成歩堂 龍一…黒 | |
綾里 千尋…赤 | |
綾里 真宵…青 | |
綾里 春美…黄緑 | |
御剣 怜侍…茶 | |
狩魔 冥…水 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
裁判長…緑 | |
堀田(自称)…黄 | |
荷星 三郎…紺 | |
オバチャン…灰 | |
大沢木 ナツミ…橙 | |
王都楼 真悟…紫 | |
華宮 霧緒…藤 | |
虎狼死家 左々右エ門…桃 |
御: |
‥‥報告書に目を通すのは 好きではない。 それが自殺の報告書であれば、 なおさらだ。 さらに、それが2本いっぺんとも なれば、サイアク‥‥だな。 |
成: | ‥‥2本‥‥? |
御: |
コイツが、2本目の 報告書だ。 |
成: |
(こっちは‥‥ 自殺未遂の報告書か‥‥) 自殺者の氏名は ‥‥”華宮 霧緒”! |
春: |
き、きりおさんというのは ‥‥あ、あの? |
成: |
彼女が‥‥じ、 自殺未遂だって‥‥? とてもそんなコト、 するような人には見えなかった‥‥ |
御: |
さっそうとしたキャリア・ウーマン ‥‥それが、彼女のイメージだ。 しかし‥‥華宮 霧緒には、 あるヒミツがあったのだ。 |
春: | ヒミツが‥‥? |
御: |
‥‥”依存”。 それが、彼女のキーワードだ。 |
成: |
(”いぞん”‥‥彼女にイチバン 似合わないコトバだぞ‥‥) |
成: |
”華宮 霧緒”と”依存” ‥‥どうつながるんだ? |
御: |
華宮 霧緒が自殺を こころみたのは‥‥ 天野 由利恵が亡くなった 数日後のことだった。 |
成: | それが‥‥? |
御: |
華宮 霧緒がなぜ、 自殺を考えたか‥‥? ”生きていく自信を失ったから” ‥‥なのだそうだ。 |
成: |
‥‥自信を‥‥? いったい、どうして‥‥ |
御: |
信じきっていた先輩、 天野 由利恵がいなくなったから。 |
成: | な、なんだって‥‥ |
春: |
それってつまり‥‥ ”あとおいじさつ”‥‥ですか? |
御: |
‥‥自殺未遂後、華宮 霧緒は カウンセラーの面談を受けている。 彼女は‥‥自分がココロから 信頼できる人間を見つけて、 その人物に、盲目的に したがおうとする‥‥ そうでなければ、不安で 生きていくことができないそうだ。 |
成: |
‥‥‥‥‥‥! ‥‥それが‥‥ 彼女の”依存”なのか‥‥? |
御: |
天野 由利恵に 突然、自殺されてしまって‥‥ 目の前が真っ暗になった ‥‥華宮 霧緒はそう語っている。 |
成: |
じゃあ‥‥ あの、自信に満ちたタイドは‥‥ |
御: |
すべて‥‥ウソ、だ。 天野 由利恵にしたがって、 そのようにふるまっているだけだ。 |
成: | (‥‥なんてこった‥‥) |
データを法廷記録にファイルした。 | |
王都楼 真悟の控え室 | |
春: |
‥‥あ。霧緒さんが いらっしゃいますよ。 どなたかと、おはなし されているようですけど‥‥ |
成: | (あれは‥‥狩魔 冥!) |
春: | かるま検事さん‥‥? |
冥: |
こんなところで 何をしているッ! |
成: |
い、いや、その。 ぼく、弁護士だから‥‥ |
冥: |
私のあとをつけるなんて、 いいドキョウね‥‥ |
成: | あとをつける‥‥? |
春: |
そ、それは‥‥かるま検事! あなたのほうではないですかっ! |
成: | 春美ちゃん‥‥ |
春: |
あの、おヒゲの刑事さんの あとをつけまわして‥‥! |
冥: |
‥‥私が? ヒゲのあとを‥‥? バカバカしい! おじょうちゃん。 ‥‥いいものを見せてあげるわ。 |
‥ピピッ‥‥ピピッ‥‥ピピッ‥ | |
春: | そ、それは‥‥なんですか? |
冥: |
電波受信機よ。 あの刑事のカラダには、 発信器がとりつけてあるの。 これがあれば‥‥あの男の 動きは、カンペキにわかるわ。 |
成: |
(この音は、電波受信機の ものだったのか‥‥ キノドクなイトノコ刑事‥‥) |
冥: |
‥‥さて。 思わぬところで 時間をムダにしたわ。 ‥‥華宮 霧緒ッ! |
霧: | は、はい‥‥ |
冥: |
さっきの話‥‥ 真剣に考えておくことね! |
霧: |
