成歩堂 龍一…黒 | |
御剣 怜侍…茶 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
裁判長…緑 | |
宝月 茜…桃 | |
宝月 巴…藤 | |
巌徒 海慈…紫 | |
罪門 恭介…紺 | |
市ノ谷 響華…水 | |
原灰 ススム…黄 |
留置所 面会室 | |
茜: |
でも‥‥あたし。ほんの 少しだけ、安心しちゃいました。 だって、多田敷刑事さんを刺した ハンニン、つかまったんでしょ? |
成: |
ええと‥‥。まあ、そうなのかな。 (ギロンするのはやめておこう。 ‥‥こんがらがるばかりだ) |
茜: | な‥‥、なんですか? 今の‥‥ |
?: |
‥‥だから! 本官はあの。 加害者というのはどうかとその! ‥‥むしろ! 本官はこの。 被害者というべきであるとその! ‥‥あ。ど、どうも! こんにちはッ! ‥‥であります! |
茜: | あ、あなたは。たしか‥‥ |
警: |
『スミマセン! 御剣検事ってヒト、 いらっしゃるでありますかッ! 本官! 警察局長のお使いで本官! 報告書を持ってきたでありますッ!』 |
茜: |
へえー。おまわりさん、 留置所の看守だったんですか? |
警: |
いえッ! 本官、アレであります! 子羊のような巡査でありましてッ! |
茜: |
あ、わかった! 今日は、こっちに 報告書を届けに来たんですね? |
警: |
い。いやその本官。あの。 なんというかこの、本官その。 |
成: |
(ま‥‥‥まさか‥‥‥) もしかして、あなたが‥‥ 多田敷 道夫捜査官を? |
警: |
は‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ハンニンの原灰(はらばい)巡査で ありますからしてェェェェェェッ! |
茜: |
え‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ええええええええええええええっ! |
成: | (これは‥‥予想外の展開だな) |
原: |
本官! 本来は、総務課の 巡査でありますからしてェェェッ! |
成: |
きき、聞こえてますから、 フツーにおねがいします! |
原: |
‥‥あの日、たまたま用があって 証拠保管室へ行ったところ‥‥ 保管室前の警備室が、 カラっぽだったのであります。 |
茜: |
つまり‥‥いつもは、保管室は 警備員が見張っているんですね? |
原: |
なにぶん証拠保管室は、証拠を 保管しているでありますから。 保安課の巡査‥‥罪門巡査が 警備を担当しているでありますッ! |
成: | (ざ、ザイモン‥‥?) |
原: |
それで、本官。ふと警備室の モニターを見たら‥‥ 保管室にその。いわゆる不審者が。 そう! 不審者を見たであります! 不審者ッ! あいててててててててててッ! |
成: | (ナニやってんだ、このヒト‥‥) |
茜: | それで、どうなったんですか? |
原: |
その後は、本官‥‥カーッとこう、 アタマがまっ白になっちまって。 ‥‥フト気がついたら、今日。 こうして留置所に。 |
成: |
(長すぎるだろ! まっ白の時間が‥‥) |
茜: |
あの‥‥ところで。 その手、どうなさったんですか? |
原: |
はッ! 本官。ホータイを 巻いてくれるヒトもいないので! 自分なりにこう、グルグルとコレ、 巻いてみたのであります! |
成: |
(手に包帯といえば‥‥ ともえさんといっしょだな‥‥) |
茜: |
‥‥どこまでも”同時”ですね。 警察局と、検事局の事件‥‥ |
成: |
とにかく‥‥聞かせてください。 その手のケガについて。 |
成: |
あの。失礼ですけど、 ハンニン‥‥なんですよね。 多田敷 道夫捜査官を、 証拠保管室で殺害した‥‥ |
原: |
