嫌な夢を見た。
とても嫌な夢だった。
頭がぼーっとしていてよく思い出せないが、妙に気になる。
オレは記憶をふりしぼった。


白髪のじいさんがオレに向かって叫んだ。
「私は神だ!誰よりも偉大な世界の創造神だ!さあ、私を攻撃しろ!早く!」
オレはとりあえずパンチをくらわせてみた。
「そうだ!いいぞ!さあ、もっと強く!もっと強くぶってくれ!」
断る理由も無かったので、望みをかなえてあげようと思いパンチをし続けた。
パンチは徐々に威力を増していく。
それに合わせてじいさんの息は荒く、動きは不気味になっていく。
いろんな意味で不安になって、オレは攻撃を止めた。
「何をしている!?まだ足りん!ハァハァ……もっとだ!」
じいさんは脂汗を流しながら、恍惚とした表情でオレに迫ってくる。危険だ。
こうなったら一刻も早くじいさんを倒すしかなかった。
オレは全身全霊を込めて最後の一発のパンチを叩き込んだ。
「もっと!もっとだー!グヘッ………
 いかん 意識が………」
じいさんは幸せそうに気を失った。



‥‥‥‥‥‥もう忘れよう。

眠り直そうと思って目を閉じた時、近くで何か物音がした。
「‥‥ダン ‥ダン!」
いや違う。これはオレの名前だ。
「‥ん んー‥父さんか
 ‥ナニ?」
「お父さんは旅に出ねばならん。」
「今度は何をさがしに?」
「ふっ 聞いて驚くなよ。
 ‥神だ!」
何を寝ぼけたことを言っているんだ、父さんは。
‥ん?寝ぼけているのはオレの方かな?
眠すぎて頭の中が混乱してきた。素直にもう一度寝よう。
「‥おい ダン!寝るな!!」
「なんだよ‥ねむいよ」
「よく聞け!これは誰にも渡してはいかんぞ。いいな!」
何かを手渡された。見覚えがある。秘宝だ。
とうさんはそれ以上何も言わずに、いつものように窓から身を乗り出した。
ズドンッ。「ぐぁっ!」
重い物が落ちる音。続いてうめき声。
やっぱり寝ぼけているのはとうさんの方だった。



翌朝、食卓に父さんの姿は無かった。

最悪の事態を想像して不安になったオレは、恐る恐る聞いた。
「かあさん‥あの‥‥」
「なあに?言いたい事は
 はっきり言いなさい。」
「‥‥とうさんはどうしたの?」
「それが‥‥どこにもいないのよ。
 またどこか旅にでも行っちゃったのかしら‥‥」
少し安心した。死体が転がっていたわけではないらしい。
たしか神を探しに行くとか言っていたような‥‥
「‥神?」
新しき神と名乗った奴は全員倒したはずだった。
‥‥そういえば、なぜ秘宝がこんなところに?
今、秘宝は全て1つの場所に集まっているはずなのに‥‥
改めて父さんに渡された秘宝を見る。
どくのマギだ。今だに有効な使い道がわからない。
「よりによってこんなものを‥‥」
捨てようかとも思ったが、仮にも秘宝なのでさすがにまずい。
まあ、無いよりはましだろう。
「ウン‥‥ ウン‥ ウン‥」
母さんのセリフに適当にあいづちを打って、オレは家を出た。



村を出る前に先生に挨拶をしに行った。
昔から先生が怒るたびに、そばにある物が溶かされた。
教室の机や床には、今もその跡が所々残っている。
先生がスライムだとそのへんが困る。
幸いにも生徒が食い殺された話は聞かないのが救いだ。
ちなみにオレは人間の父と人間の母との間に生まれた、ごく普通の人間だが、
父さんはドラゴンの子が、母さんはメカの子が欲しかったらしい。
小さい頃は肉とパーツを交互に食べさせられて苦労した覚えがある。

「そうか、また行くのか‥‥
 それならば話しておこう。
 かつて古き神々を作った神がいたらしい。
 しかしその神は、凶悪な4体の怪物と血塗られし武器によって
 体を7つに切り裂かれ、死んでしまったそうだ。
 父上が探しておられる神とは、その神の体の欠片のことだろう。」
「なぜ父はそんな物を‥‥」
「神のカケラを7つ全て集めると、どんな望みでもかなえられるほどの
 力を得られるという話だ。
 それを探し、守るために父上は旅立ったのだろう。」
「ありがとうございます。
 神のカケラの事もいろいろ調べてみます」

