成歩堂 龍一…黒 | |
綾里 千尋…赤 | |
綾里 真宵…青 | |
綾里 春美…黄緑 | |
御剣 怜侍…茶 | |
狩魔 冥…水 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
ゴドー検事…薄橙 | |
裁判長…緑 | |
裁判官…黄 | |
矢張 政志…紺 | |
天龍斎 エリス…桃 | |
毘忌尼…橙 | |
葉桜院 あやめ…藤 | |
美柳 ちなみ…紫 |
あ: |
『ツエで殴られた真宵さまは、一瞬 おヨロめきになったのですが‥‥』(証言1) 『エリスさまの攻撃をかわして、 凶器を奪いとったのです!』(証言2) 『エリスさまは、逆に追いつめられ、 灯ろうを背にして立たされました。』(証言3) 『真宵さまは、そのまま小刀で エリスさまを刺したのです!』(証言4) 『エリスさまは、小刀をふり払ったの ですが‥‥やがて、お倒れに‥‥。』(証言5) |
成: |
あなたは、それを どこから目撃したんですか? |
あ: | あの‥‥どういうことですか? |
成: |
もし、被害者たちが あなたに気づいていれば‥‥ そんなハデな争いは 起こらなかったかもしれません。 |
あ: |
そ‥‥そうだったの でしょうか‥‥。 おふたりは‥‥中庭の、灯ろうの あたりにいらっしゃいました。 私‥‥それを、後ろから 目撃したのです。 おふたりがいたところは 暗かったから‥‥ それで、私のことが 見えなかったのだと思います。 |
裁: |
ふむう‥‥事件当時、 中庭は、暗かった‥‥ それで‥‥殴られた真宵さんは どうしたのですかな? |
成: |
そのとき、被害者の ツエはどうなったのですか? |
あ: |
わ、わかりません。 あたりは、とても暗かったので ‥‥私には、見えませんでした。 お争いになるうちに、どこかへ 飛んでしまったのだと思います。 |
裁: |
‥‥なるほど‥‥ それならば、小刀を取り出した セツメイもつきますな。 |
あ: |
エリスさまは、真宵さまに 凶器の小刀を振り上げました。 真宵さまは、とっさに それをかわしたのです。 刃先が灯ろうに当たって、 小刀は地面に落ちました。 そして‥‥いつのまにか、 真宵さまが、その小刀を‥‥! |
成: |
(今のところ、不自然な点は 見あたらないな‥‥) |
裁: |
凶器を奪われた被害者は、 どうなったのですかな? |
成: |
綾里 真宵が‥‥被害者を ”追いつめた”‥‥? |
あ: |
‥‥ええ‥‥ ‥‥真宵さまは、きっと 我を忘れていたのだと思います。 だって‥‥お命を 狙われたのですから‥‥ |
成: |
(‥‥考えられない‥‥ 彼女が、刃物を持って だれかを追いつめるなんて!) |
ゴ: |
”追いつめられたネズミは、 ネコを噛む”‥‥そう言うぜ。 |
成: |
でも、そのネズミは ネコを追いつめたりはしません! |
ゴ: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ たとえ話なんか、 なんのイミもねえぜ。 |
成: | (そっちが始めたんじゃないか!) |
裁: |
それで‥‥ 被害者を追いつめた、綾里 真宵 さんは‥‥どうしたのですかな? |
成: |
あなたは‥‥本当に、それを ハッキリ見たのですか! |
あ: |
‥‥‥‥‥‥‥‥ たぶん‥‥そうだと思います。 |
成: | ”たぶん”‥‥? |
あ: |
あのとき、中庭は 暗かったものですから‥‥ それが”だれ”なのかは、 ほとんど見えなかったのです。 |
成: |
(なんだって‥‥?) そ‥‥それならば! あるいは、別人だったかも‥‥ |
ゴ: |
‥‥あの晩、綾里 真宵が 奥の院にいたのは、まちがいない。 ‥‥そして、死んだのは 天流斎 エリスだ。 ‥‥だれとだれが争ったか‥‥ ”見る”までもねえんじゃねえか? |
成: |
うううう‥‥ (反論できない。今は、まだ‥‥) |