本官を‥‥‥そんなカナしい目で 見つめないでほしいでありますッ! ヒトを、あえて”被害者”と ”加害者”にくくるとすればッ! さしづめ本官などは かなり”被害者”のほうに‥‥ |
成: |
いやいや! こうして つかまってるワケじゃないですか。 |
原: |
は。まあ。たしかに。まあ。 本官アレなんでありますけれども。 |
成: |
被害者の多田敷捜査官とは、 知り合いだったんですか? |
原: |
その! ヒトをあえて”他人”と ”赤の他人”にくくるとすればッ! さしづめ本官などは、 ”まっ赤”寄りでありましてェェ! |
成: |
つ、つまり‥‥ 知らなかったワケですか? |
原: |
本官、日の当たらない部署で 働いているでありますからして。 捜査官のカタに、知り合いなど いないのでありますからして! |
茜: |
じゃあ‥‥なぜ、知らないヒトを 刺しちゃったんですか? |
原: |
だ、だから本官! 殺すつもり なんて、なかったであります! というか本官! 殺したつもりも ないのでありますからしてェェッ! |
成: |
(やれやれ‥‥ コンランしてるみたいだな) |
成: |
その、手‥‥やっぱり、 事件があったときに? |
原: |
まあそのコレ本官ンンンンッ‥‥‥ ‥‥ジツは、そうでありまして。 |
茜: |
ダメじゃないですか! ちゃんと、自首しなくちゃ。 |
原: |
だって! 本官、でも。だって! しかたなかったでありますッ! |
成: | しかたなかった‥‥? |
原: |
じつは本官、アレ! アレであります本官からしてッ! 捜査官殿にナイフを向けられて、 ”わー”ってなっちゃって。 気がついたら、キゼツ していたのであります! |
成: | き、キゼツ‥‥ |
原: |
そして、本官。同僚の巡査に たたき起こされたでありますが‥‥ 保管室には、ダレもいなかった! 本官、なんとヒトリぽっち! 多田敷捜査官殿は‥‥ 消えたのでありますからしてェッ! |
茜: | えええッ! |
原: |
フト気がつけば、手ェから どくどく血がコレ本官! さみしかったでありますッ! ‥‥本官、ジツにコレッ! |
成: |
(被害者の死体が‥‥ ”消えた”‥‥?) |
茜: |
‥‥ううん。 ビミョーな話ですねえ‥‥ |
茜: |
あの‥‥これ。 見ていただけますか? |
原: |
‥‥‥‥‥‥‥‥ あ、ソレッ! ソレであります! ソレ、本官。 ソレでありますからしてェェェッ! |
茜: | な‥‥ナニ。なんですか! |
原: |
今、このシュンカンまで‥‥本官の アタマ、まっ白でありました! しかし、すべて本官! ここに今、 本官。思い出したでありますッ! |
成: |
”思い出した”‥‥って、 事件のコト、ですか? |
原: |
そうです! いわゆる本官、 ソイツのせいで、こんな目にッ! |
茜: | この、IDカード‥‥ですか? |
原: |
そうであります! ジツに、そうなのであります! ある種、そう言わざるを得ない のでありますからしてェェェェッ! |
成: |
(‥‥詳しく 聞いてみたほうがよさそうだな) |
成: |
”思い出したこと”‥‥ 聞かせていただけますか? |
原: |
本官‥‥なにぶん総務課の、迷える 子羊のような巡査でありますから。 保管室にいた多田敷捜査官殿は、 存じ上げなかったであります。 |
成: |
だから‥‥”不審者”だと 思いこんだワケですか‥‥ |
原: |
保管室に入った本官は、IDカード の提示を求めたであります! |
茜: |
なんだ。やるべきコト、 キチンとやってるじゃないですか! |
原: |
そ、そうなんであります! 本官! それが言いたかったであります! |
成: |
それで‥‥IDの提示を求められた 多田敷捜査官は? どうしました? |
原: |
