俺は、マクラウドに八騎将との決闘を任せ、ジョアンとの決闘の為、銀月の塔へ向かった。
ビリー「よく逃げずにやって来たな東洋人ッ、グヘヘ…!」
ゲイル「貴様ら、一対一の決闘じゃなかったのか?」
ジャック「ぐへへへへ…勘違いするなよ。お前さんが加勢を頼んでないか確認するだけだ」
ビリー「どうやら、あんた一人のようだな。オッケーだ、通っていいぜ」
そして俺は展望台へ上った。目の前にはジョアンの姿がある。
ジョアン「来たか……」
ゲイル「ジョアン=エリータス………」
ジョアン「まずは今宵の決闘における立会人を紹介しよう……」
ソフィア「……………」
ゲイル「ソフィア………」
ジョアン「東洋人…覚悟はいいか……?」
ソフィア「ジョアン、やめて!…こんな事してもしょうがないでしょう?」
ジョアン「しょうがない…?そんな事があるものか!ソフィア!
君は東洋人が好きなんだ!このボクを見ていないっ!
ボクのどこが劣るんだ?こんな傭兵風情の東洋人に、エリータスに生まれたこのボクが!」
ソフィア「……………」
ジョアン「きっ、君も思っているんだ!ボ、ボ、ボクがママの…」
ゲイル「!?」
ジョアン「マリエル=エリータスの…あ、操り人形だって…。ただの木偶人形だって!」
ソフィア「ジョアン!?」
ジョアン「うう…うぅぅーーーーーっっっ!」
突然、ジョアンは豹変した。
ジョアン「ボ、ボクはマリエルの人形…。ち、ち、違う…最高の聖騎士…ラージン=エリータスの息子だ。
うぅ…うううぅぅぅーーーっ!!」
ジョアンは絶叫しながら抜刀した。
ゲイル「くっ!」
ジョアンの剣を聖剣で受け止めた俺。その時、何かが聞こえた。
ゲイル「これは…ジョアン!?」
ジョアン「ボクは、ボクは………!」
ゲイル「そうか…お前は悲しいんだな。…その悲しみ、俺が何とかしてやる!」
俺は聖剣を光らせ、
ゲイル「聖剣よ、その光、割れに力を貸したまえ。我に聖なる力を見せたまえ。
そして、ジョアン=エリータスの悲しみを消し去りたまえっ!」
エクスカリバーを光らせながら、平たい部分でジョアンを攻撃する。
ジョアン「ま、負けた…。…パパの子であるボクが…。聖騎士の血を受け継ぐボクが………」
ゲイル「(これで…悲しみは消えたのか?)」
ジョアン「…ボクはダメなのか?みんなが影でささやくように、ママの操り人形なのか……」
ゲイル「ジョアン………」
ジョアン「もうイヤだーーーーーっ!!殺せぇぇ!ボクなんか殺せ!」
その時、ソフィアがジョアンをかばう。
ジョアン「!」
ソフィア「ゲイルさん、勝負はつきました…。貴方の…勝ちです…。
だから…もう剣を収めて下さい…。すべて終わりにしましょう」
ゲイル「ああ。わかっているよ」
俺は剣を収めた。
ソフィア「ジョアン…私…貴方のもとへ行きます…。もう…誰も苦しめません…。父も…貴方も…」
ジョアン「ソ、ソフィアぁ…」
ソフィア「ゲイルさん…。今日まで本当に楽しかったです。貴方に会えて本当に良かった……」
ゲイル「ソフィア……」
ソフィア「私…いつからか…私…貴方の事が…。でも…でも……」
ゲイル「ソフィア、俺は………」
ソフィア「ごめんなさいっ!」
ソフィアは目に涙を浮かべたまま、逃げるように走り去った。
ジョアン「…東洋人、ボクは…貴様に勝ったのか?」
ゲイル「…ああ。お前の勝ちだ、ジョアン。幸せにな」
ジョアン「…ソフィア……泣いてた」
ジョアンは、おほつかない足どりでゆっくりと展望台の階段を降りていった。
ゲイル「…ソフィア、ジョアンと幸せにな」
その時、俺の目から涙が零れ落ちた。
ゲイル「何故だ?涙が出てくる……。悲しいのか………?」
そう思いながら俺は宿舎へ戻った。涙を流しながら………。
次の日の朝、最初の頃に会っていた出入国管理局の女性が、
昨晩開かれた会議によって、ドルファンとの契約が切れる事を知らせに来た。
ピコは叙勲式で勲章だけでも貰っておこうと言う。
また、マクラウドに八騎将との決闘の事を聞いたが、
マクラウドは勝利を収めていて、今度近衛騎士団の方に戻るそうだ。
俺は双剣とエクスカリバーを手入れし、旅路の為の準備をしていたが、
ショウ「ゲイル、ゲイル!」
突然ショウが訪ねてきた。
ゲイル「どうした?」
ショウ「ジョアンが消えた」
ゲイル「どういう事だ?」
ショウ「実際には置き手紙で『探さないで下さい』って書いてあったそうだ」
ゲイル「あのジョアンがねぇ…」
ショウ「これはチャンスだぜ!」
ゲイル「チャンス?」
ショウ「ソフィアの事だよ!」
ゲイル「それは出来ない」
ショウ「なぜ!?」
ゲイル「ソフィアは、俺と一緒にいたら駄目なんだ。彼女を幸せに出来るのは俺じゃない……」
ショウ「そうかよ。だったら勝手にしろ!あとで後悔しても知らないからなっ!」
ショウはゲイルの部屋のドアを蹴って帰っしまった。
ゲイル「………わかっているさ!わかっているけど、俺には何も出来ないんだよっ!」
ピコ「ゲイル………」
それから、残り一週間も無いドルファンでの生活を送った。
そして、叙勲式が翌日へと近づいていた。