成歩堂 龍一…黒 | |
綾里 千尋…赤 | |
綾里 真宵…青 | |
狩魔 冥…水 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
裁判長…緑 | |
綾里 春美…黄緑 | |
綾里 キミ子…灰 | |
霧崎 哲郎…紺 | |
葉中 のどか…紫 | |
大沢木 ナツミ…橙 | |
堀田(自称)…黄 |
成: |
春美ちゃんは、 真宵ちゃんの友だちなの? |
春: |
友だちなんてそんな、 おそれおおい‥‥。 真宵さまは、わたくしのアコガレ、 クモの上の人です。 |
成: |
へええ。 真宵ちゃんがねえ‥‥。 |
春: |
ふつうなら、真宵さまを”ちゃん” づけで呼ばれるのを聞くだけで、 わたくし、 ひっぱたいてしまうところです。 |
成: | そ、それはゴメン。 |
春: |
でも、なるほどくんは いいのです。 だって‥‥真宵さまの ‥‥想われビトですものね。 |
成: |
(だから、 なんでそうなるんだあ‥‥) |
春: |
‥‥ところで‥‥。 シツレイですが、 なるほどくんは、どこの流派に? |
成: | りゅうは? |
春: |
はい。わたくしは 倉院流をたしなんでおりますが。 |
成: |
‥‥‥‥‥‥。 いやいやいや。 ぼくは弁護士だよ。弁護士。 |
春: | ‥‥べんごし? |
成: | そう。 |
春: |
‥‥それは霊媒師とは、いかなる 関係にあたるのでしょうか? |
成: |
(‥‥いかなるカンケーにも あたらないと思うけど‥‥) ‥‥もしかして、 知らないの? 弁護士。 |
春: | もうしわけありません‥‥。 |
成: |
(そういえば真宵ちゃん、この子を ”世間知らず”とか言ってたな) |
成: |
ところで、 その手に持っているのは? |
春: |
あ‥‥これ。 きのう、ひろいました。 |
成: | ふうん‥‥。 |
春: |
あ。ほしいのでしたら、 さしあげますけど‥‥? |
成: |
‥‥じゃ、せっかくだから、 もらっておこうかな。 |
春: |
ふふ。なるほどくん、 子どもみたいですね。 |
成: | (‥‥上品に笑いとばされた) |
春美ちゃんからもらった。 | |
春: | あの‥‥なるほどくん。 |
成: | ? |
春: | その勾玉‥‥よろしいですか? |
成: |
‥‥ああ、いいよ。 春美ちゃんにあげる。 |
春: |
いけません、そんな! ‥‥わたくしはただ、 この勾玉に霊力を‥‥。 |
成: | れいりょく‥‥? |
春: |
これをお持ちください。 きっと、役に立ちます。 |
成: | ‥‥どうやって? |
春: | 人の心の秘密がわかります。 |
成: | ココロの‥‥ヒミツ? |
春: |
はい。 ‥‥そうですわ。わたくし、 しばらくお供いたします。 秘密をかかえた人に会ったとき、 その勾玉のチカラをお教えします。 |
綾里家・修験者の間 | |
糸: |
おっ! アンタ。 やはり、彼女の弁護を? |
成: | そういうことです。 |
糸: |
そッスか‥‥。 今度ばかりは、自分も アンタの味方をしたいッス。 |
成: | イトノコ刑事‥‥。 |
糸: |
ま、そういうワケにも いかないッスがね。 おっ! かわいい女の子ッスね。 |
春: | ‥‥‥‥‥‥ |
糸: |
ハッハッハッ。 自分はコワくないッスよー。 |
成: |
(へええ。イトノコさん、 子ども好きなんだな‥‥) |
糸: |
今、イイもの見せてあげるッス。 ホンモノのピストルを‥‥。 |
成: |
イ、イトノコ刑事。 よけいなコトしないでください! |
糸: |
うう‥‥。 こりゃどうも、すまねッス。 |
成: |
真宵ちゃんの容疑‥‥、 どうなってますか? |
糸: |
アンタに勝ち目はないッス。 証拠なら、いくらでもあるッス。 |
成: | 証拠が‥‥? |
糸: |
明日は、あの大阪弁の カメラマンが証言するッス。 |
成: |
(ナツミさん、か。 そういえばきのう‥‥) |
ナ: |
『ついに、どデカいスクープを モノにしたったでぇ!』 |
成: | 『えっ?』 |
ナ: |
