成歩堂 龍一…黒 | |
綾里 千尋…赤 | |
綾里 真宵…青 | |
綾里 春美…黄緑 | |
御剣 怜侍…茶 | |
狩魔 冥…水 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
ゴドー検事…薄橙 | |
裁判長…緑 | |
裁判官…黄 | |
矢張 政志…紺 | |
天龍斎 エリス…桃 | |
毘忌尼…橙 | |
葉桜院 あやめ…藤 | |
美柳 ちなみ…紫 |
毘: |
『オバサンが見たとき、カタナは もう、刺さっていましたねェ。』(証言1) 『考えてみれば、あの子が刺した 瞬間は、見ていないみたい。』(証言2) 『オバサン、あんなに血ィが出るのを 見たの、初めてだから‥‥』(証言3) 『それで、キゼツしちゃった のよねェ。ムリもないけど。』(証言4) 『それで、目がさめたら‥‥ 供子さまが、エリスさまを‥‥!』(証言5) |
裁: |
ぬううううむ‥‥ どうやら‥‥狩魔検事の主張が ウラづけられたようですな‥‥。 |
冥: |
‥‥狩魔は、カンペキをもって よしとする‥‥ このテイドは、当然のレベル。 そうでしょう? 御剣 怜侍‥‥ |
御: |
(”カンペキ”など、 あり得ないのだ、狩魔 冥‥‥ どうやら、まだ わかっていないようだな‥‥) |
御: |
‥‥被害者の血を 目撃した、と‥‥? |
毘: |
そ、そうなの! あの。 あ、あやめにも少し、返り血が‥‥ |
冥: |
被告人・あやめは、逮捕されたとき 自室でメイソウをしていた。 返り血で汚れた装束は、キチンと たたんで、わきに置いてあったわ。 |
御: |
な、なんだと‥‥! (返り血をあびた、装束が‥‥) |
裁: |
ぬううううう‥‥やはり、 決定的なようですなあ‥‥。 |
御: |
(どうする‥‥? さらに追求するべきか‥‥) |
御: |
‥‥先ほどの話にもあったが‥‥ 刺された瞬間の出血量は、それほど たいしたものではないという。 しかし‥‥あなたは、被害者の ”出血”を目撃したそうだが‥‥? |
毘: |
あらあら。オバサンだってねェ。 見るモンは見てるんだから。 |
裁: | ど、どういうことですかな? |
毘: |
たしかにオバサン、カタナを刺す ところは見なかったけど‥‥ あの子が、カタナを抜くところは ハッキリ見ましたからねえ。 |
御: | カタナを‥‥”抜いた”‥‥? |
毘: |
まあ‥‥”抜いた”というより ”抜けた”という感じだったけど。 |
裁: |
証人! 今の発言、 証言に加えていただきましょう! |
毘: |
あ、あの‥‥。 重要なコトだったのかしら‥‥? |
御: |
(‥‥あなたが 想像もつかないほどに‥‥) |
毘: |
『根元まで刺さった凶器を抜く瞬間は 見たの。するする、スムーズに‥‥』(証言6) |
御: |
毘忌尼さん。 あなたは、信頼できる証人だ‥‥ そう思いたいのだが‥‥ その証言に、ムジュンが多すぎる。 |
毘: |
な、なんなのよ! ヒトをウソつきみたいにィィ! ‥‥まあ‥‥。ちょっと イイ男だから、ユルすけど。 |
冥: |
”ムジュン”‥‥ どういうことかしら? |
御: |
証人が見たと主張する 光景では‥‥ 凶器は、その根元まで 被害者をつらぬいていたという。 さらに‥‥ハンニンは、その凶器を スムーズに死体から抜いている。 ‥‥しかし! そのいずれも、あり得ないのだ。 |
裁: |
‥‥どういうコトかな‥‥? 説明をおねがいしま うははははははははははッ! |
冥: |
どういうコトなの! 説明しなさいッ! |
御: |
そもそも‥‥こんな凶器を、根元 まで刺すことができるだろうか? 被告人は、それほどチカラのある 女性には見えないが‥‥? |
冥: |
”そうは見えない”‥‥ そんなコトバは無力よ。 私だって、見た目は このとおり、か弱いけれど‥‥ その気になれば、オトコの ひとりやふたり、泣かせてみせる! |
