綾里 千尋…赤 | |
成歩堂 龍一…黒 | |
星影 宇宙ノ介…黄 | |
裁判長…緑 | |
亜内検事…茶 | |
美柳 ちなみ…紫 | |
呑田 菊三…灰 |
成: |
『じつは‥‥ボク、アイツに 呼び出されたんです。』(証言1) 『アイツ、薬学部だから‥‥ その校舎の裏庭で、2時45分に。』(証言2) 『話をして‥‥3時ごろには、 もう別れました。』(証言3) 『それで、あとで戻ってきたら‥‥ アイツ、倒れていて。』(証言4) 『カゼゴロシ・Zは、この2・3日 ずっと飲んでいたんですけど‥‥』(証言5) 『事件のあった日のおヒルごはんの ときから、なくなっちゃって。』(証言6) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
裁: |
被告人! さっきの証言と ゼンゼンちがうではないですかッ! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
成: |
げほげほげほげほげほげほ。 す、すみません! 信じてもらえないと思って‥‥ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
亜: |
そもそも、今の証言自体も きわめてウソっぽいようだがねえ。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
裁: |
ふむう‥‥では、弁護人。 尋問をおねがいします。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
千: |
(おねがい、なるほどさん‥‥ これ以上、ウソはつかないで!) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
千: |
2時45分というのは、 呑田 菊三さんの指定で? | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
成: | ええ。時間ピッタリに会いました。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
裁: |
ふむう‥‥。ところで、被害者は ”薬学部”ということですが‥‥? | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
成: |
医薬品の精製とか調合とか‥‥ そんなことを研究してるんです。 連中、『勇盟大学の錬金術師』 なんて呼ばれてますよ。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
裁: | ほおほお。”れんきんじゅつ”‥‥ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
成: |
とにかく、アヤしいんですよ。 実験室なんて、スゴいんだから! いろんな化学薬品とか、 高圧電流を使った実験機械とか。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
裁: |
ほほ。それはおもしろい。 なんというか、ユメがありますな。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
千: |
(‥‥どうしよう? 詳しく話を聞いてみようかな) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
千: |
薬学部のこと‥‥ もう少し聞かせてくれるかしら。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
成: |
いいですけど。 詳しいことは知りませんよ。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
千: |
さっき‥‥ あなたはこう言いましたね。 彼らは”高圧電流を使った 実験機械”を使う‥‥と。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
成: |
そうみたいですよ。 アブないハナシですよね! 規格より高い電力を使うから、 専用の高圧電線を引いていて‥‥ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
千: | ”高圧電線”‥‥ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
成: |
ええ。校舎内に 電柱が特設してあるんです。 高圧電線なら、校舎にそって、 アタマの上を走ってますよ。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
千: |
(‥‥どうやら‥‥やっと、 話が見えてきたわね‥‥) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
千: |
”事件があった日”ですか。 そのとき、昼食は、どなたと‥‥? | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
成: |
え? そんなコト、 事件にカンケイあるんですか? | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
千: | ‥‥もしかしたらね。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
成: |
おヒルはいつも、ちいちゃんと 2人っきりで食べるんですよ。 ちいちゃんのおベントウ、 とーってもオイシイんですよ。 もお、タマゴ焼きなんて、 ほっぺが落っこちそうで。へへへ。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
星: |
ぐはあッ! なな、 なぜ、ワシのほっぺを‥‥! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
千: |
‥‥あ! す、スミマセン! 急に、ビンタしたくなっちゃって。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
裁: |
‥‥もう、じゅうぶんでしょう。 被告人と被害者が会ったのは、 死亡推定時刻のころです。 さらに、立ち去ったはずの被告人は なぜか、現場に戻っている‥‥ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
亜: |
薬ビンの説明も、ナットクできる ものではありませんでしたな。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
裁: |
ハッキリ言いましょう。 ‥‥被告人。 あなたの証言は、信用できません。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
成: | そ‥‥そんな! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
亜: |
うふふふふふ‥‥ やはり、おじょうさんには 荷が重かったようですな‥‥ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
千: | ‥‥! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
裁: |
‥‥ただし。まだ1つだけ、 問題が残っています。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
亜: | モンダイ‥‥ですと? | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
