成歩堂 龍一…黒 | |
御剣 怜侍…茶 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
裁判長…緑 | |
宝月 茜…桃 | |
宝月 巴…藤 | |
巌徒 海慈…紫 | |
罪門 恭介…紺 | |
市ノ谷 響華…水 | |
原灰 ススム…黄 |
裁: |
静粛に! 静粛に! こ、これは、いったい‥‥ッ! |
成: |
カンタンなコトです。 事件当時、被害者の保管庫には ロックがかかっていなかった! |
御: |
しかし! 保管庫のロックは、 電子システムで管理されている。 トビラが閉められたら、 それをセンサーが感知して‥‥ 自動的にロックされる 仕組みになっているのだ! |
裁: |
あ。もしかして、故障では! あくまで、シロート考えですが。 |
御: |
あり得ぬ。故障ならば センサーが感知して、報告が入る。 |
裁: |
シロートはダマっておけ、 ということですな。 ‥‥弁護人。いかがでしょう。 |
成: | は、はい。 |
裁: |
なぜ、保管庫にはロックが かかっていなかったのですか? |
成: |
え! ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ あの、ぼく。 そういうのはちょっと‥‥ どう思う? カガク捜査官の あかねちゃんは。 |
茜: |
え! そ。そうですね‥‥ やっぱり、電子システムを狂わせる ”何か”があった、のかなあ‥‥ |
成: |
(保管庫のセンサーを狂わせた、 ”何か”‥‥そういえば この映像に‥‥まだ、 不自然な部分があったな) |
茜: |
あ。あたしも、そう思いました! この中にはまだ、手がかりが 眠っているような‥‥ |
裁: |
それでは‥‥もう一度。 保管室の映像を検証しましょう。 ロックがかかっていなかった‥‥ その<<原因>>を示してください! |
成: |
映像を見ていただきましょう。 先ほどの<<つづき>>です。 |
裁: |
‥‥こ、これは‥‥ 保管庫から、何か白いモノが 落っこちましたぞ! |
原: |
しかしッ! トビラが開けば、 中のモノは落ちるのであります! 自分も、パトカーのドアが開くと、 よく地面に転がり落ちるコトがあり |
成: |
あれが保管庫の”中”にあったか どうか‥‥わかりませんよ。 |
裁: | どういうコトですか? |
成: |
保管庫は”トビラが閉まったとき” センサーが反応する‥‥ そのとき。センサーの部分に、 何か挟まってしまったら? |
裁: | は‥‥はさまった‥‥? |
成: |
‥‥この”何か”は、保管庫の ”中”に入っていたのではない。 トビラの、センサーのあいだに ”挟まっていた”のです! |
原: |
あ、それ、ハイ本官! よくわかるであります本官! ジツはパトカーから降りるとき。 3回に2回はネクタイを挟んで。 トビラは閉まらないわ、 クビはしまるわコレ |
裁: |
しかし! トビラに挟まるなら、 相当ウスいモノですぞ‥‥? |
御: |
さらに、電流を通さない‥‥ ”絶縁体”である必要がある。 |
裁: |
そう! ゼツエンタイです! そんなものが、あの現場に‥‥ |
成: | ‥‥あったかもしれません。 |
原: |
えッ! でも本官、あの! まず、ゼツエンタイのイミがコレ |
成: |
(どうやら‥‥やっと、 わかってきた気がするな) |
裁: |
それでは‥‥弁護人! 証拠品を提示してください! 保管庫のトビラに挟まっていた ”絶縁体”‥‥その正体とは? |
成: |
保管庫の近くで見つけました。 ‥‥ウスい、ゴムの手袋です。 |
裁: |
しかし、それが被害者の保管庫に あったものかどうか‥‥ |
成: |
手袋には<<SL9号事件>>の タグがついています。 |
御: | ‥‥! |
成: |
たしかに、映像では多田敷捜査官が 保管庫を開けたように見えました。 しかし、そうではなかった! ランプの点灯が立証しています! 事件当時! このぼくでも、 あの保管庫を開けることができた! いかがですか、ハラバイ巡査ッ! |
原: |
あ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ありましてぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ! |
裁: |
