証言5) 『あの子、ちゃんと奥の院に来たわ。 夕食のときと同じカッコウでね。』(証言6) |
御: | <<奥の院>>というのは‥‥? |
毘: |
オバサンたちはホラ。”霊行密道” の修行をするワケじゃない? |
裁: |
ワレワレにカクニンを 求められても困ります! |
毘: |
‥‥そのためにはね。霊気の集う 修行場が必要なワケ。 おぼろ橋をわたった先に、 <<奥の院>>という庵があって。 修験者さまは、そこで一晩中、 霊行をつむのよォ。 |
御: |
‥‥それで、あなたの <<手伝い>>というのは‥‥? |
毘: |
霊行は、かなりの荒行だから。 住職がつきそうキマリなのね。 |
冥: |
デキの悪い小学生を見張る 家庭教師のようなモノね。 |
御: |
(‥‥その家庭教師は、きっと ムチを持っているのだろうな) ‥‥しかし。 それならば、なぜ‥‥ 事件が起こった葉桜院へと 戻って来たのだろうか? |
御: | 暴力的‥‥ |
毘: |
も。ホント、シャレにならないわ。 スゴいんだから。特に冬は。 オバサン、冬はハシより重いもの、 持ったコトないもん。 生きてるだけで、これはもう 修行みたいなモンだわ。 わはは。わは。わははははわは |
御: |
‥‥あの晩も、その ジマンのコシが‥‥? |
毘: |
そ。ガクガク暴れだしたワケ。 オバサン、失神しかけて。 これはもう、あったまらないと コシに殺される、って思ったの。 |
御: | ”アトを任せた”‥‥というのは? |
毘: |
修験者さまの修行に 決まってるでしょ。 10時をすぎて、ちょうど <<本行>>に入るところだったから。 |
裁: |
それは‥‥、 あなたの役目だったのでは? |
毘: |
ま。要は修験者さまが 死なないように見守る係だから。 |
御: |
‥‥もう一度、カクニンする。 あなたは、あの晩‥‥ 奥の院で、あやめさんに 会ったのですね? |
毘: |
ええ。ええ。だって、あの子は スナオでいい子ですからね。 言いつけを守らなかったコト なんて、ないんですよォ。 |
御: |
‥‥入浴するために 葉桜院に戻った、と‥‥? |
毘: |
ぜぇんぶ、オバサンのコシが 悪いのよねェ。 もお、”やるかやられるか” の世界だから。こればっかりは。 |
御: |
それで‥‥入浴には、どれぐらいの 時間がかかったのだろうか? |
毘: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ あらあらあら。いやだョこの子は! ヘンな想像しちゃって! |
御: | ‥‥‥? |
毘: |
次に”どこから洗うのだろうか?” とか、聞くつもりなんでしょ! ‥‥まったく、ワカい男の子は コレだからねェ‥‥ |
御: |
なな、何を言う! 私は‥‥ ぐはァッ! |
冥: | ‥‥フケツよ、御剣 怜侍。 |
裁: | ‥‥最低ですな。 |
御: |
(な、なんだ、ここは! いじめられっ子の席か‥‥?) |
毘: |
ま。オバサンも、あまり長いこと 席をはずしちゃマズいから‥‥ |
御: |
‥‥事件は、境内で起こった わけだが‥‥? |
毘: |
オバサンの部屋から本堂に 行こうとすると‥‥、 かならず、境内を見わたす わたりろうかを通るのよねェ。 |
冥: |
そう! つまり‥‥ 証人が事件を目撃したのは、 グーゼンだった‥‥ この事件に、いっさいの 作為は存在しなかったの。 |
裁: |
ぬうう‥‥ どうやら、そのようですな。 |
御: |
記憶ちがい、ということは ないだろうか? |
毘: |
‥‥アンタねえ。あんまり オバサンをナメるんじゃないよ! |
御: | うム‥‥ッ! |
毘: |
あやめはいつも、 同じ装束を着ているんだよ。 少しでもちがったら、 逆に印象に残るじゃないの! <<記憶ちがい>>ィ‥‥? アンタのほうが、オカドちがいさ! |
裁: | ‥‥うまくまとめましたな、証人。 |
御: | (はたして、そうだろうか‥‥) |
御: |
