成歩堂 龍一…黒 | |
綾里 千尋…赤 | |
綾里 真宵…青 | |
御剣 怜侍…茶 | |
糸鋸 圭介…黄土 | |
裁判長…緑 | |
小中 大…紫 | |
松竹 梅世…桃 | |
星影 宇宙ノ介…黄 | |
板東ホテルのボーイ…灰 |
地方裁判所 第1法廷 | |
裁: |
これより、綾里 真宵の 法廷を開廷します。 |
御: |
検察側、 準備完了しております。 |
成: |
弁護側、 準備完了しております。 (御剣 怜侍‥‥か。 今日は、どんな小さなスキも 見せられないな‥‥) |
裁: |
御剣検事。 冒頭弁論をおねがいします。 |
御: |
被告人・綾里 真宵は、 事件当時、殺人現場にいた。 検察側は、彼女が犯行を 行ったことを示す証拠と、 犯行を目撃したという証人を 用意している。 被告人の有罪は、1点の うたがう余地もないだろう。 |
裁: |
‥‥なるほど。 では、さっそく 始めてもらいましょう。 |
御: |
最初の証人を入廷させて いただこう。 捜査の指揮をとった、 イトノコギリ刑事!
|
御: | 証人。名前と職業は? |
糸: |
はッ! 自分の名前は、糸鋸 圭介 (いとのこぎりけいすけ)ッス! 所轄署の、殺人事件捜査担当の 刑事ッス! |
御: |
イトノコギリ刑事。 まず、事件の説明を おねがいする。 |
糸: |
はッ! では、上面図で説明するッス。 死体は、窓際のこの位置に 倒れていたッス。 |
御: | 被害者の死因は? |
糸: |
鈍器で殴られた際の失血ッス。 凶器は<<考える人>>の置物で、 死体のそばに転がっていたッス! 女の子でも、じゅうぶん犯行が 可能な重さッス! |
裁: |
では、その凶器の置物を 受理しましょう。 |
成: |
(あいかわらず、”置物” あつかいか‥‥) |
法廷記録にファイルした。 | |
御: | さて‥‥刑事。 |
糸: | は、はい‥‥ッス。 |
御: |
キミは、現場にいた 綾里 真宵を、すぐ逮捕した。 それは、なぜか? |
糸: |
はッ! 動かぬ証拠が あったからッス! |
裁: |
ふむう‥‥ では、イトノコギリ刑事。 その”動かぬ証拠”とやらを、 <<証言>>してください。 |
糸: |
『自分は、電話の通報で事件を知り、 現場へかけつけたッス!』(証言1) 『現場には、 2人の人物がいたッス。』(証言2) 『被告人の綾里 真宵と、 弁護人、成歩堂 龍一。』(証言3) 『自分は迷わず、 綾里 真宵を逮捕したッス!』(証言4) 『その理由は! 通報者の 目撃証言があったからッス!』(証言5) 『その通報者は、綾里 真宵の 犯行の瞬間を見ていたッス!』(証言6) |
裁: |
ふむう、 犯行の瞬間を見ていた‥‥。 なるほど‥‥。では成歩堂くん、 <<尋問>>をしてもらいましょう。 |
成: |
は、はい。 (そんなこと言われても‥‥ 今の証言に、ムジュンするような 部分なんて、あったか‥‥?) |
‥‥コツン! | |
成: |
(‥‥! 被告席の真宵ちゃんが、 何か投げてきたぞ。 なになに。 ”お姉ちゃんは、証言に ムジュンが見つからないとき とりあえずハッタリをかけて、 証人をゆさぶっていました。 ゆさぶられた証人は‥‥ 動揺して 口をすべらせることが‥‥” ‥‥ははあ、さすが オニ弁護士の妹、だな‥‥ よし。 やってみるか、ぼくも) |
裁: | ‥‥どうかしましたか? |
成: |
い、いえ。 では、<<尋問>>させてもらいます。 |
成: | ちょっと待ってください! |
糸: | な、なんス? |
成: |
さっきあなたは、たしか こう言った。 ”動かぬ証拠があったから” 被告人を逮捕した、と! |
糸: |
え。 そんなこと、言ったッスか? ‥‥自分が? |
成: | 言いましたよ! |
裁: | 言いましたね。 |
御: | 言った。 |
成: |
怪しげなピンクの女性の証言の、 どこが<<動かぬ証拠>>なんですか! |
糸: |
