成歩堂 龍一…黒 | |
綾里 千尋…赤 | |
綾里 真宵…青 | |
綾里 春美…黄緑 | |
御剣 怜侍…茶 | |
狩魔 冥…水 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
ゴドー検事…薄橙 | |
裁判長…緑 | |
裁判官…黄 | |
矢張 政志…紺 | |
天龍斎 エリス…桃 | |
毘忌尼…橙 | |
葉桜院 あやめ…藤 | |
美柳 ちなみ…紫 |
矢: |
『オレ、あの晩は星を見てたわけ。 あの、山奥のロッジで。』(証言1) 『そりゃ、橋のあたりへは 何回か足を運んだけど‥‥』(証言2) 『す、スノーモービルなんて 見かけなかったぜ!』(証言3) 『あの晩はオレ、橋のトコロじゃァ ダレにも会わなかったんだ!』(証言4) |
御: | ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ |
裁: |
いきなり、どうしましたか? 弁護人。 |
御: |
‥‥あまりにムジュンに 満ちあふれているので‥‥ 一瞬、めまいとコンランを。 |
裁: | ぬううう‥‥ |
冥: |
あなた自身はどうなの? 証人。 自分の証言‥‥どこがムジュン しているか、わかってるのかしら? 返答しだいでは、コイツが ダマっていないわ。 |
矢: |
ええと、そうなァ‥‥。 たとえば、あの晩は 雪だったから星は見えねえとか、 あのボロ小屋を<<ロッジ>>って のはどうなのか、とか、 そもそもオレ、星を見に 行ったワケじゃねえ、とかかな? |
御: | ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ |
冥: | やればできるじゃない。 |
矢: |
えへへへへ‥‥ いててててェ! |
冥: |
‥‥モンダイは、ただ1つ。 あなたが、おぼろ橋で何を見たか? ‥‥話してもらおうかしら? |
御: | ”何回か”‥‥というと? |
矢: |
5回ぐらい‥‥かな。 20分に1回、行ったから。 |
御: |
ということは‥‥ キサマはあの晩、2時間近くも <<極楽庵>>にいたわけか‥‥ |
矢: |
まあ。”早く来い”って念じながら 待つのが、ホントの”コイ”だし。 |
裁: | ”コイ”‥‥? |
御: |
このオトコは、被告人を山小屋に 呼び出そうとたくらんでいたのだ。 ‥‥このような、脅迫状で。 |
裁: | きょ、キョーハクジョー‥‥! |
矢: |
いやいや! それはオレの、 暑苦しいアイの あぎィィッ! |
冥: |
フケツでヒレツでフラチでウワキな マヌケにフヌケでニヤけたオトコ。 |
裁: |
それで‥‥‥ 何を目撃したのですかな? フケツでヒレツでフラチでウワキな マヌケにフヌケてニヤけた証人は。 |
矢: | ええと。‥‥そうだなあ‥‥ |
御: |
(フケツでヒレツでフラチ呼ばわり は、気にならないようだな‥‥) |
御: |
‥‥矢張! 本当に見なかったのか? |
矢: |
な。な。な。なんでだよ! なんだよ! わかんねえよ! ‥‥オレ、見てねえよ! す、す、スノーモービルなんて! |
御: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 矢張。”すのーもーびる” と言ってみろ。 |
矢: | す、す、す、スノーモービル。 |
御: |
‥‥キサマのココロに やましいコトがないのならば‥‥ なぜ、すんなり言えないのだッ! |
矢: |
う、うるせえよ! なんだよ! なんでだよ! わかんねえよ! |
御: |
(とにかく‥‥身近な ムジュンから攻めるしかないな。 このオトコだけは‥‥ 私が、トドメを刺してやる!) |
御: | ”ダレにも”‥‥? |
矢: |
ホントだよォ。 オレ、カンケーねえんだよォ! ビリジアンの絵の具を 買いに来ただけなんだよォ! クリムゾン・レーキな他人 なんだよォォ! |
裁: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ゆさぶるだけ、ムダのようですね。 |
御: | ‥‥そのようだ。 |
御: |
(どうやら‥‥あくまでも 事件と無関係だと言い張る気か。 とにかく、このオトコふぜいに 時間をかけるのも愚かしい‥‥ 見えすいたムジュンを暴いて、 先を急ぐべきかもしれぬ‥‥) |
矢: |
