97年の中禅寺湖は例年以上に水位が低かったことはご存知の方も多いことでしょう。
何と約20数年以来の減水で、春先は観光船の桟橋を数十メーター延長しなければならないほどの低水位であったことは紛れも無い事実です。
当然のことながらこの状況から判断すると
1,ポイントが近くなる。
2,バックスペースがゆとりを持って取れる。
3,鱒達の回遊コースにフライが楽にプレゼン テーションできる。
などと自分勝手に考えていました。
しかし世の中そんなには甘くありませんでした。
釣行したメンバーの話や自分の実績、地元の漁師の話を総合すると、97年の中禅寺湖は岸から攻める釣り人が異常に多く(ポイントが広いから当然ではあるが)例年、岸近くを回遊していた鱒達が岸釣りの釣り人の多さに脅かされ、かなり沖目を回遊するようになった様子です。
その傾向は国道側と言われる金波食堂前から13番までにかけて特に目立っているようです。
次には水温との関連です。昨年との比較で水温が同時期で1〜1.5度ほど高い傾向が見受けられました。これは当然ながら鱒達を沖目の深場に追いやる結果につながったと言えるでしょう。
最後は餌の問題です。96年も同様の状況であったと言えますが、97年は更に条件が悪化したのではないかと思います。先ずワカサギを中心としたベイトフィッシュの激減で、96年も同じ傾向が見られましたが、岸寄りをふらふらと回遊するワカサギの姿はめっきり見られなくなりました。ワカサギの減少に関しては昨年問題となった「スモール マウス バス」の違法放流による食害問題も否定できない現状だと言えます。
昨年の禁漁直前に漁協関係の方に伺った話ですが、95年には福島県の桧原湖から、96年には長野県の野尻湖から大量のスモールマウスバスが心無い釣り関係者の手により違法放流され、その結果96年の調査では日光プリンスホテル前のワンドあたりにかなりの量のスモールマウスバスの稚魚らしきものの発生が見られており、漁協としても成す術が無い状況だとの事。
又、ここ数年の水質悪化と不安定な水位変動による水生昆虫の減少も影響している様です。ご存知のとおり従来主食のひとつとなっていた「モンカゲロウ」は以前見られたようなスーパーハッチでの羽化は全く見られず、ハッチがあったとしても単発で寂しいかぎりのようです。
5月から6月にかけての釣りについて
97年5月の話
1,5月上旬
97年5月上旬は水位がまだ低く、表面水温も4〜5度と低く、本来であれば鱒達の回遊コースも岸からかなり近いコースを回遊しているはずであったが、岸釣りの釣り人の多さに驚いたのか岸からのキャスティングで釣れた魚は異常に少なかった。
2,5月中旬
97年5月中旬はホンマスを狙う釣り人にとってはかなり辛い時期であったと思う。
岸近くを回遊する鱒は非常に少ない様子で、どのポイントでもあまり良い釣果を聞くことが出来なかった。
しかしムーチングで攻めた人でこれに該当しない方もいた。土浦から毎週のように来る藤沢さんは1997年5月12日(月)に何とフランス大使館別荘前で60cm近い日光岩魚をワカサギのムーチングで2匹も釣り上げてしまったのである。
3,5月下旬
水温の上昇に伴い鱒達のポイントは益々難しくなる一方で、フライフィッシングを中心にしている釣り人にとっては納得の行かない状況であったと思う。
特にこの2〜3年同様な傾向が続いているように「ユスリカ」を使ったシビアな釣りは全く出来なくなってしまい、何をどうすれば良いかがかなり絞り辛くなっていると思う。
97年6月の話
1,6月上旬
例年6月の声を聞くと中禅寺湖もいよいよ本番を迎えて活気立つはずであるが97年の状況は少し違ったような気がする。
先ず水温の高さである、97年6月9日頃釣行した時の水温は表層で約12.5゜C〜13.5゜Cで例年同時期と比較すると2゜C程高い水温であった。
水温が高いと言うことは当然浅場へ回遊する鱒の数も少ないことが予測される。
97年だけのことではないが、餌となる小魚や水生昆虫の量にも影響が考えられる。又、水位も依然低いままで、とても良い状況に戻るとは考えにくかった。
1997年の状況から唯一救われている事は岸からのキャスティングがしやすかったことである。解禁当初は釣れない状況が続いてはいたものの、釣れないことで釣り人が減ることにより岸近くに回遊する鱒達も増える可能性は多少なりにもあると言えた。
2,6月中旬
本来6月中旬といえば鱒達が最も活発に活動する状態である時期であったはずであるが、97年は若干様相が違っていた。
数年来の減水によるポイントの攻めやすさから、国道側をビッシリ埋め尽くした立ち込みのフライマンに沖合いに追いやられた鱒達は通常岸から4〜5mの距離を回遊するはずであるが、この時期岸から30m以上離れてヒットすることがかなり多かったようだ。
3,6月下旬
6月下旬は水温の上昇が日によってかなり激しいため、天候条件を見極めることと、水温の状況を良く見て対応する必要がある。
又、釣れる時刻も限られつつあり、早朝か夕刻の数時間が勝負になることが殆どである。97年は状況が思わしくなかったためデータとしては不十分であるが従来一時的に釣り辛くなる時期でもあることは記憶していたい。
97年7月の状況
97年は6月の梅雨入りからあまり良い話を聞くことはなかったが、表面水温の安定と躍層の形成により鱒達の泳層もかなり一定になっている様子で、7月上旬の数日間はトローリングによる釣果がかなり上昇してる。
特に「ヒメトロ」は国道側からフランス前にかけて解禁日以降最高の状態と言える制限30匹近い釣果が得られていた。
