成歩堂 龍一…黒 | |
綾里 千尋…赤 | |
綾里 真宵…青 | |
綾里 春美…黄緑 | |
御剣 怜侍…茶 | |
狩魔 冥…水 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
ゴドー検事…薄橙 | |
裁判長…緑 | |
裁判官…黄 | |
矢張 政志…紺 | |
天龍斎 エリス…桃 | |
毘忌尼…橙 | |
葉桜院 あやめ…藤 | |
美柳 ちなみ…紫 |
堀田クリニック 集中治療室 | |
成: |
‥‥ぼくは今、ある裁判の記録を 目の前にしている。 ぼくの師匠、千尋さんが 初めて法廷に立ったときの記録だ。 そこには‥‥信じたくない <<真実>>が、ぼくを待っていた。 ‥‥美柳 ちなみ‥‥ どうしても、信じられなかった。 記録の中に書かれているのは‥‥ ぼくの知っている 彼女ではなかった。 ‥‥吾童川に飲みこまれたぼくは、 奇跡的に救出されたらしいけど‥‥ 考えられるかぎり、この世で最も タチの悪いカゼをひいてしまった。 ‥‥目はくらみ、耳鳴りがして ノドは焼け、アタマは煮えたぎる。 しかし、かならず回復する! ‥‥今日の午後までに‥‥ 考えられるかぎり、この世で最も タチの悪い証人を相手に‥‥ アイツなら! きっと なんとかしてくれるはずだから‥‥ |
おぼろ橋 | |
御: |
だ‥‥大丈夫なのか、成歩堂。 カオが、なんというか‥‥ ミドリ色、だが。 |
糸: | 専門的にはビリジアン、ッスね。 |
成: |
‥‥これでも、ずいぶん 熱は下がったんだけどな。 |
糸: | 何度ッス? |
成: |
微熱ていどですよ。 ‥‥38度9分だから。 げほ。げほげほがほげほ。 とにかく‥‥裁判の記録は さっき読ませてもらったよ。 ‥‥さすが御剣だな。 あの状況で、持ちこたえるなんて。 |
御: |
まだ、キケンな状況で あることはまちがいないが、な。 とにかく、ポイントは凶器だ。 |
成: | ”きょうき”‥‥ |
御: |
七支刀は、凶器ではなかった。 我々の知らないカタナが‥‥ どこかに眠っているはずだ。 |
成: | (もう1本のカタナ、か‥‥) |
糸: |
シンパイいらねッス! この自分がッ! かならず 見つけだしてみせるッス! |
成: |
‥‥ありがとう、御剣。 あとは‥‥ぼくに、まかせてくれ。 |
御: |
‥‥フッ‥‥ それもよかろう。 じつは‥‥私は一度、 署に戻ろうと思っているのだ。 どうしても、 調べてみたいことがある。 |
成: | なんのことだ‥‥? |
御: |
もちろん‥‥我々の 依頼人のことだよ。 |
糸: | あやめ‥‥さん、ッスか? |
御: |
私は‥‥どこかで、彼女に 会ったような気がするのだ。 |
成: | ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
御: |
それを、たしかめたい。 どうやら‥‥ キミの口からは、 聞けそうもないからな。 |
成: | ‥‥すまないな、御剣。 |
御: |
それでは‥‥また、 後ほど会おう、成歩堂。 |
糸: |
‥‥さて。 じゃ、自分も行くッス。 |
成: | ? どこか、行くんですか? |
糸: |
この、橋ッスよ。 向こう側へわたるために 応急処置の準備をしてるッス。 |
成: |
(そうだ‥‥! 奥の院には、 真宵ちゃんが‥‥) |
糸: |
シンパイいらねッス! わたれるようになったら、 アンタにも知らせてあげるッス。 |
成: |
あ、ありがとうございます! イトノコ刑事! げほげほ! げほ。げほげほがほげほ。 |
糸: |
ま。ま。なんでもいいから、 カゼをうつさないでほしいッス。 じゃッ! 後ほど会うッス! |
成: |
