成歩堂 龍一…黒 | |
綾里 千尋…赤 | |
綾里 真宵…青 | |
綾里 春美…黄緑 | |
御剣 怜侍…茶 | |
狩魔 冥…水 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
ゴドー検事…薄橙 | |
裁判長…緑 | |
裁判官…黄 | |
矢張 政志…紺 | |
天龍斎 エリス…桃 | |
毘忌尼…橙 | |
葉桜院 あやめ…藤 | |
美柳 ちなみ…紫 |
奥の院・中庭 | |
成: |
‥‥警察たちが、オドオドと 捜査をつづけている。 ものすごく、やりにくそうだ。 そりゃそうだろう。 ‥‥イミもなく、こんな目で ニラみつけられているのだから。 |
御: |
ぶつぶつ‥‥ ‥‥私としたことが‥‥ッ! |
成: |
(まだ、気にしてるみたいだな) ‥‥御剣‥‥? |
御: | わっ! ‥‥‥‥‥‥ |
成: |
‥‥‥‥‥‥ おい! どこへ行くんだよ! |
御: | ‥‥何しに来た! |
成: | な、”何しに”と言われても‥‥ |
御: |
こんな私を見て、笑いに来たのか! ‥‥笑いたければ、笑うがいい。 どうした! さあ、笑えよ! |
成: |
(やれやれ‥‥ コイツも変わらないな) そういえば、おまえ‥‥ 署に戻っていたんだよな? あやめさんのこと‥‥ <<調べたいことがある>>って。 |
御: |
う、うム‥‥。 ‥‥おかげで、イヤなことを 思い出してしまった‥‥。 |
成: |
‥‥ずいぶん、念入りだな。 中庭の捜査‥‥ |
御: |
本当の殺害現場がここである 可能性が高いからな。 |
成: | 血文字と、この護符のせいか。 |
御: |
‥‥そうだ。 いずれも、事件が起こってからの 細工は不可能だ。 |
成: |
まさか‥‥疑っているわけじゃ ないだろうな。 ‥‥真宵ちゃんのこと。 |
御: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ すべてを疑うのが我々のシゴトだ。 真宵くんも‥‥、あやめさんも。 |
成: |
やっぱり‥‥まだ、 ダメなのか。地震‥‥ |
御: |
ああ‥‥。さすがに、 悪夢は見なくなったが‥‥ 今でも、足元が揺れると 息ができなくなる。 |
成: |
(‥‥今から、17年前‥‥ ぼくたちが、まだ小学生のころ。 御剣 怜侍は、ある 殺人事件に巻きこまれたんだ) ‥‥裁判所を襲った、大地震‥‥ それが、すべての始まりだった。 |
御: |
私は、弁護士である父とともに、 エレベータに閉じこめられた。 ‥‥酸素が失われ、うすれゆく 意識の中で、あの事件は起こった。 ‥‥1発の、銃声‥‥ それが、すべての終わりだった。 あの日、あの地震によって‥‥ 何もかも、失ってしまった。 夢も、家族も‥‥ そして、自分自身も。 |
成: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ もう、17年も前のことだ。 それに‥‥ あの事件なら、解決しただろう? 今から、3年前に。 |
御: |
‥‥わかっているさ! 自分でも、そのつもりでいた。 それだけに、ショックだ。 ‥‥こんなミスをするとは、な。 私のために弁護士の道を選び、 助けてくれたキミにも‥‥ ‥‥申しわけない。 |
成: |
(やれやれ‥‥ ずいぶん弱気になっちまったな) |
御: |
‥‥彼女に会ったとき、 気になったことがあった。 ”どこかで見たことがある”‥‥ そう思ったのだ。‥‥いや。 ”どこかで”と言うより‥‥ ”法廷で”‥‥と言うべきか。 |
成: |
‥‥それで、署に戻って 調べてきたのか。 |
御: |
私の扱った、すべての 事件のデータを、な。 ‥‥やはり、思いちがいでは なかった。 私は、彼女のカオを 見たことがあった。6年ほど前に。 |
成: | 6年‥‥ |
御: |
‥‥初めての法廷だった。 私にとって、最悪の事件だ。 |
成: |
そ、それで! <<彼女>>というのは‥‥ |
御: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ すまないが、成歩堂。 その人物に関するデータを、 外部にもらすことはできない。 |