裁: |
モチロン、殺害方法です。 被害者が、どうやって ”感電死”したのか? ‥‥たしか、凶器はまだ 提出されていませんでしたな? | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
亜: |
まあ、それはそうですな。 ‥‥たしかに。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
千: |
(被害者の呑田 菊三が ”どうやって死んだか”‥‥? もし、その方法を立証することが できれば‥‥ このピンチを切り抜けることが できるかもしれない‥‥!) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
千: | ‥‥裁判長! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
裁: | な、なんですかな、弁護人。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
千: |
これまでの証言を総合すれば‥‥ 答えを出すことができるはずです! どうして被害者は死んだのか‥‥? | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
裁: | そ、そうなのですか! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
亜: |
うふふふふふ‥‥ これは、大きく出ましたなあ。 モチロン‥‥新人のあなたも 法廷のルールはご存じでしょうな? ワレワレの武器は、つねに ”証拠品”であることを! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
千: |
も、モチロンわかってますっ! (ちょっぴり、忘れてたけど‥‥) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
裁: |
それでは、弁護人。 提示していただきましょう。 被害者が”感電死”した 原因を示す証拠品を‥‥! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
千: |
被害者が亡くなった、 その”原因”‥‥ この現場写真に、しっかり 写ってるじゃないですか! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
裁: |
な、なんですとッ! ‥‥特に、凶器になりそうな モノは、見あたりませんが‥‥ ふむう‥‥それでは、弁護人。 教えていただけますかな。 この写真のどこに、 ”凶器”があるのか‥‥? | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
千: | もちろん‥‥ここですっ! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
裁: | それは‥‥なんですかな? | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
千: |
切れた送電線‥‥でしょう。 証言を思い出してください。 薬学部では、実験に 高圧電流を使用するため‥‥ 特殊な送電線が 引かれているのです! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
裁: | 高圧‥‥電流‥‥! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
千: |
この送電線こそが、被害者の死因。 そう考えるのが自然です! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
裁: |
ふむう‥‥た、たしかに‥‥ そうかもしれませんな。 亜内検事! いかがですか? |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
亜: |
まあ‥‥よくやった、と ホメてさし上げましょうかな。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
千: | なんですって‥‥ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
亜: |
被害者の死因は、 その送電線かもしれない。 しかし! それが何を イミするか、考えていただきたい! 切れた送電線を”凶器”として 使うことができたのは‥‥ やはり、被告人ではないですか! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
成: | ‥‥げほ! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
裁: |
ふむう‥‥。 そのとおりですな。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
亜: |
そして、最後にもう1つ。 ワレワレには証拠があるのですよ。 成歩堂 龍一の犯行を立証する、 決定的な証拠がね! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
裁: |
そ、その証拠とは‥‥ いったい、どんな! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
亜: | ‥‥指紋ですよ。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
裁: |
しもん‥‥? この薬ビン以外にも、被告人は まだ、指紋を残していたのですか! |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
亜: |
現場写真を見ていただきましょう。 ごらんのとおり、被害者は 革のジャケットを着ています。 革には‥‥そう。 指紋が残りますよねえ。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
千: |
あっ! ‥‥ま、まさか‥‥? | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
亜: |
ジャケットのムネの部分に‥‥ ハッキリ残っていたのですよ。 被告人の手のひらの跡が、 キレイに‥‥ね! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
裁: | な、なんですって! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
亜: |
そんなところに指紋がつくケースは 1つしか考えられない。 殺意を持って、切れた送電線に 向かってつきとばしたときです! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
裁: |
静粛に! 静粛に! 静粛に! もう、けっこうです! ‥‥これで、ギモンの余地は カンゼンになくなりました。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
星: | ‥‥オシマイ、ぢゃな。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
千: | せ‥‥先生! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
星: |
シリの痛みでわかる。 ‥‥あきらめるんぢゃ、千尋クン。 あのボウヤは‥‥ 最初から、有罪だったんぢゃよ。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
