Boogiepop and seedmaker 〜ごみ箱の中の天使〜
FLyInG TeAPot
「ねー、何怒ってるの?」
「別に怒ってねーよ」
そう言いつつぷいっと横を向く敬一を見て、つばさは途端に泣き顔になった。
「うー。嘘つかれた……」
「いきなり断定かよ」
困り顔の敬一を見てつばさはうそ泣きをやめた。
「何でぇ?」
「しかも嘘泣きかよ……」
やれやれ、という風に敬一は台所へ向かう。
つばさはほとんど何も食べなくても大丈夫らしいので普段は自分の分しか作らないが、今日は二人分作ることにする。
食べ物で気をまぎらわそうという魂胆だった。
つばさは食べなくても平気なくせによくひっかかる。
「何でもない。気にするな」
出された料理を幸せそうに頬張るつばさを見て、敬一はそうしめくくろうとした。
「ほんほーひ?」
「口に物入れたまま話すな」
ごっくん。
「ほんとうに?」
「……ああ」
「あーっ、やっぱり嘘ついてるぅっ」
今日は失敗した。
本当に敬一は怒っているわけではないのだが。ただ、少し混乱していた。
学校から帰ってみたら部屋につばさがいなかったので探していたら、屋上で少年とキスしているのを見てしまった。気になりはしたが、「今日屋上でキスしてた相手は誰だ?」なんて聞けるものではない。
まるで自分が嫉妬しているみたいではないか。
「……ひょっとして、わたしのこと、嫌いになった?」
ぎょっとした。つばさがぼろぼろと涙を流している。
「お、おい」
「やだよぅ。嫌いになっちゃやだよぉ」
泣き止まないつばさに敬一はおろおろするばかりだった。
「どうしたんだよ、おかしいぞ、お前」
ぐっと肩をつかむ。
その瞬間、衝撃が走った。目の前が真っ白になる。
そして、その衝撃から覚めた時、敬一はつばさを抱き締めていた。彼女のことが愛しくてたまらない。
「嫌いになるわけないだろ、つばさ」
そんな言葉が自然に出てくる。
「愛してる」
その言葉を、つばさは死刑宣告を受けたような顔で聞いていた。
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