成歩堂 龍一…黒 | |
綾里 千尋…赤 | |
綾里 真宵…青 | |
御剣 怜侍…茶 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
裁判長…緑 | |
小中 大…紫 | |
松竹 梅世…桃 | |
星影 宇宙ノ介…黄 | |
板東ホテルのボーイ…灰 |
星: |
‥‥ ‥‥‥‥ ‥‥‥‥‥‥ |
成: |
(あれ。センセイ、ぼくに 気づいてないみたいだぞ‥‥ セキ払いでも、してみるか) ウォッホォン! |
星: |
‥‥わっ! な、なんぢゃ、チ、チミか! |
成: |
どうしたんですか? ”人生の タソガレ”みたいな顔をして。 |
星: |
むむ、ワシゃまだボケとらんぞ! ‥‥この事件のことを 考えておったんぢゃ。 |
成: |
(星影先生‥‥そうとう ツラいことがあるみたいだ) |
成: | 見にきていたんですね、法廷。 |
星: |
‥‥ま、まあ、の。 ゆんべは、気になって ねむれなかった‥‥。 |
成: | え? どうしてですか? |
星: |
そりゃあチミ。千尋クンの 妹さんのコトぢゃからの。 ‥‥チミには、ほんとうに カンシャしとる。 もし、負けそうになっていたら、 ワシは‥‥どうしていたぢゃろ。 |
成: |
依頼を断った理由。 やっぱり、まだ教えて もらえませんか? |
星: |
‥‥‥‥ すまん‥‥ す、少し考えさせてくれんか‥‥。 |
成: |
‥‥‥‥。 (かなり、なやんでいる みたいだけど‥‥ ぼくにも、なんとなく 想像はついてきたんだよな‥‥) |
成: | コナカルチャーに行ってきました。 |
星: | ‥‥ほ、ほう、そうかね。 |
成: |
星影先生。 実はさっきから、気になって いることがあるんですよ。 |
星: |
は、はて‥‥。 なんぢゃろうな。 |
成: | ええ。それは‥‥ |
成: |
星影先生。 昨日は、そこの壁に大きな絵が かかっていましたよね。 ”ゼッタイに手ばなさない”って 言っていた、あの絵です。 見かけたんですよ、今日。 コナカルチャーの社長室で。 |
星: |
‥‥‥‥。 そうか‥‥。気がついたか。 ま、あれだけデカい絵ぢゃ。 ‥‥気づくわな、そりゃ。 |
成: |
あなたと小中の間には、 ある”関係”があるに違いない! |
星: | か、関係だと‥‥? |
成: | そうです! それは‥‥、 |
成: |
あなたは小中に、何か弱みを 握られているんじゃないですか? |
星: | ‥‥! |
成: |
あの絵が、それを証明していると 思いますけどね。 |
星: |
‥‥‥‥ わかった‥‥。ちょうどいい チャンスかもしれん。 すべて話して、 そろそろ‥‥ラクになるかのお。 チミが千尋クンの部下なのも、 何かの運命なのぢゃろ‥‥。 |
成: | (‥‥どういうことだ?) |
星: |
小中 大は、人を脅迫すること で生きておる。 <<コナカルチャー>>は、人の弱みを 探り出すための調査会社ぢゃ。 ‥‥そしてワシは、この15年間 ヤツにカネを払いつづけておる。 |
成: | (15年間‥‥) |
星: | <<DL6号事件>>のネタでな。 |
成: |
(あの写真のウラに 書いてあった事件名だ‥‥) |
星: |
ワシが真宵さんの弁護を 引き受けなかったのは、 チミの考えているとおり、 小中に脅迫されておるからぢゃ。 |
成: | (やっぱり、そうか‥‥) |
星: |
チミには言いにくいことぢゃが‥‥ 小中を逮捕させることは、 ゼッタイに不可能ぢゃ。 |
成: | ど、どうしてですか! |
星: |
やつは裁判官・弁護士・検事局長・ 警察‥‥そして、政治家。 司法の要人のネタをにぎって、 自由にあやつっておるのぢゃ。 |
成: | ‥‥な、なんですって‥‥! |
