綾里 千尋…赤 | |
成歩堂 龍一…黒 | |
星影 宇宙ノ介…黄 | |
裁判長…緑 | |
亜内検事…茶 | |
美柳 ちなみ…紫 | |
呑田 菊三…灰 |
‥‥はあ‥‥ はあ‥‥ ‥‥くそっ! なんでぼくがこんな目に‥‥ ‥‥あのとき‥‥ぼくは どうして、あんなコトを‥‥! | |
『‥‥彼女とは、 もう会わないほうがいい。』 | |
『そんなコト、 きみに言われたくないよ!』 | |
『‥‥アンタのためなんだ。 きっと、よくないことが起こる。』 | |
『う、ウソだッ!』 | |
『いいか、聞くんだ。 ‥‥あの女はなぁ‥‥‥‥‥‥‥‥』 | |
『‥‥やめてくれッ! 彼女のコト‥‥ そんなふうに言うなッ!』 | |
ぼ‥‥ぼくじゃないぞ! こ、こんな‥‥こんな‥‥ ‥‥殺人なんて‥‥! | |
綾里千尋・2回目の法廷 | |
地方裁判所 被告人第3控え室 | |
千: |
(い、いよいよね。 ‥‥キンチョーしちゃうな‥‥) |
?: | ウォッホォン! |
千: |
あ‥‥星影先生! お、おはようございますっ! |
星: |
‥‥千尋クン。 とにかく、まずは落ちつくんぢゃ。 そんなキョロキョロしとったら、 挙動不審でタイホされちまうぞ。 |
千: |
なな、何を言うんですか星影先生! わた、私は落ちついてますっ! |
星: |
うぐぐぐぐ。 む、胸ぐらをつかまんでくれ。 ‥‥うう‥‥どうもチミはまだ、 そそっかしくてイカン。 |
千: |
あ‥‥あの。今日はすみません! 私なんかのために‥‥ |
星: |
‥‥なァに。 他ならぬチミの初舞台ぢゃ。 この星影 宇宙ノ介(ほしかげ そらのすけ)‥‥力になるぞい! |
千: |
あの。‥‥いちおう、法廷はこれで 2回目なんですけど‥‥。 |
星: |
しかし、チミには驚いたぞ。 『この事件を担当させてほしい』 ‥‥ゆんべになって言い出すとは。 |
千: |
きのう、初めて知ったんです。 この事件のこと‥‥。 |
星: |
それで? 事件のデータは、 アタマに入っとるんぢゃろうな? |
千: |
それは‥‥その。 もちろん大丈夫ですよ! たぶん。 |
星: |
ヤレヤレ‥‥。 とにかく、そんなカオを 依頼人に見せないことぢゃ。 ホレ。あの、情けなさそうな ボウヤぢゃろ? 今日の依頼人。 |
成: |
う。お。 おはよーございますセンセイッ! |
千: |
おはようございます。 (とりあえずエガオよ、千尋) |
成: |
きょ、今日は‥‥ボク、 がんばりますからッ! ええもお、やりますとも! げほ。げほげほ。 |
千: |
あ、‥‥そんなにリキまないで。 ええと‥‥なるほどさん! |
成: |
はは、はいッ! ‥‥あ。いえ、あの。 セイカクには”なるほどう” なんですけど‥‥ |
千: |
いいですか、なるほどさん! シンパイはいりません。 あなたが無実なら‥‥ かならず、助けてみせます! |
成: |
うぐぐぐぐ。む、胸ぐらを つかまないでください‥‥げほ。 |
千: |
(‥‥そうよ。ホントに おびえてるのは、彼のほう。 私がシッカリしなくちゃね ‥‥千尋!) 私は綾里 千尋(あやさとちひろ) ‥‥新米弁護士。 初めて法廷に立ったのは、 今から1年前のことだった。 二度と立ちなおれないほどの ダメージを受けた、あの裁判‥‥ あれから1年。私は今、 ふたたび法廷に立とうとしている。 今日こそ‥‥ 今度こそ、私は負けない。 ‥‥依頼人のために。 そして‥‥私自身のために。 |
地方裁判所 第2法廷 | |
裁: |
では、成歩堂 龍一(なるほどう りゅういち)の法廷を開廷します。 |
千: | 弁護側、準備完了しております! |
亜: | 検察側、準備完了しております。 |
裁: |
‥‥弁護人。 綾里 千尋さん‥‥でしたな? |
千: | は、はい。なんでしょうか。 |
裁: |
本件の担当弁護士は、たしか 星影氏だったのでは? |
千: |
え! あ。それがその。 星影弁護士はちょっと、 急用ができてしまって‥‥ |
裁: |
急用? あなたのお隣で ボンヤリしているではないですか! |
千: | はい、まあ‥‥。 |
裁: |
あなた‥‥たしか、新人でしたな。 本当に大丈夫なのですか? |
千: |
(‥‥こ、ここで負けちゃダメ。 ニラみつけてやるの、千尋!) モチロン大丈夫ですわ! ‥‥たぶん。 |