裁: |
‥‥それでは、証人。 証言をつづけてください。 |
あ: |
‥‥ええ。わかりました。 おふたりは、しばらく 向かい合ったあと‥‥ <<犯人>>が、<<被害者>>に 体当たりしたのです! <<被害者>>は‥‥身体を ”く”の字に折って、倒れました。 |
裁: |
ふむう‥‥。 腹部を刺されたわけですな。 |
あ: | ええ‥‥。 |
成: | その、小刀は‥‥どこへ? |
あ: |
‥‥わかりません。 暗くて、見えませんでした。 |
ゴ: |
コイツを見つけた刑事の 話によると‥‥ ‥‥小刀は、中庭の 松の木に刺さっていた。 ‥‥おそらく、そこへ 飛ばされたんだろうぜ。 |
裁: |
そう考えるのが 自然でしょうな。 |
成: |
腹部を刺された被害者は‥‥ すぐに倒れたんですか? |
あ: |
‥‥‥‥‥‥‥‥ そういえば‥‥ しばらく、真宵さまのほうを 見つめていたような気がします。 真宵さまも、まったく 動かなくて‥‥ そのまま、時が止まったような 気がしました。 |
裁: | ‥‥ふむう‥‥ |
あ: |
やがて‥‥魔法が解けたように エリスさまは、お倒れに‥‥。 |
成: |
(‥‥一見、どこにも ムリのない証言に思える。 しかし‥‥1つだけ。ゼッタイに あり得ないことがある。 ‥‥真宵ちゃんが、 だれかを刺すなんて‥‥ それだけは、あり得ない! だからこそ‥‥ この証言には、かならず ムジュンがあるはずだ‥‥) |
あ: |
『エリスさまが亡くなって‥‥ 私、真宵さまに声をかけました。』(証言1) 『倉院流の家元をつぐお方を、お守り しなければ‥‥そう思ったのです。』(証言2) 『だから‥‥私がひとりで、死体を 奥の院から運びだすことに‥‥。』(証言3) 『おぼろ橋の上を、死体を 引きずって、わたりました。』(証言4) 『そして、スノーモービルで 死体を葉桜院に運びこんで‥‥』(証言5) 『死体の傷をかくすため‥‥ 七支刀で、細工をしたんです。』(証言6) 『‥‥事件が起こったとき、雪はもう すっかりやんでいました。』(証言7) |
成: |
‥‥すべてが終わるまで 待っていたわけですか? |
あ: | そ、そういうワケでは‥‥ |
ゴ: |
‥‥目の前で、イノチの やりとりがあったんだ‥‥ 声を出せなくても、 ムリはねえだろうぜ‥‥ |
裁: |
‥‥それは、 そうかもしれませんな。 私も、みなさんのイキオイに のまれてしまって‥‥ ムダなやりとりでも、ダマって 見ていることがありますからな。 |
成: | (‥‥止めてくれよ!) |
あ: |
‥‥私に気づいた真宵さまは、 そのとき、初めて‥‥ ご自分のなさったことに 気がついたようでした。 |
成: |
じゃあ‥‥あなたは 知っていたのですか‥‥? ”綾里 真宵”という名前が 持っている、イミを‥‥ |
あ: |
‥‥え、ええ‥‥。 もちろん、ですわ。 |
成: |
(ちょっと、おかしいな‥‥ ビキニさんは、真宵ちゃんの ことを知らなかったのに‥‥) |
あ: |
とにかく‥‥あの方は 私どもにとって、特別な方でした。 |
成: | なぜ、そんなコトを‥‥? |
あ: |
真宵さまに、疑いがかかっては いけない‥‥そう思いましたの。 それならば、死体を現場から 遠ざければよい、と‥‥。 |
裁: |
‥‥あなたが、たったひとりで 死体を運んだ‥‥ |
あ: |
‥‥はい。そうです。 雪がなかったら、ムリだった かもしれませんけど‥‥ |
成: | (‥‥雪、か‥‥) |
成: |
よく、わたれましたね。 ‥‥あの、おんぼろ橋を‥‥ |
あ: |
見た目はダメですけど、 意外と丈夫なのですよ。あの橋は。 |
ゴ: |
『バカはカゼをひかない』 ‥‥それだけのコト、だぜ。 |
成: |
‥‥それと、もう1つ‥‥ 気になることがあります。 なぜ、死体を吾童川に 捨てなかったのですか? |
あ: | ‥‥‥‥‥‥ |
成: |