な、な、なんスと! 梅世さんは、怪しげでも ピンクでもないッス! い、いや‥‥ピンクは ピンクッスけど‥‥。 |
裁: |
もうけっこうです。 ‥‥イトノコギリ刑事。 もっとハッキリした 証拠は、なかったんですか? |
糸: | ‥‥うーむ‥‥。 |
成: |
(なるほど。”ゆさぶる” って、こういうことか‥‥) |
糸: |
‥‥‥‥。 あったッス。 |
成: | (‥‥え!) |
糸: |
そッス。証言の順番を 間違えたッス! こっちを先に言えばよかったッス! |
裁: |
では、刑事。もう一度 <<証言>>してもらいましょう。 |
糸: |
『容疑者をカクホした自分は、 次に、この目で現場を調べたッス。』(証言1) 『そして死体のそばで、 メモを見つけたッス!』(証言2) 『あきらかに血で”マヨイ”と 書いてあったッス!』(証言3) 『化学分析の結果、この血は 被害者のものに間違いないッス!』(証言4) 『そして、被害者の指には血が ついていたッス!』(証言5) 『被害者は死ぬ前に、 犯人の名前を書き残したッス!』(証言6) |
糸: |
どうッス? これが<<動かぬ証拠>>ッス。 |
裁: |
ふむう‥‥。 <<尋問>>に入る前に、 刑事にヒトコト、言っておきます。 |
糸: | は、‥‥はッ? |
裁: |
‥‥なんで先に、 これを証言しなかったんですか! |
糸: | ‥‥いや。おはずかしい‥‥ッス。 |
裁: |
気をつけなさい! ‥‥では、弁護人。 <<尋問>>を。 |
成: |
イトノコ刑事。 1つ、たしかめておきたい ことがあります。 あなたは、被害者の千尋さんが この文字を書いて、 被告・綾里 真宵を 告発した‥‥と、 ホンキで、そう主張する つもりですか? |
糸: |
な、なんスか? そのいかがわしい言い方は! アタリ前ッス! 他に、書けた人間はいないッス! |
成: | ‥‥逆ですよ、刑事。 |
糸: | 逆‥‥ッスと? |
成: |
このメモ、被害者にだけは ゼッタイに書けたハズがない! これは、あなた方、警察の資料だ。 ”鈍器による一撃で即死” ‥‥死んでるじゃないですか! |
糸: | あれッ! |
成: | ”あれ”じゃないでしょう! |
裁: |
せ、静粛に! たしかに弁護人の 言うとおりです! 即死した人間に、 メッセージを残すことなど‥‥ |
御: |
弁護人。 シツレイだが、その解剖記録は、 いつ手に入れたものかな? |
成: | い、いつ‥‥って‥‥。 |
成: |
あれは、事件のあった 次の日のことでしたけど‥‥。 |
裁: | それがどうかしましたか? |
御: |
その資料は、古いよ 弁護人。 |
成: | な、なんですって! |
御: |
昨日、私の命令で再調査があった。 ”被害者は、鈍器で1回殴られて、 ほぼ即死の状態だった。 ただし、殴られてから数分間、 生きていた可能性を認める” ‥‥こういう結果が今朝、 私のところに届いているんだよ。 |
成: | そ、そんな! |
御: |
つまり! 被害者は、”マヨイ”と書くだけの 時間があったわけだ! 以上‥‥だ。 |
裁: | な、なるほど! |
成: |
(‥‥御剣‥‥! カ、カッコイイこと しやがって‥‥!) |
御: |
なんだ弁護人 ‥‥その目は‥‥? 何か、言いたいことでも? |
成: |
イトノコ刑事‥‥。 あなたを信じたぼくが バカだった、ということですか。 |
糸: |
い、いや、あの自分は、 その‥‥。 |
御: | イトノコギリ刑事。 |
糸: | ‥‥ひッ! |
御: |
‥‥ダメじゃないか。 間違った記録をわたすなんて。 |
糸: |
あ‥‥す‥‥ すまねッス‥‥。 |
御: |
キミのミスだ、刑事。 ‥‥来月の給与査定、 楽しみにしておきたまえ。 |
糸: | ま、またッスか‥‥とほほ。 |
御: |
裁判長。 ‥‥この記録の、受理を。 |
裁: |
わ、わかりました。 受理します。 |
書きなおした。 | |
御: |
裁判長‥‥いかがだろうか。 被害者が犯人を告発した、という 可能性は、きわめて高い。 |
