ドルファンは、前王が病気で没した為、外国人排斥法後に養子にしたリチャードが即位した。
しかし、彼は国民に重い税を課せ、自分は贅沢の限りを尽くした。
貴族達は、自分たちも甘い汁を吸える為に、彼の暗君ぶりには何も言わなかった。
ドルファンはかつてのドルファンではなくなってしまった。
時はD32年10月も終わりに近づいていた時であった。
いつものように牧場の仕事を終え、妻・キャロルの墓に手を合わせ、自宅に帰って少しした時だった。
コンコン!
と、扉を叩く音がした。
「誰だ?」
扉を開けながら言う。一応、警戒の為に刀は持っている。
「シリュウ・ミョウジン様ですね?」
20代半ばの男が立っていた。
「そうだが。お前は誰だ?」
「元ヴァルファバラハリアンの騎士ハンス、と言えば分かりますか?」
動きが硬直するのが自分でも分かる。
「…何の用だ?敵討ちでもしに来たのか?」
冷静さを取り戻し、静かに言った。
「まさか。少々お話が……」
静かにハンスと名乗った男の目を見据えた。少しでも偽りの色が見えたら…斬る!
しかし、そんな色は見えなかった。
俺は溜息一つして、
「入れ。外は寒い」
さして広くないリビングに通した。
「狭くてすまんな。だが、茶くらいは良い物を出そう」
「すみません」
コーヒーを入れ、話を再会した。
「さて、話とはなんだ?」
「実は、我々と共に戦っていただきたい」
ハンスは言った。
「戦う?誰とだ?第一、俺はすでに傭兵ではない。無理な相談だ」
「ドルファンが今どのようになっているかご存知でしょうか?」
いきなり話が変わり驚いたが、すぐに答えた。
「詳しくは知らん。リチャードが即位したのは知っているが…」
「あの男は暗君です。ドルファンが終わるのは時間の問題でしょう。我々はドルファンの民を救う為に動いているのです」
ハンスの言葉を聞きながら、ドルファンで過ごした日々の事が思い出された。
「…今更、俺には関係ないことだ。すまないが帰ってくれ」
「しかし…」
ハンスの言葉が終わらないうちに、
「帰ってくれ!」
大きな声で言い、テーブルを叩く。
「また来ます」と言って、ハンスは去っていった。
彼が出ていった後、しばらくしてから、情報屋に会い街に行くシリュウの姿があった。