裁: |
ふむう‥‥ ‥‥では、亜内検事。 冒頭弁論をおねがいします。 |
亜: |
ふう、やれやれ‥‥。 私ほどのベテラン検事が、 おじょうさんの子守とはねえ。 |
千: | ‥‥! |
亜: |
まあ、今日は勝ち負けは気にせず、 ムネを借りるつもりで来なさい! |
千: | (ナニよそれ‥‥) |
亜: |
では、事件のあらましを 説明させていただきましょう。 事件があったのは、私立・勇盟 (ゆうめい)大学のキャンパス。 殺害されたのは、呑田 菊三 (のんだきくぞう)くん。 薬学部の4回生だったそうです。 |
裁: |
ふむう‥‥いわゆる、 インテリゲンチャですな。 |
亜: |
さて。‥‥これが、現場にて 撮影された写真です。 事件は、その発生直後、学生に よって発見、通報されました。 現場には、被害者の死体と‥‥ 逃げおくれた被告人がいたのです。 |
裁: |
ふむう‥‥。それは、 すこぶるアヤシイですな。 ‥‥わかりました。 その写真を証拠として受理します。 |
法廷記録にファイルした。 | |
裁: |
‥‥ところで。 この写真を見るかぎり、 被害者の死因がわかりませんな。 |
亜: |
ふっふっふっ‥‥ さすが、裁判長どの。 なかなかスルドイ‥‥ ジッサイこの被害者は、ちょっと 変わった死にかたをしとるのです。 |
千: | ”変わった死にかた”‥‥! |
裁: | いったい、どんな! |
亜: |
それは‥‥弁護人に お答えねがいましょうかな。 |
千: | え‥‥! |
亜: |
カンタンな質問で、キンチョーを ほぐしてさしあげる‥‥ これぞ、ゼントルメンのヤサシサ ‥‥というヤツですな。 |
千: |
ぜ、ぜんとるめん‥‥ (ナメられちゃダメよ千尋! ここは一発、カマしておくの!) |
星: |
そうぢゃ! パシッと 答えてやるんぢゃ! 死因を! ‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ‥‥って、なんぢゃ! わからんのかいッ! |
千: |
ご、ごめんなさいっ! 私‥‥資料まで手が回らなくて。 |
星: |
むぐぐ‥‥シリが痛みだしたワイ。 ‥‥いいかの。 事件に関する資料は、すべて <<法廷記録>>にファイルされとる。 ‥‥それぐらいは 知っとるぢゃろうな? |
千: |
(法廷記録! たしか、Rボタン で見ることができるはずね‥‥) |
星: |
ワシらが法廷で闘うための武器は、 <<法廷記録>>の中に必ずある。 まずはそのデータをよく見て、 よーく考えるんぢゃ! |
千: |
は、はいっ! よーく考えてみますっ! (とにかく‥‥あわてちゃダメ! 検事さんの思うツボだもんね。 法廷記録‥‥見てみよう! Rボタンで‥‥) |
裁: |
では、弁護人に 答えていただきましょう。 この事件の被害者の死因は なんですかな? |
千: |
法廷記録によると、感電‥‥ そのショックで亡くなっています。 |
裁: |
か、感電‥‥ですか。 しかし、いったいどうやって! 大型のスタンガンでも 使ったのですかな? |
亜: |
それは‥‥審理が進むにつれて アキラカになるでしょう。 その前に。重要なポイントが もう1つ、あるのですよ。 |
千: | そ、それは‥‥? |
亜: |
”動機”ですよ、モチロン。 被告と被害者のあいだには、 あるトラブルがあったのです。 |
裁: | とらぶる‥‥? |
千: | そ、それはいったい‥‥ |
亜: |
おっと‥‥! あなたも弁護士なら、それぐらい トーゼン、押さえているはず。 ‥‥そうでしょうな? |
千: |
(イヤにカラんでくるわね ‥‥この検事さん) |
星: |
それが、あの男‥‥ 亜内検事のやりかたなんぢゃ。 ”新人つぶし”の異名を とっておる。 |
裁: |
‥‥それでは、弁護人に お聞きしましょう。 被告人と被害者のあいだに、 どんなトラブルがあったか? それを示す<<証拠品>>を 提示していただきます! |
千: | しょ、”証拠品”‥‥? |
星: |
あわてることはない。 ワシらの武器はつねに、 法廷記録の中にある。 正しいデータを、ヒゲのジイさんに たたきつけてやるんぢゃ! |
千: |
は、はいっ! ヒゲのおジイさんですね! |
裁: |