教室を出ると、同級生たちが聞き耳を立てていた。
オレは仲間になってくれるよう頼んでみることにした。
「あの‥‥」
「おれは いやだぜ」
「おれは いやだぜ」
「おれは いやだぜ」
‥‥全員から断られた。
以前ついてきてくれた仲間たちから散々な目にあったことを聞かされたようだ。

とりあえず誰か味方になってくれる人を探して、村中をたずねる。
しかし仲間になってくれそうな人は見つからなかった。
「仲間が欲しいって顔してるな。
 理由もなく命がけでついてきてくれる、
 そんな仲間なんてそうはいないぜ。
 こいつを仲間だと思って持っていきな!」
ポーションを3つもらった。
‥‥安い仲間だ。

仕方なく一人で旅立とうとすると、先生がついてきた。
「やはり私も一緒に行こう!
 PTAからいじめだと苦情が来ると困るからな」
魔物だらけのPTA‥‥
オレは想像してみた。
暗い洞窟の中、魔物たちが集まってざわざわと騒いでいる。
そんな中、号令とともに一瞬で場は静まり返り、悪の親玉が登場するのだ。
「よくぞ集まった、我が忠実なるしもべたちよ!
 さあ、憎き勇者どもを血祭りにあげるのだ!」
先生が大きな声で叫ぶ。
‥‥こんな感じだろうか。
ちなみに遠足のときは百鬼夜行のような光景だった。

オレがくだらない妄想にひたっていると、村のはずれにさしかかった。
村から出ると、すぐに敵が次々と襲ってきた。
オレが身構えるより早く、先生が敵を倒してしまう。
「私に触れると溶けてしまうぞっ!」
ジュウッと気持ちのいい音を立てて敵が溶けてゆく。
「くらえっ!ファイア!」
敵が一瞬にして黒焦げになる。
「覚えたての新必殺技、受けてみるか!サイコブラスト!」
敵が片っ端からなぎ倒されてゆく。
完全に先生の独壇場だ。
オレは自分の存在意義に不安を感じた。
何かすることがないか考えていると、目の前にラムフォリンクスの肉が落ちていた。
オレはすかさずそれを先生に食べさせようとする。
「こ、こら!やめろ!」
肉を先生の頭の上に置くと、ズブズブと体の中に沈んでいく。しょせんはスライムだ。
「や、やめ‥‥うわっ!?」
先生はえのきもどきに変身した。
どうやらバグったらしい。オレは思わずニヤリと笑った。

「もう怒ったぞ。
 私を元に戻すまで
 村には帰れないと思え!
先生が叫ぶ。どうやら本気で怒らせてしまったみたいだ。
仕方ない。父さんを探すついでに、先生を元に戻す方法も探してみよう。
洞窟の入り口で通せんぼを続ける先生と別れて、オレは最初の町へと向かった。


最初の町にたどり着いたので、父さんの姿を探してみる事にした。
相変わらず狭い町なので、探すのにさほど苦労はしないはずだ。
聞き込みはその後でもいいだろう。
「あっ とうさんだ!」
探し始めてまもなく、父さんの姿を見つけた。
オレは急いでその姿を追った。
「おとうさん!?
 げっ!また だまされた!」
こっちを向いたその顔は、父さんの顔面を岩で潰したような顔をしていた。
それでいて横顔や後ろ姿は父さんと同じなのだから反則というより他にない。
「なんだね チミは!
 ところで、古き神々の遺跡に秘宝がある
 といわれとるが どこだかしらないか?」
「ああ、それなら知ってますよ。一緒に行きますか?」
一人では心もとないのも事実だったので、オレはこの人と一緒に行くことにした。

歩きながら、まじまじと顔を見てみる。
父さんの顔が突然変異したのかもしれないと思うと、とたんに父さんに見えてくる。
きっと本当に岩か何かで潰されたんだろう。
この人が父さんなら、オレの旅もここで終わりだ。
「父さん?父さんだよね?顔は違うけど間違いないよ!」
「何を言っとるんだ チミは‥‥」
‥やっぱり違うか。
名前はヌケサクと言うらしい。変な顔にピッタリの名前だ。