星: |
みんな、‥‥自分がキズつくことは できんのぢゃよ。 そんな目でワシを見るな‥‥。 それが‥‥老いというものぢゃ。 |
成: |
<<DL6号事件>>って‥‥ なんですか? |
星: |
DL6号というのは、警察の 事件分類ナンバーぢゃ。 ‥‥今から、15年前‥‥。 ワシは、ある霊媒師の 依頼を受けた。 |
成: | (れ、霊媒師‥‥?) |
星: |
名前は、綾里 舞子 (あやさとまいこ)といった。 |
成: | (アヤサト‥‥!) |
星: |
そのとおり。 ‥‥千尋クンの、母親ぢゃよ。 彼女は、警察の依頼で、ある 殺人事件の被害者の霊媒を‥‥。 そして‥‥失敗したんぢゃ。 そのため、彼女は警察から サギで訴えられかけておった。 |
成: |
(‥‥昨日、真宵ちゃんが 話していた事件だ!) |
星: |
ワシは彼女のために はたらき、助けてやった。 結局、その殺人事件は いまだ未解決、なんぢゃよ‥‥。 それが、DL6号事件、ぢゃ。 |
成: |
それで、星影先生はなぜ、 小中に脅迫を‥‥? |
星: |
DL6号事件は当時、 トップシークレットぢゃった。 当然ぢゃな。 警察が霊媒にたよったなど、 ゼッタイ、 知られてはならん。 しかし。 このワシが‥‥ もらしてしまったのぢゃ‥‥。 |
成: | 小中に‥‥ですか。 |
星: |
いっときの、カネにつられてな。 なさけない話ぢゃ。 ワシがしゃべったせいで、警察は 歴史的なハジをさらした。 彼らは、情報をもらした人間を、 ウラで探し始めたんぢゃ。 それを知った小中は、 ワシの前にふたたびあらわれた。 こんどは、ワシを脅迫 するために、な‥‥。 |
成: |
‥‥‥‥ ‥‥そうだったんですか‥‥。 |
星: |
‥‥‥‥ 小中は、この国の司法を 自由に動かすことができる。 ‥‥それでもヤツと戦う と言うなら‥‥。 千尋クンの事務所を よく調べてみたまえ。 |
成: | ‥‥千尋さんの? |
星: |
彼女は、小中のことを ずっと追っておった。 もしかしたら、何か 記録を残しているかもしれん。 |
成: |
この部屋だけを見ていると、 ここで殺人事件があったとは 思えない。 星影の大センセイは、ここに 手がかりがあると言っていた。 ‥‥もう一度、調べてみるか‥‥。 |
成: |
所長が手がけた事件の記録が キチンとファイルされている。 ”あいうえお”順にならんでいる。 ‥‥ちょっと、調べてみよう。 どのファイルにするかな‥‥ |
成: |
”さ”行で思い当たる項目は‥‥ べつに、ない。 どうしよう。テキトーに 読んでみようか‥‥? |
成: |
‥‥ううう。 まあ、いちおう、ザッと 目をとおしておくか‥‥。 いちばん大きい項目は、と。 ”し‥‥自殺”か。‥‥ヤな感じ。 政治家や警察官の自殺記事 ばっかり、集めてあるな。 ‥‥‥‥ ‥‥! ほとんどの記事の見出しに、 エンピツで文字が書かれている。 ‥‥”小中?”‥‥か。 千尋さんの字だな、これは。 そうか‥‥。 この記事に書かれている人たちは、 みんな、小中の脅迫によって‥‥。 ‥‥‥‥ この新聞記事は、使える! よし‥‥とりあえず、いちばん ヒサンなのをチョイスして‥‥と。 |
法廷記録に挟んだ。 | |
小: | ヘイ、キミもしつこいね。 |
成: |
すみません‥‥。でも、 聞きたいことがありまして。 |
小: |
いいかねミスタ・ベンゴシ。 ぼかぁ、同じコトを2回言うのが 大キライなんだよ。 ドン・バザー・ミー! ぼくのまわりをウロチョロするな。 ‥‥よくないアクシデントは キミにハプニングだよ‥‥。 このイミ、わかるな? |
成: | (わかるか!) |
成: |
(今さら、梅世のことを 聞く必要はないだろう。 それより、今はこの男に 問い詰めるべきことがある!) |