え、ええ‥‥ ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
成: |
(‥‥何を話していたんだ? この2人‥‥) |
春: |
きりおさん‥‥、なんか ボンヤリしていますね。 |
霧: | ‥‥‥‥‥‥ |
成: |
藤見野 イサオさんがなぜ、 殺害されたのか‥‥? あなたは何か、 知っているみたいですね。 |
霧: | ‥‥さあ。 |
成: |
なぜ、かくすんですか。 オートロさんのイノチが かかってるんですよ? |
霧: |
‥‥‥‥‥‥ 知らないものは知りません。 私、イサオさんとは、それほど 親しくありませんでしたから。 |
成: | 親しくなかった‥‥? |
霧: |
ええ。私、ニガテなんです。 他人と親しくなるのが‥‥ |
成: |
あなたが、他人とは親しくならない ‥‥本当にそうなのでしょうか。 |
成: |
あなたとイサオさんは、 こういう関係だったのでは‥‥? |
霧: |
‥‥‥‥‥‥‥‥ 三流雑誌のゴシップ記事。 そんなもの、ふつう信じません。 ‥‥まともなニンゲンならば。 |
成: | みんな、けっこう信じてますよ。 |
霧: |
この世に、まともなニンゲンは おどろくほど少ないものです。 |
成: | (‥‥こ、コワい‥‥) |
霧: |
とにかく。私、キライなんです。 ‥‥ヒトと親しくなるのは。 |
成: |
そうですか。‥‥でも。 どうしても、その必要が あったとしたら‥‥? |
霧: |
イサオさんと親しくなる必要 ‥‥そんなものが、あるのかしら? |
成: |
あなたは、この人物のために、 イサオさんに近づいたのでは‥‥? |
成: |
天野 由利恵さん。 ‥‥あなたの先輩です。 |
霧: |
なぜあなたが‥‥ 由利恵さんのことを! |
成: |
由利恵さん‥‥ 自殺されたそうですね。 |
霧: | ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
成: |
しかも、その理由は ‥‥不明だそうですね。 彼女は死の直前、藤見野 イサオの マネージャーをしていた。 あなたは‥‥彼女の自殺を調べる ために、彼に近づいたのでは? |
霧: |
‥‥た、たいした想像力ね。 三流の、クズ雑誌のゴミ記者にでも なったらいかがかしら! |
成: | き‥‥霧緒さん? |
霧: |
ゆ、由利恵さんの死に、ナゾなんて ありません。 藤見野 イサオに近づいても、 イミなんてないわ! |
成: |
(‥‥はたして、 そうだったんだろうか‥‥?) 由利恵さんの自殺に‥‥あなたは ナットクできたハズがない! |
成: |
‥‥由利恵さんの遺書、 発見されなかったそうですね。 |
霧: | ‥‥! |
成: |
警察は、だれかが遺書をかくした、 と考えていたみたいです。 たとえば‥‥死体を発見した、 藤見野 イサオさんが。 |
霧: | ふ‥‥藤見野 イサオが‥‥ |
成: |
そして、霧緒さん! あなたもそう考えたんです! だから、彼に近づいた! |
霧: |
お、おとなしく聞いていれば‥‥ 勝手なコトばっかり! |
成: | ‥‥‥‥‥‥ |
霧: |
た、たしかに由利恵さんは 私の先輩でした。 でも、だからと言って‥‥ 私にはカンケイない! ”遺書が見つからない”? わ、私の知ったことじゃないわ! 私は‥‥他人のコトなんて、 どうだっていい人間なんです! |
成: |
(たしかに、そうみたいだ。 しかし‥‥) 本当に、そうなのでしょうか。 |
霧: | ‥‥どういうこと‥‥? |
成: |
‥‥証拠があるんです。 天野 由利恵さんが、あなたに とって特別だったという証拠が‥‥ |
成: |
‥‥霧緒さん‥‥あなたにも、 経験があるそうですね。 |
霧: | なんの経験‥‥かしら? |
成: | ”自殺”ですよ、もちろん。 |
霧: | ‥‥! |
成: |
霧緒さん。あなたはとても しっかりしているように見える。 だれの助けもいらない。 ひとりで生きているように見える。 |
霧: |
そ、そうよ。私はいつだって、 ひとりで生きてきた‥‥ |
成: | しかし、それはウソだった。 |
霧: | ‥‥‥‥‥‥ |
成: |