(待っていてくれ、真宵ちゃん。 かならず、助けに行くから。 それまでに‥‥手がかりを 集めるんだ!) |
葉桜院 山門 | |
?: |
だからさー、たのむよお。 オレのゲージュツのためにさあ。 |
成: |
(‥‥あれ。この、果てしなく だらしない声は‥‥) |
矢: |
ヒロインよ、ヒロイン。 オレの絵本の。メイヨなコトだぜ? ぎゃははァッ! |
冥: |
‥‥クドいッ! バカをバカゆえにユルすバカは、 そのバカにもおとるバカ‥‥ そう思わないかしら? ‥‥成歩堂 龍一。 |
成: |
え‥‥‥ た、たしか、キミは‥‥ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥ええと。 いてててッ! |
冥: | ‥‥思い出すのが、おそい。 |
成: |
(まだ、熱でアタマが はたらかないんだよ!) |
矢: |
ま、マズいだろ、メイちゃん! コイツ、生死の境をさまよってる、 ってウワサだぜ。‥‥今もなお。 |
冥: |
‥‥<<死者にムチ打て!>> この国では、そう言うそうね。 |
成: |
言わないよ! ‥‥それに、死んでないし。 |
矢: |
なああ、成歩堂ォ。オマエからも 言ってやってくれよぉ。 <<メイちゃんのムチムチ大冒険>>の モデルになってくれ、ってさあ。 ぎゃははァッ! |
冥: |
‥‥私にモデルをたのむ前に、 マトモな証言をすることね。 |
成: |
‥‥その前に、マトモに 生きることだな、矢張。 |
矢: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ダレがなんて言ったって、 オレ! ホントに見たんだ! あのコはあの晩、ピョーン、って 飛んだんだ! ピョーン、って! あとであやまったって、 ユルしてやらねェからな! |
成: |
(‥‥やれやれ。 行っちまったな‥‥) |
冥: | ‥‥1年ぶりね、成歩堂 龍一。 |
成: | あいかわらず、アメリカで? |
冥: |
ええ。‥‥モチロン、 カンペキに勝ちつづけているわ。 |
成: |
(‥‥やれやれ。 変わってないみたいだな。 あれから、1年‥‥か) |
冥: |
『私の名は狩魔 冥(かるまめい)。 ‥‥天才検事よ。』 |
成: | 『はあ‥‥。』 |
冥: |
『私がアメリカの検事局を捨てて この国へ来た理由は、ただ1つ。 ‥‥復讐よ。』 |
成: |
(彼女はアメリカに生まれ育ち、 13才で検事になったという。 ‥‥彼女の父親は、 伝説の検事・狩魔 豪。 40年間、無敗をほこり‥‥ 今はもう、いない) もしかして、きみは‥‥ まだ、お父さんのことで、 このぼくを‥‥? |
冥: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 成歩堂 龍一。 私は、あなたを倒す‥‥かならず。 でも‥‥それは、私自身のため。 父は、関係ないわ。‥‥もう。 |
成: | ‥‥そう、か。 |
冥: |
正直なところ、おどろいたわ。 私は、キサマと闘うつもりで この国に戻ってきた。 まさか‥‥弁護席に あのオトコが立とうとは、ね。 |
成: |
(御剣 怜侍。 考えてみれば、アイツも‥‥ あの狩魔 豪に<<検事>>を たたきこまれた、天才なんだ) |
冥: |
御剣 怜侍は‥‥ 私に、こう言ったわ。 『この事件は、成歩堂にとって 特別なイミを持つ』‥‥って。 |
成: |
‥‥ああ。 そのとおりだね。 |
冥: |
だからこそ、私は来たのよ。 特別なイミを持つ事件で、 キサマをたたきツブすために! |
成: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ (ここまでスナオに 敵意をむき出しにされると‥‥ なんか、ほほえましいな) いててててッ! |