小: |
ホワッツ? どうした? コワいカオ、しちゃって‥‥。 |
成: |
(この男に何を聞いても、 はぐらかされるのがオチだ。 それより、今はこの男に 問い詰めるべきことがある!) |
小: |
‥‥そんなにアツく 見つめないでくれるかな‥‥フフ。 |
成: |
(この男には、まともに 聞いてもイミがない! 何か、武器になる証拠品を つきつけるべきだ!) |
小: |
どうかしたかな? ぼくのカオに、何かついてるかい? 目と、ハナと、クチ‥‥。 なーんてね。 ‥‥ガマンしなくていいよ。 これが本場のアメリカン・ジョーク ってヤツさ‥‥ふるえるだろ? |
成: |
(これは、千尋さんが残してくれた たった1つの手がかりだ‥‥ これで、勝負をかけるぞ!) ‥‥小中さん。見てください。 政治家が自殺したという 新聞記事です。 |
小: | ‥‥‥‥ |
成: |
彼は、政府の機密基金を 着服していました。 ある日突然、 それがスクープされた。 ‥‥そして翌日、 彼は自殺しました。 |
小: | ‥‥それがどうした? |
成: |
この記事は、千尋さんの部屋で 見つけました。 |
小: | ミス・チヒロの‥‥? |
成: |
彼女は、こういう記事を たくさんファイルしていた。 そして、その記事のほとんどに、 ”小中”と書き込まれていました。 |
小: | ‥‥! |
成: |
小中さん。 あなたは、この政治家を‥‥ |
成: |
あなたは、 彼を脅迫していましたね。 |
小: | 脅迫‥‥。 |
成: |
彼だけではない。多くの人間が、 あなたの脅迫に苦しんでいるんだ。 千尋さんが集めていた自殺記事には すべて、あなたがからんでいる! このコナカルチャーという会社は、 脅迫によってなりたっている‥‥。 そうなんでしょう? |
小: |
‥‥ムチャな言いがかりだ。 ナルホドー‥‥ナルホドー‥‥。 キミが今するべきことは、なんだ? ボクを調べることかい? ノーノーノー。ちがうね。 ミス・チヒロを殺害した犯人を 探すこと‥‥そうだろう? |
小: |
ミスタ・ナルホドーが お帰りだ。 |
<<かしこまりました。 ただ今、迎えの者を‥‥>> | |
成: |
待った‥‥小中さん。 あなたの言うことは、 |
成: | 間違っているよ、小中さん。 |
小: | なんだと? |
成: |
今、ぼくがするべきなのは、 あんたを追い詰めることなんだ。 |
小: | ‥‥どういうことだい? |
成: |
千尋さんは、あんたのことを 調べていた。 そしてあんたは、梅世を使って 千尋さんの電話を盗聴していた。 ‥‥そして殺人事件が起こって、 あんたの資料が消えた。 さて、犯人は‥‥? |
小: | ‥‥‥‥ |
成: |
コドモでもわかるよな。 ‥‥あんただ! |
小: | ‥‥‥‥ |
小: |
迎えの者はノーサンキューだ。 かわりに、この電話を 検事局長につないでくれ。 |
<<かしこまりました。 少々、お待ちください>> ‥‥‥‥‥‥ <<な、なんだ小中クン。 こんな時間に、こまるよ!>> | |
小: |
ヘロー、検事局長かい。 ぼかぁ、気が変わったんでねえ。 明日、証言したいんだ。 |
<<な、なんのことかね?>> | |
小: |
綾里 千尋の事件だよ。 ぼかぁ、目撃したからねえ。 証言したいんだよ。 とびきりホットなヤツを、さ。 |
<<ど、どうしたんだ? 法廷には、出たくないって‥‥>> | |
小: |
シャラップ。 ‥‥気が変わったと言ったろ? あ。それから。 大至急、誰か警官をここへ よこしてくれ。 目の前に、そいつがいるんだよ。 バカヅラぶらさげてさ。 |
<<誰だね、”そいつ”って?>> | |
小: |
決まってるだろ。 犯人だよ、ハンニン。 ‥‥ぼくが見た、ね。 |