千: |
ちがう! ちがう‥‥! なるほどさんは‥‥ ゼッタイに無実なんです! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
裁: |
‥‥本法廷は、これ以上の 審理を必要としません! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
千: | さ‥‥裁判長‥‥! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
裁: |
被告人・成歩堂 龍一に、 この場で判決を言いわたします! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
裁: |
‥‥まだ、 何かあるのですか? 弁護人。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
千: | これでいいの? なるほどくん! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
成: | ‥‥! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
千: |
あなたはまだ、本当のことを ‥‥真実を話していない。 それなのに‥‥今、 判決が下ろうとしているのよ! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
成: |
で、でも‥‥ボク。 い、言えませんっ! ホントのコトを言っちゃったら、 それこそ‥‥ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
千: |
大丈夫‥‥なるほどくん。 私を信じて。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
成: | ち‥‥千尋さん‥‥ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
千: |
あなたがどんな証言を しようと‥‥ 私はあなたを信じる。 最後まで、あなたを弁護するわ。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
成: | ‥‥! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
亜: |
‥‥ワレワレは、すでに 被告人の有罪を立証しました。 彼のコトバは すでに、必要ありません! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
成: |
げほッ! ま‥‥待ってくださいっ! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
千: | なるほどくん‥‥ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
成: |
ボク‥‥ ホントのコトを言います! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
亜: |
だから、成歩堂くん。 もう、その必要は‥‥ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
成: |
げほッ! ボクが‥‥ボクが、 つきとばしたんです! アイツを‥‥呑田 菊三を! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
『‥‥彼女とは、 もう会わないほうがいい。』 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
『そんなコト、 きみに言われたくないよ!』 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
『‥‥アンタのためなんだ。 きっと、よくないことが起こる。』 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
『う、ウソだッ!』 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
『いいか、聞くんだ。 ‥‥あの女はなぁ‥‥‥‥‥‥‥‥』 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
『‥‥やめてくれッ! 彼女のコト‥‥ そんなふうに言うなッ!』 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
裁: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 今の発言‥‥ホンキですかッ! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
成: |
ボク‥‥コワかったんです。 ホントのコトを話したら‥‥ ダレが考えたって、 ぼくが犯人になっちまう! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
裁: |
‥‥今の時点ですでに、ダレが 考えても犯人はあなたでしょう。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
成: |
‥‥おねがいします! もう一度だけ、 チャンスをください! ぼく、今度こそ‥‥ 真実を証言したいんです! 大丈夫だよね、千尋さん! ぼく‥‥信じてるから! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
千: |
え! ‥‥どうもありがと。 (まさか‥‥ホントに つきとばしていたなんて‥‥) |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
星: |
ワシのシリが‥‥暴れだしておる! 暴れだしておるぞおおおお‥‥ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
成: |
『アイツが‥‥ちいちゃんのコト、 悪く言ったから‥‥』(証言1) 『ついカッとなって つきとばしちゃったんです!』(証言2) 『そのとき、なんか大きな 音がしたような気がするけど‥‥』(証言3) 『立ち去ってから少しして、 ちょっと心配になったんです。』(証言4) 『それで、戻ってみたら‥‥ あ、アイツ‥‥し、死んでいて!』(証言5) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
亜: |
‥‥ハナシはカンタンですな。 つきとばしたとき、呑田くんは 切れた送電線に触れてしまった。 そのショックで、彼は死んだ。 ‥‥それだけのことです。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
裁: | ふむう‥‥なるほど‥‥ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
亜: |
事件のあったころ、現場には 小雨がふっていました。 雨にぬれた被害者は、電気を 通しやすい状態にあったのです! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
成: |
で‥‥でも! つきとばしたとき、送電線なんて たれていませんでしたよ! 現場にそんなものがあったら、 いくらぼくでも、気がつきます! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
千: |
(そうよね‥‥。いくら なるほどくんでも気づくわ!) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