又、レッドコアラインによるホンマスのトローリングでも40cm〜50cmの魚を2桁釣り上げた好運な釣人もいた。
この時期の水位・・・97年6月の台風の影響もありかなり回復するものの、依然満水とは言えない状態であった。
水温・・・7月に入ってからはかなり暑い日が続いたこともあり、例年より高い状態。表層で18゜Cほどありフライフィッシングでは厳しい状況となった。
鱒達の状態・・・97年は3年前に大量放流されたヒメマスがかなり残っている様子で早朝ヒメトロ10m〜15mで爆釣状態もあった。レッドコアでは60yrd〜100yrd。小さ目のアワビ系のスプーンに好結果が得らた。
97年の7月中旬以降について
97年7月11日(金)早朝の状況
ヒメマスはかなり一定したポイントを回遊している様子。特に国道側の丸山沖から金波食堂前にかけては魚影も濃く地元の漁師も早朝から攻めていた。
フライマン、トローラーにはちょっと攻め辛い棚(11m〜13m)ではあるが、ダウンリガーの様なタックルを屈しすればかなりの釣果が得られたと思われる。
この期間の降雨で表層水温は17゜Cで安定し、水位もほぼ例年並みまで回復する。岸釣りにはチョット辛いかもしれないがボートを使ってトライすればある程度納得できる釣果が得られたようである。
97年7月14日(月)の状況
気温早朝17゜C 表層水温:早朝は19.3゜C日中高い所で21゜C。水位:漸く例年並みまで回復。
依然ヒメマスを狙ったトローリングは好調さを継続していた。
地元の漁師も毎日20匹以上の3年魚を釣り上げていた。地元の達人に言わせると、この時期20匹以上釣れないと良く釣れたとは言わないそうだ。
そう言う意味でも水質が安定し透明度が増した状況は解禁以降でのヒメトロ全盛期に入ったと言えるのではないか。又、レッドコアーラインを使ったトローリングでもホンマスを含め好釣果を得ている様子だ。
ポイントと水深
1997年7月上旬の数日間に好調なポイントは国道側であった。
金波食堂前付近から13番まで広範囲にわたってヒメマスがかなり大きい群れで回遊しているのが魚探に映っていた。
最も釣れる時間帯はAM4:00頃から5:00頃までで、その時間を逃すとヒメマスの群れも分散して釣果が落ちるようだ。7月14日(月)の状況では国道側のポイントより栂前からイギリス大使館別荘前の沖合いが好調であったように、その日の状態でポイントは大きく変化すると言える。
当日の状況はヒメマスの水深は15mが一番好調でホンマスは13m〜16mで釣果が伸びたようだ。
7月はフライフィッシングやルアーフィッシングを岸釣りに求める釣師にとっては非常に辛い時期になってしまいました。
それでも満足できる釣りを目指すには、レイクトローリングを徹底的に実践するしかないと思います。
7月28日 (月)時点の情況では依然ヒメマスのレイクトローリング(ヒメトロ)にはかなりの釣果が上がっている様子です。但し、ポイントはここ数週とは違って13番付近から松ヶ崎付近へと変化している様子です。
8月から中禅寺湖を攻めるにあたっては釣りの対象となる魚がどこをどのように回遊しているかを理解する必要があります。
当然水温の上昇から対象魚の泳層の変化を微妙に掴むことがポイントと言えます。
ただ日光は平地に比較して秋の訪れも早く、8月から既に秋の気配が忍び寄るようになり、鱒達の活性も徐々に高まることは否定できないと考えております。
8月のポイントとしてはある種の鱒達が産卵行動の準備に向け多少の活性を見せることも見逃せない釣期のひとつだと考えてください。
例年、8月も終わりを迎えるこの季節は中禅寺湖も短い夏が足早に通り過ぎて行く時期でもある。
気温の変化は平地よりもかなり激しく、日中と夜間の気温差が10゜C以上のこともあたりまえ。
但し、水温は表面水温が鱒達の適温になるまでには至らず、依然20゜C前後の高い状況が禁漁まで続いてしまうが、鱒達は産卵を控えある程度活発な動きを見せる最後のチャンスであることも忘れないでほしい。
ポイントの変化
7月までは広範囲に好釣果を得られていた「ヒメマス」も産卵を控えた群れが松ヶ崎から大日崎付近へ移動しており13m〜17mで安定した釣果が得られている。
「ホンマス」は97年の結果としては全体的に小さいサイズの物が多かった様子ではあるが、上野島から栂までの沖目を狙った釣り人が好成績を得られていた。
9月からの戦略
例年9月からは禁漁区間も広がり金谷ボートハウス前のワンドは禁漁となる。
しかし、ヒメマスを狙う方はこの禁漁区ぎりぎりのポイントを攻めることが最も好釣果を得られるポイントだと考えている。産卵を控えた3年魚はもちろん25cm〜30cmぐらいの2年魚もかなりの群れで回遊しているようだ。
レイクトローリングではまだかなり深いラインを攻めなくてはならず、70〜100ヤードの攻防になるのはやむを得ない。
でも気温の低い早朝や悪天候の日にはかなり浅いポイントの回遊も見られる。過去の実績でも70〜60ヤードでの釣果もあった。
又、フライフィッシングもこの時期多少の期待が持てる。
何故なら湖岸の立ち込み釣師も殆ど姿を見せなくなり、静かな状況での釣りが出来るからで、やる気のある鱒達は水温が20゜Cを切れば十分に浅いポイントにもフィーディングアプローチをして来る。
今年のヒットフライは特に無かったが鱒の興味を誘うアトラクター的フライを使うことでラストチャンスを物にすることが出来るかもしれません。是非頑張って下さい。