ドガ展

2010年9月

みなとみらい駅構内にて

 日本国内では21年ぶりになるというドガの回顧展であるドガ展を観に、横浜美術館へ行ってきました。
 ドガといって思い浮かぶのは、まず踊り子。今回のドガ展では、踊り子だけでないドガの生涯を通じての作品たちをオルセー美術館の所蔵品を中心に国内外のコレクションから選りすぐっての企画展になっています。
 オルセー美術館の所蔵品を中心に…。この展覧会もオルセー美術館の修復工事を受けて、多数の所蔵品がオルセー美術館から来日しているようです。
 休日の昼下がりのまったりとした時間を選んでのドガ展観覧。果たして吉と出るか凶と出るか…。

 横浜美術館に着いてみると、チケット売り場に並ぶ人の列もなく、入場口でも順調に人が流れています。ラッキー☆

 コインロッカー(使用後、100円が戻る方式=無料)に観覧に不要の荷物を預け、人の流れが順調そうなのを見て、久々に音声ガイド(500円)を借りました。音声ガイドの領収証を提示して図録を購入すると図録が200円引きになるそうです。

みなとみらい駅
横浜美術館口を出て



横浜美術館入口

 1章 古典主義からの出発

 展示の1点目は「画家の肖像」ドガの自画像です。21歳だそうです。21歳にしては老成しています…。

 ドガが家族や身近な人々の肖像画を描いていたのは、今年になってから学習済み。このコーナーでは叔母さんや従妹さんの絵とその習作などが展示されています。
 また、ドガは若い頃はアングルの薫陶を受けていたそうで、アングルの「線を描きなさい」の言葉に従って、衣紋(ドレープ)の習作が何点もありました。

 「障害競馬−落馬した騎手」の馬が力強く、他が簡潔に描かれている中、落馬した人の顔だけ精緻に描かれているのが印象に残りました。
 「田舎の競馬場で」と「エドモンド・モルビッリ夫妻」は2010年4月にボストン美術館展で見たような気がするのは気のせいでしょうか。

 「ある理工科大学生の肖像」は個人的にカッコイイと思います。(笑)

 「マネとマネ夫人像」は、ピアノを弾くマネ夫人の描き方が、マネが気に入らずに夫人の顔から右側を切り取ってしまったものを、ドガが引き取ったそうです。マネ、何がそんなに気に入らなかったのでしょうか…。激しすぎる…。

 2章 実験と革新の時代

 ドガ展のポスター、チケットなどあらゆるところでドガ展の顔として活躍している「エトワール」は、1枚だけ特別扱いで、壁1面に1作品、「エトワール」だけを展示していて、ここだけはギャラリーも大勢集まっていました。絵の中の左下から右斜め上に向けてのライトが踊り子の半身を浮かび上がらせています。展覧会の照明自体もオルセー美術館で見るよりも見やすかったです。オルセー美術館の「エトワール」が展示されていた部屋は、小さくて照明がかなり絞られていた記憶があります。

「エトワール」


「14歳の小さな踊り子」
ランドマークプラザ3Fにて

 「綿花取引所の人々(ニューオリンズ)」には、母方のオジとドガの2人の弟、その他の人々が描かれていて、家族の肖像画のようでもあり、風俗画のようでもある1枚です。

 「14歳の小さな踊り子」(ブロンズ像)のオリジナルは、蝋で製作されていて、本物の髪の毛が使われていたとか。オリジナルを見た当時の方々は衝撃だったでしょう。
 展時されているブロンズの作品も、スカートは木綿で、後に束ねた髪のリボンは本物のサテンのリボンでした。

 「ばら色の踊り子」は踊り子の顔がゴーギャン風?(笑)
 「緑の部屋の踊り子たち」は、楽器の上に足を置き、トウシューズを着けている踊り子がいます。
 「バレエの授業」の左端の踊り子はピアノ(?)の上に座って背中を掻いていますし、これらの作品は、ステージ上では見せない踊り子の一瞬の素の状況を描いています。

 「バレエの授業」は油彩で、「エトワール」はパステルで描かれています。ドガがパステルを多く用いたのは、ドガが目を患って視力が落ちる中で、色鮮やかなパステルが扱い易かったからなのだそうです。なるほど〜。覚えておかなくては。

 2章に展示されている作品は、オルセー美術館以外の国内外の美術館、それも日本各地のに所蔵されている作品が比較的数多くありました。

「バレエの授業」
2005年5月
オルセー美術館にて撮影

 3章 綜合とさらなる展開

 この章では、様々な水浴する女性の作品やドガが撮影した写真、踊り子の習作、ドガが作成したブロンズなどが展示されています。

 「浴後(身体を拭く(女性)」は、ドガ自身が撮影した「身体を拭く裸婦(複製)」をもとに描いた作品だそうで、構図がそっくり。ただ絵のほうが少〜し胴が長いかな。絵画的表現?(笑)

 「アトリエの中のセルフ・ポートレート」は、1点目の「画家の肖像」から約40年後のドガ。年をとりましたね。

 ブロンズ作品の中には、何点もの踊り子のポーズをとる(踊る)ものがあり、つい、どうなっているのか、作品の前で自分の手足を動かしたくなってしまいました。人目がありますから、実際には動かしませんでしたが…。(笑)

 “ドガのアトリエに遺された品々”と銘打って、パレット、バレエシューズ、帽子、メガネなどが展示されています。これらもオルセー美術館所蔵だそうで、絵画作品だけでなく、こういった遺品までオルセー美術館が所蔵・保管していることを初めて知りました。


 音声ガイドは、展示作品の横に明記されていることが約20%、音声ガイドだけの情報が約80%くらいでしょうか。普通にガイドする女性と、ドガ役の男性のセリフなど劇仕様になっていたりして、結構、楽しく聴けました。あまり混んでいないときならいいかも。

 カニの横ばい状態になって作品の前を進むのを覚悟して行ったドガ展。「好きなときに好きな作品の前に」とまではいかないながらも、タイミングがよかったのか思ったよりも混雑していなくて、まずまずストレスを感じずに作品鑑賞ができました。
 この展示会を観て、日本国内に思いのほかたくさんのドガの作品が所蔵されていることを知りました。

 ドガ展の見学時間は約1時間50分。予想していたよりもゆったり見学できたドガ展でした。

 横浜美術館でドガ展を観た後は、ランドマークプラザで開催されているドガ展×草月流洸華会 LANDMARK PLAZA 「花と踊る」と題されているお花と、ドガの踊り子のチャコットを再現したもののコラボを観に行きました。



 「エトワール」、「バレエの授業」、「14歳の小さな踊り子」のチャコットが再現され、美しい花々に囲まれた空間でした。

 ランドマークプラザ3Fでの展示は2010年9月26日までですので、残念ながらもう終了しています。