あなたはいつも、依存できる 人間を探しているそうですね。 |
霧: | ‥‥そ、それは‥‥ッ! |
成: |
あなたは、由利恵さんに すべてをゆだねていた。 だから‥‥ 彼女がいなくなったとき、 あなたはすべてを失った。 |
霧: | ‥‥やめて‥‥ッ! |
霧: |
‥‥‥‥‥‥ 由利恵さんは突然、 いなくなってしまった‥‥ 一度は死のうとしたわ。 ‥‥でも‥‥ どうしても気になったの。 ‥‥消えた、遺書が‥‥ |
成: |
遺書は、藤見野 イサオが かくしたらしい‥‥ その情報を当然、あなたは 知っていたはずです。 あなたは、それを取りもどすため、 彼に近づいたんですね? |
霧: | ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
成: |
‥‥そうなると、 ハナシは変わってくる。 |
霧: | ‥‥ど、どういうこと‥‥? |
成: |
そもそもぼくたちは、 何について話していたのか? |
霧: |
”被害者がなぜ殺害されたか” ‥‥でしょう? |
成: |
‥‥そのとおりです。 どうやら、霧緒さん。 その理由を持っているのは‥‥ あなた自身じゃないんですか? |
霧: | ‥‥わ‥‥わ、私‥‥ |
成: |
あなたにとって、由利恵さんは すべてだった。 ‥‥その彼女が死んだ。 理由を知るためならば、あなたは どんなことでもしたでしょう。 ‥‥殺人でも、ね。 |
霧: | ‥‥さつじん‥‥! |
霧: |
たしかに‥‥私は、ひとりでは 不安で生きていけない女よ。 からだも小さくて‥‥それで、 よけい自分に自信が持てなくて。 ‥‥それを押しかくして、 強いフリをして生きてきた。 ‥‥知られたくなかった‥‥ |
春: | きりおさん‥‥ |
霧: |
このことだけは、だれにも 知られたくなかった‥‥ 私だけの‥‥ ヒミツだったのに‥‥ |
成: | ‥‥すみません。 |
霧: | あなたを見くびっていたようね。 |
成: |
聞かせてください、霧緒さん。 ‥‥本当のことを。 |
霧: |
由利恵さんが亡くなって、 遺書がかくされた、って聞いたわ。 ‥‥藤見野 イサオが かくしてしまった、って‥‥ ‥‥由利恵さん‥‥ 私、あの人がいなければ‥‥ こ、怖くて‥‥。みんなが私の 敵に見えてしまって‥‥ |
成: |
その遺書を手に入れるため、 あなたは彼に近づいたんですね。 |
霧: |
‥‥‥‥‥‥ どうしても、その雑誌の記事を 真実に仕立てあげたいみたいね。 |
成: |
火のないところにケムリは立たない ‥‥って言いますからね。 |
霧: |
そこにムリヤリ火をつけて 焼きつくすのが、芸能界よ。 |
春: | ‥‥‥‥‥‥ |
霧: |
遺書? ‥‥そんなもののために、 私は殺人なんてしません。 ‥‥ワリに合いませんから。 ‥‥そろそろいいでしょうか。 仕事がありますから。 |
成: | はい。 |
霧: |
1つだけ‥‥おねがいがあります。 私のコト‥‥自殺未遂のこと、 ヒミツにしてほしいんです。 |
春: | きりおさん‥‥ |
霧: |
私がその‥‥弱いって、 みんなに知られたらと思うと‥‥ それなら‥‥いっそ、私、 死を選んだほうがマシです。 |
成: |
わわわわ、わかりました! ぼくたちだけのヒミツにします。 (霧緒さん‥‥思いつめる タイプなのか‥‥ ウカツなことは言えないな‥‥) |
霧: | ありがとうございます。 |
春: |
‥‥なるほどくん。 ちょっと、よろしいですか? |
成: | どうしたの? |
春: |
きりおさん‥‥先ほどからずっと、 カードをいじっていますよね‥‥? |
成: |
(カード‥‥たしかに‥‥) 霧緒さん。 そのカード‥‥なんですか? |
霧: |
え? あ、ああ‥‥これですか? さあ‥‥いつのまにか、 バッグに入っていたもので‥‥ |
成: |
なんだこりゃ。 ‥‥サザエ、ですか? |
霧: |
そうみたいですね‥‥。 おぼえがないんです。 どこかで拾ったのかしら‥‥? |
成: |
(キオクがハッキリしない、か。 めずらしいこともあるもんだ) |
霧: |
‥‥じゃあ、王都楼さんのこと、 よろしくおねがいします。 |
控え室前 ろうか | |
成: |
‥‥さあ。手がかりはだいぶ 集まったね。 |