冥: | ニコニコするなッ! |
成: | その前に、病人をたたくなッ! |
冥: |
あのオトコも、こんなバカのために あんなバカなコトをするなんてね。 |
成: | (‥‥御剣‥‥) |
冥: |
いいかしら、成歩堂 龍一。 私にはキタイしないコトね。 あくまでも、あなたを ブチのめしに来たわけだから。 |
成: |
きみに<<カゼゴロシ・Z>>を買いに 行ってもらおうとは思わないよ。 |
冥: |
‥‥事件の資料は、飛行機の中で ざっと目を通したわ。 |
成: | ”ざっと”‥‥? |
冥: |
ええ。カンペキにね。 あなたのバカげた行動には 笑わせてもらったわ。 燃えつきた橋がわたれるかどうか ‥‥考えなかったのかしら? |
成: |
考えなかったよ。 あのときは、<<わたる>> しかなかったからね。 |
冥: |
‥‥‥! か、考えないバカは、 考えるバカよりタチが悪いようね。 |
成: |
(橋がわたれるようになったら、 イトノコ刑事が教えてくれる。 真宵ちゃん‥‥ブジだよな! 早く、ぼくに聞かせてほしい。 事件当夜、そっちでは 何があったのか‥‥?) |
葉桜院 本堂 | |
?: | はあああああああああああああああ |
成: |
(‥‥深ぁいタメ息が聞こえる) ‥‥あの。ビキニさん? |
毘: |
あらあらあら、いたのかい! 元気? わは。わはははははは! はあああああああああああああああ |
成: | ‥‥あの。ムリしないほうが。 |
毘: |
もしかして‥‥ オバサン、トンでもない まちがいをしてたのかねえ‥‥。 エリスさまを死なせてしまって、 その上、あやめまで‥‥ |
成: | (”エリスさま”、ねえ‥‥) |
毘: |
それに、修験者さまも 奥の院に閉じこめられているし‥‥ あの、小さな女の子まで、 どこか行っちゃって。 |
成: |
小さな‥‥? ま、まさか‥‥春美ちゃんが? |
毘: |
そ、そうなのよォォォ! 事件があった翌朝から、 姿が見えないの‥‥ |
成: |
は‥‥春美ちゃんが‥‥ (それは、聞いてないぞ!) |
毘: |
‥‥オバサンも、トシかねえ。 なんだか、自分に自信が 持てなくなってきたのよ。 |
成: | 今日の法廷、ですか‥‥? |
毘: |
オバサン、アレよ? ウソなんて、ついてないんだから! あの晩、あの子が‥‥エリスさまの 身体から、ぬーっとカタナを‥‥ オバサン、ホントに見たんだから! ‥‥今朝までは、そう思ってたわ。 |
成: |
(サイコ・ロックが現れない‥‥ たしかに、ウソはついていない) あの。‥‥どうして、急に自信を なくしちゃったんですか? |
毘: |
オバサンのあとに証言した、 あのゲージュツカがいたでしょ。 |
矢: |
『あやめちゃんが、飛んだんだよ! 白いずきんをハタめかせて! なんだか、オレも 飛べそうな気がしてさァ。』 |
毘: |
‥‥あり得ないコトを必死で しゃべってる、あの子を見て‥‥ ああ、オバサンもしょせん あのテイドなのかな、って。 |
成: |
‥‥まあ、あいつのコトは 気にしないほうがいいですよ。 ゲージュツカと言っても、 トラブル関係の芸術ですから。 (ビキニさんも、矢張も‥‥ ウソはついていない。 考えられるのは‥‥ <<見まちがい>>‥‥かな) |
成: |
事件当夜‥‥奥の院で、 あやめさんと会ったんですよね? |
毘: |
そうだよ。あれはたしかに あやめだったワ。 |
成: |
(でも‥‥あやめさんは、葉桜院の 部屋にいた、と言っている‥‥) |
毘: |
やっぱり‥‥あの晩、こっちに 戻ったのは、マチガイだったねえ。 |
成: |