葉桜院に運ぶより、ラクに 死体を始末できたはずです。 |
あ: |
それだけでは‥‥真宵さまに お疑いがかかると思ったのです。 死体は、なるべく遠いところに 始末したほうがよい、と‥‥ |
ゴ: |
クッ‥‥! ニクいほど スジが通っているぜ。 ‥‥今のところは、な。 それで? 橋をわたった アンタは、どうしたんだ? |
成: |
(‥‥いや。今は他に、 気になることがある。 スノーモービルのキーは あやめさんが持っていたんだ。 不自然な点は、ない‥‥) |
裁: |
‥‥よろしい。 証言をつづけてもらいましょう。 あなたは、スノーモービルで 死体を運んだわけですね? ‥‥葉桜院の、境内に。 |
あ: |
そのとおりです。そこなら、 真宵さまは疑われない‥‥ ‥‥そう思いました。 そして、私‥‥ |
成: |
スノーモービルのこと‥‥ 詳しく聞かせてください。 |
あ: |
‥‥あの晩は、とても 冷えこんでいたので‥‥ あれを使って、橋のたもとまで 行ったのです。 |
ゴ: |
ザンネンだが、証人‥‥ そうなると、1つ‥‥ おかしなことがあるぜ。 |
あ: | え‥‥‥ |
成: |
(‥‥ゴドー検事‥‥ どういうことだ‥‥?) |
ゴ: |
あの晩‥‥住職は、 アンタに修行をまかせたあと‥‥ 歩いて、奥の院から 葉桜院に帰っている。 |
裁: |
たしかに‥‥記録には、 そう書いてありますな。 |
ゴ: |
‥‥そのときのことを、 彼女はこう言っている。 |
毘: |
『それにねぇ。オバサンが 歩いて帰ってみると‥‥ 門のトコロに、ちゃんとあったの。 ‥‥あのスノーモービル。』 |
ゴ: |
‥‥スノーモービルは、 山門の前にあった‥‥ コイツは‥‥”ムジュン”って ヤツじゃねえのかなあ‥‥? |
あ: | ‥‥‥! |
裁: |
せ、静粛に! ‥‥ゴドー検事! な、なぜ‥‥あなたが、 証言のムジュンをッ! |
ゴ: |
‥‥ハッキリしねえことは スキじゃねえ。‥‥それだけさ。 |
あ: |
あ‥‥あの‥‥ たぶん、それは‥‥ び‥‥毘忌尼さまが‥‥ 見落としたんだと思います。 |
成: |
み、”見落とした”‥‥? (そんな、ツゴウのいい話が‥‥) |
ゴ: |
クッ‥‥! まあ、いいさ。 オレも、これが決定的な ムジュンとは思わねえからな。 ただ‥‥ 証言には、注意したほうがいい。 ‥‥それが言いたかったのさ。 なァ、わかるだろ? ‥‥カワイコちゃんよォ‥‥ |
あ: | ‥‥は‥‥はい‥‥ |
成: |
(どういうことだ‥‥ ゴドー検事が‥‥ヒントを くれる、なんて!) |
裁: |
‥‥よろしい。 証言をつづけてもらいましょう。 あなたは、スノーモービルで 死体を運んだわけですね? ‥‥葉桜院の、境内に。 |
あ: |
そのとおりです。そこなら、 真宵さまは疑われない‥‥ ‥‥そう思いました。 そして、私‥‥ |
成: |
(証言を聞くかぎり、 おかしい部分はなさそうだ。 ムダなところに こだわらないほうがいい‥‥) ‥‥けっこうです。 証言に、モンダイはありません。 |
裁: |
‥‥よろしい。 証言をつづけてもらいましょう。 あなたは、スノーモービルで 死体を運んだわけですね? ‥‥葉桜院の、境内に。 |
あ: |
そのとおりです。そこなら、 真宵さまは疑われない‥‥ ‥‥そう思いました。 そして、私‥‥ |
成: |
その現場を‥‥ビキニさんに 見られたわけですか? |
あ: |
は‥‥はい。おそらく‥‥ そう、だと思います。 |
成: | (”おそらく”‥‥?) |
裁: |
なるほど‥‥。 だからビキニさんは、あなたが 犯人だと思ったワケですね‥‥ |
あ: |
‥‥申しわけありませんでした。 私のせいで、事件をコンラン させてしまって。 |
裁: | ‥‥ふむう‥‥ |
成: |
‥‥これまでの証言には、 多くのムジュンがありました。 今度こそ‥‥ まちがいありませんね? |