聞き込みをした結果、特に有力な情報は得られなかったので、とりあえずヌケサクさんを遺跡へ連れていくことにした。
遺跡に行く前に、カイの神殿へ立ち寄る。
少し前まではたくさんの客がカイを訪ねに来ていたのだが、
カイが回復の魔力を失ってからはここを訪れる客はほとんどいなくなったらしく、
神殿の中は閑散としていた。
カイはかなりヒマそうにしていたが、オレたちの姿を見た瞬間、表情がぱっと明るくなった。
「まあっ!そこにいるのはもしかして‥‥
 あの時のちょっと素敵なおじさま!?」
オレはヌケサクさんに後ろ向きのまま格好いいポーズをとらせ、
そのままムーンウォークで近づかせる。
そしてヌケサクさんの頭をつかみ、くるりと半回転させた。
「ばあっ!」
「はうっ」
カイは たおれた

カイの強い要望でヌケサクさんは置いてけぼりをくらうことになった。
カイとの二人旅‥‥なかなか悪くない。
素直にそう思いながら一緒に歩いてゆく。
秘宝のことをいろいろ聞いてみると、秘宝はいつのまにか世界中にとびちっていたらしい。
そのうちのいくつかは再び遺跡に納められているとか。
女神に何があったのだろう?秘宝が飛び散っているということは、やはり‥?
女神の安否が気になる反面、また秘宝集めが楽しめるということで
オレの心の中は結構ワクワクしていた。

遺跡の中で秘宝を集める。
どくのマギ、どくのマギ、どくのマギ、どくのマギ‥‥
どくのマギしか見つからない。
なんだこれは。秘宝が全てどくのマギになってしまったのか?
いくらなんでも偏りすぎてる。おかしい。なんでだ。
嫌がらせか?
半泣きになりながら遺跡の裏口から出ると、思わぬ敵と出会うことになった。
頭が3つで腕6本。こいつは‥‥

「ははははは!カイ!そしてダン!久しぶりだな!」
アシュラが大きな声で笑う。
なぜこいつが生きているんだ!?オレは自分の目を疑った。
「なぜわしが生きているか不思議なようだな。
 教えてやろう‥‥
 わしはあるお方の力によって復活をとげたのだ!」
あるお方‥‥?誰だろう?
「わしだけではない。
 そのお方はかつての強者たちを次々と復活させているぞ!
 なかにはお前たちの知らない異世界の者までいるはずだ!」
相変わらず親切に説明してくれる。おしゃべりな奴だ。
「どうする?頭を下げてこの世界をわしに差し出せば重臣に取り立ててやってもいいぞ」
「そうはさせません!あなたにこの世界を渡すわけにはいきません!」
「わしと戦うか!
 魔力も無くしたお前にいったい何ができるというのだ!
 しね!」
勝手に話を進めるカイとアシュラ。オレの意見は聞こうともしていない。
なんだか腹が立った。

相変わらずアシュラの強さは卑怯と思わせるほどだった。
なんせ頭が3つに腕6本。敵が3体いるのと同じようなものだ。
それに対してこちらは二人。どう考えても不利だった。
オレが前列でアシュラの攻撃を受けとめ続け、カイは後列でサンダーの書で攻撃を続ける。
回復の魔力は無くなっても、呪文の書を使えば一応の効果は出るらしい。
さすがのアシュラもそれなりにダメージを受けているようだ。
オレのほうも結構なダメージを受けているが。
「ぐっ!」肩にするどい痛みが走る。カイはサンダーの呪文を唱える。
「ぐはっ!」あばらに強烈な一撃を受ける。カイはサンダーの呪文を唱える。
「ぶげっ!」顔面をおもいっきり殴られる。カイはサンダーの呪文を唱える。
十数発目のサンダーを直撃させたところで、ようやくアシュラも力尽きたようだ。
「わ‥‥わしを倒しても‥‥まだまだ‥たくさん‥
 いやだー しにたくないー‥‥
 ぐあーっ!アニキーッ!」
アシュラの断末魔のセリフが響き渡る。アニキって誰だ。
「やったのね‥‥」
カイがつぶやく。汗一つかいていない。不公平だ。
全身ボロボロになり、半分気を失いながらオレは思った。


アシュラが消え去った後には、いくつかの秘宝と左足だけが残っていた。

「ん?これは‥‥」
「これはアシュラの左足じゃないわ。神の左足よ!」
「そうか、これが先生の言っていた神のカケラなんだ」
これが神のカケラか‥
不思議な感じがする。暖かくも冷たくもないし、重くも軽くもない。
何か特別な力を持っているという話だけど、オレにはその使い方まではわからなかった。
とりあえずは大切に取っておこう。


