成歩堂 龍一…黒 | |
綾里 千尋…赤 | |
矢張 政志…紺 | |
裁判官…緑 | |
亜内検事…茶 | |
山野 星雄…紫 |
亜: |
山野さん。 新聞勧誘員をしておられる‥‥? |
山: |
‥‥は。は。 さようでございます、はい。 |
裁: |
では、さっそく<<証言>>を していただきましょう。 あなたが事件当日、 見たことを話してください。 |
山: |
『勧誘しておりましたら、とある 部屋から、男が出てきたんです。』(証言1) 『男はあわてていて、ドアを半開きに したまま、行ってしまいました。』(証言2) 『おかしいと思いまして、私、部屋を のぞいてみたんでございます。』(証言3) 『すると、なんと、女の人が 死んでいるじゃございませんか!』(証言4) 『私、腰が抜けてしまいまして。 怖くて、部屋に入れませんでした。』(証言5) 『私、すぐに警察を呼ぼうと 思ったんでございます。』(証言6) 『でも、彼女の部屋の電話は 通じませんでしたので、』(証言7) 『それで、近くの公衆電話から 通報いたしました。』(証言8) 『時間はハッキリ覚えております。 お昼すぎの、2時でした。』(証言9) 『逃げた男は、間違いなく、 そこにいる被告の方でございます。』(証言10) |
裁: | ふむう‥‥。 |
成: |
(矢張‥‥! なんで正直に 話してくれなかったんだ! こんなにハッキリ見られてちゃ、 弁護なんか、しようがない!) |
裁: |
ところで、現場にあった電話は なぜ通じなかったのかな? |
亜: |
はい。事件があった時間、 マンションは停電中だったんです。 |
裁: |
しかし、停電中でも、たしか 電話は使えるはずでは‥‥? |
亜: |
はい、そのとおりです。 しかし、機種によっては、 子機の使用はできないのです。 現場で山野さんが手にしたのは、 そういうタイプの子機でした。 裁判長。 念のため、停電の記録を 提出します。 |
法廷記録にファイルした。) | |
裁: | では、弁護人。 |
成: | は、はい! |
裁: | <<尋問>>をおねがいします。 |
成: | じ、尋問、ですか‥‥? |
千: |
‥‥さあ、なるほどくん。 いよいよ本番よ。 |
成: |
‥‥あの、 尋問って、どうすれば‥‥? |
千: |
今の証言のウソを 暴くのよ、もちろん。 |
成: | えっ! ‥‥ウソ、ですか‥‥? |
千: |
あなたの依頼人が無実なら、 あんな目撃証言なんか、 ウソに決まってるでしょう! ‥‥それとも、あなたは 依頼人の無実を信じてないの? |
成: | ‥‥! でも‥‥どうやって? |
千: |
カギをにぎっているのは、 <<証拠品>>よ! あの証人の証言と 証拠品のデータとの間には、 何か決定的な食い違い、すなわち <<ムジュン>>があるはず。 まず、法廷記録と証言で、 ムジュンしている部分を探すの。 そして、ムジュンしている 証拠品を見つけたら、 それを、あの証人に つきつけてやりなさい。 |
成: | ‥‥は、はあ。 |
千: |
Rボタンで法廷記録を見ながら、 証言と食い違う部分を探して! |
成: |
死体を見つけたのが、2時。 間違いありませんか。 |
山: |
ええ。 2時でしたね。たしかに。 |
成: |
しかし、それはおかしいんですよ。 この解剖記録のデータと、 あきらかにムジュンしています。 被害者が死んだのは、 午後4時より後なんです。 2時に死体を見つけられる はずは、ゼッタイにありません! どうして、2時間も ズレがあるんでしょう‥‥? |
山: |
‥‥! え、あの‥‥それは‥‥。 |
亜: |
それは、ささいなコトです。 単なる記憶ちがいでして‥‥ |
裁: |
‥‥私には、そうは思えません。 山野さん。 どうして、死体を見つけた時間を 2時だと‥‥? |
山: |
‥‥ええと‥‥その、 ど、どうしてでしょうね‥‥。 |
千: |
みごとなツッコミよ! なるほどくん! そうやって、ムジュンを 指摘していけばいいの。 ウソは、かならず次のウソを 生み出すはず。 そのウソをまた見抜いて、 あいつを追い詰めましょう! |
山: |
‥‥あっ! そうそう、思い出しました! |
裁: |
‥‥では、もう一度<<証言>> してもらいましょうかな? |
山: |
『死体を見つけたとき、時間が 聞こえてきたんでございます。』(証言1) 『あの音、時報みたいな感じで‥‥。 たぶん、テレビだったと思います。』(証言2) 『あ、でも、時報にしては、 2時間もズレていたんですよね?』(証言3) 『たぶん、被害者の方は、ビデオを 見ていたのではないでしょうか。』(証言4) 『その音を聞いたから、2時だったと 思い込んでしまったんでしょうね。』(証言5) 『どうも、ごメイワクを おかけいたしました‥‥。』(証言6) |
裁: |
‥‥ふむ。なるほど。 ビデオで時報の音を聞いた‥‥。 では、弁護人。 <<尋問>>をおねがいします。 |
千: |
なるほどくん。 もう、やり方は バッチリよね? |
成: | ‥‥まかせてください。 |
(「証言4」に「停電記録」をつきつける) | |
成: |
ちょっと待ってください! そもそも、マンションは 停電だったはずですよね。 この記録がそれを 証明しています! |