(この証言で、問題になるのは ‥‥たしかに、ただ1点のみ。 それをハッキリさせることで、 たしかめることができる。 ‥‥あの証人の 記憶力と、観察力を‥‥) |
御: |
この証拠品は、今の証言の ムジュンをハッキリ示してるッ! |
裁: |
ザンネンですが‥‥ 認めるわけにはいきませんな。 |
御: | ‥‥ミゴトだ、裁判長‥‥ |
裁: | は、はい‥‥? |
御: |
今のは、あなたを少し、 試してみただけのこと、だ。 |
裁: |
‥‥‥‥‥‥‥‥ それならば、ペナルティの味も 試させてあげましょう! |
御: |
(‥‥い、いらぬコトを 言ってしまったな‥‥) |
御: |
今の発言は、この証拠品のデータと ムジュンしているッ! |
裁: |
どこが、ですかな? 特におかしいところはないが‥‥。 |
御: |
それがすでにオカシイと 言っているのだッ! |
裁: |
‥‥‥‥‥‥‥‥ 私にギロンをふっかけないように! |
御: |
(‥‥いかん。どうも この席はまだ、慣れないようだ) |
御: |
裁判長! 今の証人の発言を どう思われるかッ! |
裁: | 問題なし、と考えますな。 |
御: |
フッ‥‥ そこまで言うのであれば、 いたしかたあるまい‥‥。 |
裁: |
‥‥‥‥‥‥‥‥ ミョーなところで カッコつけないように! |
御: |
(どうやら‥‥私もたまには まちがうようだな) |
毘: |
『おフロから出て、11時ごろ‥‥ 奥の院に戻ろうと思ったワケ。』(証言1) 『そのとき‥‥境内のほうから 物音が聞こえて。ふと見ると‥‥』(証言2) 『あ‥‥あやめが! え、エリスさま を‥‥あろうことか、カタナでッ!』(証言3) 『エリスさまは、境内に面した カド部屋にいらっしゃいました。』(証言4) 『そこからつき落とされたあと、 カタナで刺されたんでしょうねえ。』(証言5) |
御: |
‥‥奥の院までは、どれぐらいの キョリがあるのだろうか? |
毘: |
そうねえ‥‥。 オバサンの足だと、歩いて 20分ぐらい、かしらねぇ。 葉桜院からおぼろ橋まで、 15分ぐらいかかるのよォ。 橋から奥の院までは、 すぐなんだけど。 |
冥: |
まあ‥‥ケッキョク、あの晩は そこへ帰ることはなかったわけね。 |
毘: |
そ、そうよねェ‥‥。 あれは、ろうかから本堂に 向かう途中だったんだけど‥‥ |
御: | ”物音”‥‥というと? |
毘: | ”ドサッ”‥‥みたいな。 |
冥: |
‥‥被害者が倒れた音としか 考えられないわ。 |
毘: |
なんといっても 静かだからねェ、ウチは。 木の枝から雪が落ちる音も ハッキリ聞こえますよォ。 ”ドサッ”‥‥て。 |
裁: |
では‥‥その音も、雪が 落ちたときのものだったのでは? |
毘: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ それは思いつかなかったわ。 わはは。わは。わはははは‥‥ |
裁: |
ほほっ。ほほ。ほほほほほ‥‥ うはははははははッ! |
冥: |
出るクイは打たれる。 ‥‥ムチで。 |
毘: |
ま。キッカケはどうあれ、 境内を見ると‥‥ |
御: |
‥‥先ほども、証人は ”被告人を見た”と証言した。 しかし‥‥その発言には、 ギモンの余地が残されている。 |
毘: |
な‥‥なんだい、 その言いかたはッ! ちょっとイイ男だからって、 チョーシに乗ってると‥‥ |
御: |
被害者をカタナで刺した、 <<ハンニン>>のこと‥‥ もう一度、よく思い出して いただきたい! |
毘: |
ううう‥‥まあ。ちょっと イイ男だから、ユルしちゃうけど。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ あ! そういえば‥‥ よく考えてみると、ひとつだけ‥‥ おかしなコトがあったわ。 そおよ! なんか、ずうっと ココロに引っかかってたんだけど! |
御: | ‥‥話していただこう。 |