この世界は全て探し尽くしたけど、あいにく父さんの手ががりは無かった。
次の世界を探すため、オレはカイと一緒に天の柱に入る。
「アシュラの世界はどうなっているのかしら‥‥
 平和になっているといいけど‥」
次の世界はアシュラの支配していた世界だ。
たしかに以前アシュラを倒してその世界は平和になったはずだが、
アシュラが復活しているくらいだ、何が起こっていても不思議じゃない。
もしかしたら別の奴が支配している世界になっているかもしれない。
こればっかりは実際に行ってみないとわからない。
小さな不安を胸に、オレは扉を開けた。

「‥‥‥暑い‥‥‥‥」
どちらともなくつぶやいた。
一面の砂漠の世界だ。
今さらだけど、先生を連れてこなくてよかった。
もし先生がこんな砂漠に足を踏み入れたら、
干からびるか地面にしみこむかのどちらかだったろう。


砂漠の町で情報を一通り集めた結果、やはりこの世界はアシュラが支配していたということだった。
父さんはアシュラの情報を集めるために、危険をかえりみずアシュラの塔に潜入しに行ったようだ。
そしてそのまま戻ってこなかったという。
「父さん‥‥」
「きっと大丈夫よ」
カイが励ましてくれる。そうだ、父さんは不死身なんだ。
オレは心配するのをやめることにした。
まずは塔へ探しに行ってみよう。ひょっとしたら捕まっているのかもしれない。


途中でアシュラの手下たちが次々と襲い掛かってきたが、なんなくそれらをかわすオレとカイ。
敵はリーダーを失った群れのように散発的に襲ってくるだけだったので
蹴散らすのにもさほど苦労はいらなかった。
このぶんなら親玉はもういないだろう。

塔の最上階までたどり着いた。
やはりアシュラを倒したせいだろう、そこには誰もいなかった。
「誰もいないんじゃしかたない、帰ろうか」
オレが帰ろうとすると、カイが引き止める。
「待って!あそこに扉があるわ」
以前アシュラが陣取っていた場所の裏側に、大きな扉があった。
「あれ?こんなところに扉なんかあったかな‥?」
いや、間違いなくこんなところに扉なんか無かった。
その扉の中から、とつぜん一人の男が出てきた。
一目見た瞬間、こいつは異質のものである、とオレの勘が告げていた。

おれの名前はショウ。
ガルガル野郎よりいい女が好きなエスパーマンだ。
ちょっとした心境の変化で、今また楽園を目指して旅を続けている。
扉を開けた瞬間、いい女がおれの目にとびこんできた。
「おれの名前はショウ。よろしく、かわいいお嬢さん」
すかさずその娘の手を握りながら話し掛ける。
「あ‥‥はい、よろしく」
相手はびっくりしているようだが、まんざらでもないらしく。
ちょっと赤くなりながら答える。
「ところでショウさん」
その隣の男が話し掛けてくる。おれより少し年下だろうか。
「ショウでいいぜ。なんだ?」
「オレの父さんを見なかった?」
そいつは父親の姿を説明する。とは言っても、帽子以外に大した特徴はないようだ。
「ああ、そんなおやじが歩いていくのを見た気がするな」
「どこで?」
「こっちだ」
おれは扉の中へと二人を招き入れる。
その部屋の中は奇妙な機械でいっぱいだった。
さっき使ってみた感じからすると、転送装置のようだ。
改めてよく見てみると、部屋の隅っこに男が一人いた。
なんだこいつは。さっきからいたのか‥‥?
「ようこそ、いらっしゃいました。はじめまして。私はこの転送装置『イリュージョン』の管理人、ゼロと申します」
その男は頭のシルクハットを脱いで丁寧におじぎをする。
以前会った男に似ている気がする。まさかな‥
おれは手にもった右足とその男を交互に見比べた。
ちなみにこの右足は、途中で会ったフェンリルとかいう化け物を叩き殺して奪ったブツだ。
その男はこの変な装置について説明を始める。
「これが転送装置です。これを使って転送させることで
 異世界へと行けるようになるという装置です。
 異世界の住人であるパルサー博士とクエーサー博士が共同で開発したものです」
「その異世界に父さんが?」
ダンと名乗る、女の隣にいる男がたずねてくる。
「ああ。おれの元いた世界でな」
「ええ、その人なら、確かに私が異世界へとご案内しました。」
「それじゃ、その世界へ連れて行ってほしいんだけど」
ダンが言うとゼロはにっこりと笑って言った。
「ええ、いいでしょう。この装置に乗ってください」