ちょ、ちょっと星影さん。 新人教育には、 もっと気をつかうように! |
星: |
法廷記録には、<<証拠品>>の他に <<関係者>>のデータもある。 Rボタンで切り替えられるから、 ゼンブ目を通して考えるのぢゃぞ! |
裁: |
‥‥それでは 示していただきましょう。 成歩堂くんと被害者のトラブル。 ‥‥その原因と考えられるのは? |
千: |
トラブルの原因として 考えられるのは、この人物です。 |
裁: |
美柳(みやなぎ) ちなみさん ‥‥ですか。 |
亜: |
‥‥さすがに、それぐらいは 心得ているようですな‥‥弁護人。 彼女は現在、 被告人・成歩堂くんの恋人です。 しかし。半年前までは、被害者の 呑田くんとつきあっていた。 今回の事件に、彼女の存在が カラんでいるのは明白でしょう‥‥ |
裁: | ふむむう‥‥ |
星: |
‥‥さすが、亜内検事ぢゃな。 証人の尋問に入る前に、裁判長の 印象を決定づけようとしておる。 |
裁: |
それでは、亜内検事! 最初の証人を呼んでください。 |
亜: |
‥‥成歩堂 龍一くんを おねがいいたしましょうか。 |
裁: |
ひ‥‥被告人自身、ですか‥‥ いかがですかな? 弁護人。 |
千: |
(大丈夫! なるほどさんは 無実なんだから‥‥) ‥‥異議はありません。 |
裁: |
わかりました。 それでは‥‥ 成歩堂 龍一を証人席へ! |
亜: | では、証人。職業と名前を。 |
成: |
は、はい。 名前は‥‥成歩堂 龍一です。 職業‥‥今は、その。 容疑者、やってますけど。 |
裁: |
いやいや。タイホされる前の 職業をおねがいします。 |
成: |
あ。‥‥げほげほ。 だ、大学生です。 |
亜: |
さて、成歩堂くん。 きみの容疑は、同じ大学の学友・ 呑田 菊三くんの殺害‥‥ |
成: |
あ‥‥ボク! アヤしいモノじゃないんです! だって、ボクはげほ。 げほげほげほ。げほげほげほげほげ |
裁: |
被告人。 ‥‥カゼをうつさないように。 |
亜: |
どうやら証人は、よっぽど 証言したいコトがあるようですな。 |
裁: |
ふむう‥‥では、被告人。 被害者・呑田 菊三くんとの カンケイを証言してください。 |
成: | はいッ! |
成: |
『あの、ボク‥‥。たしかに あそこにいましたけど‥‥』(証言1) 『殺したなんて、とんでもない! 死体を見つけただけなんです!』(証言2) 『そもそもアイツのコト、 よく知らなかったし‥‥。』(証言3) 『あんなキザなイギリスかぶれ、 ボク、話したこともないですよ!』(証言4) |
裁: |
ふむう‥‥。被害者のことは、 よく知らなかった‥‥なるほど。 |
成: |
ええ! だってボク、 アヤしいモノじゃないですからね! |
千: |
(よかった‥‥。裁判長さん、 わかってくれたみたいね) |
星: |
むうう‥‥。 やはりアマいのお、千尋クン。 |
千: | え‥‥? |
亜: |
うふふふふふふ‥‥おじょうさん。 1つ、忘れていることが あるようですな。 |
千: | な、なんですか? |
亜: |
この証人に、<<尋問>>を してもらわないとねえ‥‥。 |
千: | じんもん‥‥? |
星: |
そのとおり。弁護士には、 尋問のギムがあるのぢゃ。 証人の発言にムジュンがないか どうか、たしかめるために‥‥な。 |
千: | ”ムジュン”ですって‥‥ |
星: |
証人がウソをついていれば、当然 法廷記録と食いちがいが生まれる。 |
千: |
でも‥‥なるほどさんは 私の依頼人なんですよ! |
星: |
たとえそれが依頼人であっても‥‥ ムジュンは暴かなくてはならん。 それが弁護士のギム、なのぢゃ。 |
千: |
(どういうコト? もしかして、今の証言には‥‥ ウソが‥‥ ”ムジュン”があると言うの?) |
裁: |
それでは‥‥ 弁護人に、尋問を命じます! |
千: |
(そんなハズ、ないわよね‥‥ なるほどさん! あなたが、 この私にウソをつくなんて‥‥) |
千: |
なるほどさん。 あなた、こう証言しましたね。 ”被害者のことはよく知らない” ‥‥って。 |
成: |
そ、そうです! だってボク、 アイツなんか‥‥ |
千: |
でも‥‥それはちょっと、 ヘンじゃないかしら。 それならなぜ‥‥ あなたは知っているのですか? 被害者が ”イギリスかぶれ”だったコトを! |