『ウチ、そういえば、あの現場で 押しとったやん! シャッター!』 |
成: |
(ナツミさんの”スクープ写真” ‥‥何が写ってるんだ‥‥?) |
糸: |
‥‥それに、アンタだって わかってるはずッス。 綾里 真宵以外のだれも、 あの犯行は不可能だったッス。 |
成: | (‥‥‥‥!) |
春: | ‥‥‥‥‥‥ |
成: |
(春美ちゃん、何か言いたげに ぼくを見上げている‥‥) |
成: | 霧崎先生のことですけど‥‥。 |
糸: |
被害者は、ちょっとした 有名人だったッス。 1年ぐらい前、ワイドショーで さわがれていたッス。 |
成: | ああ、それなら知ってますよ。 |
糸: |
1年前の新聞を、いろいろ 探してみたッス。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ あれ。 記事の切り抜きを‥‥ どこへやったッスかねえ‥‥。 |
成: |
(ポケットを探してるよ‥‥。 よっぽど見たいらしいな) |
糸: |
うう‥‥どうしても 気になるッス。見たいッス。 アンタ、持ってないッスか? ‥‥その記事。 |
成: |
(新聞記事‥‥か。 たしか、霧崎先生が事務所に 持ってきていたような‥‥) |
成: |
真宵ちゃんの審理、 明日なんですよね‥‥。 |
糸: |
アンタには、 ニュースが2つあるッス。 |
成: | ニュースが‥‥2つ? |
糸: |
”よくないニュース”と、 ”もっとよくないニュース”ッス。 どっちを先に聞きたいッス? |
成: | ‥‥どっちでもいいです。 |
糸: |
明日の法廷は、 あの狩魔検事が担当するッス。 |
成: |
な‥‥なんですって! カルマ検事‥‥? (狩魔 豪(かるまごう)‥‥ 奇跡のベテラン検事。 40年間、無敗をほこり、 恐るべき弟子を育て上げた男。 タチの悪さと後味の悪さは、 一生忘れないだろう‥‥) ‥‥‥‥‥‥‥‥ あれ? でも、あの人はもう、 法廷に立てる状況では‥‥ |
糸: |
それが、もう1つの ワルいニュースッス。 アンタが戦う狩魔検事は、 その2代目ッス。 |
成: | に‥‥にだいめ‥‥? |
成: |
あの‥‥狩魔検事の 2代目、っていうのは‥‥? |
糸: |
そのまんまッス。 狩魔検事のお子さんッス。 13才という、異例の若さで 検事になって以来、負け知らず。 ‥‥まさに”天才”ッス。 |
成: |
へえ‥‥‥。って、 ちょっと待ってください! じゅ、13才で検事ですって! ”異例”とか”天才”とか、 そういうモンダイでは‥‥ |
糸: |
いやいや。2代目はアメリカで 生まれ育ったッスから。 自由の国では、才能しだいで なんでもありッス。 |
成: |
(アメリカ、か。どうりで 聞いたことがないと思ったよ。 とにかく‥‥カルマという 名前を聞くと‥‥ ‥‥どうしても、あの事件を 思い出してしまう‥‥ ‥‥ダメだ! いいかげんに、 もう忘れないと‥‥ ‥‥アイツはもう いないんだから‥‥) |
成: |
あの‥‥これ。 被害者が持ってきたんですけど。 |
糸: |
おお! それそれ。 医療ミスッス。 |
成: |
患者が14人も亡くなって、 ずいぶんさわがれましたよね。 |
糸: |
しかも、この事件の直後、 さらに事故が重なったッスから。 |
成: |
看護婦さんが亡くなった 交通事故ですか。 |
糸: |
‥‥おッ、あったあった。 自分は、その事故の 新聞記事を持ってるッス。 よかったら、この記事、 持って行くッス。 |
成: |
はあ‥‥。 じゃ、もらっておきます。 |
法廷記録に挟んだ。 | |
綾里家・控えの間 | |
成: | どうも。また来ましたよ。 |
葉: |
あらあ。かわいい女の子ですねえ。 あの、ムスメさんですかあ? |
成: |
ちち、ちがいますよ! (ぼくはいくつに見えるんだ!) |
成: |
被害者の 霧崎先生のことですけど。 |
葉: | よく知りませえん。 |
成: | う、うわ。‥‥なんだこりゃ! |
葉: | ‥‥‥‥? |
春: |
なるほどくん。見えますか? あのひとの心を 閉ざしている”錠”です。 |