毘: | ずきんなのよ、ずきん! |
冥: | ‥‥ずきん‥‥? |
毘: |
そおなのよ! ‥‥思い出してきたわ‥‥ あのときのあやめは‥‥ ずきんをかぶってなかったのよ! ‥‥なんだか不自然だと 思ってたんですけどねェ。 でも。今となっては、 アタリマエだったわ、こりゃ。 だって‥‥そのずきん、あやめは ヒトにあげちゃってたんでしょ? |
御: | ‥‥‥ぐッ! |
冥: |
‥‥フッ‥‥ 墓穴をほったようね、 御剣 怜侍‥‥ |
裁: |
いかがですかな? 弁護人。 今の証言は‥‥ |
御: |
(‥‥どうも、この方向は キズを広げるだけ、のようだ) ただ今の証人の発言は、 ある刑事の捜査ほどにイミなし。 ‥‥記録の必要はあるまい。 |
裁: |
ぬううううむ‥‥。 わかりました。‥‥それでは、 証言をつづけていただきましょう。 |
冥: | ‥‥フン‥‥ |
御: |
(一見、こちらに不利な 証言だが‥‥ 今の私には、他に 手がかりが見えていない‥‥) ‥‥裁判長。ただ今の発言を、 証言に加えていただきたい。 |
冥: |
‥‥フッ‥‥御剣 怜侍。 自分のクビをしめるつもりなら、 このムチをお貸しするわ。 |
裁: |
それでは、証人。証言に 追加をおねがいしましょう。 |
毘: |
‥‥はいはい。 『そういえば‥‥あのときのあやめ、 ずきんをかぶってなかったわ‥‥』(証言6) |
御: |
境内から見上げたところに ある部屋‥‥ですね? |
裁: |
ということは‥‥被害者の部屋は 2階にあったワケですかな? |
毘: |
いえいえ。葉桜院は、1階だて。 いわゆる、平屋よォ。 ただねぇ。山の急斜面に あるモンだから。 山門側と逆にある 客間のあたりは、どうしてもね。 ‥‥2階ぐらいの 高さになっちゃうワケ。 |
裁: |
なるほど‥‥。被害者は、 その部屋にいたのですな? |
毘: |
ええ‥‥あの方のニモツを 運んだの、オバサンですから‥‥ |
御: |
‥‥なぜ、そんなことが あなたにわかるのだろうか? |
毘: |
だってホラ。さっき、オバサン 言ったでしょうが。 ”境内のほうで物音が聞こえた” ‥‥って。 ”ドサッ”‥‥みたいな。 |
冥: |
さすが、ジューショクさま。 なかなか、スルドいわね。 解剖記録にも書かれている とおり‥‥ 被害者の全身には、打ち身の アトが残っていたわ。 ‥‥3メートルほどの高さから 落下したていどの、ね。 |
裁: |
ぬううううう‥‥どうやら、 まちがいないようですな。 |
毘: |
ね。ね。オバサン。 意外とヤルのよ。‥‥特に冬は。 なんてったってホラ。住職だから。 エラいから。葉桜院じゃイチバン。 |
御: |
(あやめさんと2人しか いないではないか‥‥) |
冥: |
いかがかしら? 御剣 怜侍。 さすがに、コトバもないようね‥‥ |
御: | ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
御: | それは‥‥まちがいないだろうか? |
毘: |
そうねぇ。オバサンたちってホラ。 いつも同じカッコ、してるから。 あ。お金がないワケじゃないのよ! スタイルだから。そういう。 |
御: |
‥‥ベツに、あたふたと説明して もらわなくてもケッコウ、だ。 |
毘: |
とにかく! いつもとちがうと、 スゴく目立つのよねェ。 |
冥: |
私が、ムチのかわりに モチを持っているようなものね‥‥ |
御: |
(そちらのほうが 圧倒的に平和だが‥‥) |
毘: |
あやめは、ずきんを つけてなかった。まちがいないね! |
裁: |
‥‥わかりました。 それでは、被害者のことを 聞かせていただきましょうか。 |
御: |
(‥‥ウソをついている ようすは感じられない。 その証人が、ハッキリ 証言している‥‥ ”被告人が、被害者をカタナで 刺す瞬間を見た”‥‥と。 ‥‥今の私が信じられるのは、 2つだけ‥‥ 依頼人・あやめさんと‥‥ 私自身の、弁護士としての能力) |