成: |
ど‥‥どうしてだよ! 事件を解決するためだぞ! |
御: |
私の知っている<<彼女>>は、 宝石商の父を持つ娘だ。 葉桜院で育った あやめさんとの接点は、ない。 ‥‥それに‥‥ その人物は、この事件とは 無関係なのだ。 |
成: | ‥‥”無関係”だって‥‥? |
御: |
これは、絶対的なジジツ として断言できる。 |
成: |
(バカな! <<彼女>>が 無関係なハズがない! 御剣に、わからせるんだ! あやめさんと‥‥御剣の知って いる<<彼女>>との接点を!) |
成: |
なあ、御剣‥‥ 知っていたか? あやめさんには‥‥ 双子のお姉さんがいたんだ。 |
御: |
な‥‥なんだと! ‥‥ふ、双子‥‥ ‥‥バカなッ! まちがいないのか! |
成: |
ビキニさんから聞いたんだ。 ‥‥でも‥‥ その”お姉さん”については、 名前さえも知らないらしい。 |
御: |
‥‥私が調べた記録には、姉妹の ことなど書かれていなかった‥‥ |
成: |
おさないころ、あやめさんは 葉桜院にあずけられて‥‥ お姉さんの方は、宝石商の父親に 育てられたらしい。 |
御: |
ほ‥‥宝石商、だと‥‥! ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 成歩堂。私は‥‥ 私は、その”双子の姉”を 知っているかもしれない。 |
成: |
‥‥ああ。 そう言うだろうと思ったよ。 彼女の名前は‥‥ 美柳 ちなみ、だろう? |
御: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ そのとおりだ。 |
成: |
聞かせてもらおうか。 ‥‥彼女のこと‥‥ |
御: |
今から、6年ほど前‥‥ 初めて扱った事件だった。 私がミジュクだったせいで‥‥ 被告人を、死なせてしまったのだ。 |
成: | 尾並田 美散さん、か‥‥ |
御: |
‥‥‥! し、知っているのか? あの事件を‥‥ |
成: |
”あやめさん”と”美柳 ちなみ” ‥‥ぼくも気になっていた。 だから‥‥6年前の、千尋さんの ファイルを調べたんだ。 |
御: |
そう‥‥。あのときの証人が 美柳 ちなみ、だ。 尾並田 美散を協力させて 狂言誘拐をくわだて‥‥ 宝石商の父親から、2億円の ダイヤの原石を奪った‥‥ そして、その5年後‥‥ こんどは、口封じのために お姉さんの美柳 勇希を殺害した。 |
成: | ”お姉さん”‥‥か。 |
御: |
美柳 勇希と美柳 ちなみには、 血のつながりはない。 勇希は、父親が再婚した相手の ひとり娘だったようだ。 |
成: |
‥‥そう、だったのか‥‥。 (そこから‥‥ぼくの知っている <<彼女>>につながるわけだな。 このぼくを殺そうとした ”彼女”に‥‥) ‥‥尾並田さんが亡くなったあと、 美柳 ちなみがどうなったか‥‥? そいつは、調べなかったのか? |
御: |
‥‥‥‥‥‥‥‥ その必要はない。 美柳 ちなみは、この事件とは 無関係なのだからな。 |
成: |
なぜ‥‥ そう言い切れるんだ? |
御: |
‥‥カンタンなことだ。 美柳 ちなみは‥‥ すでに死んでいる。 |
成: | え‥‥‥‥ |
御: |
そう。‥‥彼女はもう この世には、いないのだ‥‥。 |
成: |
どういうコトだ、御剣! 美柳 ちなみが、”死んでいる”? |
御: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 今回、初めて知ったよ。 ‥‥成歩堂。 キミの、学生時代の”事件”を。 |
成: | ‥‥‥! |
御: |
美柳 ちなみは有罪判決を受けた。 綾里 千尋の、執念によって‥‥ |
ち: |
『‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ‥‥ぐ‥‥ぐぐううう‥‥‥‥ アヤサト チヒロ‥‥‥‥‥‥‥ アヤサト チヒロオオォォ‥‥‥』 |
成: |
