成歩堂 龍一…黒 | |
綾里 千尋…赤 | |
綾里 真宵…青 | |
綾里 春美…黄緑 | |
御剣 怜侍…茶 | |
狩魔 冥…水 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
ゴドー検事…薄橙 | |
裁判長…緑 | |
裁判官…黄 | |
矢張 政志…紺 | |
天龍斎 エリス…桃 | |
毘忌尼…橙 | |
葉桜院 あやめ…藤 | |
美柳 ちなみ…紫 |
地方裁判所 被告人第1控え室 | |
あ: |
あの‥‥御剣さま。 私、なんと言ってよいのか‥‥ |
御: |
あやめさん。 休憩時間は20分しかない。 あなたに聞いておかなければ ならないことが、2つあります。 |
あ: | ‥‥なんでしょうか。 |
御: |
1つめ。あなたは、あの晩‥‥ 本当に、奥の院に行かなかったか? 先ほどの証人は、修験堂で あなたに会い、会話をしたと言う。 あなたか、毘忌尼さん‥‥ そのどちらかが、 いつわりの証言をしているのだ。 |
あ: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 御剣さま。 きのうも申し上げました。 私‥‥事件が起こるまで、 葉桜院の、自分の部屋にいました。 |
御: |
‥‥よろしい。 それでは、もう1つ。 あの晩‥‥葉桜院の スノーモービルが使用されている。 毘忌尼さんが葉桜院に戻ってから、 入浴後、事件を目撃するまで‥‥ おそらく、10時30分ごろから 11時までのあいだのこと、だ。 スノーモービルを使ったのは‥‥ あなた、なのだろうか。 |
あ: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ スノーモービルのキーは、 1本しかございません。 それを使えたのは‥‥ 私だけ、です。 |
御: |
やはり、あなたが‥‥! しかし‥‥いったい、なぜ? ‥‥おぼろ橋に、 なんの用があったのですか? |
あ: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 申しわけありません、 御剣さま‥‥ |
御: | ‥‥あやめさん‥‥ |
あ: |
今は‥‥申し上げることは できませんの。 |
御: | ”今は”‥‥? |
あ: | 修験者さまが‥‥ |
御: | ? |
あ: |
修験者さまのご無事が、 ハッキリするまでは‥‥ |
御: |
(”修験者”‥‥ 真宵くんのこと、か‥‥?) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ あやめさん。今でもまだ、 私の目を見て、言えるだろうか。 『天流斎 エリスを 殺害していない』‥‥と? |
あ: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 私には‥‥たとえ どなたであろうとも‥‥ いのちを奪うことなど、 できません。 |
御: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ (やはり‥‥ここでは <<さいころ錠>>は現れない、か) ‥‥よろしい。 私は、真実を 知るのがシゴトなのです。 近いうちに‥‥あなたにも それがわかるでしょう‥‥。 |
地方裁判所 第7法廷 | |
裁: |
‥‥それでは、 審理を再開しましょう。 狩魔検事。証人のほうは‥‥? |
冥: |
休憩時間中、傍聴席で挙動不審な オトコが取り押さえられたわ。 |
御: | 挙動不審‥‥? |
冥: |
なんでも、一心不乱に スケッチしていたそうよ。 |
裁: |
‥‥被告人のスケッチは 禁止されているハズですが‥‥ |
冥: |
オニのようなカオでムチを ふるう、恐ろしい女の絵だったわ。 |
裁: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ それは、どう考えても あなたのコトではな ‥‥はうッ! |
冥: |
とにかく、そのオトコを 引きずり出してやるわ。 天流斎 マシス! カクゴを決めて、入廷なさいッ! |
御: |
(どうやら‥‥また、 荒れ模様になりそうだな‥‥) |
矢: | いてェ! |
冥: |
‥‥まず、あの絵は 法廷侮辱罪にあたいするわ。 |
