ディオールが自爆したおかげで、電磁波が飛び交い、それがノイズとなって
ビーナスの機械を操る電波はうまく届かなくなったようだ。
おかげで敵は今やビーナス一体になっていた。

ビーナスの腕がカパッと取れて、中から銃口が出てきた。
ちょっと待て。なんだこれは。
オレの疑問に答えが出る間もなく、ビーナスは銃を乱射してきた。
パァン、パアン!
乾いた音が鳴り響く。ビーナスってこんな奴だったかな‥。

ビーナスのひざがカパッととれて、中からバスーカの口が露出した。ニーバズーカか!?
ビーナスの胸がカパッと開いて、中からミサイルが姿を見せた。もうむちゃくちゃだ。

やっとわかった。ビーナスは完全にロボット化していたんだ。
機械を美しいと思い込むようになったのも、機械を操れる電波を発することができたのもそのせいだろう。

さっきからショウが繰り返し攻撃をしているが、ビーナスの硬い皮膚を突き破ることはできなかった。
かすり傷をつけるのが精一杯だ。
「今だ!」
うまくスキをついてアントニーのドロップキックが炸裂した。ビーナスはよろよろとよろめいて、バランスを崩して倒れた。
ビーナスは体重が極端に重くなっているため、倒すとか落とすといった攻撃は意外と有効なようだ。
さらにアントニーが追い討ちでブレンバスターを仕掛ける。
アントニーのパイルドライバが見事に決まった。同時にビーナスの首がポロッと取れた。
「うわわわわっ!」
技を掛けた本人も意外なダメージに驚いている。
倒したのかな‥‥?
しばしの沈黙。すると、ビーナスが突然声を出した。
「戦闘続行不能。これより、自爆モードに入ります」
「みんな逃げろー!」
オレは叫んだ。全員で街の外へと駆けて行く。
一番先頭をアントニーが走っているっていうのがなんとも。

ビーナスの大都会は半壊した。

「アントニー、君の足は‥」
「実は、不自由と言うのは痛みなどではなく、自分の意志に反して動き出すことがあるんだ。
 この前追放されたときには、ビーナスが気に入らないと心の底で思った瞬間、ビーナスにえんずいぎりをかましてしまって‥」
足が不自由ってそういう意味だったのか‥?
「ひどいわ、アントニー!足の怪我が嘘だったなんて!私をだましていたのね!」
「オ、オリビア!?なぜここに‥」
「ひどい、ひどいわ!信じていたのに‥」
「ち、違うんだ、オリビア!聞いてくれ!」
二人の仲はそれなりにダメージを受けたようだ。
「万事めでたく解決した事だし、そろそろ出発するか!」
そういうショウの顔は、どこか満足そうな嬉しさで満ちていた。

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