(あのときの、彼女‥‥ まさに、悪魔のような 形相だった‥‥) |
御: |
‥‥あの判決から 6年たった、今年。 ついに、執行されたのだ。 彼女の死刑が‥‥な。 つい、先月のことだ。 |
成: | し‥‥”死刑”‥‥‥ |
御: |
キミには、いろいろなイミで ショックかもしれないな。 ‥‥しかし。 これで、わかっただろう? 彼女が、事件に関わるなど あり得ない。 死者は、よみがえることなど ないのだから。 |
成: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ (死者は、よみがえらない‥‥ 本当に、そうなのだろうか‥‥) ‥‥御剣。ひとつ、 知らないことがあるみたいだな。 |
御: | なんだ? |
成: |
美柳 ちなみとあやめさんの 母親のことだ。 |
御: | ははおや‥‥? |
成: |
‥‥綾里 キミ子、という。 倉院流霊媒道、分家の霊媒師だ。 |
御: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 倉院流霊媒道、だと‥‥? |
成: | し‥‥知ってるのか? |
御: |
モチロンだ。 ‥‥あの、インチキ霊媒師! |
成: | (インチキ‥‥?) |
御: |
17年前‥‥ もう1つの、悪夢だ。 私が巻きこまれた、あの事件は 手がかりがいっさい、なかった。 打つ手をなくした警察は‥‥ ある霊媒師を連れてきた。 ”家元”と名乗ったその女は、 被害者の霊を呼び出した‥‥ ‥‥しかし! その結果! 無実の男が、 罪に問われることになった! その霊媒師のチカラが、 インチキだったからだ! |
成: | ‥‥御剣‥‥ |
御: |
今でも、警察の資料室に行けば、 その記録は眠っている。 <<DL6号事件>>という 分類ナンバーでな! |
成: |
(そうだった‥‥ こいつは、あの事件の 被害者だったんだな‥‥) ‥‥御剣。 いつか、おまえにもわかるよ。 倉院流霊媒道が、 インチキかどうか‥‥ |
成: |
そろそろ、ハッキリさせましょう。 事件当夜の、あなたの行動を‥‥ |
あ: | ‥‥‥‥‥‥‥ |
成: |
あなたは、事件が起こるまで 葉桜院の部屋にいたと言ってます。 今でも、その主張は 変わりませんか? |
あ: |
え‥‥ええ。 まちがいありませんわ。 |
成: |
あやめさん。‥‥ぼくは、 あなたが無実だと信じています。 だから、あなたの言うことも 信じたい。‥‥でも。 事件当夜、あなたを別の場所で 目撃した人物がいるのです! |
成: | もちろん、ビキニさんです。 |
あ: | 毘忌尼‥‥さま‥‥ |
成: |
今日の法廷で、彼女は ハッキリ証言しています。 |
毘: |
『あの晩、オバサンは<<奥の院>>で 修験者さまの修行を手伝ってたの。 でも‥‥こう見えて、オバサン。 コシが悪いのよ。暴力的なまでに。 だからね。あやめにアトを任せて、 葉桜院に帰ってきたワケ。』 |
成: |
‥‥ビキニさんは、ただ あなたを”見た”だけじゃない。 真宵ちゃんの修行について、 ”会話”をしているんです。 ‥‥つまり! あやめさん! あなたは、 奥の院に行ったことになります! |
あ: | ‥‥おみごとですわ、成歩堂さま。 |
あ: |
あの晩、修験者の<<本行>>は 10時すぎに始める予定でした。 だから、私‥‥遅れないように、 葉桜院を出たんです。 |
成: |
それは‥‥何時ごろの ことでしたか? |
あ: |
そ、そうですね‥‥ 葉桜院から奥の院まで、歩くと 20分ほどかかりますから‥‥ 9時40分ごろ、だと思います。 |
成: |
‥‥‥‥‥‥‥‥ あやめさん。やっぱり あなたに、ウソは似合いませんね。 |
あ: | え‥‥ |
成: |
葉桜院を9時40分に出た‥‥ そんなことは、あり得ません! |
成: |
‥‥あなた自身が 証言しているじゃないですか。 事件当夜、午後10時‥‥ <<消灯の鐘>>を鳴らした、って。 |
あ: | あっ‥‥! |
成: |
だいいち、その鐘を鳴らす直前‥‥ あなたは葉桜院で、 決定的な証人に目撃されている。 |