矢: |
なな、ナニすんだよ! オレはただ、ゲージュツ的な いててェ! |
冥: |
召喚状を持った法廷係官を見て、 逃げようとしたそうね。 |
矢: |
で、でもオレ! 山で修行中の いただけねえ芸術家のタマゴだぜ! たまたま、ミドリ色の絵の具が なくなって、街へおりて来たワケ! ま。専門的には”ビリジアン” っていうんだけどさァ。 |
御: |
‥‥矢張‥‥ ここは、絵の具屋ではないが‥‥? |
矢: |
わかってるよ! オレだって、中学は出てるんだ! ホラ。やっぱり、ゲージュツは <<畑仕事>>がキホンだと思うワケ。 |
裁: | は、はたけしごと‥‥ですか? |
御: |
<<フィールド・ワーク>>と 言いたいのだろう‥‥おそらくは。 |
矢: |
そ。それそれ! さっすが、トモダチだよなァ! |
御: |
(リカイできてしまう自分が、 いくぶんカナしい‥‥) |
矢: |
フラッとここに立ち寄ってみたら、 イカすモデルを見つけたワケよ。 |
冥: | ‥‥‥‥‥‥‥ |
矢: |
だから、オレ! このサイバンとは ゼンっゼン、関係ねえから。 ”まっ赤な他人”っていうの? かなり、深紅色なワケ。 ま。専門的には ”クリムゾン・レーキ”って‥‥ ‥‥いててて! いてていてていてていて! |
裁: | いたたッ! |
冥: |
つべこべ言わず、 オトコらしく証言なさいッ! |
裁: |
その前に、ついでみたいに 私をぶたないように! 証人! あなたのせいですぞ! さっさと証言しなさいッ! |
矢: |
うううう‥‥。トンでもねえ コトになっちまったなあ‥‥。 |
矢: |
『オレ、あの晩は星を見てたわけ。 あの、山奥のロッジで。』(証言1) 『そりゃ、橋のあたりへは 何回か足を運んだけど‥‥』(証言2) 『す、スノーモービルなんて 見かけなかったぜ!』(証言3) 『あの晩はオレ、橋のトコロじゃァ ダレにも会わなかったんだ!』(証言4) 待っていた子にはフラれちまって。 お師匠サマには死なれちまって。 オレってば、ヒトリぽっちなのさ。 なあ、御剣よォォ‥‥ |
裁: |
証人! 証言中、弁護人に 語りかけないように! |
矢: |
ど‥‥どうせ、オレなんか。 ちっぽけでくだらねえオトコよ! その証拠に、なぜかオレだけ 名前も職業も聞かれなかったし‥‥ |
裁: |
‥‥‥‥‥‥‥‥ 弁護人。このヒトはなぜ、 こんなにヒガみっぽいのですかな? |
御: |
‥‥最近、このオトコのせいで たてつづけに事件が起こった。 どうやら、さすがに それで気がついたらしいのだ。 自分という人間が、いかに はたメイワクな存在か‥‥ |
矢: |
ああ、そうだよ! すべての事件の ウラには、オレがいるんだ! 気をつけろよな! オレにさわると、不幸になるぜ! |
裁: |
‥‥とにかく、しめやかに 尋問をおねがいしましょうか。 詳しいハナシは、それからです。 |
御: |
矢張 政志‥‥。 キサマが、自分を捨てたくなった キモチは、わからないでもない。 キサマ自身がろくでなしな上、 ろくでもない事件を引き起こす‥‥ |
矢: | ‥‥ゴメンよぉ‥‥ |
御: |
だが‥‥自分がいかに、 はたメイワクな存在なのか‥‥ それに気づいただけでも、1歩 前進した‥‥そう言えなくもない。 |
矢: |
御剣ィ。もしかして‥‥ なぐさめてくれてるのかい? |
裁: | とても、そうは聞こえません。 |
御: |
しかし‥‥ キサマの引き起こした事件から 目をそらすことは、ユルさないッ! |
矢: |
うううう‥‥。カンゼンに、 オレのせいになってるよ‥‥ |
御: |
‥‥さて。事件当夜の 話にうつろう。 事件を発見した毘忌尼さんは、 成歩堂 龍一に通報をたのんだ。 そして‥‥成歩堂は、橋のたもとの 公衆電話へ向かったわけだが‥‥ そのとき、彼はおぼろ橋で、 <<ある人物>>に会っている。 矢張 政志、キサマだ! |
矢: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ そうよなァ。 いわゆる、オレよなァ。 |
裁: |
ぬうううう‥‥。 よろしいかな、証人。 いかに、あなたが名前を変えても、 まったくイミはない。 あなた自身がろくでなしな上、 ろくでもない事件を引き起こす‥‥ そのジジツに変わりはないのです! |