なんとッ! いきなり、本官に ナイフを向けたであります! |
茜: | え‥‥! |
原: |
本官。もう、ナニがなんだか わからなくなって。 奇声を上げて、飛びかかって いっちゃったであります! |
成: |
(多田敷捜査官が‥‥ ナイフを向けてきた?) |
原: |
『やられる前に、やれ!』‥‥ 原灰家の家訓でありますからして! |
茜: | そ。それから、どうなりました! |
原: |
それから‥‥ 本官。アタマがまっ白になって。 気がついたら、ここに。 |
成: | (やれやれ‥‥) |
茜: |
ケッキョク‥‥ハラバイさん、 どうしてタイホされたんですか? |
成: | どういうこと? あかねちゃん。 |
茜: |
ちょっと、情報を 整理してみましょうよ。 ハラバイさん、多田敷さんのカオを 知らなかったんですよ。そして‥‥ 現場で会った”被害者”は、 IDを提示してくれなかった。 |
成: |
つまり‥‥それが”ホンモノ” だったかどうか、わからない‥‥ |
茜: |
それに、死体が証拠保管室から ”消えた”ってコトは‥‥ そもそも、ホントに死んだのか どうかもわからないハズです! |
原: |
そう! それ、本官。それ! それを言いたかったであります! ‥‥っていうか、それに近いコトを 言ってみたであります。 |
茜: |
え! ‥‥でも。結果的に、 ここにいるワケですよね。 |
原: |
本官。言われちゃったであります。 なんでも、あの日。あの時間‥‥ 多田敷捜査官殿が証拠保管室に 入ったのは、マチガイないとか。 |
成: |
でも‥‥あなたのキオクは ハッキリしないんでしょう? |
原: |
でも‥‥ハッキリ。 映っていたでありますからねェ‥‥ |
茜: | え。”映っていた”‥‥? |
原: |
防犯カメラであります。 本官のニクむべき犯行が、すべて! 録画されていたでありますッ! |
成: | ‥‥‥‥‥‥ |
茜: | ‥‥‥‥‥‥‥‥‥ |
原: | ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ |
茜: | それを先に言ってくださいッ! |
原: |
ハッ! 本官、その。アレ。 メンボクないでありますからして! |
成: |
(やれやれ‥‥とにかく、 現場を調べないとな) |
警察署内 刑事課 | |
茜: |
あ‥‥あれ。成歩堂さん! カチョーさんの席‥‥ |
成: | (あれは‥‥ガント局長?) |
巌: |
‥‥ホント、コレだけよね? カチョーちゃんさ。 見落としがあるとね。 トンでもないコトになるから。 |
課: |
はっ! たぶんおそらく、 もーカンペキでありますッ! 机の引き出しもロッカーもゴミ箱も カバンもポケットもボウシのウラも ザブトンのウラもパソコンのウラも 湯飲みの中も調べたでありますッ! |
巌: |
‥‥そ。じゃ、もし何か出たらさ。 すぐにね。連絡くれるかな。 |
課: |
は、は‥‥ははははあッ! も一度! 調べてみるですッ! |
成: |
(‥‥課長さん、 みっともなく舞い上がってるな) |
巌: |
‥‥あれェ、ナルホドちゃん! どうよ、最近。泳いでる? |
成: |
はははあッ! ガント局長殿ッ! ごくろーさまですッ! |
茜: |
なんで成歩堂さんが ケーレイしてるんですかっ! |
成: |
あの‥‥大丈夫ですか? 御剣のヤツ‥‥ |
巌: |
あー。御剣ちゃん。 今ね、アレ。検事局の査問会。 |
茜: |
”さもんかい”って‥‥ 不吉なヒビキですね。 |
巌: |
カレもホラ。イロイロあったから。 年末からこっち。イロイロ、ね。 |
成: |
もしかして‥‥あの。 ひょうたん湖の事件ですか? |
巌: |
ま。御剣ちゃん自身が被告人って いうのもシャレにならないケド。 ナルホドちゃんが有罪にした ヒト、いたでしょ? |