『山小屋に行ったのが9時ごろだから ‥‥10時半すぎ、だったなァ。』(証言1) 『フトンの上に寝ころんでいたら‥‥ 目の前がマッシロに光ったんだよ!』(証言2) 『そして、窓のそとで‥‥おぼろ橋が メラメラ燃えてるじゃねえか!』(証言3) 『カミナリが鳴ってたけど、すぐに 見に行ったワケよ。オレとしては。』(証言4) 『そこで、成歩堂に会ったワケ。 ‥‥オレとしては。』(証言5) 『橋のところへついて、1分もしない うちに、成歩堂が来たんだよ。』(証言6) |
御: |
1時間半‥‥あんなサムい ところで、何をしていたのだ? |
矢: |
ううーん。あえて言うなら、 『ワクワクしていた』‥‥かなあ。 |
裁: |
ぬうううううう。 ”ワクワク”‥‥ |
矢: |
待ち合わせのヤクソクは 10時だったんだけどさあ。 ホレ。待ちきれなくて。早く 来ちゃうかもしれない、と思うと。 |
御: |
‥‥まあ。ケッキョク、 来なかったワケだが。 |
冥: |
‥‥そもそも”待ち合わせ”ですら なかったワケだけど。 |
矢: |
うるせえ! オレの思い出に ケチをつけるな! とにかく、あのときは ちょっと、シンパイしたぜ。 あやめちゃん、道に 迷ったのかと思ってさあ。 それでオレ、20分に1回ぐらい、 橋まで見に行ってたんだよ。 でも‥‥アヤシイものは 特に見あたらなかったなあ‥‥ しかたねえからオレ、小屋で ワクワクしてたワケ。 |
御: |
その”光”というのは、 モチロン‥‥ |
矢: |
カミナリよ。もお、 ピシャーン! って。 ナオミのビンタ‥‥ぐらい スゴかったかもなあ、アレ。 はがわわわわわわッ! |
冥: | ‥‥こんな感じね、きっと。 |
矢: |
うううう‥‥そこまで行ったら キョウコのパンチだよ‥‥ |
裁: |
証人は、橋に落雷した 瞬間は、見たのですかな? |
矢: |
いやー。オレ、その光にビックリ したから見たんだよ。‥‥窓を。 |
御: |
それを見て‥‥キミは どうしたのか? |
矢: |
そりゃア、オマエ! オレも燃えたよ、メラメラとさァ! |
冥: | だから、橋を見に行った‥‥と? |
矢: |
ま、まあ。ジツを言うと‥‥ サムかったし、最初は ”ほっとくか”って思ったけど‥‥ 雪も、もうほとんどやんでたから。 ‥‥その。気が変わったんだ。 |
裁: |
ぬぬうううううう。 最初に”ほっとくか”という発想が 浮かぶのは、どうかと思いますな。 |
御: |
(‥‥これ以上、イミのある ハナシは聞けそうもない‥‥ ここは、他の情報を探ったほうが よさそうだな‥‥) |
裁: |
‥‥それでは、証人。 証言をつづけてください。 |
御: |
”急に『見に行こう』と思った” ということは‥‥ 最初は、”見に行くつもりは なかった”ということになる。 |
矢: |
ま、まあ‥‥そういうコト、 なのかなあ‥‥ たしかに、サムかったし‥‥ ソトに出たくなかったなァ。 |
御: |
それならば‥‥ なぜ、見に行くことにしたのか ‥‥聞かせてもらいたいな。 |
裁: |
それでは‥‥その理由を 証言してもらいましょう! |
矢: |
え‥‥ええ? そうだなあ。 理由‥‥。りゆう、かあ‥‥。 『あんなデカいものが燃えるなんて、 二度と見られない、って思ってさ』(証言7) |
御: |
そのときの成歩堂は‥‥どんな ようすだっただろうか? |
矢: |
ううーん。なんて言うか、 『ぼろゾーキン』みたいな感じ? 葉桜院から、全速力で 走ってきたらしいから。 しばらくオレをニラみつけて ハアハア言ってたよ。 |
冥: |
葉桜院までは‥‥どれぐらいの キョリがあるのかしら? |
矢: |
アイツの足なら‥‥ 走って15分ぐらい、かなあ。 |
裁: |
‥‥それで、殺人事件を 通報したワケ、ですか。 |
矢: |
そう! で、ついでに 橋から転げ落ちていったワケ。 |
御: |
成歩堂と、ほとんど同時に 橋についた、と‥‥? |
矢: |
そ、そうなんだよ! オレも、最初は<<ダレかに 知らせなきゃ>>って思ってたケド。 成歩堂のヤツが<<殺人事件だ!>> なんて騒ぎやがったから。 それでオレも、橋のコトは 忘れちまったワケ。 もう、とっくに火も消えてたし。 |
御: |
(なんだ‥‥?この、 ハゲしく不快な胸さわぎは‥‥) |
冥: |
そして‥‥警察に通報したあと、 成歩堂 龍一は落下したワケね? |
矢: |
ま。当たらずとも遠からず、 って感じだな、それで。 |
御: |
‥‥それで、 見に行くことにした、と? |
矢: |