裁: |
異議を認めます! さっき、この私ですら、ちょっと 泣いてしまいましたからな。 |
御: |
‥‥モンダイは、 それだけではない。 もし、このカタナが根元まで 刺さってしまえば‥‥ これだけ枝分かれしているのだ。 ”スムーズ”に抜けるハズがない! |
冥: | そ、それは‥‥‥ |
御: |
それに、出血量の問題がある。 カタナで刺された場合、その凶器が ”フタ”になることは考えられる。 しかし! このようなフクザツな カタチとなれば、話はベツだ。 傷口は広がり、出血は おさえられなかっただろう! |
冥: |
‥‥そ、そんなもの‥‥ スイソクにすぎないわ! 現に、被害者は七支刀で 刺されているのよ。 こんなカタチの凶器でも‥‥ スムーズに抜けることもあるし、 出血を止めることもあるッ! |
御: |
それだけではないのだよ。 さらにもう1つ‥‥ 決定的なムジュンがある。 |
裁: | ま‥‥まだ、あるのですか! |
御: |
‥‥カンタンなコトだ。 もし、このカタナが 根元まで刺さったのであれば‥‥ なぜ、その血痕が、カタナの 切っ先にしか残っていないのか? |
冥: | あ‥‥‥ッ! |
御: |
‥‥もし、この証人の 証言が正しいのならば! 刀身の全体に、痕跡が 残っているはずではないかッ! |
冥: | ぐうううううううッ! |
裁: |
静粛に! 静粛に! 静 うはははははははははははッ! |
冥: |
さすがは‥‥御剣 怜侍ね。 たった1本の凶器から、ここまでの ムジュン点をすくい上げるなんて。 私の知っている弁護士なら‥‥ おそらく、1コがせいぜい。 |
裁: |
しかし! これはいったい、 どういうことなのですか! 凶器に、多くのムジュンが あることはわかりましたが‥‥ |
御: |
‥‥そこまでわかれば、 コタエは1つしかなかろう。 |
冥: | そ、それは‥‥‥? |
御: |
被害者のイノチをうばった <<凶器>>は‥‥ このカタナ、 <<七支刀>>ではなかったのだッ! |
裁: | な‥‥なんとォォォッ! |
冥: |
バカの、バカによる、 バカ中心的でバカげた考えね‥‥ |
御: |
そもそも‥‥これが凶器だと 考えられたのは、なぜだろうか? |
毘: |
そ、それは、モチロン‥‥ 供子さまが‥‥その手に、 お持ちになっていたから‥‥ |
御: |
‥‥そのとおり。 しかし! 逆に考えれば、コンキョは それだけなのだ。 ‥‥あの光景の印象が強すぎた。 それゆえ、我々は思いこんだ。 この七支刀こそが ”凶器である”‥‥と! |
裁: |
静粛に! 静粛に! 静粛に! うはははははははははははッ! |
冥: |
”凶器が<<七支刀>>では なかった”‥‥ もし、そうだったとしても‥‥ 何も変わらないわ、御剣 怜侍! ジューショクさまは、 目撃しているのだから! 被告人が<<カタナのようなもの>>で 被害者を刺しつらぬいた光景を! |
裁: |
ぬうううううう‥‥ それは、そうですな! いかがですかな、弁護人! |
御: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ それならば‥‥検察側に、当然の ギモンの答えをいただきたい。 |
裁: | 当然の‥‥ギモン? |
御: |
‥‥そう。すなわち‥‥ ホンモノの凶器は いったい、どこへ消えたのか? |
冥: | ‥‥‥! |
御: |
当然、警察は葉桜院内、および その周辺を捜査したはずだ。 ‥‥<<カタナのようなもの>>は 発見されたのかな? |
冥: | そ、それは‥‥‥ |
裁: | どうなのですか! 狩魔検事! |
冥: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ それらしき証拠品は 発見されていないわ‥‥ |
裁: |