成: | な‥‥なんだって‥‥。 |
春: |
これが、勾玉の霊力。 なるほどくんにだけ見える 心理錠(サイコ・ロック)です。 |
成: | (‥‥サイコ・ロック‥‥) |
春: |
かたく閉ざされている秘密ほど、 ロックの数は多くなりますが‥‥ ‥‥このていどならば、 すぐに解除できるでしょう。 |
成: | ”解除”‥‥? |
春: |
真宵さまの勾玉を この人につきつけてください。 ロックを解除してみましょう。 |
成: |
(よくわからないけど ‥‥やってみるか) |
春: |
ただし。解除に失敗すると、 なるほどくんが痛手を負います。 もし証拠が足りないと思ったら、 途中でやめる勇気も重要です。 |
成: |
(とにかく‥‥ やってみなきゃ始まらないな) |
成: |
のどかさん。あなたは 霧崎先生を知ってるはずです! |
葉: |
もお。知らないって言ってる じゃないですかあ。 そこまで言うんなら、 証拠を見せてくださいよお。 |
成: |
たしかに、あなたと霧崎先生には、 直接の接点はないかもしれません。 ‥‥でも、間接的な接点が あったかもしれない。 |
葉: |
”かんせつてき”‥‥って、 どういうコトですかあ? |
成: |
(‥‥とにかく、 可能性を示してみよう。 葉中 のどかと霧崎先生に、 何か接点があった可能性‥‥) |
成: | この新聞記事を見てください。 |
葉: |
な、なんですかあ? ‥‥交通事故? |
成: |
被害者の名前、 読んでみてください。 |
葉: | ‥‥”葉中 未実”‥‥。 |
成: |
”葉中”‥‥めずらしい 名字ですよね。 この被害者は、 あなたの身内の方なのでは‥‥? |
葉: |
‥‥‥‥! よく気がつきましたねえ。 ‥‥私の、お姉さんです。 |
成: |
そうだったんですか‥‥。 お姉さん、看護婦だったんですね? ‥‥霧崎外科医院の。 |
葉: | ‥‥‥‥! |
成: |
霧崎外科医院‥‥。 言うまでもなく‥‥ 被害者・霧崎 哲郎の病院です! あなたは、お姉さんをとおして 霧崎先生を知っていたのです! |
成: |
聞かせてください。 ‥‥霧崎先生のこと。 |
葉: |
お姉さん‥‥葉中 未実 (みみ)っていうんですけど‥‥。 霧崎先生の病院で、 看護婦をしてたんです。 |
成: | (やっぱり、そうだったのか‥‥) |
葉: |
霧崎先生‥‥人づかいが アラかったみたいです。 お姉さん、いつも過労で つかれきっていました。 |
成: |
‥‥過労? それで‥‥交通事故を? |
葉: |
‥‥お姉さんをそこまで 追いこんだのは、あの人です。 |
成: |
‥‥医療ミスで14人の患者を 死なせてしまった、というのは? |
葉: |
それも、霧崎先生だと思います。 お姉さん、みんなセキニンを 押しつけられて‥‥ ‥‥死んじゃったんです。 |
成: | そうだったんですか‥‥。 |
葉: |
もう、いいですかあ? ‥‥私の知ってることは みんな話しましたから‥‥。 |
春: |
いかがですか? なるほどくん。 ‥‥これが、サイコ・ロックです。 |
成: |
‥‥必要がないかぎり、 人の心はのぞくべきじゃないね。 |
春: |
‥‥今回の錠は カンタンにはずせましたが、 これから、もっと手ゴワい ものに出会うこともあるでしょう。 証拠が足りないと思ったら、 くれぐれも深追いしないことです。 |
倉院の里 | |
春: | なるほどくん。 |
成: | ん? どうしたの? |
春: |
わたくし、倉院の里から 出たことがありません。 |
成: |
へ、へええ。 それは‥‥すごいね。 |
春: |
これから、会いに行くのですね? ‥‥真宵さまに。 わたくしのこと‥‥、 よろしくお伝えください。 |
成: |
あ、待って‥‥ (やれやれ‥‥。のどかさんの ヒミツはわかったけど‥‥ 真宵ちゃんを救い出す方法なんて ゼンゼン見えてこない。 どんなカオして 会えばいいんだろう‥‥) |
留置所 面会室 | |
成: |
(どうすればいいんだ! もう、時間がないぞ‥‥ 彼女を助けるなんて‥‥ ぼくにできるのか?) |