裁: |
ふむう‥‥ 弁護人、よろしいですか。 今回の尋問で新しい事実が 浮かばなかった場合‥‥ ただちに判決を言いわたします。 ‥‥そのつもりで。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
千: |
‥‥は、はい。 (あきらめちゃダメよ、千尋! なるほどくんが無実ならば‥‥ 手がかりは必ず、あるわ!) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
千: |
”大きな音”‥‥ それは、どんな? | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
成: |
よくわからないんですけど‥‥ かなり大きな音でしたよ。 ”バチッ!”‥‥みたいな。 あれ、なんの音だったのかなあ。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
亜: |
うふふふふふ‥‥ 被害者が感電したときの音‥‥ それしか考えられないでしょう。 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
千: |
‥‥き、 決めつけないでくださいっ! (どうしようかな? ヘタに つっこむのもキケンかしら‥‥) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
千: |
なるほどくん。その”音”‥‥ とても大事なコトかもしれないわ。 よく思い出してみて! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
成: |
ううう‥‥なんていうか、 鋭い音だったんですよ。 あ! もしかして、あの音かな? | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
千: | な、なに! 言いなさい! 早く! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
成: |
つきとばしたとき、アイツ 持っていたカサを落としたんです。 アイツ、カサの上に倒れて‥‥ コワしちゃったんです。 そのときの音だったのかも‥‥。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
裁: |
カサ、ねえ‥‥。それは、 被害者のものですか? | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
成: |
ええ。アイツにお似合いの、 安っぽいビニールのカサですよ! ‥‥まあ、ボクはそれすら持って なくて、ビショぬれでしたけど。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
裁: |
ふむう‥‥弁護人。 いかがですか? 今の証言、 何か重要なことなのですかな? | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
千: | え! ええと、それは‥‥ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
千: |
(これこそ、私の待っていた 新しい情報じゃない、千尋!) その安っぽいカサのコト‥‥ モチロン重要です! 正式に、証言に加えてください! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
亜: |
ハッ! 安っぽい弁護士には 安モノの情報が似合うようですな。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
裁: |
弁護人の要請を 受け入れましょう。‥‥証人。 安っぽいカサのことを 証言に加えてください! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
成: |
『つきとばしたら、アイツ‥‥ カサを下じきにして倒れました。』(証言6) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
千: |
‥‥どうして最初から この証言をしてくれなかったの? | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
成: |
だって‥‥ こんなコト言ったら‥‥ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
千: |
もっと早く 反撃ができていたのに。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
亜: | ど、どういうことですかな? | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
千: |
現場写真を見てください! 被害者は、カサの上に倒れた‥‥ 証人は、そう証言しました。 ‥‥しかし、この写真では‥‥ カサは、死体から離れた 電柱のところにあります! |
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裁: | た‥‥たしかに! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
千: |
結論はアキラカです。 被告人が立ち去ったあと‥‥ 被害者は、その場所から 移動した。‥‥つまり! 被告人につきとばされたとき、 呑田さんは、死んでいなかった! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
亜: | バカなあああああぁぁぁっ! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
裁: |
‥‥静粛に! 静粛に! 静粛に! 被害者が‥‥移動した‥‥! 亜内検事! カサは‥‥ この写真のカサは、どこにッ? | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
亜: |
い、いちおう 回収してありますが‥‥ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
裁: |
今すぐ、証拠として 提出していただきましょう! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
法廷記録にファイルした。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
亜: |
しかし‥‥そんなカサごとき! 風で‥‥風で飛ばされただけだッ! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
千: |
証言によれば、被害者は カサの上に倒れたはずです。 風で飛ばされるなんて、 考えられません! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
亜: |
むぐぐぐぅぅぅ‥‥ッ! で、でも! でもでも | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
裁: |
‥‥たしかに‥‥カサの件は ささいなコトに見えます。 しかし! ギモンが残るかぎり、 判決を下すことはできません! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
亜: |
な‥‥‥‥‥‥‥‥ なぎゃらわああああああああッ! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
裁: |