あ: | そ、それは‥‥? |
成: | ぼくですよ。 |
あ: | 成歩堂さま‥‥ |
成: |
あの晩、ぼくたちは 少し話をして‥‥ あなたはぼくに、コイツを くれたじゃないですか。 ‥‥お忘れですか? |
あ: |
‥‥‥‥‥‥‥‥ そうでした、わね‥‥ |
成: |
‥‥あやめさん。 また1つ、ナゾが増えましたね。 事件当夜の、午後10時‥‥ あなたは、同時に 2カ所に存在したことになる! |
あ: | ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
成: |
どうやら、あやめさん。 コタエを出すときが来たようです。 ぼくは今までに、 2つのことを立証しました。 ‥‥事件当夜、あなたは 奥の院にいた。 そして、同時に‥‥ 葉桜院で、鐘を鳴らしていた! ‥‥このムジュンを説明する コタエは‥‥1つしかない! |
成: |
あの晩‥‥あなたは、 2つの場所で目撃されています。 それならば‥‥ あなたは、”2人いた”。 ‥‥そう考えるしかありません。 |
あ: |
そ、そんな‥‥そんな! どうして、そうなるのですか! わ、私が‥‥ふたりなんて。 あ、あ‥‥あり得ませんわ! |
成: |
それが、”あり得ない”か どうか‥‥? あなたの動揺ぶりが、 ハッキリ物語っています。 |
あ: |
う‥‥っ! ‥‥私が、もう1人いた。 そうおっしゃるのであれば‥‥ その証拠を、お見せください! もう1人の<<私>>がいた、証拠を! |
成: |
‥‥あやめさん。もう‥‥ すべて、わかっているんです。 あなたには、お姉さんが いるそうですね。‥‥双子の。 |
あ: | あ‥‥ッ! |
成: |
‥‥美柳 ちなみ‥‥ ぼくも、よく知っているひとです。 |
あ: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ そこまで、ご存じでしたか。 さすが、成歩堂さまですね‥‥ ‥‥でも。あの方は‥‥もう。 |
成: |
ええ。わかっています。 先日‥‥‥ 死刑が執行されたそうですね。 |
あ: | ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
成: | おキノドクです。 |
あ: | ‥‥ありがとうございます。 |
成: |
あやめさん。もう 説明の必要はありませんね。 事件当夜‥‥この霊場に現れた ”2人目のあなた”は‥‥ この<<美柳 ちなみ>>だった! |
あ: |
で、でも‥‥お忘れですか? 成歩堂さま。 彼女は‥‥ もう、亡くなっていますのよ? |
成: |
あなたこそ、お忘れですか? あやめさん。 ここは、霊行道場だそうですね。 あの、倉院流霊媒道の。 |
あ: | ‥‥‥! |
成: |
‥‥だれかが、あの晩‥‥ 美柳 ちなみを霊媒したのです! ‥‥あなたは、それを知っていた。 だから‥‥‥それを <<秘密>>にしようとしたのです! |
あ: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ きゃああああああああッ! |
あ: |
私は‥‥あの晩、 葉桜院の部屋におりました。 奥の院で、もう1人の私が 目撃されたと聞いて‥‥ すぐに、お姉さまだと わかりましたの。 先月‥‥お亡くなりになった ちなみさま、だと‥‥。 |
成: |
(やっぱり‥‥ 事件当夜、奥の院でビキニさんが 見た<<あやめさん>>は‥‥ 美柳 ちなみだったんだ!) ‥‥なぜ! すぐに 教えてくれなかったんですか! |
あ: |
そ、それは‥‥‥‥ お姉さまのなさることは、 いつでも、正しいからですわ。 |
成: | なんですって‥‥? |
あ: |
それに‥‥私に、お姉さまを ジャマすることはできませんの。 だって、私は‥‥ うらぎりもの、なのですから。 |
成: |
う‥‥”うらぎりもの”‥‥ あなたが、ですか? |
あ: |
だから‥‥私。有罪になっても しかたがないんです。 |
成: |
(ど‥‥‥ どういうことだ、いったい‥‥) |
あ: |