矢: |
で、でもよォ! じゃア、オレ‥‥どうすれば? |
御: |
矢張。変えるべきなのは キミ自身、なのだ。 ”あの晩、何を見たのか”‥‥? 本当のことを証言しろ。 キミにできるのは、それだけだ。 |
矢: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 御剣‥‥オレ。 オレ、なんか‥‥ 目がさめたような気がするよ! ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ま。気のせいかもしれねえけど。 とにかく、オレ! やってみるよ! 証言してみるよ! ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ま。うまくいかねえかも しれねえけど。 |
裁: |
それでは、証人。 ‥‥もう一度、おねがいします。 事件当夜‥‥ <<あなたが見たもの>>とは! |
矢: |
『山小屋に行ったのが9時ごろだから ‥‥10時半すぎ、だったなァ。』(証言1) 『フトンの上に寝ころんでいたら‥‥ 目の前がマッシロに光ったんだよ!』(証言2) 『そして、窓のそとで‥‥おぼろ橋が メラメラ燃えてるじゃねえか!』(証言3) 『カミナリが鳴ってたけど、すぐに 見に行ったワケよ。オレとしては。』(証言4) 『そこで、成歩堂に会ったワケ。 ‥‥オレとしては。』(証言5) |
裁: |
ぬううううう‥‥ それはまた、ずいぶん ハデなものを見ましたな。 |
冥: |
それで‥‥燃えた後の橋は どうなったのかしら? |
矢: |
<<橋人生>>をまっとうした、 っていうのかなあ‥‥ ”完全に燃えつきた!” って感じだったね、アレは。 ‥‥現に、成歩堂がその燃えカスを わたろうとして、落っこちたし。 |
冥: | なな、なんですって‥‥! |
御: |
まあ‥‥イノチに別状はない。 カゼをひいただけだ。 |
冥: |
‥‥あいかわらず、運がいいのか 悪いのか、わかりにくいオトコ‥‥ |
裁: |
それでは! 弁護人。 尋問をおねがいしましょう! |
御: |
”すぐに”というのは ‥‥どれぐらいだ? |
矢: |
そうだなあ‥‥ カミナリが落ちて、橋に火がついて ‥‥5分ぐらいだったかなあ。 まあ‥‥急に『見に行こう!』って 思ったワケね。コレが。 |
冥: |
その小屋から橋までは、 どれぐらいのキョリが‥‥? |
矢: |
そうなぁ。あのときは、 もう雪もやんでいたから‥‥ 5分もあれば、ラクに 行けたと思うけど‥‥。 |
御: |
それで‥‥キミが目の前にした、 おぼろ橋の状況は? |
矢: |
まあ、<<宴たけなわ>>って ヤツだったなー。 小学生たちがキャンプファイヤー やりたがるのも、ムリねえわ。 |
御: |
(‥‥どうだろう。もう少し、 詳しく聞いてみるか‥‥?) |
御: |
‥‥矢張。1つだけ、 聞いておこう。 |
矢: |
ナニよ? 御剣。 すずしいカオしちゃってさァ。 |
御: |
キミは‥‥なぜ、 人を呼ばなかったのだ? |
矢: | え? どういうことよ。 |
御: |
ふつう‥‥それだけの火災を 見たら、人に知らせるだろう。 おぼろ橋のかたわらには、 公衆電話もあったのだからな。 |
矢: |
‥‥‥‥‥‥‥‥ ま。‥‥トーゼン、 オレもそうしようと思ったケド。 |
裁: |
それでは‥‥通報しなかった 理由を証言してもらいましょう! |
矢: |
え‥‥ええ? そうだなあ。 理由‥‥。りゆう‥‥ <<通報しなかった>>というより、 するヒマがなかった‥‥のかなァ。 『橋のところへついて、1分もしない うちに、成歩堂が来たんだよ。』(証言6) |
御: |
‥‥存在自体がムジュンだらけの キサマに、理解できるかどうか‥‥ |
矢: |
なんだよ! ヒトを 宇宙人みたいに言うな! |
御: |
キサマの証言は、決定的に ムジュンしている。 問題は‥‥<<時間>>だ。 |
矢: |
あー、オレ。そういうの ニガテなんだよ。 『まさしくんが出かけた3分後、 自転車で追いかけました。 さて、追いつくのは、何分後 でしょう?』‥‥みたいなヤツ。 |
御: |
‥‥もっとカンタンな話だ。 キミは、おぼろ橋にカミナリが 落ちるのを見て‥‥ すぐ、橋のところまで 見に行った。‥‥まちがいないな? |