春: |
でも、真宵さまは‥‥ だいじょうぶでしょうか? |
成: |
(さすがに春美ちゃん、 ツラそうだな‥‥ ぜんぜん寝てないし、 1日中、歩きまわって‥‥) |
春: |
どうされましたか? なるほどくん。 |
成: |
いっぺん、事務所へ帰ろうか。 つかれたでしょ? |
春: |
あ。いえ、そんな! わたくしはべつに ‥‥ゲンキです、ゲンキ。 |
成: | (そうは見えないんだけど) |
成歩堂法律事務所 | |
春: | あの! どうですか? |
成: |
ハッキリしたことがあるよ。 霧緒さんには、動機がある。 |
春: |
天野 由利恵さんの遺書、 ですか‥‥? |
成: |
そう。それに彼女は、 第1発見者だ。細工だって‥‥ |
春: |
‥‥あっ! なるほどくん! トランシーバーが! |
成: |
もしもし! こちら、 成歩堂法律事務所ですが! |
?: |
『‥‥弁護士さん。 これは電話ではありませんよ。』 |
成: | ま、真宵ちゃんは‥‥! |
?: |
『ヤクソクどおり、 近づきすらしていません。』 |
春: | よかった‥‥ |
?: |
『‥‥だから、ずいぶん おなかがへっていることでしょう。』 |
成: | な‥‥なんだと! |
?: |
『とにかく、早く無罪判決を 勝ちとることです。 ‥‥どんなことをしてでも、ね。』 |
成: |
待て! 真宵ちゃん! 真宵ちゃんを‥‥ |
?: | 『しかたありませんね‥‥』 |
真: | 『‥‥ちゃんに!』 |
成: | 真宵ちゃんか! |
真: |
『‥‥お姉ちゃん‥‥ お姉ちゃんに聞いてッ!』 |
成: |
真宵ちゃん! 真宵ちゃん! ‥‥くそッ、切れた! |
春: |
”お姉ちゃんに聞いて” ‥‥そう、おっしゃいましたね。 |
成: |
”お姉ちゃん”‥‥? どういうことだろ。 |
わからないの? ‥‥はあ‥‥。なさけないわね。 | |
成: |
う。ご、ごめん‥‥ ‥‥あ‥‥! 千尋さん! |
千: |
‥‥さあ。なんでも聞いて。 真宵からのメッセージもあるわ。 |
成: | 真宵ちゃんは‥‥! |
千: |
ブジよ。‥‥今のところは。 ‥‥あのユーカイ犯、 ヤクソクは守るみたいね。 |
成: |
‥‥よかった‥‥。 でも、千尋さんがどうして? |
千: |
あの子、閉じこめられてすぐ、 私を呼びだしたの。 私は、あの子の書き残した メッセージを読んで‥‥、 できるかぎりの情報を 集めてきた、ってわけ。 |
成: |
(霊媒って‥‥こういう 使いかたもできるのか‥‥) |
成: |
ユーカイ犯は! どんなヤツなんですか! |
千: |
それは‥‥わからないわね。 ホテルで電話に呼び出されて‥‥ 睡眠薬をかがされたらしいの。 |
成: | それで‥‥! |
千: |
あの子、カオも 見ていないそうよ。 |
成: | ううう‥‥ |
千: |
‥‥真宵は今、暗いところに 閉じこめられているわ。 ‥‥聞かせてあげるわ。 真宵になったつもりで聞いて。 |
成: | 真宵ちゃんに‥‥ |
???????????? | |
真: |
うう‥‥はらぺこだあ。 ‥‥あれ食べたいな‥‥たいやき。 やっぱり、こんなときは アマいものだよね‥‥って! 殺さないってヤクソクしたのに! 死んじゃうじゃないよ! (お姉ちゃん‥‥なるほどくんに 会えたかなあ‥‥) |
真: |
やっぱり、 カギかかってるなあ‥‥。 (あれ。でもこのカギ‥‥ なんか、カンタンにあきそう) こんなとき、テレビだと、 カタいカードなんか使って‥‥ カチッ、て開けちゃうんだけど。 (どこか、落ちてないかな。 カード‥‥) |
真: |
あれ。‥‥こんなところに カードが落ちてるよ‥‥ 名刺‥‥みたいだけど、 名前が書いてないなあ。 これって‥‥サザエ、かな。 ‥‥ヘンなカードだね、こりゃ。 あ、そうだ! ‥‥このサザエのカード‥‥ これを使えば、開けられるかも。 ‥‥ドアのカギ! いやー、前からウスウス 気がついていたけど‥‥ やっぱり、あたしって テンサイだよね! ‥‥じゃ、シツレイして‥‥ |
真: |
(‥‥開いた!) ‥‥よ、よおし‥‥ じゃ、行ってみよう! (なるほどくんなんて、 待ってられないもん‥‥) |