成: | ‥‥‥ |
千: | ‥‥‥‥‥ |
成: | ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥げほ。 |
千: | なんでそこでダマるの! |
成: |
あ! いや! ボク、決して アヤしいモノじゃないですからッ! |
裁: |
被告人。それならば、 証言に加えていただきましょう。 なぜ、被害者が”イギリスかぶれ” だと知っていたか‥‥? |
成: |
は、はい‥‥ 『シャツの背中に描かれてたんです。 バカでかいユニオン・ジャックが。』(証言5) |
千: |
たしかに見たのですか? ‥‥ユニオン・ジャックを。 |
成: |
は‥‥はい。背中にでっかく 描いてありましたから。 |
裁: |
弁護人。 それがどうかしましたかな? |
千: |
裁判長。 この、現場写真を見てください。 ‥‥ごらんのとおりです。 背中には、何も描かれていません! |
成: |
でも! これ、 革のジャケットじゃないですか! ユニオン・ジャックが描いて あったのは、シャツの背中‥‥ |
千: |
あなたは、通りすがりに グーゼン、死体を見つけたはずよ。 もし‥‥それが本当ならば、 知ってるはずがないでしょう? 被害者が、このジャケットの下に 何を着ていたか、なんて! なるほどさん。あなた‥‥ この私に、ウソをついたのねっ! |
成: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ごめんなさわわあああああああん! |
星: |
こ、コラコラ! 依頼人を泣かせてどうするんぢゃ! |
千: |
いいんですっ! わ‥‥私‥‥信じていたのに! なるほどさんのコト‥‥ |
亜: |
うふふふふふ‥‥ ここまでうまく行くとはねえ‥‥ |
千: | ‥‥! |
亜: |
これで弁護人は、ミゴトに立証 してくれたワケですな。 被告人が”現場を通りかかった” だけではないことを! |
成: | ううううう‥‥ |
千: |
(しまった‥‥ 強く言いすぎたかしら‥‥) |
亜: |
ところで、被告人。 カゼをひいておるようだが‥‥ 薬は飲まれないのかな? |
成: |
あ、あの。 飲んでいるんですけど‥‥ |
亜: |
被告人が飲んでいる薬とは‥‥ 市販の<<カゼゴロシ・Z>>ですな? |
成: |
そうなんですよ! カゼ薬のケッ作ですからね! ‥‥って、あれ。 どうして知ってるんですか? ボクが<<カゼゴロシ・Z>>の 大ファンだ、ってコト‥‥ |
亜: |
うふふふふふ‥‥ところで、 その薬は‥‥今、持ってますかな? |
成: |
それが‥‥じつは、 どこかに落としちゃって‥‥ |
千: |
(カゼ薬を落とした‥‥? 事件に関係あるのかしら‥‥) |
亜: |
‥‥成歩堂くん。 きみの薬が今、どこにあるか‥‥ 教えてあげよう。 |
成: | ‥‥? |
亜: |
裁判長! 現場の写真を もう1枚、ごらんいただきたいッ! |
裁: |
こ‥‥これは! ‥‥被害者の手の中に‥‥ <<カゼゴロシ・Z>>‥‥! |
千: |
か、<<カゼゴロシ・Z>>ぐらい、 私の部屋にだってありますっ! |
亜: |
ザンネンながら そうは行かないのですよ。 この<<カゼゴロシ・Z>>には‥‥ ハッキリ残っていたのです。 被告人・成歩堂 龍一の 指紋がね! |
千: | な‥‥なんですって! |
亜: |
おそらく‥‥殺意を 感じた呑田 菊三くんは‥‥ 被告人が落とした薬ビンをそっと 拾って、手にかくしたのです。 真犯人・成歩堂 龍一を 告発するためにッ! |
裁: | 静粛に! 静粛に! |
亜: |
裁判長! この写真と薬ビンを 証拠として提出いたします! |
裁: |
わかりました。 ‥‥受理しましょう。 |
法廷記録にファイルした。 | |
を法廷記録にファイルした。 | |
亜: |
ちなみに、被害者の腕時計は、 コショウしておりました。 |
裁: | コショウ‥‥ですか。 |
亜: |
感電の際、強い電気のショックで 止まってしまったのです。 さあ、被告人! セツメイしてもらえますかな! |
成: | ううううう‥‥ |
千: | (サ、サイアクの事態ね‥‥) |
星: |
‥‥ううう‥‥シリが。 シリがああああ‥‥ |