‥‥信じられません。 有罪を確定すると思われた証言に、 まさかこんな”穴”があったとは! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
法廷記録にファイルした。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
星: | ち‥‥千尋クン! やりおったな! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
亜: |
‥‥‥‥‥‥うふ。 うふふふふふふふふふふふふふふふ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
裁: |
なな、なんですか、亜内検事。 その、ほがらかな笑い声は‥‥ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
亜: |
さすがに‥‥ ムシがよすぎましたかな。 被告人の尋問だけで 有罪判決をいただこう、などと‥‥ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
裁: | な、なんですと! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
千: |
‥‥‥‥‥‥ どうやら‥‥”次の証人”が いるみたいですね。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
亜: |
さよう! しかも、 ”決定的な”証人がねえ。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
裁: | ど、どなたですかッ! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
亜: | 美柳 ちなみさんです。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
裁: |
みやなぎ ちなみ? もしかして ‥‥あの。ちいちゃん、ですかな? | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
亜: |
そのとおりです。 被告人の恋人である彼女は‥‥ すべてを目撃していた! そう。彼女は事件が発生した瞬間 ‥‥殺人現場にいたのです! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
裁: | なんですっとおおおおおおおおッ! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
亜: |
オキノドクでしたなあ‥‥ おじょうさん。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
千: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ”オキノドク”? ‥‥とんでもない。 私は‥‥ この瞬間を、待っていたのです。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
亜: | な‥‥なんですと‥‥? | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
星: |
千尋クン! ど、どういうイミぢゃ‥‥? | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
裁: |
ここで、20分間の 休憩をとりたいと思います。 その後、美柳 ちなみさんの 証言を聞くことにしましょう! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
地方裁判所 被告人第3控え室 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
成: |
千尋さん‥‥スミマセンでした。 ‥‥ボク‥‥ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
千: |
‥‥やっと、ホントのことを 話してくれたわね。なるほどくん。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
成: |
ええ‥‥。だから、もう 安心ですよね? ボク。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
星: |
安心なワケあるかいッ! ダイジなコト、かくしおって‥‥ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
成: |
ううう‥‥。でも! 次の証人、ちいちゃんでしょう? きっと、ボクたちのコト、 助けてくれちゃいますよ! | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
千: | ‥‥どうして、そう思うの? |
成: |
え! だって‥‥彼女、 | ボクの運命のヒトだから! 千: |
運命、ね‥‥。よかったら、 | 聞かせてくれないかしら? あなたと‥‥その、 美柳 ちなみさんのこと。 成: |
ええ! いいですとも! | ちいちゃんとは‥‥半年前、 この裁判所で出会いました。 ボク‥‥今、弁護士を 目指して勉強中なんですけど‥‥、 ある日、地下の資料室で、 バッタリ出会っちゃって。 ホント、あれこそ”ウンメイ”って ヤツだったんですよねえ‥‥。 もお、ヒト目見たとたん、 いきなりイイ感じになっちゃって。 ホラ、ホラ、見てくださいよ! 千: |
‥‥‥! | 成: |
そのときもらった、 |
コイビトのアカシなんです! あの日、彼女が首から さげていたんですけど。 ”あなたに、持っていてほしいの” なーんて言っちゃって。 星: |
彼女がくれた‥‥ | ”プレゼント”というワケかの。 成: |
ちっちゃなオモイデを入れるための | ちっちゃなボトルなんですよ! 千: |
たしかに‥‥ちゃちな小ビンね。 | 成: |
もお、うれしくて。会うヒト | みんなに見せびらかしてるんです! ボクのシアワセを、みんなにも わけてあげたくて‥‥ なるほどくんから借りた。 千: |
とにかく‥‥ | それから、彼女と つきあうようになったのね? 成: |
彼女、テレ屋さんだから‥‥ | 会うたびに、ボクに言うんですよ。 ”やっぱりそれ、返して”って。 星: |
ヘンな女ぢゃの。一度あげたモノを | 返せ、とは‥‥ 千: |
‥‥ところで、なるほどくん。 | あなたが、美柳 ちなみさんと 出会ったのは‥‥ 半年前の、8月27日のことね。 成: |
え‥‥。 | ‥‥ど、どうしてそれを‥‥? 千: |
8月27日‥‥。この裁判所では、 | こんな事件があったのよ。 成: |
それ‥‥新聞記事ですか? |
ええと、<<裁判所で、殺人事件?>> さ、”さつじん”? 星: |
な、なんぢゃと! | ちょっと貸したまえッ! ‥‥‥‥‥‥‥‥! なるほどのお。 千尋クン。‥‥どうやら、 わかった気がするぞ。 なぜチミが、急に今回の事件を 引き受ける、なぞと言い出したか。 この記事の事件と、今回の事件‥‥ カンケイあり、というワケぢゃな。 法廷記録にファイルした。 千: |
‥‥すみません、先生。 | 私‥‥、ケリを つけなくちゃいけないんです。 星: |
しかし‥‥これだけでは、 | どうにも情報が足りん。 よし。ワシが今から、 地下の資料室をあたってみよう。 千: |
あ‥‥ありがとうございます! | 星: |
他ならぬチミのためぢゃ。 | チカラのかぎり、協力するぞい! とにかく、行くのぢゃ。 そろそろ休憩時間が終わる! 千: |
(‥‥そうね‥‥ | ‥‥ずいぶん長い<<休憩時間>> だったような気がするわ‥‥) |