成歩堂 龍一…黒 | |
綾里 千尋…赤 | |
綾里 真宵…青 | |
御剣 怜侍…茶 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
裁判長…緑 | |
小中 大…紫 | |
松竹 梅世…桃 | |
星影 宇宙ノ介…黄 | |
板東ホテルのボーイ…灰 |
電: |
プルルル‥‥‥‥ プルルル‥‥‥‥ |
?: | はい‥‥綾里ですけど。 |
千: | もしもし。私よ。 |
?: |
あ、チヒロお姉ちゃん! どうしたの? めずらしいね。 |
千: |
ごめんね。最近、忙しくって。 ‥‥どう? 元気? |
?: |
もう! かわいい妹を1人で ほったらかして、ひどいなー。 なーんて。 だいじょうぶだよ! もう、 慣れちゃったから‥‥1人ぐらし。 |
千: |
そう‥‥ありがとう。 ‥‥あのね。実はちょっと、 たのみたいことがあるの。 |
?: |
あー、わかった! また、 証拠品あずかれって言うんでしょ? |
千: |
よくわかったわね。 ‥‥今度の事件、ちょっと 話が大きくなっていてね。 裁判の日まで、そばに 置いておきたくなくて。 |
?: |
へえ‥‥。 で? で? 今度は何? |
千: | 置き時計よ。 |
?: | ‥‥時計? |
千: |
そう。考える人の形をしてて、 なんと、しゃべるのよ! あなた、好きでしょ? こういう、オモチャみたいなの。 |
?: |
あー。またあたしのコト、 コドモ扱いしたー。 |
千: |
ふふふ。 ‥‥ごめんなさい。 ‥‥あ。でも、今はこの時計、 しゃべらないんだったっけ。 |
?: |
えー、なんでー? ‥‥つまんない。 |
千: |
さっき、 時計の機械を抜いちゃったから。 かわりに、書類が入っているの。 |
?: |
書類? ‥‥それが”証拠品”なの? うー。なんか、 話がソレっぽくなってきたね。 |
千: |
‥‥じゃあ、今晩の9時ごろ、 事務所に来てくれるかしら? 裁判の打ち合わせ、 たぶん、そのころまでかかるから。 |
?: |
お姉ちゃん! また、何か おいしいのゴチソウしてよね! あ、みそラーメンがいいな みそラーメン。 |
千: |
はいはい。 じゃ、いつものお店、行こうね。 |
?: |
やったー! ヤクソクだよ! じゃ、お姉ちゃん。 また、あとでね! |
千: |
うん。 待ってるわよ、マヨイ。 |
<<ただ今の通話、録音しました。 9月5日、午前9時27分>> | |
綾里法律事務所 | |
?: |
‥‥じゃあ、ミス・チヒロ。 もらっていくよ‥‥書類を。 |
千: |
悪いけど、渡せないわ。 ‥‥ここには、ないもの。 |
?: |
ミス・チヒロ‥‥、 ウソはヘタみたいだね。 ちゃんとあるじゃないか、 そこに‥‥。 書類を飲み込んだ <<考える人>>が、さ。 |
千: | ‥‥ど、どうしてそれを! |
?: |
ははっ。 ドンチュノウ? 知らないのかい? ぼかぁ、情報を集めるのが 仕事なんだよ。 |
千: | 油断‥‥したわ。 |
?: |
‥‥フン。 それと‥‥ ちょっと気の毒なんだけど、 キミには、約束してもらわなきゃ ならないことがあるんだ。 エターナル・サイレンス‥‥ 永遠の沈黙、をね。 |
千: |
‥‥‥‥! |
綾里法律事務所 | |
成: |
ふう。 すっかり遅くなっちまった。 ‥‥おかしいな。 所長、帰っちゃったのかな。 妹さんが遊びにくるから、 ゴハン食べに行こうって‥‥。 ‥‥ なんだ‥‥このニオイ‥‥。 ‥‥血‥‥? ち、千尋さん! (所長室か!) |
成: | ‥‥血のニオイだ! |
?: |
‥‥ ‥‥うう‥‥ ‥‥お姉ちゃあん‥‥ |
成: |
(‥‥だれか、いる!) ‥‥‥‥! しょ、しょ、‥‥ |
成: | きみは‥‥? |
?: | ‥‥‥‥ |
成: |
(‥‥気絶した少女を 事務所のソファに寝かせて、 ぼくは所長のそばに戻ってきた。 ‥‥所長の身体には、 まだ少しぬくもりが残っている。 肩を抱くぼくの手を通して はっきり感じることができる。 でも、そのぬくもりは、 急速に、そして確実に、 この手から失われていった‥‥) ‥‥‥‥所長‥‥‥‥ |