成: | (‥‥狩魔検事‥‥) |
巌: |
40年間無敗をホコった、 検事局の”生きる伝説”‥‥ アレが”ねつ造”ってコトに されちゃったでしょ? キミにさ。 |
成: |
い、いやいや! ベツに、 ぼくがワルいわけでは‥‥ |
巌: |
とにかく、今。アチラさん タイヘンなのよ。検事局ね。 信頼を回復するためなら、 なんだってやっちゃうよ。 査問会しだいでは‥‥ アブナイね。御剣ちゃん。 |
茜: | そ‥‥そんな! |
巌: |
いやー。さすがにコマっちゃうね。 同時でしょ? 向こうさんと。 |
成: | (検事局、か‥‥) |
茜: |
でも! そんなの、カガク的に あり得ないじゃないですか。 |
巌: |
でも! ‥‥今のところさ。 そう言ってるワケ。証拠がね。 ”多田敷ちゃんは、2つの場所で 同時に刺された”‥‥って。 |
成: | その”証拠”というのは‥‥? |
巌: |
お。ちょっとそれは。 カンベンしてよ、ナルホドちゃん! そのヘン、ビミョーでさあ。 ワルいけど、言えないの! |
成: |
(まあ‥‥ そうかもしれないな) |
巌: |
ボクね。隠しゴトみたいなの、 キライなワケ。コレ、ホントに。 ‥‥だから。カチョーちゃんにも キビしく言ってあるんだけどさ。 |
茜: |
あ。そういえば、いじめてましたね ‥‥カチョーさんのコト。 |
巌: |
あ。やだなー。 アレ、見てたの? あはは。 |
成: |
(カチョーさん‥‥ 何をたのまれたんだろう?) |
茜: |
ちょっと、コッソリ 聞いてみましょうよ! |
課: |
やれやれ‥‥みっともないトコ、 見られちゃった。 |
茜: |
あの。何をたのまれたんですか? 局長さんに。 |
課: |
いやね。そこにホラ。被害者の 多田敷クンの席があるんだけど。 手がかりになりそうな遺留品を、 ゼンブ提出しろ、って。 ゴミ箱のゴミまで、ゼーンブ 持っていっちゃったよ。 |
茜: |
じゃあ、もう多田敷さんの遺品、 ここにはないんですね。 |
課: |
モチロン。 残ったのは、コイツだけだよ。 |
茜: | 残しちゃダメじゃないですか! |
課: |
だってこれ、 書類の書きそこないだから。 <<遺失物届>>‥‥途中までしか 記入されてないしね。 |
茜: |
”いしつぶつ”‥‥ 何か、なくしたんだ。多田敷さん。 |
成: |
書類の日付は‥‥2月21日、か。 (いちおう、記録しておこう) |
データを法廷記録にファイルした。 | |
成: |
(‥‥とにかく なんとかして、 現場を調べないとな‥‥) |
成: |
あの‥‥ところで。 おねがいがあるんですけど。 |
巌: |
あ。ナニ? めずらしいね、 ナルホドちゃん。おねがいなんて。 |
成: |
<<証拠保管室>>の調査を させてもらえませんか? |
巌: | あのさ、成歩堂ちゃん。 |
成: |
あ。すみませんでしたッ! ケッコウでありますッ! |
巌: |
‥‥ボクさ。そんなね。 ケチなオトコじゃないワケ。 |
成: | え。 |
巌: |
ダレにたのまれても、 5000円までなら貸すし。 ‥‥ぜんぜんモンダイないよ。 好きに調べてくれていいから。 |
茜: | 言ってみるモンですねー。 |
巌: |
じゃ、そこのおじょうちゃん。 コレ。貸してあげるから。 |
茜: |
あ‥‥それ! 刑事さんの IDカード‥‥ですか? |
巌: |
お客さん用のトクベツだから。 なくさないでね。 |
茜: |
は‥‥はいッ! 光栄でありますッ! |
巌: |
‥‥ま。とにかく、がんばってよ。 じゃ。またね。 |
茜: |
へへ。ムネにつけちゃった。 ホンモノですよ! |
成: | うれしそうだね。ものすごく。 |
茜: |
本官が入れてあげますからしてッ! ‥‥証拠保管室。 |
成: |
(‥‥ヘンな影響を 受けているみたいだな) |