成歩堂さま‥‥ご存じですね。 今から10年ほど前。この吾童山で 起こった、狂言誘拐事件を‥‥ |
成: | ‥‥‥! |
あ: |
‥‥あの事件がキッカケで、 運命は、大きく狂ってしまった‥‥ お姉さまは、次々に罪を重ね‥‥ ついには、命を落とすことに‥‥ すべては‥‥この私が ウラ切ったせい、なのです。 |
成: | あ、あやめさんが‥‥? |
あ: |
身代金の受け渡し場所に、吾童山が 選ばれたのは、偶然ではなかった。 最初の計画では、私が‥‥ お手伝いするはずでしたの。 |
成: | ‥‥なんですって! |
あ: |
でも‥‥私、コワかった。 だから、逃げてしまったのです。 |
成: |
な、何を言ってるんですか! 協力しないのは、当然ですよ! 2億円を奪うなんて‥‥それも、 自分の父親から! 最低です! |
あ: |
でも‥‥私、一度は 協力するとヤクソクしたのです。 それに‥‥ お姉さまは、2億円が ほしかったわけではありませんの。 |
成: | え‥‥‥ |
あ: |
あの、誘拐は‥‥ 私たちの父への復讐だったのです。 |
成: | ふ‥‥<<復讐>>ですって‥‥? |
成: | お父さんへの‥‥復讐? |
あ: |
そうです。おかあさまを捨てて 地獄へ追いやった、あの男への‥‥ |
成: |
(”おかあさま”‥‥ 綾里 キミ子のこと、か‥‥) |
あ: |
私たち双子は、倉院流本家・ 長女の娘として生まれました。 当時の倉院流は、政財界とつながり が強く、家元の権力は絶大でした。 長女であるおかあさまは、 家元の座が約束されていたのです。 私たちの父は、そのチカラを 手にするため、母に近づいた。 でも‥‥その思惑は、 大きくハズれることになります。 ‥‥おかあさまは‥‥妹に、 家元の座を奪われてしまった。 |
成: |
(それが、綾里 舞子さん‥‥ 真宵ちゃんの母親、か) |
あ: |
やがて、倉院流霊媒道の神通力も、 地に落ちる日が来ました。 新しい家元・綾里 舞子が、 大きな失敗をしたからです。 それが‥‥<<DL6号事件>>。 あの事件のあと‥‥ 父は私たちを連れて、 おかあさまと里を捨てたのです。 『もう、こんなイナカにいる理由は 何もない』‥‥そう言って‥‥。 |
成: |
そのとき‥‥あやめさんは この葉桜院に来たんですか? |
あ: |
ええ。‥‥父の再婚相手には、 すでに勇希という娘がいました。 新しい家族の中に、私の席は もう、なかったのです。 |
成: | ‥‥そうだったんですか‥‥ |
あ: |
それ以来‥‥おかあさまには 会っておりません。 家元の座を追われ、 家族には捨てられて‥‥ 身もココロも、ボロボロになった ‥‥そんなウワサを聞きました。 |
成: |
(‥‥どうやら‥‥ やっと、見えてきたな‥‥) |
冥: |
‥‥検事という立場上‥‥ すべて、聞かせてもらったわ。 この事件‥‥ すべては、綾里家の物語を 舞台にした事件だったのね。 |
成: |
‥‥そうみたい、だね。 ‥‥あやめさん。もう1つだけ‥‥ 教えてほしいことがあります。 |
あ: | なんでしょう‥‥? |
成: |
お姉さん‥‥美柳 ちなみが 弁護士に毒を盛った事件で‥‥ 彼女は、証拠品をかくすために、 ある男子学生と交際を始めました。 その学生について‥‥ 何か、聞いていませんか? |
あ: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ おっしゃってましたわ。 ‥‥ヒトコトだけ。 ”うっとうしいヤツ”‥‥と。 |
成: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ そうですか。 ‥‥ありがとうございます。 |
あ: | どういたしまして‥‥。 |
冥: |
さあ、急ぐの、成歩堂 龍一! まだ、調べることがあるはずよ。 |
あ: |
この錠は、おまかせください。 かならず、解除いたします。 |
成: |
‥‥おねがいします。 (とにかく‥‥今は前へ進もう! まだ、1つ‥‥ <<秘密>>が残されている。 ‥‥そう。春美ちゃんの <<サイコ・ロック>>が‥‥) |