裁: |
‥‥そう考えるのが 自然でしょうな。 |
成: | (くそう‥‥マズいな‥‥) |
御: |
では、次の証人に 入廷していただこう。 まさに殺人の瞬間を目撃した、 悲劇の少女をここへ! |
裁: |
では、松竹 梅世さんを 入廷させてください! |
成: |
(‥‥あの女のどこが ”悲劇”の”少女”だよ‥‥) |
御: | 証人の名前を。 |
梅: |
松竹 梅世でぇす。 よろしくお願いしまぁす★ |
裁: |
証人が出ただけで、 そんなに盛り上がらない! 証人も、ムヤミに ウインクしないように! |
梅: | はぁい。 |
成: |
(ヤッカイだな‥‥ 今ので、法廷中の男のハートを ガッチリ、ワシづかみだぞ‥‥) |
御: |
事件のあった9月5日の夜、 あなたはどこにいたか? |
梅: |
えっとぉ、梅世はぁ、出張先の ビジネスホテル? にいましたぁ。 ホテルにはぁ、その日の午後に チェックインしましたぁ。 |
御: |
事件があった綾里法律事務所の、 すぐ向かい側にあるホテルか? |
梅: | そうでぇす! |
裁: |
‥‥そこであなたが見たことを <<証言>>してください。 |
梅: |
『あれは、夜の9時ごろでしたぁ。 梅世、窓を見たんです。』(証言1) 『そうしたら! 長い髪の女の人が お、おそわれてるじゃないですか!』(証言2) 『おそっているのは、もちろん 被告席のちっちゃい子よぉ!』(証言3) 『女の人は、攻撃をかわして 逃げたんですぅ。』(証言4) 『あの子は、それを追いかけて トドメを‥‥!』(証言5) 女の人は‥‥ああ、 女の人はそれで ‥‥ぐったりと‥‥なっちゃって。 ‥‥以上。梅世が見たのは、 そ・れ・だ・け。 |
裁: | ふむう‥‥。 |
御: | いかがかな、裁判長。 |
裁: |
なるほど。ギモンの余地は ありませんな‥‥。 これ以上、時間をかけることも ありますまい‥‥。 |
成: | ちょ、ちょっと待ってください! |
裁: | なんですか? 弁護人。 |
成: | ぼくの<<尋問>>がまだです! |
裁: |
しかし、今の証言は、ほぼ カンペキだったと思いますが? |
御: |
‥‥たしかキミは、 綾里 千尋の弟子だっけな‥‥。 彼女のやり方は、 よく知っているよ。 人の証言のアラを探す、 ヒキョウなやり方‥‥。 |
成: | な、なんだと‥‥! |
裁: |
どうしますか? 弁護人。 ‥‥<<尋問>>をしますか? |
成: |
もちろん、させてもらいますよ。 (御剣は、梅世に尋問されるのを 恐れている! あの証人‥‥。 どこかに、弱点があるはずだ!) |
裁: |
わかりました。 ‥‥では、<<尋問>>を! |
成: |
どうしてそれが 被告人だとわかったんですか? |
梅: |
え? そ、それは‥‥ た、体型が女の子だったしぃ、 それに、 ちっちゃかったんだもぉん! |
御: |
現場には、少女の体型をして、 身長の低い人物は1人だった。 ギモンの余地は、ない。 |
成: | (そうだなあ‥‥) |
成: |
ちょっと待ってください! 今の証言は、おかしい! |
梅: | な、何がよぉ! |
成: | 梅世さん‥‥あなたは、 |
成: |
そもそも、本当に被告人を 目撃したんですか! |
梅: | ! |
裁: |
弁護人! ど、どういうことですか! |
梅: |
そうよ! どういうことよぅ! 梅世、信じらんなぁい! |
成: |
いいですか。 もし本当に綾里 真宵を 目撃していたのなら、 ”体型”よりも先に、 ”服装”が目につくはずなのです! |
梅: | ‥‥‥‥! |
成: |
彼女は、見てのとおり、 妙な和服を着ている! ついでに、頭の上を、これまた 妙な形に結っている! しかし、証人の証言では、 そのことは完全にムシされている。 そんなことは あり得ないのです! |
梅: | そ、それは‥‥。 |
裁: |
し、しかし‥‥事件当夜も、その カッコウをしていたかどうか‥‥ |
成: |