静粛に! 静粛に! 静粛にィッ! この証人が、保管室で刺した ”被害者”は‥‥ 多田敷巡査とは、別人だった。 そう考えるべきなのでしょうか‥‥ |
御: |
‥‥まどわされてはいけない、 裁判長。 |
裁: | み、御剣検事‥‥? |
御: |
弁護側はただ、可能性を 示したにすぎない。 映像に映った”被害者”は やはり、多田敷 道夫だった‥‥ 検察側は、もう1つ。 そのコンキョを用意している。 |
成: | な‥‥なんだって! |
御: |
‥‥証人。その件について、 証言するのだッ! |
原: |
え! 本官、でありますかコレ! でも本官その。心当たりがコレ。 ありませんのでありますからして。 |
御: | ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ |
原: |
あ。ああ! そういえば! ありましたでありました、アレが! |
成: | (タイヘンだな、アイツも‥‥) |
裁: | それでは、証言をおねがいします。 |
原: |
『あれが多田敷捜査官殿だという コンキョは、もう1つあります!』(証言1) 『そもそも、保管室に入るためには IDカードが必要でしてコレ!』(証言2) 『そして、IDカードを使うと、 シッカリ記録が残るのであります!』(証言3) 『事件が発生した、まさにその時刻! 捜査官殿、カードを使ってますッ!』(証言4) |
裁: | IDカードの記録‥‥なるほど。 |
御: |
‥‥ここに、そのデータがある。 5時14分に使用されたID‥‥ まさしく、被害者のものだ。 |
裁: |
事件が発生する少し前‥‥ですか。 たしかに、被害者です。 それにしても‥‥ 少し、妙ですな。 <<申し送り>>では、数百件におよぶ 事件が扱われるはずです。 いくら午後だけとはいえ、ヤケに 出入りが少ないようですが‥‥? |
御: |
‥‥この保管庫がある第3庫には、 特殊な事件のみが集められている。 |
成: | とくしゅ‥‥? |
御: |
‥‥警察関係者が巻きこまれた、 大キボな凶悪犯罪、だ。 |
茜: |
ううう‥‥聞いただけで ゾクゾクしますね! |
成: |
(たしかに、ゾクゾクするな‥‥ サム気が) |
御: |
件数が少ない上、ほとんどは 午前中のうちに処理されたハズだ。 |
裁: |
なるほど‥‥わかりました。 それでは、尋問に移りましょう。 |
成: | ちょっと待ってください、証人。 |
原: |
なな、なんでありますか! 巡査は急に止まれないであります! |
成: |
ここに、被害者の IDカードがあります。 ‥‥殺害現場に落ちていました。 |
裁: | それは、そうでしょう。 |
成: |
ぼくの言う”殺害現場”は‥‥ 警察局の保管室ではありません。 検事局の、地下駐車場‥‥ もう1つの”事件”の現場です! |
御: | ‥‥‥‥‥‥ |
成: |
そして‥‥ もう1つ、証拠があります。 被害者のIDカードに関する、 重要な手がかりです。 |
裁: |
<<遺失物届>>‥‥ですか。 途中までしか書かれていませんが。 |
成: |
事件の当日、多田敷捜査官は ”何か”をなくしているのです。 書類を提出しなければならない、 重要な”何か”を‥‥ |
御: |
それが‥‥<<IDカード>>だと 言いたいのかな? 弁護人。 |
成: |
断言はできませんが‥‥ 可能性は、きわめて高い! ホンモノの多田敷さんは、あの日。 IDカードを持っていなかった! |
裁: |
静粛に! 静粛に! つまり‥‥どういうコトですかッ! |
成: |
‥‥コタエは1つ。 考えるまでもありません! ハラバイ巡査が、証拠保管室で 出会った人物は‥‥ 多田敷捜査官からIDを盗んだ、 <<別人>>だったのです! |
裁: |
静粛に! 静粛に! 静粛にィッ! いかがですか、御剣検事ッ! |
御: |
‥‥‥‥‥‥‥‥ ヒトコトだけ。 弁護士に言いたいことがある。 |
成: | ‥‥‥? |
御: |
ゴクロウだった‥‥ 成歩堂 龍一。 |
成: | な。なんだって‥‥? |
御: |
ここで、一度。 弁護側の主張を整理してみたい。 ‥‥事件当日の、 午後5時15分ごろ。 証拠保管室にて原灰巡査が出会った のは、多田敷捜査官ではなかった。 ‥‥そのコンキョは、2つ。 1つは、保管庫のロックが かかっていなかったこと。 そしてもう1つは、被害者が IDカードをなくしていたこと。 ここまでは、まちがいないな? |