成: |
‥‥所長‥‥ 見るのもツラいけど、 調べないわけにはいかないな。 ‥‥鈍器で頭部を殴られている。 たぶん、即死だったんじゃ ないだろうか。 死体のそばに転がっている <<考える人>>が凶器か。 |
法廷記録にファイルした。 | |
成: |
それと‥‥所長の身体のまわりに、 ガラスのカケラが散らばっている。 部屋の奥にたおれている ガラス製の電気スタンドの破片か? |
法廷記録にファイルした。 | |
成: |
‥‥他にはもう、手がかりに なるようなものは‥‥ ‥‥ん? 千尋さんの身体から、 何か紙切れが落ちたぞ。 なんだろう? |
成: |
! 小さな紙切れに、血で文字が 書かれている! ”マヨイ”‥‥だな。 千尋さんが書いたのか‥‥? ちなみにこの紙切れは、デパートの 領収書で、昨日発行されたものだ。 |
法廷記録にファイルした。 | |
成: |
(とりあえず、調べるのは これぐらいでいいだろう。 警察に通報‥‥、それに、 あの女の子のことも 気になるな‥‥) |
成: |
そうだ! とにかく、警察に通報しよう。 ‥‥‥‥? この電話、ヘンだな。 受話器のネジが、いくつか はずされている。 何かの作業を、とちゅうで やめたような感じだ。 |
?: |
‥‥‥‥来てぇっ! 早く来てぇっ! おまわりさぁん! |
成: |
(な、なんだなんだ! 窓の向こうで叫び声が!) ‥‥‥‥! こ、こっちをじっと 見つめているぞ! ‥‥受話器を にぎっているような‥‥。 |
成: |
‥‥! (さ、さっきの女の子は ‥‥どこだ! そこのソファに 寝かせておいたのに‥‥! まさか‥‥逃げた、のか?) うわっ! |
?: | ‥‥‥‥ |
成: |
だいじょうぶ。 ぼくは、この事務所の人間だから。 |
真: |
マヨイ‥‥。 アヤサト・マヨイ。 |
成: |
あやさと‥‥まよい‥‥。 (”マヨイ”だって‥‥? 千尋さんが書き残したのは、 この子のことだったのか‥‥? ちょっとこの子に、あの領収書を つきつけてみよう。 法廷で覚えたテクニックが、 実生活で役に立つとは‥‥) |
成: |
(かなり弱っているみたいだけど、 聞かないわけにはいかないな‥) あの‥‥きみ。 いったい、何が あったんだい? |
真: |
‥‥‥‥ ‥‥あたしが来たら、 部屋が暗くて‥‥ もう、お姉ちゃんは‥‥ |
成: |
(亡くなった後だった、 というわけか) |
成: | きみは、所長の‥‥? |
真: | ‥‥妹です。 |
成: | こんな時間に‥‥遊びに来たの? |
真: |
はい‥‥。 証拠品をあずかって欲しい、って。 |
成: | 証拠品‥‥って? |
真: |
はい‥‥。 あ、あの‥‥、 <<考える人>>の置時計を‥‥。 |
成: |
千尋さん、亡くなる前に 自分の血でメッセージを‥‥ 領収書のウラにね。 |
真: |
! あ、あ、あたしの名前! ど、どうして! お姉ちゃんが‥‥? どうして! |
成: | お、落ち着いてくれ! |
真: |
なんで‥‥お姉ちゃんが、 あたしを‥‥? |
成: |
(う、そ、そんな目で 見られてもなあ‥‥) |
‥‥ファン‥‥ファン‥‥ | |
成: |
! パ、パトカーだ! (ここへ向かってるみたいだ‥‥) |
?: | 動くな! 警察だ! |
糸: |
自分は、刑事課の イトノコギリという者ッス。 |
成: |
(イトノコギリ‥‥ ヘンな名前だな) |
糸: |
このビルの向かいの ホテルの客から、 殺人を目撃したという通報が 入ったので、かけつけたッス。 |
成: | (‥‥そうか。あの女の人だな) |
糸: |
とりあえずアンタたち、 そこを動いちゃダメッスよ。 |
成: |
(‥‥やれやれ‥‥ マヨイ‥‥ちゃんか。 まさか、この子が‥‥?) |
糸: |
うおおおおおおおおおおおおおッ! ちょっといいッスかッ! |