あ: | ‥‥え、ええ。 |
成: |
事件が起こったとき、 雪はやんでいた。 だから、ハッキリと スノーモービルの跡が残った‥‥ |
あ: |
そ、そうです! まちがいありません。 |
成: |
(‥‥ついに‥‥ 捕まえたみたいだな) |
ゴ: |
‥‥‥‥‥‥‥‥ なるほど。<<雪>>か。 |
裁: | ど‥‥どういうことですか? |
成: |
(もし、事件が起こったとき、 雪がやんでいたと言うなら‥‥ あの証言には、致命的な ムジュンが生まれるんだ!) |
ゴ: |
クッ‥‥! 見せてもらおうか、 まるほどう。 アンタの<<ウデ>>‥‥いや。 <<人差し指>>‥‥かな? |
あ: | ‥‥‥‥? |
成: |
(信じたくないけど‥‥ どうやら、まちがいない。 彼女は‥‥真宵ちゃんに、 罪を着せようとしている! なぜ、彼女がそんなことを するのか‥‥? 答えは‥‥1つしか 考えられない、か‥‥) |
あ: |
『橋をわたる以外に、死体を運ぶ 方法は、あり得ません。』(証言1) 『だから‥‥きっと、私‥‥ カンちがいしていたのですね。』(証言2) 『雪が降っていたか、どうか‥‥? そんなの、ささいなコトです。』(証言3) 『それとも‥‥燃え上がった橋を わたる方法が、あるとでも‥‥?』(証言4) |
成: |
しかし! 事件が起こったとき、 雪がやんでいたのなら‥‥ |
あ: |
橋をわたることは、できなかった。 ‥‥当然ですよね。 |
成: | ‥‥‥! |
あ: |
私‥‥、検事さまのおっしゃる とおりだと思います。 死体はジッサイ、 橋をわたっているのですから‥‥ |
成: |
しかし‥‥さっきの証言で、 あなたは断言したはずです! 『たしかに、雪はやんでいた』 ‥‥と‥‥ |
あ: | ‥‥申しわけありませんでした。 |
成: | ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
あ: | ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
成: |
(‥‥そのヒトコトで 済ませるつもりらしいな) |
成: |
冗談じゃありません! それが、事件のポイントなのです! |
あ: |
それなら‥‥成歩堂さま。 あなたは、おぼえていますか? 1週間前のお天気を ‥‥ハッキリと? |
成: |
え‥‥! それは、モチロン‥‥ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ |
あ: |
ね。‥‥そんなものですわ。 ヒトの記憶、などというものは‥‥ |
成: |
‥‥で、でも! それが特別な日 なら、キチンとおぼえています! たとえば! ぼくの小学校の 入学式は、ドシャ降りでした! |
ゴ: |
アンタのドシャ降り人生のコト なんざ、ダレも聞いてねえ。 |
成: | え‥‥! |
ゴ: |
<<事件があったとき、すでに 雪がやんでいた>> その証言にこだわるなら‥‥ 提示することだ。 炎上した橋を死体がわたった‥‥ そのジジツを示す<<証拠品>>を! |
成: |
‥‥ゼッタイにないとは 言い切れません! |
成: |
成歩堂さま‥‥ これは、子どものケンカじゃ ありませんのよ。 |
成: | ‥‥‥! |
あ: |
‥‥燃え上がっている橋を、 死者がわたった‥‥ そんな光景を目撃したヒトでも いるというのかしら‥‥? |
ゴ: |
クッ‥‥! そいつはきっと、 <<目撃者>>とは呼べねえだろうぜ。 ”夢”は、目で見るものじゃ ねえからなァ‥‥ |
成: |
(‥‥ここまで来たら、なんと しても立証しなければならない。 炎上した橋の上を、どうやって 死体は運ばれたか‥‥? ハッキリしたコタエが、まだ わからなくても、かまわない。 とにかく‥‥すべては <<証拠品>>から始まる‥‥ 立ち止まったら、負けだ。 ‥‥走りながら、考えよう!) |