ぬううううう‥‥ また1つ、ナゾが増えたようです。 凶器が発見されないとなると、 審理はヤッカイなことに‥‥ |
毘: |
あの‥‥ ちょっといいかしらねェ。 オバサン、思い出した コトがあるんだけど‥‥ |
冥: |
‥‥何かしら? ジューショクさま‥‥ |
毘: |
もしかしたら‥‥ アレは、ああいうコト だったのかもしれないねぇ‥‥ |
裁: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ゼンゼン、わかりません。 |
毘: |
キョーキよ、キョーキ! ‥‥もしかしたら‥‥ オバサン、知ってるかも! カタナを捨てた場所をッ! |
御: | なんだと‥‥ッ! |
冥: |
‥‥どうやら‥‥ ジューショクさまの証言‥‥ もう一度、聞く必要があるようね。 |
御: |
(バカな‥‥! この上‥‥いったい、何を見たと 言うのだ、このオバサンは!) |
毘: |
『オバサンが、事件を目撃したのは 11時ごろだったワケだけど‥‥』(証言1) 『事件の通報をたのんだあと、 山門のトコロに出てみたの。』(証言2) 『そこに‥‥スノーモービルが 走ったアトが残っていたの!』(証言3) 『おぼろ橋まで歩くと15分だけど、 あれを使えば、5分もかからない!』(証言4) 『オバサンがキゼツしたあと、凶器を 吾童川に捨ててきたんじゃない?』(証言5) 『‥‥あやめなら、それができた。 スノーモービル、運転できるし‥‥』(証言6) |
裁: |
ぬうううううううむ‥‥ 証人。証言を、小出しに しないようにおねがいします。 |
毘: |
ま。オバサンもアレよね。 コシがアレだし、トシもアレだし。 |
冥: |
たしかに‥‥ 山門の前には、スノーモービルの シュプールが残っていたわ。 これが、その写真よ。 |
裁: |
スノーモービル‥‥ですか。 ‥‥あり得ますねえ‥‥。 |
冥: |
シュプールは、葉桜院の前から 始まって‥‥ おぼろ橋の前まで つながっていたわ! |
データを法廷記録にファイルした。 | |
冥: |
‥‥これで、問題ないようね。 吾童川は、流れが早いため、 冬でも凍結することはない。 凶器を捨てるには、まさに 絶好のポイントよ! |
御: | (凶器を‥‥川へ捨てに行った?) |
裁: |
それでは、弁護人! ‥‥尋問をおねがいします。 |
御: |
たしかに‥‥この写真は、 証明している。 事件当夜、スノーモービルが 使用されたことを。 |
冥: |
認めざるを得ないようね。 ‥‥御剣 怜侍。 |
御: |
ただし‥‥。 それならば、なぜ。 シュプールは1本なのだろうか? |
冥: | どういうこと‥‥かしら? |
御: |
葉桜院から凶器を持ち出して、 川に捨てて戻ってきたら‥‥ 当然! 雪の上には 2本のシュプールがあるはず! 橋へ向かうときのものと、 橋から帰ってくるときのもの‥‥ |
毘: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ あ‥‥! そりゃそうだわねぇ‥‥ |
冥: |
フッ‥‥ ひとつ、忘れていることが あるようね‥‥御剣 怜侍。 |
御: | ‥‥‥? |
冥: |
事件当夜は、雪が降っていたのよ。 橋へ向かうシュプールは、 その雪が消してしまった‥‥ そう考えれば、なんの ムジュンもないでしょ? |
裁: |
なるほど! 川に凶器を捨てている あいだに、雪がやんで‥‥ 帰ってくるときのシュプールだけが 雪の上に残されたワケですか‥‥ |
冥: |
さあ、いかがかしら! ‥‥御剣 怜侍! |
御: |
(‥‥狩魔検事の主張‥‥ オカシイところは、ないか? ”雪がシュプールを消した” ‥‥という主張‥‥) |
御: |
”川へ向かうシュプールは、 雪によって消された”‥‥ 狩魔検事。 ‥‥それは、あり得ないのだよ。 |
冥: |