真: | きゃっ! |
糸: |
この”マヨイ”という文字に 心当たりはないッス? |
真: |
‥‥‥‥! あ。あの‥‥それ‥‥。 あ‥‥あたしの名前‥‥ |
糸: |
なんスとぉぉぉッ! これは、ヒガイシャが血で 書いたメモッス! 息を引き取るまぎわ、 ハンニンを告発したッス! |
真: | あ‥‥あたしじゃありま |
糸: |
こりゃもう、キマリッス! 署まで来てもらうッス! |
真: | え、え‥‥? |
成: |
千尋さんの妹・真宵ちゃんは、 緊急逮捕された。 ぼくも取り調べを受けて、 解放されたのは、明け方だった。 まぶたは重かったが、 眠れるわけがない。 留置所の面会が始まる 時間を待って、 ぼくは、すぐに真宵ちゃんに 会いに行った。
|
留置所 面会室 | |
成: |
(真宵ちゃん‥‥ すっかり犯人あつかい、か‥‥) |
真: |
‥‥あ。 あのときの‥‥弁護士さん。 お、おはようございます。 |
成: |
おはよう! (かわいそうに‥‥。ずいぶん、 つかれているみたいだ) |
真: |
あの‥‥ あなたが、あたしの弁護士さんに なるんですか‥‥? |
成: | え。そ、それは‥‥ |
成: |
(ここは、マジメに 答えるべきだな‥‥) ‥‥きみしだい、だよ。 |
真: | あたし‥‥ですか? |
成: |
うん。ぼくが決めることじゃ ないと思うよ。 ‥‥これは、きみの問題だからね。 |
真: |
‥‥‥‥。 信じてもらえるわけ、 ないもん‥‥あたしのこと。 あのときの、弁護士さんの目。 ”こいつが犯人だ”って‥‥。 |
成: |
(‥‥彼女を見たとき、ぼくは そんな顔をしてたのか‥‥) い、いや! そんなことは‥‥。 |
真: |
あ。‥‥いいんです。 ムリしなくても‥‥。 ‥‥‥‥ うん。‥‥それに、 あたし、聞いちゃったから。 |
成: | え? 何を? |
真: |
実は、この前、お姉ちゃんと 電話で話したの‥‥。 |
千: |
”今日はね、私の部下の 初舞台だったの” |
真: |
へー! そうなんだ。 で、で、どうだった? |
千: |
”それはもう、あらゆる意味で 大騒ぎだったわ。 正直、ヤバかったわ。 ‥‥こんなこと、ひさしぶり” |
真: |
えー! そうなんだ。 デキの悪いブカなんだね? |
千: |
”‥‥彼は天才よ。 まさに<<恐怖のツッコミ男>>と いったところかしら。 彼にたりないのは、 ‥‥そう、ケイケンだけ” |
真: |
ふーん。 じゃあ、あたしに何かあったら、 おねがいしちゃおうかな! |
千: |
”いい? 真宵。 今は、まだダメ。 あと3年待ちなさい。 無罪になりたかったら‥‥ね” |
真: | ‥‥って。 |
成: | ‥‥‥‥ |
真: |
‥‥あ! す、すみません。 シツレイなこと言っちゃって。 |
成: |
い、いやいや。 ホントのことだし。 ‥‥でも、やっぱり じっとしていられないんだ。 千尋さんを、あんな目にあわせた ヤツのこと、考えると。 |
真: |
‥‥‥‥ 弁護士さん‥‥。 |
成: |
‥‥あのさ。前から ちょっと気になってたんだけど。 |
真: | はい? |
成: |
どうして そんなカッコウを‥‥? |
真: |
あ、これですか? これは、見習いの修行者が 着る‥‥装束の一種、です。 |
成: |
見習い? 修行者? ‥‥きみはいったい、なんなんだ? |
真: |
‥‥あ! べつにあたし、 アヤシイ者じゃないですよ! ただの霊媒師です。 ‥‥修行中の。 |
成: |
れ、れいばいしぃ? (じゅうぶんアヤシイ‥‥) |
成: |
事件があった日のこと、 聞かせてくれないかな。 |
真: |
はい! ‥‥ええと。あの日の朝、 お姉ちゃんから電話がありました。 今度の裁判の証拠品を あずかってくれ、‥‥って。 |
成: | 証拠品? |
真: | はい。‥‥<<考える人>>の置時計。 |
成: |
(‥‥矢張の作った、 例のヤツか。) でも、なんであんなのが 証拠品なのかなあ‥‥? |
真: |