成: |
は、はい‥‥ (なんだ? このフンイキ‥‥) |
御: |
すると‥‥必然的に、1つの <<結論>>がみちびきだされる。 この映像に映った”被害者”が ニセモノであるならば‥‥ 当然、<<証拠保管室の殺人事件>> 自体、ニセモノだった。つまり! カメラの映像は、”殺人の瞬間”を とらえたモノではなかった! |
成: |
えッ‥‥! あ、あれ。 そう、なっちゃうのかな‥‥ |
御: |
‥‥どうしたかな? 弁護人。 さっきまで、あんなにイキイキと 人さし指をつきつけていたのに。 |
成: | ‥‥うううう‥‥ |
御: |
どうやら‥‥ やっと気づいたようだな。 自分が”何を”証明したか‥‥ |
裁: | どういうことですか、御剣検事! |
御: |
そこの弁護士は、チカラいっぱい 立証してくれたのだよ。 この映像の被害者が ”ニセモノ”である以上‥‥ 事件当日の、午後5時15分。 警察局で、殺人事件はなかった。 |
裁: | あ‥‥‥ |
御: |
つまり。本当の事件は、やはり! 検事局の地下駐車場で起こった! そして、そのハンニンは‥‥ 宝月 巴。被告人なのだッ! そのコンキョは シンプルにして、明白ッ! 信頼できる証人によって、凶器を 振るう瞬間を目撃されているッ! |
成: | ぐあああああああああああああッ! |
成: |
(さっきの証言‥‥不自然なほど ハッキリ”ムジュン”していた。 ”ワナ”だったんだ! 最初から、すべて‥‥) |
裁: |
たしかに、証拠保管室の事件には ナゾが残されています。 原灰巡査が出会った”被害者”は、 いったいダレだったのか? また、その”被害者”は、 どこへ消えたのか‥‥? ‥‥しかし。 本法廷はあくまで、多田敷捜査官の 殺害事件のみ、審理すべきです。 |
御: | ご理解、カンシャする。 |
茜: |
な、成歩堂さん! このままじゃ、お姉ちゃんが‥‥! |
成: |
(‥‥どうする! この先に ”道”はあるのか‥‥?) |
成: | お待ちください、裁判長! |
御: |
なんだ? 弁護人。まさか‥‥ キサマ自身が立証したコトを、 否定するつもりではないだろうな? |
成: |
‥‥そうではありません。 あやうく、ダマされる ところだったよ。御剣検事。 |
御: | ‥‥なんのコト、だろうか。 |
成: |
さっきの尋問で、 ぼくが立証したのは、ただ1つ。 <<防犯カメラの映像は、 殺人事件の瞬間ではない>>‥‥ しかし! これが、検事局の事件と 無関係であるはずがない! ‥‥ジッサイ、証拠保管室からは 大量の血痕が発見されている! |
御: | ‥‥‥‥‥‥‥‥‥ |
成: |
弁護側は、 事実の追求を要請します! |
裁: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 御剣検事。 |
御: | なんだろうか。 |
裁: |
そういうコトになれば、 さらなる証人が必要になります。 検察側に、 その用意がありますかな? |
御: |
‥‥ザンネンながら。 検察側としては、警察局の件は あくまで、予備審理と考えていた。 ‥‥この事件に関して、 他に証人の用意はない。 |
成: |
(どうやら‥‥ ここがチャンスのようだな。 ”あの人物”を 法廷に引きずり出す‥‥!) |
茜: |
成歩堂さん‥‥ やっぱり、あのヒトを‥‥? |
成: |
‥‥裁判長。 弁護側には‥‥ 証人の心当たりがあります。 |
裁: |
ほほお‥‥ それは、いかなる人物ですかな? |
成: |
おそらく、証拠保管室の事件‥‥ その真相に深く関係する人物です。 |
御: |
‥‥その人物の名前を 聞かせてもらえるだろうか。 喚問に応じるかどうかは、 それから‥‥だ。 |
裁: |
それでは、弁護人! あなたの考えている”証人”‥‥ いったい、どなたですかな? |
成: | 罪門 恭介‥‥巡査です。 |
御: | ‥‥なぜ、その男を? |
成: |
(今、切り札を見せるワケには いかない‥‥) 彼は、保管室の警備責任者です。 ‥‥証言を聞くべきと考えます。 |
御: |
‥‥‥よかろう。 たしかに、責任者として 証言を聞くべき‥‥そう考える。 さいわい彼は、警察局内の勤務。 準備に20分以上はかかるまい。 |
裁: |