そうよ! 巨大な吊り橋が ガンガン燃えてるんだぜ! これはもう、アレだろ? なんだ、その。スペ‥‥すぺ‥‥‥ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ スペシャル、だろ? ある種。 |
御: |
(<<スペクタクル>>というコトバが 出てこなかったようだな‥‥) |
裁: |
‥‥なんというか‥‥ バチ当たりな青年ですな。 |
矢: |
ま。<<人生、体当たり>>が オレのテーマだから。 あぎぎィィッ! |
冥: |
‥‥ついでに、ムチも 当てておいてあげるわ。 |
御: |
(‥‥橋が燃えた話は、 きのうも聞いた。 だが‥‥どうも、計算の合わない 部分があるような気がする。 どうやら‥‥ まだ、すべてを 語っていないようだな‥‥)
|
矢: |
『オレ、天流斎よ。ゲージュツカよ。 やるコトなんて、決まってるだろ!』(証言1) 『スケッチしてたんだ! 橋の前で! もう、ムチュウで描きまくったぜ!』(証言2) 『オレの感じたショーゲキを‥‥ 見たまま、ノートにぶつけたんだ!』(証言3) 『‥‥気がついたら火は消えていて、 ヤツがヨロめきながら現れたのさ。』(証言4) 『あやめちゃんが、飛んだんだよ! 白いずきんをハタめかせて!』(証言5) |
御: | それで、矢張‥‥ |
矢: |
だから、天流斎だってばよ! オマエもしつこいなあ! そんなコトだから、オレみたいな モテモテになれねえんだよ! |
裁: |
‥‥‥‥‥‥‥‥ ケッキョク、 あなたは何者なのですか? |
矢: |
オレ、天流斎 マシス! よろしくな! |
御: | <<自称>>だが。 |
裁: |
‥‥せめて、 芸術家なのでしょうな‥‥? |
矢: |
アタリマエだろ! アーチストよ、オレ! |
御: | <<自称>>だが。 |
冥: |
‥‥名前に、イミなどない。 問題は、ただ1つ。 ‥‥あなたが何をしたか、よ。 |
御: |
(たしかに‥‥それが 大きな問題になるだろうな) |
御: |
‥‥やめておくことを おすすめする。 ソイツの<<作品>>には、 超高校級の破壊力があるからな。 |
矢: |
アタリマエだろ! オレだって、中学は出てるんだ! |
裁: |
ぬぬううううう‥‥ たしかに、ストライクゾーンを 大きくハズしたものが予想される。 ‥‥わかりました。 他の手がかりを追ってみましょう。 |
御: |
燃える橋に、そんなに 感動したというのか? ‥‥どうも、考えにくいのだが。 |
矢: |
バカ野郎! 御剣、オマエ‥‥ オレのコト、わかってねえよ! 捨てられた子ネコを見かけたら、 ナミダを流して通りすぎる‥‥ そんな、ムセキニンなやさしさに 満ちたオトコなんだよ、オレは! そのやさしさを、ありったけ ノートにぶちまけたんだ! |
冥: |
”ノート”というのが 泣かせるわね‥‥ スケッチブックぐらい 買いなさい! |
矢: |
なな、なんで そんなコトでぶたれるんだよ‥‥ |
裁: |
とにかく証人は、お絵かきに ムチュウだったわけですね? |
御: |
それまで‥‥時間を忘れて 描いていた、と‥‥? |
矢: |
まあな。オレ、ムチュウになると、 ワケがわからなくなるから。 |
御: |
(たしかに‥‥このオトコは、 ムカシからそうだった。 おそらく、この発言に ウソはないだろう‥‥) |
冥: |
成歩堂 龍一が現場に 現れたのは、11時15分すぎ‥‥ 絵を描いていたのなら、 なんの疑問もないわね。 |
裁: |
ニンゲンとして、大きな ギモンを感じますが‥‥ |
御: |
キサマ‥‥それを どこから見たというのだ! |
矢: |
なんでドナるんだよぅ‥‥ ボロ小屋で、フトンの上に 寝っころがっていたときだけど。 オレ、カミナリの音で 橋が燃えたのに気づいて‥‥ しばらくは、ぼんやり見てたわけ。 『よく燃えるなあ』って。 5分ぐらい、見てたかなあ。 そこで‥‥ |
冥: |
被告人が”飛ぶ”ところを 見た、と‥‥? |
矢: |
そうなんだよ! だからオレ、橋のところまで 行くことにしたんだ! |
裁: |
‥‥なるほど。スジは とおっていますね。 この絵、以外は‥‥ |
御: |
(‥‥そう‥‥この絵は スジがとおらない‥‥ なんとしても、 思い知らせてやるのだ‥‥) |
御: |
(‥‥どうやら、この尋問には、 大きな手がかりがあるようだ。 どう考えても、ふざけている としか思えない証言だが‥‥ なんらかの真実が、ここに かくされているはずだ!)
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