矢: |
そうなァ。‥‥まあ、5分ぐらい グズグズしてたけど。 |
御: |
‥‥ここに、事件当夜の 気象データがある。 これによると、落雷の時刻は 午後10時45分。 小屋からおぼろ橋までのキョリは、 5分弱。すると、キミは‥‥ 午後11時には、 橋のたもとにいたことになる。 |
矢: |
‥‥ま。そんなもんだろうな、 たしかに。 そこへ、成歩堂がやって来て 落っこちたワケね。 |
御: | それは、あり得ないのだ。 |
冥: | ‥‥どういうことかしら? |
御: |
11時といえば、葉桜院で 事件が発生した時刻だ。 つまり‥‥成歩堂はまだ、 葉桜院にいた。 矢張 政志が、おぼろ橋で 彼に会えるはずがない! |
冥: | ‥‥‥! |
矢: |
あ。はい! あの。オレ。 異議あり、なんですけど。 |
裁: | なんですか? |
矢: |
だから、御剣! なんべんも 言わせるんじゃねえよ! オレは、ヤハリじゃねえ! 天流斎 マシス、そのひと ぎゃはああッ! |
冥: |
‥‥事件が発見されたのが11時 だと、立証はされていない。 ジューショクさまも『11時ごろ』 としか、言っていないわ。 ‥‥それならば! ジッサイは、 もっと早かったのかもしれない! |
御: |
‥‥アマいな、狩魔 冥‥‥ いずれにせよ、11時に成歩堂が おぼろ橋にいたハズはないのだ。 |
冥: | な‥‥なぜ! |
御: |
気象データに、ハッキリと こう書かれている。 橋が燃えつきるのにかかった 時間は‥‥<<約30分>>。 つまり! 橋は少なくとも 11時15分までは燃えていた! |
裁: |
それが‥‥どういうことに なるのですかな? |
御: |
成歩堂は、あの晩‥‥ 橋が燃えているのを見ていない。 彼がついたとき‥‥おぼろ橋は、 燃えつきた後だった! ‥‥矢張! キサマが橋のたもとに 行ったのが、11時。 成歩堂が来たのが、 11時15分すぎ‥‥ キサマは‥‥またしても、 我々にかくそうとしている! その、<<空白の15分>>をッ! |
矢: |
‥‥‥‥う‥‥‥‥ オレ‥‥目がさめたような 気がしてたんだけど‥‥ やっぱり気のせいだったんだ よおおおおおおおおおおおん! |
裁: |
静粛に! 静粛に! 静粛に! せいしゅくにィィィッ! |
冥: |
‥‥成歩堂 龍一に会うまで、 15分の空白があった‥‥ そんなの、たいした 問題ではない! |
矢: |
そうだよ! たいした 問題じゃねえよ! |
御: |
‥‥そうだろうか‥‥? 目の前で、橋が燃えている。 すぐ横には、公衆電話もある。 それなのに‥‥通報もせず、 キサマは何をしていた? |
裁: |
橋が燃えているのを ながめていた‥‥のですかな? |
御: |
問題は、そこだ‥‥ このオトコは、燃えつきた あとも、橋のたもとにいた。 そして、あいかわらず‥‥ 通報もせず、ボンヤリしていた。 |
冥: | そ‥‥そうなるわね‥‥ |
御: |
‥‥いくらコイツが矢張といえど、 さすがにそれは、あり得ない‥‥ そこには、何か ”理由”があったはずだ! |
矢: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ‥‥御剣ィ‥‥ オマエ‥‥ついに、オレを ホンキにさせちまったな‥‥ |
御: |
‥‥やはり、今まで ホンキではなかったようだな‥‥ |
矢: |
いいのか‥‥? オレ‥‥ オレ、しゃべっちまうぞ! ホントに、いいんだな‥‥? |
御: | う、うム‥‥‥ |
矢: |
ホントォォにオレ、今度こそオレ、 しゃべっちまうかもしれ かはァァッ! |
冥: | ‥‥さっさとしゃべる。 |
裁: |
それでは‥‥いささか よくない予感がしますが‥‥ 今度こそ、しめやかなる真実を 証言していただきましょう。 ‥‥<<空白の15分間>>‥‥ あなたが、何をしていたか! |
矢: |
『オレ、天流斎よ。ゲージュツカよ。 やるコトなんて、決まってるだろ!』(証言1) 『スケッチしてたんだ! 橋の前で! もう、ムチュウで描きまくったぜ!』(証言2) 『オレの感じたショーゲキを‥‥ 見たまま、ノートにぶつけたんだ!』(証言3) 『‥‥気がついたら火は消えていて、 ヤツがヨロめきながら現れたのさ。』(証言4) |