えーと‥‥ なんででしたっけ‥‥。 ‥‥‥‥ あっ、そうだ! よかったら、そのときの お姉ちゃんの話、聞きますか? |
成: | えっ、聞けるの? |
真: |
はい。 あの、あたしの携帯電話に、 そのときの会話が‥‥ |
成: | 録音してあるんだ! |
真: |
はい! ‥‥消し方を知らないから‥‥。 |
成: |
その、携帯電話に録音されている 会話だけど、 さっそく、聞かせてよ! |
真: |
はい! ‥‥あれ? そうだ。電話、あの刑事さんが 持っていっちゃいました。 ‥‥すみません‥‥。 |
成: |
あ、そう。 (‥‥そりゃ、そうだな) わかった。今度、イトノコ刑事に 会ったら、聞いてみるよ。 |
真: |
じゃあ、わすれないように、 メモを書きますね。 |
成: | あ、ありがとう。 |
法廷記録に挟んだ。 (「霊媒師」を聞く) | |
成: |
きみは、修行中の身なんだ‥‥ その、霊媒師の。 |
真: |
そうですよ。 綾里家は、とっても 霊力が強い家系で、特に女性は‥‥ |
成: |
ちょっと待って‥‥! あ、”綾里家”? ってことは‥‥千尋さんも? |
真: |
もちろん! ”きゃりあうーまんになる”って、 急に山を下りちゃったけど‥‥ お姉ちゃんの霊力、ホント、 シャレにならなかったんですよ。 |
成: |
(し‥‥知らなかった‥‥ あの千尋さんが‥‥) ん? ‥‥待てよ。 |
真: | なんですか? |
成: | ホンモノの霊媒師なんだよね? |
真: |
はい。 ‥‥修行中ですけど。 |
成: |
じゃあ、千尋さんの霊を 呼び出せばいいじゃないか! 本人に直接、 誰に殺されたか、聞いてみようよ。 |
真: |
‥‥‥‥! す、すみません‥‥。 なにぶん、 修行中の身ですから‥‥。 そんな大それたこと、 とてもとても‥‥。 |
成: |
(‥‥やれやれ。 そんなウマい話、ないか) |
真: |
‥‥‥‥ あの‥‥! |
成: | ん? どうしたの? |
真: |
すみません‥‥。おねがいしたい ことがあるんですけど‥‥。 |
成: | ‥‥? |
真: |
このメモ、えらい弁護士さんの 住所なんです。 昔、お姉ちゃんが 書いてくれて‥‥。 困ったときは、この方に頼めば だいじょうぶだ、って。 それで‥‥、 よかったら、弁護をおねがいして いただきたいな、って‥‥。 |
成: | (どうしよう‥‥?) |
成: |
ああ、いいよ。 頼んできてあげる。 |
真: |
ありがとうございます! あたし、他に頼める人が いなくて‥‥。 |
成: |
‥‥? そういえば、ご両親とかは‥‥? |
真: |
‥‥ ‥‥‥‥ ‥‥‥‥‥‥‥‥ |
成: |
そ、そうか。 ‥‥うん。ぼくにまかせて。 |
真: |
お願いします。 ‥‥明日、10時からです。 |
成: | え、ええっ! ‥‥あ、明日! |
真: | はい。 |
成: |
も、もしこの人に断られたら、 どうするんだよ! |
真: |
そのときは、国で選んでくれた 弁護士さんが来るそうです。 |
成: | それは、いつ? |
真: |
今日の4時まで 待ってもらっています。 |
成: |
(面会時間、ギリギリだな‥‥。 もう、時間がないぞ) わかった。また来るよ! |
成: |
事件があった日のこと、 聞かせてくれないかな。 ‥‥イヤなこと、思い出させて 悪いけど。 |
真: |
気にしないでください。 最近は、その話ばっかり くり返していたから、 少し、慣れちゃいました‥‥。 ‥‥ええと。あの日の朝、 お姉ちゃんから電話がありました。 今度の裁判の証拠品を あずかってくれっていう話で‥‥。 |
成: |
(‥‥矢張が作った、 例の<<考える人>>か。 ある種、連続殺人犯とも いうべきシロモノだな) それで、事務所に着いたのが‥‥? |
真: |
ちょうど、9時ぐらいでした。 電気が消えていて、 そして‥‥血のニオイがして‥‥、 そ、そして、 お、お、おねえちゃんが‥‥。 |
成: |
わ、わかった。 もういいよ‥‥ありがとう。 |