山: | ‥‥! |
成: |
テレビにしろ、ビデオにしろ、 使えるワケがないじゃないですか! |
山: |
!! ‥‥そ、それは‥‥。 |
裁: |
‥‥たしかに、そのとおり。 山野さん。 ‥‥どういうことですかな? |
山: |
‥‥いや、私もその、 どういうことなのか‥‥。 ‥‥‥‥‥‥ ‥‥あっ! そ、そうだ! お、思い出しました! |
裁: |
‥‥山野さん。 証言は、最初から正確に おねがいしますよ。 だんだん、あなたという人物が あやしく見えてきます。 なんか、妙にクネクネ しているしねえ。 |
山: |
‥‥!! も、もうしわけございません。 ‥‥でも、なにぶん、 死体を見たショックで‥‥。 |
裁: |
もういい、わかりました。 では、さらに<<証言>>を おねがいしましょう。 |
山: |
『やっぱり、”聞いた”のではなく ”見た”んでした!』(証言1) 『現場には、置き時計が あったじゃないですか。』(証言2) 『ほら、犯人が殴るときに 使った凶器ですよ。』(証言3) 『おそらく、あれで時間が わかったんだと思います‥‥。』(証言4) |
裁: |
時計を見た‥‥。 まあ、それなら理解できますね。 では、弁護人。 <<尋問>>を。 |
成: | わかりました。 |
成: |
ちょっと待ってください。 凶器はこのとおり、 ”置物”なんですよ。 これのどこが時計なんですか? |
山: |
うおっ! ‥‥あんた、なんなんだ‥‥。 さっきから、エラそうに。 |
成: |
山野さん。 質問に答えてください。 |
山: |
オレ‥‥わ、私は見たんだ。 そいつは置き時計なんだよ! |
亜: |
裁判長! ちょっとよろしいですか。 |
裁: | どうしましたか? 亜内検事。 |
亜: |
この置物は、証人の言うとおり、 実は置き時計なんです。 首がスイッチになっていまして、 時間をアナウンスするタイプです。 時計には見えないので、<<置物>> として提出したんです‥‥。 |
裁: |
なるほどね‥‥。 凶器は、実は<<置き時計>> だった、と。 どうかな? 成歩堂くん。 山野さんの証言は間違ってない。 これはたしかに、時計なんだから。 ‥‥山野さんの証言について、 もう問題はないかね? |
成: |
裁判長。 大きな問題が残っています! その置物が時計だと知るためには、 実際に手に取るしかありません。 しかし、証人は”部屋には 入らなかった”と証言している。 これは、 あきらかにムジュンしています! |
裁: |
‥‥ふむう‥‥。 たしかに。 |
成: |
なぜ、証人が時計のことを 知っていたか? それは‥‥ |
成: |
あなたはウソをついている! あなたはあの日、 現場の部屋に入ったのです! |
山: |
な、なんだと! し、知らねえぞオレは‥‥ |
成: |
そうだ! あの置き時計で被害者を 殴ったのは、あなただったんだ! 彼女を殴ったときのはずみで、 あの時計は鳴った! あなたは、その音を 聞いたんです! |
裁: |
静粛に! ‥‥おもしろい。 成歩堂くん、つづけなさい。 |
成: |
はい。 ‥‥山野さん。 きっとあなたは、 かなり驚いたはずです‥‥。 被害者を殴った瞬間、置物が 急にしゃべり出したわけですから。 その声が、強烈に印象に 残ってしまった。 だから、あなたは時間だけを 妙にハッキリ覚えていたんです! |
亜: |
ど、ど、どういうつもりですか! そ、そんないいかげんな 言いがかりは‥‥。 |
成: |
いいかげんかどうか‥‥、 証人の顔を見てください! |
山: | ‥‥う‥‥ぐぐ‥‥ |
裁: |
証人‥‥。 どうなんですか? あなたが殴ったんですか? |
山: |
わ、ワタシは、その‥‥ ‥‥け、決して‥‥ ‥‥あの、ワタシが、聞いた、 いや、見たのは‥‥うぐぐ‥‥ うおおおおおおおおおおおおおおっ! うるせえんだよ! 細かいことをぐちぐちと! あ、アイツだ‥‥! オレは見たんだよ‥‥。 し、死刑だ! あの男に、死刑を‥‥! |
裁: | 静粛に! 静粛に! |
亜: |
裁判長! お、お待ちください! ただ今の弁護人の主張には、 証拠のカケラもありません! |
裁: | 成歩堂くん! |
成: | はい。 |
裁: |
証人が聞いたという時報が、 この時計の音だったという証拠。 そんな証拠はあるのですか? |
成: |
(これは、重要な問題だ! よく考えないとな‥‥) そうですね。 山野さんが聞いたのは、 この置き時計の音だったのです。 それを証明することは、 カンタンだと思います。それは‥‥ |
成: |
この場で、置き時計を 鳴らしてみればいいんですよ。 裁判長。 その時計を貸してください。 いいですか。 ‥‥よく聞いてください。 |
<<おそらく、9時25分だと思う>> | |
裁: |
な、なんか、ヘンな アナウンスをする時計ですね。 |
成: | まあ、<<考える人>>ですから。 |
裁: |
‥‥で。このアナウンスが どうかしましたか‥‥? |
成: |
亜内検事。今、ほんとうは 何時ですか? |
亜: |
11時25分‥‥。 あっ! |
成: |
2時間、遅れているんですよ。 この置き時計は‥‥。 殺人事件で、山野さんが聞いた 時刻と同じく、ね。 さあ、どうですか! 言い逃れできますか、 山野さん‥‥? |