そのカッコウだったのです! ぼくは見ました。そして、 さきほどの、イトノコ刑事も 見ているはずです! どうですか! 梅世さん! |
梅: |
‥‥くっ! な、なぁにそれ? う、梅世、ちゃんと見てたわよぅ。 ただ、細かいこと話しても、 しかたないかな、って‥‥。 |
裁: |
証人。 見たことは、ちゃんと ぜんぶ話すようにしてください。 |
梅: |
すみませぇん。 梅世、反省★ |
裁: |
‥‥では、もう一度 <<証言>>を。 |
成: |
(くそ‥‥そうカンタンには まいらないか‥‥) |
梅: |
『梅世、ちゃんと細かいところまで 見てたんだからぁ!』(証言1) 『被害者の女の人、最初の攻撃を かわして、右に向かって逃げたの。』(証言2) 『そしたら、和服の女の子が 追いかけていって‥‥』(証言3) 『持っていた凶器でなぐりつけたの! 凶器だって、ちゃんと見たわよ!』(証言4) 『時計よ時計。‥‥置時計ってやつ? <<考える人>>の形してたわ!』(証言5) ‥‥どう? こんなに ハッキリ、見てたんだから! |
裁: |
なるほど‥‥。 最初からそこまで細かく 話してくれていればねえ‥‥。 ‥‥では、<<尋問>>を おねがいします。 |
成: |
梅世さん。 ‥‥あなたは今、とんでもない コトを口走りましたね‥‥? |
梅: |
な‥‥なによぅ。 おどかすの、ナシにしてよね‥‥。 |
成: |
この<<考える人>>を、 あなたは”置時計”だと言った。 しかし、見ただけでは それがわかるはずがないんですよ。 |
梅: | ‥‥! |
成: |
最近、同じような状況で、 これを”時計”と言った人がいた。 その人物は‥‥ 殺人犯でしたよ! |
裁: | 静粛に! 静粛に! |
成: |
梅世さん。あなたはなぜ、これが ”時計”だと知っていたんですか? |
梅: | うっ‥‥。 |
御: |
証人は、犯行を目撃していた。 ‥‥大切なのは、その1点だけだ! 弁護人は、細かい点をつついて 目くらましをしようとしている! |
裁: |
‥‥そうですね‥‥。 その質問は、却下‥‥ |
成: |
このやり方は、 ぼくの武器なんです! このやり方で、ぼくは 真犯人を見つけたことがあります! (‥‥1回だけど!) |
裁: |
‥‥‥ ‥‥‥‥‥‥ 成歩堂くんの異議を認めます。 証人は、質問に答えなさい。 |
成: |
(うー、あぶないあぶない。 この質問が却下されてたら、 勝負は決まっていたよ‥‥) |
梅: |
え? え? ケッキョク、どういうことぉ? |
成: |
なんで凶器が”時計”と 知っていたか、答えるんです! |
梅: |
‥‥え、だ、だって‥‥ ‥‥‥‥う、梅世、聞いたから。 そう! 梅世、あの時計が 鳴るのを聞いたの! |
成: |
あなたは、綾里法律事務所に 行ったことがあるんですか! |
梅: |
ババ、バカなコト言わないでよぅ。 行くワケ、ないでしょお! ホ、ホテルの部屋から 聞いたんですぅ! |
御: |
現場の綾里法律事務所と 板東ホテルは、とても近い。 聞こえても、おかしくはない! |
裁: |
どうですか? 弁護人。 これで納得しましたか? |
成: |
いいえ! まだです! (納得しちゃったら負ける!) なぜなら‥‥、 |
成: |
いいですか! あの時計は、鳴るはずがない! なぜなら、 |
成: |
その時計には、今は 機械が入っていないんです! |
裁: |
な、なんであなたに そんなことが‥‥? |
成: |
とにかく、調べてください! 今、すぐに! |
裁: |
‥‥‥‥ あっ! |
成: | どうですか、裁判長! |
裁: |
べ、弁護人の言うとおり‥‥、 この時計には機械が入っていない! カラッポです! |
裁: |
成歩堂くん! これはどういうことですか! |
成: |
見たとおりですよ。 時計に機械は入っていなかった。 だから、鳴るはずはなかった。 したがって、この証人は‥‥、 大ウソつきだ! |
梅: | ‥‥ぐぅッ‥‥! |
成: | どうですか! 証人! |