裁: |
ぬぬぬうううううう‥‥ まあ‥‥芸術家なら しかたないかもしれません。 |
矢: |
そうだよ! ゲージュツのためなら すべてをギセイにしていいんだぜ! |
御: | (‥‥自分で言うな!) |
裁: |
いかがですか? 弁護人。 疑問は、なくなりましたが‥‥? |
御: |
‥‥それはちがう、裁判長。 まだ、大きな問題が残っている。 |
裁: | そ、それは‥‥? |
御: |
あくまでもコイツにしては、 わりとマトモな理由なのに‥‥、 ‥‥なぜ、それを今まで かくしていたか? 弁護側は‥‥かならず、 それを暴いて見せる。 |
矢: |
クックックッ! 後悔するなよ、 御剣ィィィィ‥‥ |
御: |
す、スケッチ‥‥! 燃えている橋をか? |
矢: |
燃えてる橋や、 その他モロモロだよ! |
御: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ なんだ? ”モロモロ”‥‥とは。 |
矢: |
そ、それをオレの口から 言わせようってのかよ、御剣! きっと後悔するぜ! なにしろ オレのスケッチは、そんじょそこ ががああッ! |
冥: |
‥‥もう、いいわ。 ‥‥見せなさい、証人。 その、バカげた”スケッチ”を! |
矢: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ な。な。な。なんでだよ! なんだよ! わかんねえよ! |
裁: |
どうも、それがイチバン、 手っ取り早いようですな。 ‥‥いかがですか? 弁護人。 |
御: |
(どうするべきか‥‥? その絵を見た瞬間‥‥世界が 終わってしまうような‥‥ それほどまでに、 イヤな予感がするのだが‥‥) |
御: |
‥‥矢張。そのスケッチ‥‥ 見せてくれないか。 |
矢: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ フッ。‥‥さすがのオレも、 予想できなかったぜ。 |
御: | ‥‥何がだ? |
矢: |
天流斎 マシスのデビューが、 こんなカタチで実現するなんて‥‥ いたたはァッ! |
冥: | さっさと提出なさい! |
矢: |
いいか‥‥見ておどろくなよ‥‥ コイツが‥‥ 天流斎 マシスくんの世界だッ! |
裁: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥あ。 え、ええと‥‥その。 これが‥‥その。いわゆる <<おぼろ橋>>、ですか。 ず、ずいぶん大きな吊り橋ですね。 いかがですか、狩魔検事! |
冥: |
そそ、そうね‥‥ お‥‥思ったより、 よく描けているわ。 |
矢: |
だろ? だろ? キレイな火の色を 出すのに、苦労したんだぜ! |
裁: |
‥‥はあ、そうなんでしょうねえ。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥ |
冥: | ‥‥‥‥‥‥‥‥‥ |
矢: | ‥‥‥‥‥‥‥‥‥ |
御: |
(うううう‥‥気まずい‥‥ どうやら‥‥だれも、 切り出す勇気がないようだな。 ‥‥この、 ナゾの飛行物体について) ‥‥おい、矢張。 |
矢: | ナニよ。 |
御: |
橋が燃えているのは、まあ いいとして、だ。 なんなのだ? その上を ただよう、不吉なシロモノは‥‥ |
矢: | お。気づいちゃった? やっぱり。 |
御: |
まあ‥‥目をそらすわけにも いかないからな。 |
矢: |
あやめちゃんだよ、あやめちゃん。 決まってるだろ! まったく、女の子なんだからさァ。 ムリしちゃダメだよなあ。 ケガしたらどうするんだよ。 ‥‥空なんか飛んじゃってさ! |
御: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 矢張。これだけは正直に、 本当のコトを言ってくれ。 |
矢: | いいぜ。 |
御: |
キサマ‥‥本当に、 見たと言うつもりか? 炎上するおぼろ橋の 上空を飛びこえる‥‥ ‥‥被告人の姿を。 |
矢: |
ああ。見たぜ。 だから、描いたんじゃねえか。 ゲージュツカだから。オレ。 |
御: | そんな‥‥! |
冥: | そんな‥‥! |
裁: | ‥‥そんな、バカなことがああッ! |