‥‥‥‥‥‥‥‥ その無礼につきつけられた、 人差し指‥‥ 説明してもらえるかしら? |
御: |
‥‥その必要はない。 証拠品が、すべてを語るだろう。 |
裁: |
事件当夜、被告人は凶器を捨てる ため、おぼろ橋まで往復した。 その”行き”のシュプールは、 雪によって消されてしまった‥‥ ‥‥それが、検察側の主張です。 それでは、弁護人。 証拠を提示していただきましょう! ”行き”のシュプールが、雪で 消されたのではないという証拠を! |
御: |
‥‥ケッキョクのところ、 ポイントは、たった1つ‥‥だ。 すなわち‥‥ 被害者が刺された瞬間、境内に 雪が降っていたかどうか‥‥? |
冥: |
‥‥そういうことね。 しかし、それを立証するのは‥‥ |
御: | きわめて、たやすい。 |
冥: | ‥‥‥! |
御: |
境内の状況を知りたければ‥‥ 写真を見ればよい。 ‥‥さよう。 <<現場写真>>だ、モチロン。 ごらんのとおり‥‥すべてが 雪でおおわれている。 ‥‥ただ1つのものをのぞいて。 |
冥: | そ、それは‥‥? |
御: |
被害者・天流斎 エリスだ。 なぜ、彼女の上にだけ、 雪がつもっていないのか‥‥? 答えは、わかりきっている。 彼女が殺害されたとき、 雪はすでにやんでいたッ! |
冥: | ぐ‥‥‥ッ! |
御: |
つまり! 犯行のあと、犯人が吾童川に 凶器を捨てに行ったのであれば‥‥ この写真にはやはり! シュプール は2本、残っているハズなのだッ! |
冥: | きゃああああああッ! |
裁: |
静粛に! 静粛に! こ、これはどういうことなの ぎゃッほほお! |
冥: |
い‥‥いったい‥‥ どういうことなの、御剣 怜侍! |
御: |
(正直なトコロ‥‥ 私にも、よくわからないが‥‥) 事実を整理すると‥‥ こういうコトになる。あの晩‥‥スノーモービルを使い、 だれかが葉桜院をはなれた。 シュプールから見て、行き先は おぼろ橋と考えるべきだろう。 そのとき‥‥ まだ、雪は降っていた。 |
冥: |
当然ね。‥‥そのときの シュプールは消えているのだから。 |
御: |
そして‥‥その人物が 葉桜院に帰ってきたとき‥‥ すでに雪はやんでいた。 だから、シュプールが残った。 |
裁: | ぬううううううううう‥‥む。 |
毘: |
ちょっと、いいかしら? ‥‥なんだか、 オカシイ気がするのよねェ‥‥ |
冥: |
‥‥なにかしら? ジューショクさま。 |
毘: |
スノーモービルのキーは‥‥ 1本しか、ないんですよ。 |
御: | ‥‥‥! |
冥: |
そして‥‥事件当夜、被告人が 持っていたことがわかっている。 事件発生後、キーは 彼女の部屋から発見されたわ。 |
毘: |
‥‥だから、あの晩、 スノーモービルは‥‥ あやめが奥の院に行くときに 使ったことになりますよねえ‥‥ |
御: |
(まあ‥‥彼女は奥の院には ”行ってない”と言っているが。 ここは、話を 聞いておくべき、だな‥‥) |
毘: |
スノーモービルで吊り橋を わたることはできないから‥‥ あの子は橋のたもとに置いて、 奥の院に来たんでしょうねぇ。 |
裁: | ‥‥そうなりますね。 |
毘: |
でも‥‥オバサンがあやめを残して 葉桜院に帰る途中‥‥ おぼろ橋のたもとには‥‥ 何もなかったけどねぇ。 |
冥: |
そ‥‥それは、ジューショクさま。 きっと、見落としたのよ。 |
毘: |
それにねぇ。オバサンが 葉桜院に帰ってみると‥‥ 門のトコロに、ちゃんとあったの。 ‥‥あのスノーモービル。 ‥‥まちがいないわ。 すっぽり、雪がつもってたねぇ‥‥ |
御: |
そ‥‥そのようなこと‥‥ あり得ないッ! |
裁: |
静粛に! 静粛に! 静粛に! ‥‥これは、どういうことですか! |
冥: | ‥‥ううう‥‥ |
御: |
