成歩堂 龍一…黒 | |
御剣 怜侍…茶 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
裁判長…緑 | |
宝月 茜…桃 | |
宝月 巴…藤 | |
巌徒 海慈…紫 | |
罪門 恭介…紺 | |
市ノ谷 響華…水 | |
原灰 ススム…黄 |
地方裁判所 第9法廷 | |
裁: | それでは、審理を再開します。 |
成: |
(あかねちゃん‥‥ケッキョク、 戻ってこなかったな) |
御: |
では。事件当日‥‥ 証拠保管室の警備にあたっていた 巡査を入廷させていただこう。 |
御: | 証人。名前と職業を。 |
罪: |
大都会の荒野‥‥古い荷を負って ウシの群をかわして進む、旅人さ。 |
御: |
大通りで立ち往生したお年寄りを おぶって、交差点をわたる職業だ。 |
裁: |
あ。わかりました! ”おまわりさん”ですね。 |
罪: |
オレの名前なら‥‥サバクをわたる からっ風が、悲しく呼んでいるよ。 |
御: | セイカクには、罪門 恭介‥‥だ。 |
成: |
(御剣のヤツ、 ”からっ風”あつかいか‥‥) |
御: |
さて‥‥証人。 さっそく、うかがおう。 事件当日は、警備責任者として 証拠保管室の警備にあたっていた。 ‥‥まちがいないだろうか? |
罪: | 書類上はな。‥‥検事サマ。 |
裁: | ‥‥どういうことですかな? |
罪: |
紙キレ1枚で、荒野のならず者を シバることはできないさ。 |
裁: |
どうやら、さっさと尋問に 移ったほうがいいようです。 事件当日のことを 証言していただきましょう。 ‥‥この国のコトバで! |
罪: |
『オレのシゴトは、あの暗い墓場を 暗い目で見守るコトなのさ。』(証言1) 『1日に3回、見回りに行くキマリが あるそうだよ。‥‥関係ないがね。』(証言2) 『警備室は、2重の防犯システムで 守られて‥‥オレは必要ないのさ。』(証言3) 『事件があった時間は、たしか‥‥ 街道ぞいのサルーンにいたかな。』(証言4) 『この事件には、無関係の旅人さ。 ‥‥弾丸がないなら、帰るぜ。』(証言5) |
裁: |
‥‥どうも、あなたのタイドは 感心できませんねえ。 |
罪: |
‥‥たぶん、アンタのヒゲが 気に入らないんだろうさ。 |
成: |
‥‥ちょっと、 気になったんですけど‥‥ ”2重の防犯システム” というのは‥‥? |
罪: |
防犯カメラに、IDカードの ナンバーを記録するシステムさ。 アンタも知ってるだろ? カウボーイ。 |
成: |
あの。保管庫には、<<指紋>>の ロックもありますけど‥‥これは? |
罪: |
しもん‥‥? 聞いたことねえぜ。 |
成: | (”ねえぜ”と来たか‥‥) |
御: |
キカイに弱いというか、 使命感に弱いというか‥‥ |
罪: |
ヒトは弱いモノ、だぜ。 なあ、検事のボウヤ‥‥ |
裁: |
何やら、モンダイのありそうな 証人ですな。 それでは、弁護人。 尋問をおねがいします。 |
成: |
‥‥罪門さん。 オカシイと思いませんか? なぜ、あなたが‥‥ ここに呼ばれたのか? |
罪: | ‥‥‥‥‥‥‥ |
成: |
事件のあった時間、あなたは 警備室にいなかった‥‥ |
罪: |
‥‥だが。オレはこうして ここに呼ばれている。 聞かせてもらえるかい。 その”理由”とやらを。 |
成: |
カンタンなことです。 あなたは、現場に大きな ”足跡”を残しているのです。 ‥‥いや。セイカクには ”手”のアトですが‥‥ |
罪: |
ハッ! ヒトのハナシは 聞いておくべきさ、カウボーイ! オレは、あの墓場の番人なんだよ。 月に1回ぐらいは、墓参り‥‥ 見回りをするさ。 オレの指紋が残っているのは、 大自然のオキテ、だよ。 |
成: |
ザンネンながら、そうは行かない! なにしろ‥‥ その指紋は、 血にまみれていたのですからね! |
裁: |
しょ、証人! どういうことですか! 殺人現場に、血染めの 指紋、とは‥‥! |
成: |
血のアトは、ふき取られていた。 ‥‥しかし! ルミノール試薬によって、 ハッキリ検出されたのです! さあ証人! いかがですかッ! |
罪: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ どうやら‥‥自分のアタマで 考えるヤツは、いないようだよ。 |