おかげで真宵ちゃん、ひとりで 閉じこめられているんですよね。 |
毘: |
うううう‥‥申しワケないねえ。 あそこ、スキマ風がシャレに ならないのよ。‥‥特に、冬は。 |
成: |
(たしかに‥‥あの修験堂、 今にもくずれそうだったな) |
毘: |
吾童山はね。ムカシから 大きな地震が多いのよ。 |
成: | 地震‥‥ですか‥‥ |
毘: |
大きいのが来たら、今度は つぶれちまうかもしれないねェ。 |
成: |
(‥‥一刻も早く 助け出さないとな‥‥) |
毘: |
まあ、でも。とりあえず シンパイいらないと思うわよ。 あそこは、いわば 陸の孤島だから。 |
成: | <<陸の孤島>>‥‥? |
毘: |
そう。おぼろ橋の向こうには、 奥の院しかないのよォ。 川とガケと森に囲まれててね。 人は住んでないんだわ。 |
成: | そ、そうなんですか。 |
毘: |
だから、もし怪しいヤツが 向こう側に逃げこんだとしても‥‥ おぼろ橋がないかぎり、どこにも 逃げられないから、アンシンよ。 |
成: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ それって、真宵ちゃんも逃げ場が ない、ってコトじゃないですか! |
毘: | わわ! そりゃそうだわ! |
成: |
(うううう‥‥早く わたれるようにならないかな) |
成: |
‥‥ちょっと、気になる コトがあるんですけど。 |
毘: |
え、なんだろ? オバサンのスリーサイズかしら? |
成: |
いやいや。 被害者の天流斎 エリス 先生のコトです。 |
毘: |
‥‥‥‥‥‥‥ さすがに、オバサンも知らないよ。 エリスさまのスリーサイズは。 |
成: |
彼女は‥‥なぜ、こんなところに 泊まりに来たんでしょう。 ‥‥修行をするワケでもないのに。 |
毘: |
あ‥‥あらあら。”こんなところ” とは、ごアイサツねえ。 え、エリスさまは、吾童山のキツい 自然を取材なさっていたのよぉ。 |
成: |
‥‥それに、ビキニさん‥‥ 彼女のこと、”エリスさま”って 呼びますよね。 |
毘: | ‥‥‥えッ! |
成: |
どうしてですか? 彼女は、修験者でもないのに。 |
毘: |
そそ、そんな! た、ただのお客さんだよ! だ、だって‥‥ホラ! 年上だから。オバサンより。 |
成: |
‥‥どうして知ってるんですか? 彼女が”年上”だって。 |
毘: | ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ |
成: |
(どうやら‥‥ 天流斎 エリス先生は、 ただのお客じゃなかったようだ。 それに‥‥ 事件当夜、彼女といっしょにいた はずの春美ちゃんが、消えた。 ‥‥何か、関係が あるはずだよな‥‥) |
成: |
ま、まさか‥‥ 春美ちゃんまで! |
毘: |
おねがいよォ! そんな悲しそうな 目をしないでちょうだい! |
成: |
(まいったな‥‥ アタマがガンガンしてきた!) 春美ちゃん‥‥事件当夜は、 エリス先生といっしょ、でしたね? |
毘: |
さあ‥‥。オバサンたちは 修行のしたくがあったから‥‥ 夕食後、あの子は 見てないんだけど。 |
成: |
(あの事件‥‥。まさか、 春美ちゃんの目の前で‥‥?) |
毘: |
刑事さんの話では、 おうちにも帰ってないんだって。 |
成: |
(お、落ちつくんだ! 1カ所だけ‥‥残っている! 1カ所だけ‥‥あの子が いるかもしれない場所が! ‥‥イトノコ刑事‥‥ たのむから、早く来てくれ!) |
葉桜院 境内 | |
成: |
(‥‥ビキニさんは、 ここで事件を目撃した。 ウソをついているとは 思えないけど‥‥ まだ、他に手がかりが 眠っているんだろうか‥‥?) |