いったい‥‥スノーモービルは、 なんのために使われたのか‥‥? まず‥‥被告人が、奥の院に 行くときに使ったのではない。 それならば、証人が帰ってきた際、 山門の前にあるはずがないからだ。 さらに‥‥犯行の後、凶器を 捨てに行ったわけでもない。 それならば‥‥この写真には、 シュプールが2本、あるはず‥‥ しかし‥‥ これだけは、たしかだ。 雪がやんだ後‥‥だれかが、 あれを使って葉桜院に戻った! |
裁: | ぬううううう‥‥ |
御: |
(まさか‥‥スノーモービルが、 ここまで問題になるとは‥‥) |
裁: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ どうやら‥‥この証人は ここまで、のようですね。 |
毘: |
ええ、ええ。 そうみたいですねぇ‥‥ オバサンね。もお、ゼーンブ 話しちゃったから。知ってるコト。 |
裁: |
さて‥‥コマりましたな。 ‥‥どなたか‥‥ スノーモービルを目撃した 証人がいれば、いいのですが‥‥ |
御: | (‥‥”目撃”か‥‥) |
裁: |
事件当夜‥‥おぼろ橋付近をサンポ していた関係者は、いませんかな? |
毘: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ それはちょっと、ムリなハナシね。 あの晩は、耳がモギ取れるほど 寒かったから‥‥ オモテをほっつき歩くバカは いなかったと思いますよぉ。 ‥‥よっぽどダイジな 用でもないかぎりは‥‥。 |
裁: |
ぬううううううううう‥‥ ザンネンですなあ。 |
御: |
(‥‥待てよ‥‥ どうも、ココロに引っかかる。 あのサムい晩、オモテを ほっつき歩いていたバカ‥‥か) ‥‥裁判長! 私に‥‥ヒトリだけ、 思い当たる人物がある。 |
裁: | な‥‥なんですって‥‥! |
冥: |
‥‥事件当夜、スノーモービルを 目撃した人物、かしら‥‥? |
御: |
それを見ているかどうかは わからない‥‥しかし。 その人物について、2つ。 ‥‥思い当たることがある。 |
裁: | それは‥‥? |
御: |
1つ。‥‥その人物は事件当夜、 <<トンでもないもの>>を目撃した。 |
冥: | ‥‥もう1つは? |
御: |
私の知っている、その人物は‥‥ あのサムい晩、オモテをほっつき 歩くほどのバカだ、ということだ。 |
裁: |
弁護人! その人物とは、 どなたですかッ! |
裁: |
どなたですかな? この、決定的に キンチョー感を欠いた青年は。 |
御: |
矢張 政志。‥‥被害者、 天流斎 エリスの弟子、だ。 |
裁: |
被害者の‥‥? それは、おもしろい。 彼は、なぜ‥‥事件当夜、オモテを ほっつき歩いていたのですか? |
御: |
そ、それは‥‥ (あやめさんのことをブチまける のは、たやすいが‥‥ 証人としての信頼を、呼び出す 前から失うおそれがある‥‥) まあ‥‥彼もまた、芸術家の はしくれだ。 雪景色に、何かココロ打たれる ものを感じたのではないだろうか。 ‥‥保証はしないが。 |
冥: |
それで‥‥この、 たよりなさそうなオトコが‥‥ いったい、ナニを 見たというのかしら? |
御: |
それを、この場で 聞き出そうと言っている。 |
裁: |
‥‥大至急、その青年を 証人として召喚しましょう! |
冥: |
‥‥‥‥‥‥‥‥ やむを得ないようね。 |
御: |
彼はおそらく、この法廷を 傍聴しているはず。 召喚に、時間はかかるまい。 |
裁: | ‥‥わかりました。 |
御: |
(‥‥矢張‥‥ きのうは、うまく 逃げられてしまったが‥‥ 今度こそ、すべてを 引きずり出してやるぞ!) |
裁: |
‥‥これより、20分間の 休憩をとりたいと思います。 検察側は、証人の手配を おねがいします。 |
冥: | ‥‥了解したわ。 |
裁: |
よろしい‥‥。 それでは! 休憩に入ります! |