‥‥わかりました。 証人を召喚するあいだ、30分間の 休憩をとりたいと思います。 検察側は、証人の手配を よろしくおねがいします。 |
御: | ‥‥心得ている。 |
裁: |
それでは! これより、休憩に入ります! |
地方裁判所 被告人第2控え室 | |
巴: |
‥‥‥‥‥‥‥‥ やはり‥‥あなたを止めるのは 不可能ですね、成歩堂弁護士。 |
成: | ‥‥なんのことですか? |
巴: |
あなたは、罪門 恭介を喚問した。 もう、おわかりなのでしょう。 ‥‥何もかも。 |
成: |
は、はあ。 (わかってないぞ。‥‥何もかも) |
茜: |
‥‥お姉ちゃん‥‥ お姉ちゃんこそ! 何もかも知ってるんでしょ! |
巴: | あかね‥‥ |
茜: |
いつも、そうだよ。 どうして、教えてくれないの! 成歩堂さん‥‥こんなに がんばってくれてるのに。 |
巴: |
わ‥‥私は。 たのんだおぼえはありません。 |
茜: |
‥‥ヒドいよ。 あたしが‥‥あたしたちが、 そんなに信用できないの? |
巴: | ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
糸: | シツレイするッス! |
巴: | ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
茜: | ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
糸: |
あ、あの‥‥‥じゃ、またあとで。 シツレイするッス! |
成: |
あ‥‥イトノコ刑事! どうしたんですか? |
糸: |
アンタ! まったく、 シツレイしちゃうッス! 現職の刑事に使い走りさせた上、 来てみれば、この空気! |
巴: | ゴクロウさま、イトノコギリ刑事。 |
糸: |
まったく‥‥‥あ。 ああ。 あああ。 ああああ。 あああああああああああああッ! オツカレサマであります、 宝月主席検事殿ッ! |
巴: |
たしかに、最近つかれぎみです。 それで‥‥ 持ってきてもらえたかしら? |
糸: |
は。 はは。 ははは。 はははは。 はははははははははははははああ コレでありますねッ! |
巴: |
ゴメンなさい。 私、今はとらわれの身ですから。 成歩堂弁護士の名前を使って、 おねがいしましたの。 |
成: | ぼ、ぼくですか! |
糸: |
まさか、アンタから 指令が下るとは思わなかったッス。 『ちょっと、SL9号事件の資料を 持ってきてくださるかしら。 おヒルまでに』 ‥‥以上ッス。 |
成: | え‥‥<<SL9号事件>>? |
茜: | お姉ちゃん! それは‥‥ |
巴: |
弁護士に必要だろうと、 手配しておきました。 あの事件の資料です。 読んでおくとよいでしょう。 |
糸: |
自分、おどろいちまったッス。 主席検事殿も、証人だったとは! |
成: | ともえさんが‥‥”証人”? |
ファイルを受け取った。 | |
糸: |
いやー、連続殺人事件とは。 オソロシイ世の中ッスねー。 |
成: | ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ |
糸: |
お、なんスか! ヒトをアゴで 使った上、ムシッスか。 |
成: |
‥‥‥あ、あかねちゃん! どうして‥‥‥ この事件資料に、 きみの名前があるんだ? |
茜: |
え! あ、あたしの名前? し、知りません‥‥‥あ。 ま、まさか‥‥‥お姉ちゃん! <<SL9号事件>>って‥‥ |
巴: |
‥‥‥‥‥‥‥‥ それは、警察がつけた 事件分類ナンバーです。 2年前‥‥世間では。 <<青影事件>>と呼ばれていました。 |
茜: |
あ‥‥あおかげ‥‥ そんな! そんなのって‥‥! 今になって‥‥そんなの、ないよ! |
成: |
ちょ、ちょっと! あかねちゃん! (出て行ってしまった‥‥!) |
糸: |
あ、あの‥‥‥自分はこれで。 シツレイしちゃうッス! |
成: |
(罪門 恭介、市ノ谷 響華、 巌徒 海慈、御剣 怜侍‥‥ そして、ともえさんに、 あかねちゃん‥‥) ‥‥すべての関係者が、 2年前の事件に名前を連ねている。 ”グーゼン”‥‥では ありませんよね、これは。 |
巴: |
‥‥あなたならば。 いずれ、わかるかもしれません。 そろそろ時間です。 行きましょうか、成歩堂弁護士。 |
成: |
(とにかく、この資料‥‥ よく読んでおいたほうがいいな) |