成: | ‥‥! |
御: |
つまり、”セツメイできる” ‥‥そういうコトかな? その”血染めの指紋”について! |
裁: |
それでは、つづけて 証言をおねがいします! 現場に残された、あなたの ”手のアト”について! |
罪: |
『その保管庫にオレの指紋が 残っているのは、当然なのさ。』(証言1) 『そのうちのひとつが、たまたま 血の手形と一致したんだろうね。』(証言2) 『ハンニンはグーゼン、オレの指紋の 上から、その保管庫に触ったのさ。』(証言3) 『”血痕”と”指紋”は別のモノ。 ‥‥知らなかったかい。』(証言4) 『そもそも、犯人は手袋をしていた。 ホラ。オレとは無関係だろう?』(証言5) |
裁: |
ふむう‥‥たしかに、 スジはとおっているようですな。 ‥‥いくらか、ギモンの余地は あるようですが。 |
罪: |
ギモンがあるからこそ、人生は 楽しい‥‥オレはそう思うさ。 |
裁: |
とにかく、弁護人。 尋問をおねがいしましょう。 |
成: |
(‥‥罪門さんは、この事件に 関係しているはずだ。 今度こそ、それを ハッキリ立証する‥‥!) |
成: |
『月に一度、墓参りをするから』 ‥‥ですか? |
罪: |
それもあるが‥‥ジツはな。 オレの保管庫なのさ。そこは。 |
裁: | え! ど、どういうことですか? |
罪: |
たいしたことじゃないよ。 捜査官だったころ、使っていた 保管庫を、今も使っているだけさ。 まあ‥‥入ってるのは、ガラクタの ようなユメばかり、だけどね。 |
成: | そうだったんですか‥‥ |
罪: |
自分の保管庫だ。指紋ぐらい、 たっぷりつけさせてほしいなァ。 |
成: |
(どうやら‥‥登録された指紋の データが、そのままみたいだな。 ご本人は、指紋のロックのコト、 知らずに使ってるみたいだけど) |
書きなおした。 | |
成: |
ど‥‥どうして、そんなコトを 知っているんですか! |
罪: |
これでも、警察の関係者だぜ。 報告書ぐらい、読んでるさ。 |
御: |
‥‥現場に、1つ。犯人が 残したと思われる血痕があった。 |
成: |
ああ‥‥‥イトノコ刑事の 保管庫に残っていたヤツですね。 |
御: |
その”手のアト”からは‥‥ 指紋が検出されなかったのだ。 |
成: |
(たしかに‥‥ぼくたちも やってみたっけ) |
裁: |
‥‥ふむう。そうなると、 その手袋をつけた犯人は‥‥ やはり、罪門巡査の指紋の上に、 グーゼン手形を残したワケですか。 |
罪: |
‥‥そう考えざるを 得ないだろうねえ。 ‥‥そろそろ、アンタも わかっただろ? カウボーイ‥‥ |
成: | な、なんですか‥‥? |
罪: |
こんな血判状‥‥荒野じゃ、 ハゲタカのエサにもならない。 |
成: | ‥‥‥! |
罪: |
ただ1つ。たしかな現実は ‥‥コイツさ。 |
成: | (防犯カメラの映像、か‥‥) |
罪: |
映像に、オレの足跡がないかぎり ‥‥オレは認めねえさ。 |
裁: |
‥‥ハラのさぐり合いは イミがないようです。 弁護人。よく考えて 尋問をするように。 |
成: | は、はい‥‥ |
裁: |
それでは、証人。 証言をつづけてください! |
罪: |
『カメラの映像に、オレの姿でも 映っていればよかったのになあ‥‥』(証言6) |
成: | ‥‥どういう意味ですか? |
罪: |
オレを、この事件と結びつけたい ‥‥そうなんだろ? カウボーイ。 |
成: | ‥‥‥‥‥ |
罪: |
それならば‥‥直接的な証拠は このカメラの映像しかねえぜ。 |
成: |
し、しかし! この映像には、 ”死角”が多すぎます! |
裁: | しかく‥‥? |
成: |
”見えていない”部分です! カメラはクビを振ってるし、 床は映っていないし‥‥ カメラの位置を知っていれば、 姿を映さずに部屋を脱出できます! |
御: |
‥‥弁護人のグチを 聞いているヒマはない‥‥ |
裁: |
どうなのですか? 弁護人。 防犯カメラの映像には‥‥ 罪門 恭介の”痕跡”が 映っているのですかな? |
成: |
‥‥いいでしょう。 あなたの”ミス”を 教えてあげましょう。 |
御: |
もしくは‥‥これからキサマが 犯すことになる”ミス”か。 |
裁: |
それでは‥‥映像の 検証に移りたいと思います! この映像に残された‥‥ 証人・罪門 恭介の”痕跡”とは! |