成: | な、なんだと! |
<<お、おい‥‥小中クン。 き、きみは、また何か‥‥>> | |
小: |
検事局長。 キミは、ぼくに意見できる 立場じゃないだろう‥‥。 とにかく、早く警官をプリーズだ! |
小: |
‥‥‥‥。 言っただろ、ナルホドー。 キミは、 しがない弁護士だ、と。 ‥‥ミス・チヒロもそうだった。 |
成: | な、なんだと! |
小: |
ぼかぁ、キミを告発する。 ミス・チヒロ殺害の犯人としてね。 そしてキミには、ロクな弁護士が つかない。ゼッタイに。 ぼかぁ、このチクの弁護士協会にも トモダチがいるんでね。 想像を絶するような、ものすごい 弁護士をプレゼントしよう。 |
成: | (く‥‥くらくらしてきた) |
糸: |
イトノコ刑事、 ただ今、とうちゃくしたッス! ‥‥あっ! アンタは たしか、ヤッパリくんッスね。 |
成: | ‥‥ナルホドです。 |
糸: |
あ、そうそう、ナルホドッス。 ヤッパリはたしか、殺人犯の‥‥ |
小: |
イトノコくん。 殺人犯をおわたしするよ。 |
糸: | な、なんスとぉ! |
小: |
ゴォウィズヒム。 ‥‥つれていきたまえ。 ‥‥‥‥ ‥‥グッバイ。ナルホドー。
|
留置所 面会室 | |
成: |
あれから、1日が過ぎた。 ‥‥いよいよ、明日は ぼくの裁判だ。 小中は、ぼくをワナに かける気でいる。 当然、検察側もグルだ! おそらく、あの御剣も‥‥。 昨日、ぼくの担当だと名乗る 国選弁護士が現れた。 しかし、ぼくはことわった。 ‥‥1つ、考えがあったからだ。 |
真: |
‥‥‥‥ ‥‥‥さん! 弁護士さん! |
成: |
あ、真宵ちゃん。 よかったね。 出してもらえたんだ。留置所。 |
真: |
はい、さっき。 弁護士さんのおかげです! |
成: |
はは。なんだか、立場が ギャクになっちゃったね。 |
真: |
どうしてですか! なんで、弁護士さんが! |
成: |
ぼくは、これまでのことを 真宵ちゃんに話した。 ‥‥‥‥ |
真: |
‥‥そんな! その男‥‥お母さんを‥‥ お姉ちゃんを‥‥ そして、弁護士さんまで‥‥ ‥‥ゆるせない! 弁護士さん! あたしに‥‥ 何かできること、ないですか! |
成: | え。‥‥あるかな‥‥? |
成: |
わかった。じゃあ、脱獄を てつだってよ。 |
真: | だ、ダツゴク‥‥ですか? |
成: |
うん。チャンスはもう、 今夜しかないからさ。 |
真: | わかりました! |
成: | え。 |
真: |
そうですね。じゃあさっそく、 ”てつヤスリ”を買わないと‥‥! あ、それから”なわばしご”と クルマの手配も‥‥! |
成: |
‥‥‥‥。 い、いやいや、ちょっと待った! |
真: | な、なんですか! |
成: | 冗談に決まってるだろ! |
真: | ‥‥そ、そんなあ! |
成: |
いいよ、ありがとう。 気持ちだけで、じゅうぶんだから。 (やってもらえることも、ないし) |
真: |
だ、ダメですそれじゃあ! ‥‥じっとしてられないんです! その男に、キャンと言わせたいの! |
成: |
(キャンと、ねえ‥‥) わかった。 じゃあ明日、法廷に来て くれるかな。 |
真: |
は‥‥はい! ありがとうございます! が、がんばります、あたし! |
成: |
世紀が変わっても、あいかわらず 犯罪は増加の一途をたどり‥‥、 時間のかかる法廷のシステムでは 処理しきれなくなってしまった。 そのため、数年前から設置された 序審法廷の期間は、最長でも3日。 たいていは1日で終了してしまう。 もちろん、有罪判決で、だ。 まさか、ぼく自身が被告席に 立つことになるとは思わなかった。 明日は、真犯人が目撃証人 として法廷に出てくる。 ‥‥ぼくかあいつか‥‥ 最後の勝負だ! |