(久々に街に来たな…)
以前来たのはいつだっただろうかと考えながら、目的の酒場へと向かう。
時刻は6時を過ぎた頃だ。もう酒を飲むには十分な時間だ。
キィ…
少し錆付いているようだ。
(こういう所に気をつければ良い店なんだがな…)
と思いながら酒場の扉を開け、目的の人物がいるか、ざっと店内を見渡す。
目的の人物はすぐに見つかった。
「レズミー」
カウンターに座って飲んでいる20過ぎの女に声をかける。
「あら?“隻腕の剣将”のシリュウ様じゃない」
もうかなりの量のお酒を飲んでいるようだ。すでにろれつが回らなくなっている。
「今は義手を付けている。それより、飲み過ぎではないのか?」
マスターにブランデーを頼みながら言った。
「私の事は放っておいてよ」
と言いながら、グラスの中のワインを一気にあおる。
「そうだな。本題に入ってもいいか?」
グラスの中身を一口あおる。琥珀色の液体がのどを焼く。
「へぇ〜。ここ数ヶ月、まるで外の事に興味を示さなかったのに。一体何の情報が欲しいの?」
多少驚いたようだが、すぐに商売をはじめる。
さすがプロだ。少しでも交渉を上手く運ぼうという姿勢がみえた。
「ドルファンだ」
「ふ〜ん…。いいわよ」
レズミーは簡単に引き受けた。
「そうか。報酬はどうする?可能な限りお前の頼みを聞こう」
グラスに残ったブランデーを飲み干して言った。
「そうね。私と結婚して。前から言ってるでしょ?」
そう。これは、彼女と知り合った頃からの口癖だった。
「冗談はよせ」
これもいつもの答え方だ。
「私は本気よ。大体、奥さんが病気で死んでからもう半年よ?そろそろ…」
立ち上がり、銀貨を数枚カウンターに置く。
「いつもの額を用意しておく」
出口に向かいながら言う。
「分かったわ…。一週間ちょうだい」
何も言わず外に出る。了解の合図だと分かったはずだ。
これから街は騒がしくなる。それから逃げるようにシリュウは街の門を出た。そして星空を見上げながら呟く。
「キャロル…」
亡き妻の名を呼ぶ。
(俺は、俺たちが出会った国を敵にまわそうとしているよ…)
俺はかぶりを振り歩き出した。
作者の独り言
とりあえず第二話です。沢山の人に読んで頂ければ幸いです。
さてここで、「何で既にヒロイン(もちろんキャロルの事です)か死んでいるんだ?」と、疑問に思った方もいるかと思います。
ですが、こうしないと最終話に繋がらないんですよ。(キャロルファンの方々すみません)
こちらの第三話は「本陣へ」というベタな題名で予定しています。お楽しみに。
まぁ次はSSの執筆をしようかと思っています。そちらの方も良かったら見て下さい。
メールアドレスを最終話の独り言に載せようかと思っています。
その時は感想をお願いします。