奇稲田アスタ作品集

第5回


日が暮れかけてきたせいか、辺りは夕闇に包まれ始める。

砂浜を後にした俺達は他愛ない会話に華を咲かせながら、肩を並べて歩いていた。

夕日が俺達を照らし出す…。そんな温かい光に包まれながら、一路シーエアー駅へと向かっていた。

別れの時間が近付いている。永遠の別れでもないのに、何故か2度と会えない様な不安に襲われる。

感傷に浸りすぎているのだろうか…?

「どうしたんですか…?」

急に口を閉ざした俺にアンが問いかける。

「あっ、いや…何でもないんだ。それより今日は楽しかった?」

「はい。とても楽しかったです。」

今日の出来事を再確認する様に返事をする。その表情には笑みが浮かんでいた。

(やっぱり思い過ごしか…)

さっきの考えを否定する様に頭を振る。第一、永遠の別れなんてある訳がない。永遠の…

「あら…?」

「あっ…」

その時、俺の頭の中に「永遠の別れ」という言葉がフィ−ドバックした…

「ソ、ソフィア…」

「ソフィアさん?」

一気に汗が流れ始め体温が低下した。身体中硬直して、一歩も動けない…

「やっ…、やあソフィア…。奇遇だね…」

わざとらしい台詞に声が震える。ソフィアは押し黙ったまま微動だにしない。

いや、微かに肩が震えている…。

アンは戸惑いながら、俺とソフィアを交互に見ていた…。

「アンさんとお散歩…、だったんですね…」

押し黙っていたソフィアが口を開く。心なしか語尾に怒りが込められている。

「いやっ、それはその…。ごっ、誤解だよ…」

決定的な証拠を見せつけておいて、今尚弁解しようとする。

「そんな…、酷いです…」

黙っていたアンが哀しげに口を開く。

「いやっ…、それも違くて…」

今度はアンの方に弁解する。オロオロする姿は無様以外の何者でもない。

「だから…その…、ソフィアに告白される為にはアンの存在が必要であって…」

とんでも無い事を口走ってしまった。でも、あながち嘘でもないし…。

「!…そうだったんですか…。私は単なる礎だったんですね…」アンが哀しげに呟く。

「何でそんな言葉を?じゃなくって、違うんだよっ!」

「すいません!失礼しますっ!」涙を流しながら走り去るアン。

「アン!待ってくれ!」

しかし、俺の呼び掛けも虚しく、彼女の姿は夕日の中に消えていった…

「アスタさん!」

背後から声をかけられた。声の主はもう分かっている。恐る恐る振り向くと…

パアンっ!

乾いた音が辺りに響く。

「最低です…。私に嘘ついただけでなく、アンさんを利用してただなんて…」

肩が小刻みに震えているせいか、ソフィアの声も震えていた。

いや、怒りと哀しみが錯綜してしていた為かもしれない。

「幻滅しました…。二度と私の前に現れないで下さい。失礼します!」

そう言い残すと、アンが走り去った方向とは逆方向に歩み去った…

独り取り残された俺は、張られた頬を抑えながら、呆然と立ち尽くしていた。

「燃え尽きたぜ、とっつぁんよぅ…。真っ白な灰に…」

通行人達が俺を指さして笑っている。その皮肉に満ちた笑い声だけが、ドルファンの空に響き渡った…
 

END

 
「いやぁようやく完結したな…。脚色バリバリだけど…」

あら?何が完結したんですか?

「ソっ、ソフィア!?良かった!会いに来てくれたんだね!」

えっ?何の事ですか?

「いや、こっちの話。アハ…、アハハハ…」

あっ、これですね?完結したって言ってたのは。チョット読ませて下さいね。

「あっ、それは読まない方が…」

(でも真剣に読んでくれてるなぁ。結構嬉しいかも…?)

 

数十分後…

 
アスタさん!何ですかこれは!何で私がアスタさんに好意を抱いてる設定なんですか?

「そんなにハッキリと聞かれると・・・。」

それにキャラクターが曖昧になってるじゃないですか!

「ゴメン…。俺の文章力のなさが原因です。」

もういいです!失礼します!

「ソっ、ソフィアァァァァァァァァ。」


次へ行く

 

前へ戻る

 

作品集のリストへ戻る

 

SSのリストへ戻る