その装置にはおれとダンの二人で乗ることになった。
カイという女の子は一緒には来れないらしい。
「あまりもとの世界から離れられないから‥がんばってね」
「うん、ありがとう。楽しかったよ」
「気を付けてね」
おれは内心がっかりした。このままこの女だけさらっていってしまおうか‥

「さあ、転送しますよ。衝撃に備えてください」
ゼロが言う。オレは目を閉じて体をこわばらせた。
「スタート!」
体がしびれる。電気の粒が体中を駆け巡る感じだ。骨が丸見えになっているのではないかと心配になってくる。
しばらくすると、だんだん体が楽になってきた。うっすらと目を開けてみると、もうゼロとカイはいなかった。
どうやら転送が終わったようだ。
オレは転送装置から降りて、扉を開けた。

そこは塔の内部のようだった。
何の塔だろう?やたら広い。
オレがとまどっていると、ショウが説明をしてくれる。
「ここが楽園へと続く塔だ。今いるところは4階だな。最上階まであと20階くらい上がらないといけない」
父さんも上のほうへ上がっていったらしい。追いつくまでにはだいぶかかりそうだ。


どうもショウを見ていると、頭のネジがゆるんでいるというか、
とても正常とは思えないことを考えているような所がある。
ちなみにオレもよくそう言われるけど、そっちは気のせいだろう。

さっきから見ているとショウは片っ端から容赦なく敵を殺している。
ショウになるべく敵を殺さないように注意すると、
「なんでだ?敵は殺すものだろ?」
‥‥殺伐とした奴だ。

敵を倒した後の肉が落ちている。
それをショウはすかさず拾って残さず食べる。
ゾンビの肉とかも混ざってるんだけど。
「ダン、お前もどうだ?うまいぞ。」
両手に肉を持ちながらショウがすすめてくれるが‥‥
さすがに食べる気はしなかった。

でも、なんだかんだ言っても、ショウはとても頼りになる。
敵がオレの背後に回りこんだときにもすかさずフォローしてくれるし、
他の敵を牽制しながらオレが楽に戦えるように配慮してくれたり、
とにかく気が利いている。
昔4人でパーティーを組んでいたそうで、周りをよく見てくれているのはそのおかげだろう。
「よしよし、今の奴は大量に金を持っていやがった、儲けたな。さて、次の獲物はどいつだ?まとめて殺してやるぜ」
‥これさえ無ければ最高のパートナーなんだけど。

5階にたどりついたオレたちは、いろんな事を知っているなぞなぞじいさんに会うために
船のように走る島を使って旅をしていた。
‥‥気分が悪い。
「おい、ダン、大丈夫か?」
ショウが心配してくれる。
オレはあんまり乗り物に乗ったことがないから
この島の揺れ方はかなりこたえる。
‥‥きもちが悪い。
オレはそのまま二度ほど吐いた。
父さんはドラゴンの子が欲しかったらしいけど、
こんなモノを吐くドラゴンでも息子と呼んでくれるだろうか。

やっとの思いでなぞなぞじいさんの家に着いた。
やけに広々としたところだ。
「おい、じいさん、ちょっと近くまで寄ったから遊びに来たぜ」
「じいさんとは何じゃ!わしは竜王だぞ!」
「でもじいさんだろ」
「むっ‥‥相変わらず無礼なやつめ」
オレの目から見てもどうみてもただのじいさんにしか見えない。
「まあいい‥なぞなぞを解いてみんか?
 見事正解したなら素晴らしい物をやるぞ」
「素晴らしい物?」
「神のカケラじゃ。どうだ、欲しいだろう」
「ください。」
オレは即答した。
「そうか‥‥ではいくぞ。
 なぞなぞじゃ
 上は大砲 下はキャタピラ な〜んだ?
 正解の物を持ってわしのところへ来るのじゃ!」
上は大砲 下はキャタピラ‥‥
心当たりはあった。あったけど‥‥
「『持って』来るのは無理なんじゃないかな‥」
「この前の岩だって持ってくるのはかなり大変だったぞ‥」
「何を言う!根性で何とかしてみせい!」
無茶を言うじいさんだ。

入手方法も運ぶ方法も見当がつかない。
オレたちは神のカケラを全て集めるのはあきらめることにした。

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