成: |
ぼくたちの目を、防犯カメラの 映像に向けてしまったのは‥‥ どうやら、シッパイでしたね。 ‥‥罪門さん。 |
罪: |
‥‥‥‥‥‥‥‥ テキサスは、日が短い。だから、 オトコたちの気も短い‥‥ 言いたいコト、25文字以内で まとめてくれないかな。 |
成: |
‥‥いいでしょう。 <<この映像に、あなたの姿が ハッキリ映っているのです!>> |
罪: |
ピッタリ25文字、か‥‥ 悪くないぜ、なかなか。 |
成: |
モンダイは‥‥ 映像に映った”保管庫”です。 |
裁: |
白い布がハミ出ている‥‥これは たしか、証人の保管庫でしたな。 |
成: |
それでは‥‥この映像を、少し 戻して見てみましょう。 |
裁: |
あ‥‥‥ああああッ! 白い布が‥‥消えています! いったいコレは! どういうことなのですかッ! |
成: |
事件が起こった瞬間‥‥ 白い布はまだ、ありませんでした。 ‥‥それが、コツゼンと現れた。 そのコタエは、1つです。 罪門さん! あなたは事件当時、 証拠保管室にいたのです! そして、カメラに映らない タイミングで、保管庫を開けた! |
裁: |
静粛に! 静粛に! たしかに、そうとしか考えられ |
罪: |
待てッ! 悪いが、カウボーイ‥‥ それは認められないよ。 |
成: | ‥‥‥‥‥‥‥ |
罪: |
オレの保管庫が開けられた‥‥ だから、なんだと言うのさ? そいつを開けたのは、 オレとはかぎらないだろうよ! |
御: | ‥‥‥‥‥‥ |
罪: |
ハンニンは、何かをかくす 必要があった。 それで、たまたま開けたのが オレの保管庫だったのさ! |
裁: | ‥‥‥‥‥‥ |
罪: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ なんだ、アンタたち。 おたずねモノを見る、その目は‥‥ |
成: |
(罪門さん‥‥ トボけているワケじゃない! ホントにわかってない みたいだな‥‥どうやら) たいへんキノドクですが‥‥ この保管庫を開けられたのは、 あなただけなんですよ。 |
罪: |
ば、バカな! じゃあ‥‥じゃあ、見せてみろ! あの保管庫を、オレが開けた ‥‥そんな証拠があるのかッ! |
罪: | し、<<指紋>>のセンサー‥‥だと? |
成: |
先ほども、少しハナシが 出ましたが‥‥ 保管庫は、担当捜査官しか 開けることができないのです。 |
罪: | そ、そんな‥‥バカなッ! |
成: |
(そういえば‥‥ イトノコ刑事も言っていた) |
糸: |
『とにかく、パッと見た感じが あまりに自然なシカケなので‥‥ 捜査官の中には、指紋のロックを 知らない連中もいるみたいッスね。』 |
成: |
さあ、罪門さん! 反論があるのならば! 25文字以内でおねがいします! |
罪: |
‥‥いいだろうさ。 <<ちくしょおおおおおおおお おおおおおおおおおおおお!>> |
裁: |
静粛に! 静粛に! 静粛に! 証人! これは、いったいッ! |
罪: |
トンだ、お笑いグサさ。 モト捜査官が聞いてあきれるぜ‥‥ |
成: |
さあ‥‥ 聞かせていただきましょうか。 事件が起こったとき、 あの保管室で、何をしていたか! |
罪: | ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
裁: | 証人! オーレ! |
成: |
(闘牛士だぞ、それ) ザンネンですが、罪門さん。 ここまで来れば、コタエを 聞かなくても、想像はつきます。 |
裁: | そうなのですか! |
成: |
上面図を見てください。 あの証拠保管室に、 身をかくせる場所はありません。 それなのに‥‥原灰巡査は、 罪門さんの姿を見ていない。 |
裁: |
それでは、いったい‥‥ 証人は、どこにいたのでしょう? |
御: |
どうやら‥‥弁護人には 考えがあるようだ。 |
成: |
(そう‥‥ コタエは、1つしかない!) |
裁: |
それでは、弁護人の考えを うかがいましょう! 事件が起こったとき‥‥ 罪門巡査は、どこにいたのか? |
成: |
罪門さんは、このポイントに 立っていたのです! |
裁: |
そ、そこは‥‥ 被害者の、多田敷捜査官が いた場所ではないですか! |
成: |