?: | ‥‥お待たせしました。 |
成: |
(ん‥‥ 真宵ちゃんが来たのかな) |
?: | ひさしぶりね。なるほどくん。 |
成: |
‥‥‥‥! (この声‥‥) ち‥‥千尋さん! |
千: |
しばらく見ないうちに、 少したくましくなったみたい。 |
成: |
(千尋さん‥‥。真宵ちゃんの お姉さんで、ぼくの師匠だ。 一流の弁護士だったんだけど、 ある事件で、帰らぬ人となった。 でも‥‥ピンチになると、 こうしてぼくを助けてくれる。 ‥‥真宵ちゃんの身体に、 そのタマシイを宿らせて‥‥) |
千: |
なるほどくん。 弁護士がそんなカオしちゃダメ。 |
成: | ‥‥‥! |
千: |
弁護士はね。ピンチのときほど ふてぶてしく笑うものよ。 |
成: | 千尋さん‥‥。 |
千: |
それが、最後に笑うための条件。 ‥‥とにかく、依頼人に 見せるべきカオじゃないわ。 |
成: | で‥‥でも! |
千: |
さあ、話を聞かせて。 また、妹がメイワク かけちゃったみたいね‥‥。 |
成: |
(ぼくは‥‥この2日間の ことを、ゼンブ話した。 千尋さんは、目をつぶって 考えこんでいた‥‥) |
千: | ‥‥そういうことなの‥‥。 |
成: |
千尋さん。ぼくは‥‥ どうすればいいんですか? |
千: |
‥‥‥‥‥‥ この場合、弁護士のとるべき 立場はハッキリしてるわね。 |
成: |
な‥‥なんですって! 教えてください! |
千: |
決まってるわ。 断固として主張するの。 もちろん‥‥、完全無罪をね。 |
成: |
真宵ちゃんが‥‥ ”完全無罪”なんですか! |
千: |
‥‥ひとつ、いいことを 教えてあげるわ。 |
成: | な‥‥なんですか? |
千: | 霊媒師は、夢を見ない。 |
成: | ‥‥”夢”を‥‥? |
千: |
あなたの話では、霊媒中、 真宵は夢を見ていたそうね。 |
成: |
ええ。‥‥たしか、死んでしまって 土の中に埋められる夢を‥‥。 |
千: |
それはあり得ないの。 ‥‥あなたも聞いてるはずよ。 霊媒中の霊媒師は、意識がない。 ‥‥夢なんて、 見られるはずがないわ。 |
成: |
‥‥‥! それって‥‥どういうことですか? |
千: |
真宵はワナにはめられた。 ‥‥そう考えるのが自然ね。 |
成: | ‥‥ワナ‥‥! |
千: |
ハッキリしたことは、 明日の法廷で暴くしかないけど。 |
成: |
でも‥‥無罪にしようにも、 なんの手がかりもなくちゃあ! |
千: |
手がかりなら、 ちゃんと持ってるはずよ。 |
成: | ぼ、ぼくが‥‥ですか? |
千: |
文字どおり、あなたは ”事件のカギ”をにぎっているわ。 |
成: | (‥‥そうなのか‥‥?) |
千: |
さあ、私に見せて。 あなたの”カギ”を。 |
成: |
(”カギ”か‥‥ よし‥‥見せてみるか。 ぼくの持っている”カギ”を!) |
成: | これ、見てください。 |
千: |
そう、そのカギ‥‥。 この事件の、すべての謎を 解くためのカギよ。 |
成: | これが‥‥? |
千: |
なるほどくん。 今、あなたがそれを持っている。 でも、そんなことは、あり得ない。 ‥‥ムジュンしてるの。 |
成: | (‥‥どういうことだ‥‥?) |
千: |
その証拠は、まちがいなく 明日の裁判のキメ手になるわ。 ‥‥‥‥‥‥‥ ‥‥もういいわ、なるほどくん。 あなたにも、ちゃんと わかってるみたい。 この事件の”カギ”が‥‥。 |
成: |
で‥‥でも! カンジンの犯人がわからなきゃ、 勝ち目はありません! いったい、だれが‥‥? |
千: | ‥‥‥‥‥‥ |
成: |
(‥‥そのときぼくは、 この日最後の‥‥ そして、 最大の驚きを味わった‥‥) |
成: |
ち、千尋さん! ‥‥それは‥‥? |
千: | どうしたの、なるほどくん? |
成: |
(‥‥そうか。サイコ・ロックは ぼくにしか見えないんだ‥‥ 千尋さんは‥‥真犯人のこと ‥‥何か知っているんだ! しかも、ココロにかたく カギをかけたヒミツとして‥‥ いったいこれは‥‥ どういうことなんだ!) |