‥‥正しくは、 ”多田敷捜査官”ではなかった。 そう! カメラに映っている ”被害者”は‥‥罪門さん! 多田敷捜査官のカッコウをした、 あなただったのです! |
御: |
バカなッ! 原灰巡査は、 現場で多田敷捜査官を見ている! カオを見れば、 気づかないハズがないッ! |
成: |
しかし、ハラバイ巡査は 多田敷捜査官を知らなかった。 ‥‥それに彼は、 こんな証言をしています! |
原: |
『保管室に入った本官は、IDカード の提示を求めたであります!』 |
成: |
『それで‥‥IDの提示を求められた 多田敷捜査官は? どうしました?』 |
原: |
『なんとッ! いきなり、本官に ナイフを向けたであります!』 |
成: |
‥‥ずっとフシギでした。 IDカードを持っていたのなら、 なぜ、見せなかったのか? |
裁: |
たしかに‥‥それを使って 保管室に入ったわけですからな。 |
成: |
コタエは、シンプルです。 『見せることができなかった』 |
御: | ‥‥‥! |
成: |
IDカードには、 写真が入っています。 |
裁: | あ‥‥‥ |
成: |
これでは、IDカードを 見せた瞬間に、バレてしまいます! 多田敷捜査官のカッコウをした ”別人”であるコトが‥‥ いかがですか、罪門さん! |
罪: |
‥‥‥‥‥‥‥‥ カウボーイにしておくには もったいない想像力‥‥だよ。 だがね。そういうのをオレたちは ”状況証拠”って呼ぶらしいさ。 |
成: |
‥‥じょうきょうしょうこ? (まだ、認めないか‥‥) |
罪: |
ザンネンだが‥‥捜査官を 自白させるには、ツメが甘いさ。 このオレが、被害者に変装していた ‥‥それを立証する証拠がないと。 |
裁: |
ふむう‥‥ あなたの、その非協力的なタイド ‥‥どうかと思いますぞ。 |
罪: |
‥‥たぶん、アンタのヒゲが 気に入らないんだろうさ。 |
裁: |
いかがですか、弁護人! 何か、証拠はあるのですか? この罪門さんが、ジッサイに 被害者に変装していた証拠ですッ! |
成: |
そ、それは‥‥ (ムリだ! そんな証拠は‥‥) |
罪: |
‥‥そうそう。追いつめられた インパラの目‥‥悪くないぜ。 どうやら‥‥荒野にホネを さらすのは、アンタのほうさ。 |
成: |
ぐ‥‥ッ! (バカな‥‥ どう考えてもアキラカなのに! なにか、手はないのか‥‥?) |
御: |
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ フッ‥‥ ここへ来て‥‥経験不足が カオを出したようだ。 |
成: | ‥‥! |
御: |
私も、あるヒトに よく言われたものだ。 追いつめられたときこそ‥‥ キホンに立ち返れ、と。 |
成: |
き、キホン‥‥ (ぼくのキホンは‥‥ 千尋さんの、あのコトバだ!) |
『なるほどくん。 発想を逆転させましょう!』 | |
成: |
(”罪門さんが変装していた” その証拠を探すのではなく‥‥ 変装したことによって ”発生した”証拠を探すんだ!) |
御: |
‥‥そもそも。なぜ、 この保管庫は開かれたのだろうか? |
裁: | どういうことですかな? |
御: |
フツウに考えれば、わざわざ 犯行時に保管庫を開く必要はない。 なのに、こんな大きな手がかりを 残した。‥‥と、いうことは‥‥ |
成: |
(保管庫を開けたのは、 ”計算外”のコトだった‥‥!) |
裁: |
弁護人の主張によれば‥‥ 罪門 恭介は、事件当時。 多田敷捜査官に変装していた。 そして、”事件”のあと‥‥ なぜか、自分の証拠保管庫を 開けています。 |
御: |
保管庫から”白い何か”が ハミ出ている以上‥‥ それをしまうため、保管庫を開いた ‥‥そう考えるべき、だろう。 |
裁: |
いったい‥‥その”白い何か”の 正体は、なんだったのですかな? |
成: |
おそらく‥‥ すべてのコタエは、 カメラがとらえているハズです! (”証拠”はない。何かあると すれば、この映像だけだ‥‥!) |
罪: | ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
裁: |
それでは‥‥もう一度。 映像の検証に入ります。 犯行後、証人は”白い何か”を しまうため、保管庫を開きました。 証人が、保管庫を開けざるを得なく なった”理由”を示してください! |